2026年調剤報酬改定で薬剤師の給与は上がる?元人事部長がキャリアへの影響を解説

この記事でわかること
  • 2026年度調剤報酬改定で薬剤師の給与が自動的に上がるわけではない理由
  • 調剤ベースアップ評価料4点の仕組みと対象になる職員
  • かかりつけ・在宅・残薬対応・医療DXで何が変わったのか
  • 調剤報酬上の評価と個人の市場価値・年収を分けて考える方法
  • 現在の職場や転職先で確認したいポイント

2026年度調剤報酬改定で、薬剤師の給与は上がるのでしょうか。

今回の改定では、保険薬局向けに調剤ベースアップ評価料が新設されました。

一方で、調剤報酬の点数が上がったから、すべての薬剤師の月給が同じように上がるわけではありません。

さらに、在宅医療、かかりつけ薬剤師、残薬・薬学的介入、電子処方箋などへの評価も見直されていますが、これらの点数が上がったことと、個々の薬剤師の転職市場での年収が上がることも別の話です。

私は調剤薬局チェーンで薬剤師採用に約6年間携わり、約4年間は人事部長として人事制度や給与、採用を担当しました。また経営企画部門として、調剤報酬が薬局経営へ与える影響を見る立場にもいました。

その経験から、調剤報酬改定をキャリアへ活かすために重要なのは、点数が上がった仕事=高年収になる仕事と短絡しないことだと考えています。

この記事では、2026年度改定の公式資料をもとに、薬剤師の給与・仕事内容・キャリアへの影響を分けて整理します。

目次

2026年度診療報酬改定の+3.09%は2年度平均

最初に、改定率の数字を整理しておきましょう。

厚生労働省によると、2026年度診療報酬改定の診療報酬本体は、2026年度と2027年度の2年度平均で+3.09%です。

年度別では2026年度が+2.41%、2027年度が+3.77%とされています。

参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【全体概要版】」

したがって、+3.09%という数字を、そのまま2026年度の薬局収入や薬剤師給与の上昇率として読むことはできません。

診療報酬全体の改定率、個々の調剤報酬項目、各薬局の収益、薬剤師個人の給与はそれぞれ別の段階の数字です。

+3.09%・+1.70%・+3.2%・4点はそれぞれ意味が違う

今回の改定では、賃上げに関係する複数の数字が並ぶため、個人給与の上昇率と混同しないことが重要です。

数字何を示すか個人給与への読み方
+3.09%診療報酬本体の2026年度・2027年度の2年度平均改定率自分の給与上昇率ではない
+1.70%改定率のうち賃上げ分の2年度平均一人の職員へ直接配分される率ではない
+3.2%対象職員について各年度3.2%分のベースアップ実現を支援するための措置対象者全員への一律3.2%昇給を保証する数字ではない
4点2026年6月以降の調剤ベースアップ評価料一人の薬剤師へ4点分がそのまま支給されるわけではない

厚生労働省の疑義解釈では、ベースアップ評価料を算定しても3.2%のベースアップを達成できない場合であっても、評価料の算定自体は可能とされています。ただし、評価料による収入は対象職員の基本給等の引上げや、それに伴う賞与・時間外手当・法定福利費等の増加分へ用いる必要があります。

したがって、3.2%という数字を個々の薬剤師の昇給保証として読むことはできません。

参考:厚生労働省「疑義解釈資料の送付について」ベースアップ評価料関係

2026年改定で調剤ベースアップ評価料4点が新設された

薬剤師の給与を考えるうえで今回特に重要なのが、調剤ベースアップ評価料です。

厚生労働省の2026年度改定資料では、保険薬局の職員の賃金改善を図るため、処方箋受付1回につき4点の調剤ベースアップ評価料が新設されています。

さらに2027年6月以降は、所定点数の200%に相当する点数で算定するため、現在の制度では8点となる予定です。

参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】ベースアップ評価料抜粋」

この評価料から得られる収入は、対象職員の基本給または毎月決まって支払われる手当の引上げや、それに伴う賞与・時間外手当・法定福利費等の増加分へ用いる仕組みです。

設備投資や医薬品購入などへ自由に使える収入ではありません。

重要|調剤ベースアップ評価料は全薬剤師が対象ではない

ここは特に誤解しやすいところです。

調剤ベースアップ評価料が新設されたからといって、薬局で働くすべての薬剤師がこの評価料による賃上げ対象になるわけではありません。

厚生労働省の施設基準では、調剤ベースアップ評価料の対象職員から次のような人が除外されています。

  • 事業主・使用者・開設者
  • 管理者、いわゆる管理薬剤師
  • 40歳以上の薬剤師
  • 業務委託で勤務する者
  • 他の薬局・事業所を主たる勤務先とし、調剤業務等へ直接従事しない本部職員・エリアマネージャー等

