調剤ベースアップ評価料で本当に給料は上がるのか?元人事部長の本音

調剤ベースアップ評価料で本当に給料は上がるのか?元人事部長の本音
【この記事でわかること(3秒で解説)】
  • 40歳未満限定の賃上げ制度の正体
  • 管理薬剤師が対象外となる根拠
  • 対象外薬剤師がとるべき戦略
目次

処方箋1枚あたり4点の新設加算、あなたの給料に反映されますか?

2026年6月に施行される調剤報酬改定で、調剤ベースアップ評価料が新設されました。処方箋受付1回につき4点(2027年6月以降は8点)が算定できる制度です。

厚生労働省・中医協第647回総会で正式に決定されたこの加算ですが、現場の薬剤師さんからは、こんな声が聞こえてきます。

「処方箋4点って、私の給料に本当に反映されるの?」
「2024年の改定でも3点上乗せされたけど、給料は全く上がらなかったよ」
「管理薬剤師の私は対象外と聞いたが本当か?」

私は元調剤薬局チェーンの人事部長として、また調剤薬局の経営コンサルタントとしての経験があります。その立場から率直に申し上げると、調剤ベースアップ評価料は薬剤師全員の給料を上げる制度ではありません。むしろ算定要件を読み解くと、相当数の薬剤師が対象から外れる設計になっています。

本記事では、調剤ベースアップ評価料の正体と、薬剤師として今後どう動くべきかを実務目線で解説します。最後まで読めば、あなたの市場価値を再確認し、戦略的な一手が見えてくるはずです。

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ポイント1:調剤ベースアップ評価料の正体は「40歳未満限定」の賃上げ制度

最初に結論を申し上げます。調剤ベースアップ評価料は、薬剤師全員の給料を上げる制度ではありません

厚生労働省のベースアップ評価料特設ページで公開されている疑義解釈資料その2問8によると、賃金改善の対象職員は以下のように明記されています。

  • 事業主、使用者、開設者は対象外
  • 管理薬剤師は対象外(疑義解釈その2 問8で明示)
  • 40歳以上の薬剤師は対象外
  • 業務委託により勤務する者は対象外
  • 事務職員は年齢制限なし
表①:調剤ベースアップ評価料の対象職員・早見表
職種・立場 対象/対象外 補足
40歳未満の勤務薬剤師 対象 パート社員も含む
40歳以上の勤務薬剤師 対象外 会社負担で別途対応が必要
管理薬剤師 対象外 疑義解釈その2問8で明示
事務職員 対象 年齢制限なし
事業主・使用者・開設者 対象外 経営者は除外
業務委託で勤務する者 対象外 フリーランス契約は除外

出典:厚生労働省「特掲診療料の施設基準等」(令和8年厚労省告示第71号)、疑義解釈資料その2(2026年4月1日)

整理すると、対象となるのは40歳未満の勤務薬剤師と事務職員のみです。40代以降の薬剤師は、たとえ現場の中核を担っていても、この制度における賃上げの恩恵を直接受けられない設計になっています。

制度設計の背景にある政策意図

厚生労働省および中央社会保険医療協議会の資料によると、賃上げ目標は40歳未満の勤務薬剤師約3.2%、事務職員約5.7%とされています。これは令和8年度と令和9年度それぞれで設定された年次目標です。

事務職員の引き上げ幅が大きい点に注目してください。調剤薬局の事務職員の給与水準は、業界全体で見ても他産業に比べ伸び悩んでいました。今回の制度は、その遅れを取り戻すための仕組みだとも捉えられます。

「制度の名前に薬剤師の文字が入っていないのには、理由があったんだな」

そう感じた現場の方も多いのではないでしょうか。

関連記事:調剤管理料「大幅減収」の正体は14日処方の比率でした|元調剤薬局人事部長が解説

ポイント2:算定には「届出」と「賃金改善計画書」が必須【未届なら算定不可】

調剤ベースアップ評価料は、薬局がただ漫然と請求できる加算ではありません。

厚生労働省のベースアップ評価料特設ページで公開されている通り、算定には以下のプロセスが必要です。

  • 賃金改善実施計画書の策定
  • 就業規則の改定(賃金規定の見直し)
  • 地方厚生(支)局への届出書類の提出(様式103等)
  • 今年度8月の中間報告、次年度8月の実績報告

