調剤基本料が変わる本当の理由は「集中率85%の壁」でした|2026年調剤報酬改定

調剤基本料が変わる本当の理由は「集中率85%の壁」でした|2026年調剤報酬改定

2026年4月時点の情報です。
点数等の詳細は厚生労働省の公式資料(令和8年3月5日告示)をご確認ください。

【この記事でわかること(3秒で解説)】
  • 集中率85%厳格化で門前薬局の収益激減
  • 都市部の中規模店も将来的には基本料減額の方向に
  • 収益悪化前に経営の強い薬局を見極める

目次

「うちの薬局、このままで大丈夫ですか?」

「2026年の改定で調剤基本料が変わると聞いたけれど、自分の薬局にどう影響するのか正直わからない」

こうした声を、最近あちこちで耳にします。

毎回の調剤報酬改定は点数表の数字が変わるだけではありません。薬局経営の根幹に触れるルール変更が積み重なり、気づいたときには経営環境が激変していることがあります。そしてその変化の最前線に立たされるのは、現場の薬剤師です。

私は元・調剤薬局チェーンの人事部長として採用6年・人事部長4年の経験があります。さらに中小企業診断士・薬剤師として、改定ごとに薬局経営と薬剤師キャリアの両面を見てきました。

今回の2026年(令和8年度)調剤報酬改定は、「門前薬局からの脱却」という行政の意志が、かつてないほど明確に点数構造に反映された改定です。単なる点数引き上げではなく、「どんな薬局が生き残るか」の選別が始まっています。

この記事では、調剤基本料の変更点を丁寧に整理したうえで、薬剤師としてキャリアを守るための視点を解説します。

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2026年調剤報酬改定 調剤基本料の全体像

まず、厚生労働省告示(令和8年3月5日)に基づく確定した点数をご確認ください。

区分改定前(R6)改定後(R8)増減
調剤基本料145点47点+2点
調剤基本料229点30点+1点
調剤基本料3 イ24点25点+1点
調剤基本料3 ロ19点20点+1点
調剤基本料3 ハ35点37点+2点
特別調剤基本料A5点5点±0
特別調剤基本料B3点3点±0

出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(令和8年3月5日告示)

一見すると「全体的に点数が上がった」という印象を受けます。しかし、この改定の本質は点数引き上げよりも算定要件の厳格化と新たな規制の追加にあります。

点数が引き上げられながら算定できる薬局の範囲が絞り込まれていく。この構造を理解せずに「うちは大丈夫」と思っていると、経営的なダメージを受けるリスクがあります。


変更点①:「集中率85%」が厳格化されたことの意味

2026年改定で最も重要な変更のひとつが、処方箋集中率85%というラインの明確化と厳格化です。

現行制度でも処方箋集中率は算定区分の判定に使われてきました。しかし今回の改定では、調剤基本料2の算定要件が以下のように変更されました。

調剤基本料2(30点)の算定対象(令和8年度改定後)

  • 処方箋受付回数が月1,800回超かつ集中率85%超の薬局
  • 処方箋受付枚数が月4,000回超かつ上位3医療機関の集中率合計が70%超の薬局
  • 特定の医療機関からの処方箋受付枚数が月4,000回超の薬局
  • 【新設・新規開設薬局対象】都市部において、受付回数が月600回超かつ集中率85%超で、かつ水平距離500メートル以内に他の保険薬局がある薬局

注目すべきは最後の項目です。しかしここには重要な経過措置があります。

【経過措置】2026年5月末までに開設済みの既存薬局については、改定後も継続して月1,800回以下であれば、当面の間は適用を免除されます。実質的に、この規定が直撃するのは2026年6月1日以降の新規開設薬局です。(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定」(2026年3月5日動画解説))

「都市部」の具体的な対象地域は以下のとおりです。

札幌市・仙台市・さいたま市・千葉市・東京23区・横浜市・川崎市・相模原市・新潟市・静岡市・浜松市・名古屋市・京都市・大阪市・堺市・神戸市・岡山市・広島市・北九州市・福岡市・熊本市(政令指定都市20市+東京23区)

勤務先または転職先がこれらの地域に該当するか、また新規開設なのか既存薬局なのかによって、影響の大きさが全く異なります。

店舗規模(枚数)立地条件集中率2026年〜の基本料
月600回超(中規模)都市部85%超基本料2へ(減点)
既存薬局については当面の間は適用を免除
月1,800回超全地域85%超基本料2適用
医療モール内全地域合算85%超基本料2へ(減点)

変更点②:「都市部」設定という新たな地域区分

今回の改定で初めて「都市部」という地域区分が施設基準に設定されました。

この都市部における規制強化は、門前薬局や医療機関周辺に立地する小規模薬局に対して、新規開局の抑制と既存薬局への算定要件強化という二重の効果をもたらします。

厚生労働省が問題視してきた「売上は少なくても利益率の高い門前薬局の乱立」に、正面から切り込んだ規定です。

薬剤師として知っておくべきポイントを整理します。

  • 都市部の新設薬局は開業当初から調剤基本料2適用リスクを抱える
  • 都市部の既存薬局も集中率次第で区分が下がる可能性がある
  • 調剤基本料が下がれば収益が圧縮され、薬剤師の賃金・雇用環境への影響が出うる