参考:厚生労働省「調剤ベースアップ評価料の届出書類の書き方」

つまり、管理薬剤師や40歳以上の薬剤師が、今回の評価料によって直接賃上げされる制度ではありません。

もちろん、会社が別の原資を使ってこれらの薬剤師を昇給させることはできます。

ここで区別したいのは、調剤ベースアップ評価料の対象かどうかと、会社全体の給与改定の対象になるかどうかは別という点です。

4点だから月給がいくら上がるとは計算できない

調剤ベースアップ評価料が4点だから、自分の給与が毎月いくら上がると単純計算することもできません。

薬局が受け取る評価料の総額は処方箋受付回数によって変わり、そこから対象職員全体の賃金改善を行います。

さらに、基本給等の引上げに伴って増加する賞与、時間外手当、法定福利費の事業者負担分等にも用いることができます。

そのため、月2,000枚の薬局だから薬剤師一人につき○万円上がる、といった全国共通の計算はできません。

自分が対象職員に該当する場合には、勤務先が調剤ベースアップ評価料を届け出ているか、給与規程や賃金改善がどう変わったかを確認するのが現実的です。

給与は調剤報酬だけで決まらない

薬剤師の給与は、大きく分けると次の3つを分けて考えると分かりやすくなります。

要素内容
診療報酬上の賃上げ措置調剤ベースアップ評価料など
会社の給与制度基本給、等級、役職手当、昇給、人事評価など
個人の役割・雇用条件管理薬剤師、マネジメント、勤務地、勤務時間等

調剤報酬改定によって薬局の収益構造が変わることはあります。

しかし、特定の加算を算定できる薬剤師だから年収50万円アップ、在宅経験があれば年収650万円、といった給与体系が制度で決められているわけではありません。

転職時の給与については、実際の求人条件と企業の給与制度を確認する必要があります。

関連記事:薬剤師の年収交渉はいつする?元人事部長がタイミング・相場の見方を解説

仕事内容への影響1|かかりつけ薬剤師は継続的な関与がより明確になった

2026年度改定では、かかりつけ薬剤師に関する評価も大きく見直されています。

従来のかかりつけ薬剤師指導料は廃止され、実施した指導等に基づく評価へ見直されました。

新たに、電話等で服薬状況や残薬状況等を継続して確認するかかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点、患者宅を訪問して服薬管理等を行うかかりつけ薬剤師訪問加算230点が設けられています。

参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」

キャリアの観点では、かかりつけ薬剤師という肩書だけを見るより、実際にどのような患者フォローを経験しているかを整理する意味が大きくなります。

ただし、フォローアップ加算を算定できる薬剤師なら転職市場で必ず高く評価されるという意味ではありません。

採用時の評価は、求人企業がどの業務を必要としているかによって変わります。

仕事内容への影響2|残薬調整や薬学的介入が制度上も評価される

2026年度改定では、残薬や薬物治療上の問題へ介入する業務についても新しい評価が設けられました。

厚生労働省の概要資料では、調剤時残薬調整加算、薬学的有害事象等防止加算などが新設されています。

これは、薬を正確に調剤することに加えて、患者が現在使用している薬を把握し、必要に応じて残薬調整や薬学的介入を行う仕事が診療報酬上も評価されていることを示します。

薬剤師個人としては、算定件数を増やすことだけを目的にするのではなく、どの患者に、どのような問題があり、何を確認し、どのように対応したかを適切に記録できることが重要です。

採用側として経験を確認するときも、加算を何件取ったかだけより、その人が実際にどのような判断・対応を経験してきたのかを聞く方が仕事内容を理解しやすいと感じていました。

仕事内容への影響3|在宅医療の体制・評価が拡充された

在宅薬剤管理についても見直しがあります。

在宅薬学総合体制加算1は15点から30点へ引き上げられました。

在宅薬学総合体制加算2では、単一建物診療患者または単一建物居住者が1人の場合の区分として100点が設定されています。

また、在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定間隔の見直し、医師との同時訪問を評価する訪問薬剤管理医師同時指導料なども設けられています。

こうした改定から、在宅医療を薬局機能の一つとして重視している方向性は確認できます。

ただし、在宅関係は点数の引上げだけではなく、施設基準や実績要件の見直しも同時に行われています。点数だけを見て在宅業務が一律に有利になったと判断せず、勤務先がどの区分を算定し、どの体制を整えているのかまで確認してください。