つまり、薬局側が「対象職員の賃金をいくら上げます」という具体的な計画を文書化し、当局に届け出ない限り、1点も算定できません。

制度の特徴:基本給または毎月の固定手当への充当が原則

賃金改善の方法は厳密に定められています。

  • 基本給の引き上げ、または毎月決まって支払われる固定手当の新設に限定
  • 業績連動型の賞与や一時金は対象外
  • 定期昇給とは別枠で計上する必要あり

これは2024年度改定の反省を踏まえた制度設計です。前回改定では調剤基本料に3点上乗せされる方式でしたが、その原資が本当に薬剤師の賃上げに使われたかを検証する仕組みがありませんでした。

表②:2024年度改定vs2026年度改定の比較
比較項目 2024年度改定 2026年度改定
賃上げ原資の措置方法 調剤基本料に3点上乗せ 独立した評価料を新設(4点)
賃上げの実効性検証 検証の仕組みが不十分 届出・計画書・実績報告が必須
対象職員の範囲 40歳未満の薬剤師 40歳未満の薬剤師+事務職員
賃上げ方法の制限 原資の使途は事実上自由 基本給または固定手当に限定
未届のリスク 基本料は自動算定 未届なら1点も算定不可

出典:厚生労働省「令和6年度調剤報酬改定」、厚生労働省・中医協第647回総会答申(2026年2月13日)

元人事部長の視点

これまで薬剤師の処遇制度設計を担っていた立場から本音を申し上げると、2024年度改定の調剤基本料に3点上乗せする方式は、経営側にとって扱いやすい設計でした。なぜなら原資の用途が事実上自由で、賃上げに回すか経営改善に回すかは経営判断に委ねられていたからです。

これまで複数の薬局経営者と話してきた中で、印象に残っている本音があります。「3点分を全部給料に回すと、人件費比率が跳ね上がって他の経営指標が悪化する。だから一部は薬局の運転資金に組み込んだ」というものです。

しかし2026年度改定は、この経営側の裁量を明確に封じ込める設計になっています。届出・賃金改善計画書・実績報告の3点セットで、原資の流れを当局が追跡できる仕組みです。これは経営者にとっては非常に窮屈な制度ですが、勤務薬剤師にとっては賃上げ原資が確実に給料に届く歓迎すべき変化なのです。

ただし算定するかしないかは経営側の判断に委ねられている点を忘れてはなりません。あなたの薬局がこの制度に積極的に取り組むかどうかが、今後の処遇を分ける重要な分岐点になります。

関連記事:薬剤師オワコン説は本当か?2026年改定のキャリア戦略を元調剤薬局人事部長が解説

ポイント3:算定原資の試算とリアルな手取り増額イメージ

表③:算定スケジュール・点数推移と賃上げ原資
期間 点数(処方箋1回) 月1,500枚の場合の月間原資 想定ベア
2026年6月~2027年5月 4点(40円) 60,000円 40歳未満薬剤師3.2%/事務職員5.7%
2027年6月以降 8点(80円) 120,000円 2026年度水準を継続・上乗せ

出典:厚生労働省・中医協第647回総会答申(2026年2月13日)

具体的にいくら給料が上がるのか。実務目線で試算してみます。

具体例:月間処方箋1,500枚の薬局

仮に月間処方箋受付1,500回の薬局で、対象職員が薬剤師2名(40歳未満)と事務職員2名の計4名だったとします。

  • 月間算定金額:1,500回 × 4点 × 10円 = 60,000円
  • 法定福利費(最大16.5%)を控除した実配分原資:約50,100円
  • 対象職員4名に均等配分した場合の月額目安:約12,500円/人(ただし対象者の構成や入退職の有無によって配分額は大きく変動します)

これはあくまで均等配分のケースであり、実際には事務職員の引き上げ幅を厚くする運用が想定されます。

注意点:管理薬剤師と40歳以上薬剤師は別途対応が必要

ここで現場の不公平感が問題になります。これまでの経験の中で、薬局内で対象者と非対象者が分かれた際、人間関係に微妙な影を落とすケースが考えられます。

知人の薬剤師Aさんは、こんな話をしてくれました。

「うちの薬局では41歳の私は対象外で、35歳の後輩は月1万円アップになるらしい。同じ業務量なのに、これは複雑な気分です。同一労働同一賃金はどこに行ったんだ。」

このような状況を避けるため、対象外の職員に会社負担で別途処遇改善を行う薬局と、そもそもベースアップ評価料を算定せず、何もしない薬局に二極化していくと予想されます。

あなたの薬局がどちらに分類されるかは、今後の働き方を左右する重要なポイントになるのです。


ポイント4:あなたの薬局はベースアップ評価料を算定するか?見極め方を解説

ここから本題です。現場の薬剤師としてできることは何でしょうか。

最初に確認すべきは、勤務先の薬局が調剤ベースアップ評価料を届け出る方針かどうかです。届出には経営側の意思決定が必要であり、すべての薬局が算定するわけではありません。