「都市部」の具体的な範囲については、別表(厚生労働大臣が定める地域)の変更によって定められます。勤務先または転職先の薬局が対象地域かどうかを確認することが重要です。

【コラム】会社は「改定を嘆く人」より「先読みする人」を採用したい

人材を評価する際に特に良いと感じる方は「今回の改定、うちの店舗だと基本料への影響はどうですか?」と逆質問してきた薬剤師です。多くの薬剤師は「忙しい」「点数が下がった」と愚痴を言いますが、経営視点でリスクを把握している人は極めて稀です。

こうした「数字のわかる薬剤師」は、どのチェーンでも喉から手が出るほど欲しがります。また、国が求める未来から逆算した行動が取れる方は希少価値があります。今の職場の点数を知ることは、単なる転職準備ではなく、あなたの市場価値を高めるトレーニングそのものなのです。


変更点③:医療モール内の集中率算出ルールの変更

医療モール(複数の診療科が入居する複合施設)で働く薬剤師にとって、今回の変更は特に重要です。

改定前: 医療モール内の各診療科は「別々の医療機関」として集中率を計算
改定後: 医療モール内(医療ビレッジ内を含む)の複数医療機関は「1つの医療機関」とみなして集中率を算出

この変更によって、「医療モール全体の処方箋を合算して集中率を計算する」ことになります。

「内科・整形外科・皮膚科が入ったモールの前だから、集中率は分散している」という計算が成り立たなくなります。実際の集中率が一気に跳ね上がり、調剤基本料1から2への移行を余儀なくされる薬局が続出すると予想されます。

これまでの経験の範囲では、医療モール立地の薬局は「安定した集客」を強みにしていることが多い印象でした。しかし今回のルール変更で、その「安定」が収益圧迫要因に転じるリスクが生まれました。


変更点④:グループ薬局の評価基準が「店舗数」から「処方箋枚数」へ

調剤基本料3の算定対象となるグループ薬局については、重要な基準変更がありました。

廃止された基準: 同一グループの薬局数が300店舗以上であること

この基準が廃止され、調剤基本料3の適用は「同一グループの処方箋受付回数」という量的な基準のみで判定されます。確定した区分ごとの基準は次のとおりです。

  • 調剤基本料3イ(25点): 同一グループで月3万5千回超〜40万回かつ集中率85%超
  • 調剤基本料3ロ(20点): 同一グループで月40万回超かつ集中率85%超
  • 調剤基本料3ハ(37点): 同一グループで月40万回超かつ集中率85%以下

店舗数の少ない中堅チェーンでも、処方箋枚数が基準に達すれば調剤基本料3が適用されうる点に注意が必要です。逆に、大規模チェーンでも集中率を下げることで調剤基本料3ハへの移行が可能です。

こうした区分の違いは薬局の収益構造に直結します。入社前・転職前に「自社グループがどの基本料を算定しているか」を確認することが、経営安定性の判断材料になります。


変更点⑤:特別調剤基本料Aの算定要件が大きく変わった

今回の改定で最も踏み込んだ変更のひとつが、特別調剤基本料A(5点)に関わるルール改正です。

削除された規定: 「薬局と同一建物内に診療所がある場合は特別調剤基本料Aを算定しない」という除外規定

この除外規定が削除されたことで、建物内診療所と特別な関係にある薬局は、これまでの「例外」が認められなくなりました。医療機関との特別な関係(不動産取引等)があり集中率が5割超の薬局は、建物が同じでも特別調剤基本料Aの算定対象になります。

また新たな追加要件として、同一敷地内にオンライン診療受診施設を設置している薬局も特別調剤基本料Aの対象に加わりました。

特別調剤基本料Aが適用されると、地域支援・医薬品供給対応体制加算は通常の10分の1しか加算されません。加算収入の大部分を失うことになるため、経営へのダメージは点数表の数字以上に大きくなります。

一方で、へき地等において地方自治体の土地に所在する診療所と同一の土地・建物にある薬局については、一定の要件を満たせば調剤基本料1の算定が認められます。要件には「周囲水平距離4km以内に他の保険薬局がないこと」などが含まれます。


変更点⑥:最低保証3点の新設と賃上げ・物価対応

見落とされがちな変更として、「最低保証3点」の新設があります。

注3(複数処方箋の受付)や注4(減算)と各種加算を合算した結果が3点を下回る場合は、3点を最低限保証する規定です。これにより、算定点数が極端に低くなるケースに一定の下支えが設けられました。

改定全体の方針として、診療報酬本体は2年度平均でプラス3.09%の改定率(令和8年度・9年度の2年平均)が設定されています。医療従事者の賃上げと物価高騰への対応が目的です。