一方で、在宅の点数が上がったから全国で在宅経験者の求人年収が○万円上がる、とまでは公的資料から判断できません。

転職先を見る場合には、在宅件数だけではなく、誰が訪問を担当するのか、人員は確保されているのか、夜間対応はどう分担するのかなど実際の運用を確認してください。

仕事内容への影響4|電子処方箋・重複投薬チェックへの対応が薬局機能に組み込まれた

医療DXについても評価体系が見直されています。

従来の医療DX推進体制整備加算は見直され、電子的調剤情報連携体制整備加算8点へ一本化されました。

施設基準には、電子処方箋を受け付ける体制、調剤情報を電子処方箋システムへ登録する体制、重複投薬等を電磁的記録に基づいて確認する体制などが含まれています。

参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」

ここでも、電子処方箋が使える薬剤師だから年収が高くなると直接結び付けるべきではありません。

2026年度改定では、電子処方箋や電子的な薬剤情報を扱う体制が、薬局機能の評価項目として明確に位置付けられました。実際に一人の薬剤師がどこまで担当するかは、勤務先のシステムや業務分担によって異なります。

調剤報酬で評価された業務=転職市場で高年収になる業務ではない

2026年度改定をキャリア記事として読むとき、最も重要なのがこの区別です。

診療報酬は、保険薬局が行う機能・医療サービスを評価する仕組みです。

薬剤師個人の市場価値や年収表ではありません。

制度から分かること制度だけでは分からないこと
どの薬局機能が診療報酬で評価されているかその経験を持つ薬剤師の全国年収相場
どの業務に点数が設定されているか求人企業がその経験をいくらで評価するか
薬局が満たす施設基準一人の薬剤師が実際に担当する業務量
賃金改善のための評価料の仕組み個々の対象職員が毎月いくら昇給するか

たとえば在宅経験者を必要としている会社では、その経験が採用判断に役立つ可能性があります。

しかし、外来中心の求人では在宅経験が給与を左右しないこともあります。

求人企業が必要としている役割と、自分の経験が一致しているかを見ることが重要です。

改定後に薬剤師が整理しておきたい経験

改定をキャリアへ活かすなら、点数を暗記するより、自分が実際に経験している業務を整理しておく方が実務的です。

  • 在宅患者への訪問・継続的な服薬管理
  • かかりつけ患者へのフォローアップ
  • 残薬調整
  • 重複投薬・有害事象等を防ぐための薬学的介入
  • 医療機関への情報提供
  • 多職種との連携
  • 電子処方箋・電子的な薬剤情報を用いた業務
  • 医薬品供給不安時の代替薬・在庫等への対応

すべてを経験している必要はありません。

また、はいが3個なら市場価値が高いといった点数化もできません。

自分がどの仕事を経験し、今後どの仕事を深めたいのかを整理するために使います。

今の職場で確認したい5つのこと

2026年度改定をきっかけに現在の職場を確認する場合、点数そのものより運用を見ます。

  1. 自分は調剤ベースアップ評価料の対象職員に該当するか
    年齢・役割等によって対象外になる薬剤師もいます。
  2. 給与制度は今回どのように変更されたか
    基本給・毎月の手当等のどこが変わったのか確認します。
  3. 新しい業務を誰が担当するのか
    在宅、フォローアップ、残薬対応などを特定の人だけが担当するのか、店舗で分担するのかを確認します。
  4. 新しい業務に必要な教育があるか
    制度だけ開始し、十分な研修がない状態になっていないか確認します。
  5. 役割の増加を人事評価でどう扱うか
    仕事が増える場合には、どのような役割として評価されるのかを確認します。

給与について確認するときも、算定した4点のうち自分はいくらもらえるのか、と単純に聞くより、次のように確認する方が制度に沿っています。

「今回の調剤ベースアップ評価料への対応で、当社の給与制度や基本給・手当はどのように変更されていますか。また私は対象職員に該当しますか?」

改定への対応だけを理由に転職する必要はない

2026年度改定で仕事内容が変化したからといって、すぐに転職する必要はありません。

まず現在の職場で、今後どの業務を経験できるのか、給与・評価制度がどう変わったのかを確認します。

希望する経験が現在の会社で得られるのであれば、そのまま経験を積む選択もあります。

反対に、今後経験したい仕事が現在の会社には存在しない、勤務条件と新しい役割が合わない、といった事情があれば外の求人を調べる意味があります。

改定前・改定直後だから高待遇求人が増えるといった時期だけを理由に転職を急ぐ必要もありません。

関連記事:薬剤師のキャリアの軸が見つからないときは?元人事部長が自己分析の4ステップを解説

管理職を目指す場合は制度知識より改善・運営経験を見る

調剤報酬について理解することは、管理薬剤師やエリアマネージャーを目指すうえでも役立ちます。

ただし、改定内容を詳しく説明できるだけで管理職へ昇進できるわけではありません。

採用・人事側から見ると、制度変更に伴って現場でどのような対応を行ったかの方が、その人の経験を理解しやすいことがあります。

  • スタッフへ制度変更を説明した
  • 新しい業務フローを整理した
  • 患者フォローの方法を見直した
  • 在宅業務の役割分担を改善した
  • 医薬品供給問題への対応方法を整備した