算定しない薬局に存在する3つの典型パターン

これまでの経験から、調剤ベースアップ評価料を算定しないと判断する薬局には、いくつかの共通点があります。

  • 賃金改善計画書の作成や届出事務にリソースを割けない零細経営
  • 対象職員の数が少なく、算定原資が事務コストに見合わないと判断する薬局
  • そもそも賃上げに後ろ向きで、届出や制度そのものを面倒だと捉える経営者の薬局

小規模薬局ほど算定を避けたがる構造的な理由

複数の調剤薬局経営者と話をしていると、特に小規模な事業者ほど算定を見送る動きが目立ちます。表向きの理由は事務負担ですが、本音は別のところにあるのです。

社員数が少ない薬局では、対象職員の出入りによる影響が極端に大きくなります。1名の入退職で、計画全体が崩れるリスクを抱えているのです。

たとえば対象薬剤師が2名しかいない薬局で1名が退職するケースを想像してみてください。残った1名への配分額は変わるのか、退職者にすでに支払った賃上げ手当はどう処理するのか。新しく入った薬剤師が40歳以上だった場合、対象者の構成自体が変わり原資が余ってしまいます。

評価料の収入は対象職員の賃上げにすべて充てるルールであり、余った原資を経営側に戻すことはできません。さらに実績報告では計画通りの賃金改善を立証する義務があります。小規模薬局では、たった1人の入退職で計画書の前提が崩れ、対応に追われる構造です。

知人の小規模の調剤薬局経営者は、こう本音を漏らしていました。

「うちは対象者が3人だけ。1人辞めたら計画が崩れるし、入った人が40歳以上だと運用が破綻する。最初から手を出さない方が安全だと判断した」

つまり、小規模薬局に勤務する薬剤師ほど、構造的に賃上げの恩恵を受けにくい立場に置かれているという現実があります。あなたの勤務先が10名未満の薬局であれば、算定見送りの可能性は十分に高いと考えておくべきです。

あなたの薬局を見極める質問の仕方

直接「ベースアップ評価料を算定しますか」と聞くと、角が立つ可能性があります。そこで自然な聞き方として、以下のような切り出し方が有効です。

  • 「2026年改定の対応で、何か新しい届出はあるんですか?」
  • 「事務職員さんの給料も改定で上がるって本当ですか?」
  • 「賃金改善計画書って、私たちにも関係あるんですか?」

経営者や管理薬剤師の反応で、薬局の姿勢が透けて見えます。

関連記事:年収とやりがいを同時に上げる業務改善5選|元調剤薬局人事部長が伝授

ポイント5:対象外の薬剤師ほど「戦略的転職」を視野に入れるべき理由

40歳以上の薬剤師、管理薬剤師の方々。今回の制度であなたは賃上げの直接対象から外れます。だからこそ、市場価値を再評価する好機なのです。

厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は約599.3万円。50~54歳の平均は744.7万円とされています。

このデータが示すのは、40代以降の薬剤師にこそ、年収アップのポテンシャルが残されているという事実です。今回のベースアップ評価料の対象外であっても、適切な転職活動を経て年収を引き上げた事例も少なくありません。年収アップの金額や成否は個人の経験・市場状況によって異なります。

算定しない薬局に残り続けるリスク

ここからは率直に申し上げます。調剤ベースアップ評価料を算定しない薬局は、今後数年で人材獲得競争に敗れていくと予想されます。

40歳未満の薬剤師にとって、月1万円前後の処遇改善は転職時の比較ポイントになります。算定しない薬局はその時点で候補から外され、人材が集まらなくなる構造です。

経営が苦しい薬局や小規模零細薬局ほど算定を見送る傾向があるため、将来的な人員確保にも影響が出ます。あなたが対象外であっても、薬局自体の経営体力と人材戦略を見極めることは不可欠です。

関連記事:薬局倒産の危険な予兆|元調剤薬局人事部長が見抜き方を解説

採用責任者として20社以上の紹介会社と直接対面で付き合ってきた中で、信頼できる担当者がいた紹介会社は限られていました。その中で「電話を優先的に取った3社」の選定基準と採用裏話については、こちらの記事で実名を挙げて解説しています。

関連記事:【元人事部長が厳選】採用側から見て「本当に信頼できた」薬剤師転職エージェント3選

ポイント6:年収交渉時に必ず確認すべき3つのポイント

転職活動を始める際、ベースアップ評価料に関する確認は欠かせません。労務や給与の細かい質問を求職者自身で行うと角が立つため、エージェント経由で確認するのが賢明です。

