2026年の吸入薬指導加算|インフルエンザ追加・30点・算定要件を解説

この記事で確認できること
  • 2026年度改定で吸入薬指導加算の何が変わったか
  • 30点・6月に1回という基本ルール
  • 喘息・COPDとインフルエンザで異なる実施内容
  • 医師の了解と患者・家族等の同意が必要になる場面
  • 6月以内でも再算定できる例外
  • 情報提供・薬剤服用歴等・レセプトで確認するポイント
  • インフルエンザ患者へ薬局内で吸入してもらう際の感染対策

2026年度調剤報酬改定では、吸入薬指導加算の対象にインフルエンザウイルス感染症が追加されました。

点数は30点のままですが、算定できる基本間隔は3月に1回から6月に1回へ変更されています。

特に注意したいのが、喘息・COPDとインフルエンザでは、加算のために求められる実施内容が同じではないことです。喘息・COPDでは文書と練習用吸入器等を用いた吸入手技の指導・確認を行います。一方、インフルエンザでは、保険薬剤師による看視の下で実際に吸入してもらうことが求められます。

この記事では、2026年6月1日施行の調剤報酬点数表・留意事項通知を基に、受付から指導、医療機関への情報提供、記録、請求までを一つの流れとして整理します。

目次

結論|30点・6月に1回・インフルエンザが対象に追加

項目2026年度
点数30点
基本の算定間隔6月に1回
喘息・COPD対象
インフルエンザウイルス感染症2026年度から対象追加
6月以内の再算定他の吸入薬が処方され、必要な吸入指導等を別に行った場合は可能
医療機関への情報提供必要

厚生労働省の2026年度改定概要では、インフルエンザ患者に対する吸入薬指導を慢性疾患に対する吸入薬指導と同様に評価する見直しが示されています。

厚生労働省|令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】

2024年度から2026年度で何が変わった?

項目2024年度2026年度
点数30点30点
基本間隔3月に1回6月に1回
喘息・COPD対象対象
インフルエンザ対象外対象

2026年度改定は、算定機会を一方向に増やした改定ではありません。対象疾患にインフルエンザが加わった一方、喘息・COPD等を含む基本の算定間隔は6月に1回へ延長されています。

したがって、インフルエンザが追加されたという一点だけで算定額への影響を推測するのではなく、患者構成や実際の算定件数で確認する必要があります。

算定要件をフローで確認する

店舗運用では、要件を個別に覚えるより、受付から請求までの順番で確認すると整理しやすくなります。

段階確認すること
1. 処方受付吸入薬が処方されているか、対象疾患・使用目的を確認
2. 実施の起点保険医療機関からの求めか、患者・家族等からの求め等かを確認
3. 了解・同意必要に応じて医師の了解を取得し、患者・家族等の同意を確認
4. 指導・吸入喘息・COPDとインフルエンザで異なる実施内容を確認
5. 情報提供吸入指導の結果等を医療機関へ提供
6. 記録実施内容・確認事項を薬剤服用歴等へ適切に記録
7. 算定間隔直近6月以内の算定有無と例外該当性を確認
8. 請求併算定制限と摘要欄記載の要否を確認

喘息・COPDで必要な吸入指導

喘息または慢性閉塞性肺疾患に対して吸入薬を用いる患者では、次の対応を行います。

  • 文書を用いる
  • 練習用吸入器等を用いる
  • 吸入手技を指導する
  • 患者が正しい手順で吸入薬を使用できているか等を確認する

制度上、単に薬を交付して口頭説明をするだけではなく、実際の吸入手技を確認するところまでが重要です。

厚生労働省の留意事項では、吸入指導に当たり、日本アレルギー学会が作成するガイドライン等を参照することも示されています。

インフルエンザでは薬剤師看視下で実際に吸入する

2026年度から追加されたインフルエンザウイルス感染症では、喘息・COPDとは実施内容が異なります。

留意事項通知では、保険薬剤師による看視の下、吸入させることとされています。

そのため、イナビルやリレンザなどの吸入方法を薬局で説明したうえで、実際の吸入は患者が自宅へ帰ってから行う、という流れだけでは、このインフルエンザに関する要件を満たしません。

製品名で対象を決めるのではなく、インフルエンザウイルス感染症に対して吸入薬を用いる患者であり、必要な一連の要件を満たしているかを確認します。

医師の了解と患者同意はいつ必要?