こうした経験があるなら、職務経歴として事実を整理しておくとよいでしょう。

関連記事:薬剤師のエリアマネージャー・SVとは?仕事内容・年収・向いている人を元人事部長が解説

転職先を見るときも加算の有無だけで判断しない

地域支援・医薬品供給対応体制加算や在宅薬学総合体制加算を算定している薬局だから良い職場、と判断することもできません。

加算の算定状況から薬局が担っている機能の一部は分かりますが、実際の働き方は人員配置によって大きく変わります。

たとえば在宅業務を積極的に行っていても、人員に余裕があり分担できる薬局と、少人数で多くの訪問を担っている薬局では働き方が違います。

職場選びでは次のような実態を確認してください。

  • 薬剤師・事務スタッフの人員体制
  • 在宅・フォローアップ等の担当方法
  • 夜間・休日対応の分担
  • 研修・教育体制
  • 給与・役職・人事評価制度
  • 就業場所・業務内容の変更範囲

改定に強い薬局という一つのラベルを探すのではなく、自分が希望する仕事と、その仕事を無理なく行える運営体制があるかを見ることが重要です。

2026年改定は年収アップの保証ではなく、仕事の変化を確認する材料

2026年度調剤報酬改定では、調剤ベースアップ評価料が新設され、かかりつけ薬剤師、在宅医療、残薬・薬学的介入、医療DXなどの評価も見直されました。

これらは薬局経営だけでなく、現場薬剤師の仕事内容にも関係します。

一方で、制度から個人の年収までを一直線につなぐことはできません。

特に調剤ベースアップ評価料には対象職員の範囲があり、管理薬剤師や40歳以上の薬剤師などは対象外です。

また、在宅やかかりつけの評価が上がったから、その経験を持つ薬剤師の転職年収が自動的に上がるわけでもありません。

キャリアを考えるときは、制度で何が評価されたか → 自分の職場でどの仕事が変わったか → 自分は何を経験したか → その経験を希望する職場があるかという順番で考えてください。

改定を転職を急ぐ理由にする必要はありません。

今の職場に残る場合にも、転職する場合にも、制度を自分の仕事内容と給与条件を確認するための材料として使うことが重要です。

自分の働き方まで具体的に比較するなら

FAQ

2026年度調剤報酬改定で薬剤師の給与は上がりますか?

一律にはいえません。調剤ベースアップ評価料が新設されていますが、対象職員の範囲が決められており、管理薬剤師や40歳以上の薬剤師等は対象外です。また実際の給与は勤務先の給与制度等によっても変わります。

薬剤師の給与は3.2%上がるのですか?

一律に3.2%上がることを保証する制度ではありません。3.2%は対象職員について各年度3.2%分のベースアップ実現を支援するための措置として示された数字です。実際の賃金改善は、勤務先の算定額、対象職員数、給与制度、会社が行う追加的な賃上げ等によって異なります。

調剤ベースアップ評価料は何点ですか?

2026年6月以降は処方箋受付1回につき4点です。現在の制度では2027年6月以降、所定点数の200%に相当する点数で算定するため8点となります。ただし薬局が得た評価料を一人の薬剤師へそのまま支給する制度ではありません。

40歳以上の薬剤師も調剤ベースアップ評価料の対象ですか?

厚生労働省の施設基準では、40歳以上の薬剤師は調剤ベースアップ評価料の対象職員から除外されています。管理者、いわゆる管理薬剤師なども対象外です。ただし会社が別の原資で給与を引き上げることまで制限するものではありません。

2026年改定で在宅経験のある薬剤師の年収は上がりますか?

在宅医療に対する診療報酬上の評価は拡充されていますが、それだけで個々の薬剤師の年収上昇を保証するものではありません。在宅経験を必要とする求人では評価材料になる可能性がありますが、給与条件は求人企業ごとに確認してください。

調剤報酬改定を理由に転職した方がよいですか?

改定だけを理由に転職する必要はありません。まず現在の職場で仕事内容、給与制度、教育体制がどう変わったかを確認してください。自分が今後経験したい仕事と現在の職場が合わない場合には、外の求人を比較する方法があります。

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