「(自身の知らないところで)エージェントが確認していた」というスタンスを取れる点が、エージェント活用の最大のメリットなのです。

確認すべき3つのポイントは以下の通りです。

  • ベースアップ評価料を届け出ているか(算定の有無)
  • 賃金改善の方法は基本給アップか手当新設か
  • 40歳以上の薬剤師や管理薬剤師には別途処遇改善があるか

特に3つ目は重要です。対象外職員への配慮がある薬局は、組織として処遇改善に本気で取り組んでいる証拠だからです。

関連記事:薬剤師面接で見られるポイントと年収交渉術|元調剤薬局人事部長が暴露

採用に携わっていた頃、実際に「交渉力が高く信頼できる」と感じたエージェントについては以下の記事で実名を挙げて解説しています。失敗したくない方はチェックしてみてください。

関連記事:転職エージェントを味方にする薬剤師の使い方|元調剤薬局人事部長が解説

ポイント7:薬局選びの新基準「ベースアップ評価料の運用姿勢」

これまでの薬局選びの基準は、年収・休日数・通勤時間が中心でした。2026年6月以降は、これに「ベースアップ評価料の運用姿勢」が加わります。

良い薬局の見極めポイント

ベースアップ評価料を健全に運用している薬局には、以下の特徴があります。

  • 賃金改善計画書の内容を職員に開示している
  • 対象外の職員にも別途処遇改善を行っている
  • 評価料の算定金額と実際の賃上げ額を透明化している
  • 法定福利費の控除根拠を明示している

逆に、これらが不透明な薬局は、評価料の収入を経営側がブラックボックス化している可能性があります。

関連記事:求人票に載らない「辞めない薬局」の共通点7選|元調剤薬局人事部長が暴露
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行動への一歩:今のあなたの市場価値を確認しませんか

ここまで読んで、こんな気持ちになっていませんか。

「結局、自分の薬局は算定するのだろうか」
「対象外の40代だが、今後の処遇改善は望めるのか」
「他の薬局はどう動いているのか」

このような疑問は、現職にいるだけでは解決しません。実際の求人情報を見て、他の薬局がどう動いているかを知ることが第一歩です。

エージェントに任せれば、あなたは「エージェントが勝手に交渉してくれた」というスタンスを取れます。企業側も「エージェントの要求だから仕方ない」と受け止めやすいのです。実際にこれまで採用の裏側を見て「ここは信頼できる」と判断したエージェントだけを厳選しました。

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転職そのものをすぐに決断する必要はありません。市場の動向を知り、自分の市場価値を確認するだけでも、現職での交渉材料になります。

関連記事:【完全版】薬剤師の年収交渉、知らなきゃ損する交渉タイミングと相場感

FAQ

管理薬剤師は調剤ベースアップ評価料の対象になりますか?

対象外です。2026年4月1日付の厚生労働省疑義解釈資料その2問8において、管理薬剤師は対象職員に含まれないと明示されています。年齢が40歳未満であっても、管理薬剤師の役職に就いている時点で除外されます。会社負担で別途処遇改善を行う薬局と、何もしない薬局に二極化していくと予想されます。

自分の薬局が調剤ベースアップ評価料を算定するか確認する方法はありますか?

直接聞くと角が立つため、自然な切り出し方を推奨します。「2026年改定の対応で新しい届出はあるんですか」「事務職員さんの給料も改定で上がるって本当ですか」など、改定全般の話題として聞くと、経営者や管理薬剤師の反応で薬局の姿勢が透けて見えます。特に小規模薬局ほど算定を見送る傾向があるため、勤務先が10名未満の場合は要注意です。

転職を検討する場合、信頼できる薬剤師転職エージェントはどう選べばよいですか?

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制度に振り回されず、自分のキャリアを設計する力

今の年収、本当に自分の働きに見合っていると思いますか。

調剤ベースアップ評価料は、確かに薬剤師の賃上げを目的とした制度です。しかし対象は40歳未満に限定され、管理薬剤師は除外され、特に小規模薬局では算定すらされない可能性が高いという現実があります。制度に身を委ねるだけでは、あなたのキャリアは守れません。

このページに辿り着いたあなたは、自分の処遇に何らかの疑問を感じている方でしょう。その違和感は正しい感覚です。

「制度ができても給料が上がらないのなら、行動するしかない」

そう気づいた瞬間が、あなたのキャリアの転換点になります。あなたの市場価値は、あなたが思っているよりずっと高い。これまで多くの薬剤師の方々を見てきた立場から、自信を持って申し上げます。

今すぐ転職する必要はありません。まずは情報収集から始めてみてください。それだけでも、あなたの今後の選択肢は確実に広がるはずです。

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