吸入指導の実施経路は、大きく2つに分けて理解すると分かりやすくなります。

実施のきっかけ医師の了解患者・家族等の同意
保険医療機関から求めがあった場合別途の了解を取り直すという要件ではない必要
患者・家族等から求めがあった場合等、薬剤師が必要性を認める場合必要必要

つまり、患者同意はどちらのルートでも確認します。一方、患者・家族等の求めや薬剤師の判断を起点に実施する場合には、医師の了解も必要です。

厚生労働省|保険調剤の理解のために(令和8年度)

医療機関への情報提供|お薬手帳でも差し支えない

吸入薬指導加算では、指導・吸入を行って終わりではありません。吸入指導の結果等を保険医療機関へ情報提供します。

厚生労働省の留意事項では、情報提供する内容として、吸入指導の内容や患者の吸入手技の理解度等が示されています。

情報提供は文書だけでなく、手帳による方法でも差し支えないとされています。

また、指導の結果、患者の吸入薬使用について疑義等が生じた場合は、処方医へ必要な照会を行います。

6月以内でも再算定できるケース

基本は6月に1回ですが、例外があります。

他の吸入薬が処方され、その薬について必要な吸入指導等を別に行った場合は、前回の吸入薬指導加算から6月以内でも算定できます。

ここで重要なのは、単に薬剤名が変わっただけではなく、新しい吸入薬について必要な吸入指導等を別途行っていることです。

算定間隔の確認

直近6月以内に吸入薬指導加算を算定している場合でも、別の吸入薬が処方され、必要な吸入指導等を別に実施していれば例外に該当し得ます。店舗内では、前回算定日だけで機械的に不可とせず、処方された吸入薬と今回実施した指導内容まで確認します。

薬剤服用歴等には実施した内容を適切に残す

算定要件を満たしていても、後から実施内容を確認できない運用は避ける必要があります。

一方で、全国共通で決められた3項目だけを書けばよい、といった独自ルールを作るのも適切ではありません。

店舗内の記載漏れ防止策としては、少なくとも次の事項を確認できるようにしておくと実務上整理しやすくなります。

  • 対象となった吸入薬・疾患
  • 実施のきっかけ
  • 必要な医師の了解と患者・家族等の同意
  • 実際に行った指導・確認・看視下吸入の内容
  • 医療機関へ提供した情報
  • 疑義が生じた場合の照会内容

これは制度上の全国統一様式ではなく、店舗内で確認漏れを防ぐための運用例です。実際の記録は、自社の薬剤服用歴等の記載ルールに従ってください。

レセプト摘要欄|調剤年月日と吸入薬名称を確認

吸入薬指導加算では、対象となる吸入薬が処方されていない月に算定する場合など、レセプト摘要欄への記載が必要となる場面があります。

記載項目コメントコード
吸入薬の調剤年月日850100480
吸入薬の名称830100446

請求時は、最新のレセプト記載要領・コメントマスターとレセコン仕様も確認してください。

厚生労働省|診療報酬情報提供サービス コメント告示・通知情報

併算定で確認したいこと

同じ情報提供について服薬情報等提供料は算定しない

吸入薬指導加算の算定時に行う保険医療機関への情報提供について、服薬情報等提供料を別に算定することはできません。

これは同じ情報提供を二重に評価しないためのルールです。その患者について別の場面の服薬情報等提供料まで一律に算定できない、という意味ではありません。

服薬管理指導料4のロ・ハでは吸入薬指導加算を算定しない

2026年度の調剤報酬点数表では、服薬管理指導料4のロまたはハを算定する場合、吸入薬指導加算は算定しないとされています。

4のロは在宅で療養し通院が困難な患者への情報通信機器を用いた服薬指導、4のハはそのうち患者の状態の急変等に伴う場合です。

特別調剤基本料Aでは情報提供先との関係にも注意する

特別調剤基本料Aを算定している保険薬局が、その薬局と不動産取引等の特別な関係を有する保険医療機関へ情報提供を行った場合、吸入薬指導加算は算定できません。

厚生労働省|令和8年度 調剤報酬点数表

インフルエンザ患者の吸入時は感染対策も別に考える

インフルエンザ患者では、制度上、薬剤師看視下で実際に吸入してもらうことになります。

一方、厚生労働省はインフルエンザの主な感染経路として、飛まつ感染と接触感染を挙げています。

厚生労働省|インフルエンザ総合ページ

したがって、算定要件を満たすことと、店舗内の感染対策は別に設計する必要があります。

  • 患者の待機・吸入場所をどうするか
  • 他の患者との動線をどう分けるか
  • スタッフの手指衛生や必要な感染対策をどう行うか
  • 吸入後の周辺環境をどう取り扱うか
  • 流行期に誰が対応しても同じ手順で実施できるか

ただし、個室でなければ算定できない、一定距離を確保しなければ算定できない、といった要件を独自に加えるものではありません。自社の感染対策手順や店舗構造に応じて運用を決めます。

元人事・店舗運営側から見る算定漏れを防ぐ仕組み

私が店舗運営を見る立場で重視していたこと

私が調剤薬局チェーンで人事や店舗運営を見る立場だった範囲では、制度変更への対応で重要なのは、個々の薬剤師へ要件を暗記させることよりも、誰が勤務していても確認できる業務フローへ落とし込むことでした。