施行は2026年6月からとなっています。令和9年6月には調剤ベースアップ評価料が倍増するなど、2年にわたる段階的な改定スケジュールとなっています。


薬剤師が今すべきこと:「改定に強い薬局」を選ぶ目を持つ

今回の調剤報酬改定が薬剤師のキャリアに直結する理由は明確です。

薬局の算定する調剤基本料の区分が下がれば、収益が減ります。収益が減れば、まず影響を受けるのはベースアップ評価料の算定原資や賞与・昇給の余力です。

2026年改定後に「経営的に安定している薬局」の特徴として、実務経験を踏まえると以下が挙げられます。

  • 集中率が85%未満に保たれているか積極的に分散化を進めていること
  • 医療モール内薬局の場合、新ルールを踏まえた集中率を把握・管理していること
  • 地域支援・医薬品供給対応体制加算の要件を満たし、加算収入を確保していること
  • 在宅医療や対人業務の充実に継続的に取り組んでいること

逆に、今後の経営環境が厳しくなるリスクを抱える薬局の特徴は次のとおりです。

  • 都市部に立地し集中率が85%を超えている中規模薬局
  • 医療モール内にあり、これまで集中率が低いと認識していた薬局
  • 特定の医療機関と不動産等で特別な関係を持つ薬局

少し想像してみてください。あなたが今の薬局に数年後もいるとして、その薬局が「改定のたびに算定区分が下がっていく」状態だったとしたら、あなたのキャリアにどんな影響があるでしょうか?

チェック項目 経営が「強い」薬局 経営が「危うい」薬局
処方箋の集中率85%未満(分散済み)特定の1門前に依存
立地リスク地域密着・在宅対応都市部のビル診門前
主な収益源各種加算をフル算定基本料と調剤料のみ
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転職を検討するなら「改定の知識」を武器に

調剤基本料の改定内容は、転職活動における「薬局を見極める武器」になります。

面接や内定前の段階で「御社は調剤基本料の区分はどちらですか?2026年改定を踏まえてどんな対策を取られていますか?」と問うことで、経営者や管理薬剤師の認識力が見えてきます。

「そんな細かいことは気にしなくていい」と一蹴されるような薬局と、「それは重要な観点ですね。うちは集中率を分散しながら在宅を強化しています」と応える薬局とでは、経営の質が根本的に異なります。

ただし、こうした踏み込んだ質問を自分から切り出すのは難しいという方も多いです。そこで有効なのが転職エージェントの活用です。

エージェントに任せれば、あなたは「エージェントが勝手に交渉してくれた」というスタンスを取れます。企業側も「エージェントの要求だから仕方ない」と受け止めやすいのです。実際にこれまで採用の裏側を見て「ここは信頼できる」と判断したエージェントだけを厳選しました。

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2026年改定が薬剤師キャリアに問いかけること

今回の調剤基本料の改定は、「薬局はどこに存在意義があるのか」という問いに対して、行政が明確な答えを出したものです。

特定の医療機関の門前に立ち、処方箋を受け取るだけの薬局は評価されない。地域に根ざして幅広い患者に対応し、医薬品の安定供給を担う薬局こそが持続可能な経営の場になる。

この方向性は、次回以降の改定でもさらに強化される可能性があります。

今のあなたが働いている薬局は、この潮流に乗っていますか?

今の職場環境で悩み続けたあなたを、誰も責めることはできません。毎日の業務に追われながら改定の情報を収集し続けることの大変さは、現場を知る者にはよくわかります。

今回の改定は2026年6月から本格施行されます。つまり、算定区分が下がり、賞与や昇給へのダメージが顕在化してから動くのでは、好条件の「安定した薬局の求人」はすでに他の薬剤師に埋められている可能性が高いのです。

調剤基本料の仕組みを理解し、経営の安定した薬局を選ぶ目を持った薬剤師は、これからのマーケットで求められます。改定を「脅威」としてではなく「キャリアの羅針盤」としていち早く活用することが、激動の時代を生き抜く戦略です。

💡 元人事部長が厳選|本当に信頼できた薬剤師転職エージェント3選

「どのエージェントに相談すればいいか分からない」という声をよく聞きます。

私は調剤薬局チェーンの人事部長として20社以上のエージェントと取引してきました。その中で「この会社なら薬剤師のキャリアを本気で考えてくれている」と感じたのはごくわずかです。

採用する側だった私が、求人票には載らない職場の内情まで把握していると確信できたエージェントだけを3社に厳選しました。

「まだ本気で転職するか決めていない」という段階でも相談は無料です。まずは今の自分の市場価値を知ることから始めてみてください。

今回の改定で、私の手取り給与が下がる可能性はありますか?

調剤基本料が下がる(1から2へ移行など)店舗の場合、店舗利益が年間で数百万円単位で減少します。利益率が悪化すれば、賞与のカットやベースアップ停止のリスクは十分に考えられます。

集中率が高い門前薬局に勤めています。すぐ転職すべきですか?

焦る必要はありませんが、自局が「都市部」に該当するか、医療モール合算で85%を超えるかは即座に確認すべきです。収益構造が崩れる前の「今」が、最も市場価値高く動けるタイミングでもあります。

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