吸入薬指導加算であれば、処方受付時に対象を拾い、実施の起点と同意・了解を確認し、疾患ごとの指導を行い、医療機関への情報提供、記録、算定間隔、レセプトまで順番に確認できる仕組みにしておく方が再現性があります。

これは私が見ていた範囲での経験談であり、すべての薬局が同じ帳票やシステムを使用すべきという意味ではありません。

保存用|吸入薬指導加算の算定前チェックリスト

  • 吸入薬が処方されている患者か確認した
  • 対象となる疾患・使用目的を確認した
  • 医療機関からの求めか、患者・家族等からの求め等かを確認した
  • 必要な場合は医師の了解を得た
  • 患者・家族等の同意を確認した
  • 喘息・COPDなら文書と練習用吸入器等を用いて手技を確認した
  • インフルエンザなら薬剤師看視下で吸入を実施した
  • 吸入指導の結果等を医療機関へ情報提供した
  • 疑義があれば処方医へ照会した
  • 薬剤服用歴等へ実施内容を適切に記録した
  • 直近6月以内の算定有無を確認した
  • 6月以内なら他の吸入薬+別途必要な指導の例外に該当するか確認した
  • 服薬情報等提供料との重複算定になっていない
  • 服薬管理指導料4のロ・ハに該当していない
  • 特別調剤基本料Aの場合は情報提供先との関係を確認した
  • 必要なレセプト摘要欄記載を確認した
  • インフルエンザの場合は店舗の感染対策手順も確認した

2026年度調剤報酬改定の他の項目も確認する

吸入薬指導加算は2026年度調剤報酬改定の一項目です。調剤基本料、調剤管理料、在宅関連などを含めて確認したい場合は、改定全体のまとめから各制度へ進んでください。

関連記事:2026調剤報酬改定の全解説|元人事部長が薬剤師への影響を読み解く

一次資料

FAQ

イナビルで吸入薬指導加算は算定できますか?

インフルエンザウイルス感染症に対して吸入薬を用いる患者は2026年度から対象に追加されています。ただし製品名だけで算定できるわけではなく、患者・家族等の同意、必要な場合の医師了解、薬剤師看視下での吸入、医療機関への情報提供などの要件を満たす必要があります。

リレンザなどイナビル以外のインフルエンザ吸入薬も対象ですか?

制度はイナビルという製品名に限定していません。インフルエンザウイルス感染症に対して吸入薬を用いる患者について、所定の要件を満たして吸入指導等を行った場合が対象です。

薬局で使い方を説明し、自宅で吸入してもらった場合も算定できますか?

インフルエンザウイルス感染症の場合、保険薬剤師による看視の下で吸入させることが求められています。そのため、説明だけを行い実際の吸入を自宅で行う流れでは、このインフルエンザに関する要件を満たしません。

前回算定から6月以内でも再度算定できますか?

他の吸入薬が処方され、その薬について必要な吸入指導等を別に行った場合は、前回算定から6月以内でも算定できます。薬が変わったことだけでなく、必要な指導を別途行ったことまで確認します。

医療機関への情報提供はお薬手帳でもよいですか?

はい。厚生労働省の留意事項では、吸入指導の内容や患者の理解度等について、文書のほか手帳によって情報提供することでも差し支えないとされています。

服薬情報等提供料と同時に算定できますか?

吸入薬指導加算の算定時に行う医療機関への情報提供について、服薬情報等提供料を別に算定することはできません。同じ情報提供行為を二重評価しないためのルールとして整理します。

レセプト摘要欄には何を記載しますか?

対象となる吸入薬の調剤年月日と吸入薬名称の記載が必要となる場面があります。コメントコードは調剤年月日が850100480、吸入薬名称が830100446です。実際の請求時は最新の記載要領とレセコン仕様を確認してください。

まとめ|指導・情報提供・記録・請求まで一つの流れで確認する

2026年度の吸入薬指導加算は30点で、基本の算定間隔は6月に1回です。新たにインフルエンザウイルス感染症が対象へ加わりました。

  • 喘息・COPDでは文書と練習用吸入器等を用いた手技指導・確認を行う
  • インフルエンザでは保険薬剤師看視下で実際に吸入してもらう
  • 患者・家族等の同意を確認する
  • 患者側の求め等で実施する場合は医師の了解も確認する
  • 吸入指導の結果等を医療機関へ情報提供する
  • 他の吸入薬について必要な指導を別に行えば6月以内でも再算定できる
  • 服薬情報等提供料や服薬管理指導料4のロ・ハ等との算定関係を確認する
  • 必要な薬剤服用歴等・レセプト記載を確認する
  • インフルエンザでは感染対策も別に運用設計する

算定漏れを防ぐために重要なのは、点数だけを覚えることではなく、必要な吸入指導を行い、その結果を医療機関へ共有し、記録・請求まで正しく完結できる店舗フローを作ることです。

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