吸入薬指導加算がイナビルにも拡大!算定漏れを防ぐ運用ノウハウ|元調剤薬局人事部長が解説

吸入薬指導加算がイナビルにも拡大!算定漏れを防ぐ運用ノウハウ|元調剤薬局人事部長が解説

※正式な算定要件は厚生労働省の告示・通知をご確認ください。

【この記事でわかること(3秒で解説)】
  • 2026年改定で対象にインフルが追加
  • 算定間隔は3月→6月に1回へ変更
  • インフルは薬剤師看視下吸入が要件

目次

2026年改定で薬剤師の評価が変わる

冬場のインフルエンザ流行期にイナビルやリレンザの処方箋を受け、5分以上かけて丁寧に吸入指導をしたのに、点数として評価されない。そんな歯がゆさを、これまで多くの薬剤師の方から聞いてきました。

私は元調剤薬局チェーンの人事部長としての経験を有しており、また調剤薬局の経営コンサルタントとしても活動する立場から、調剤報酬改定が現場の薬剤師に与える影響を見続けてきました。

2026年(令和8年)度の調剤報酬改定では、吸入薬指導加算の対象にインフルエンザウイルス感染症が追加されました。これまで喘息とCOPDに限定されていた評価対象が大きく広がったのです。

ただし算定要件には独特の落とし穴があります。本記事では算定漏れを防ぐ運用ノウハウを、現場目線で徹底解説いたします。

関連記事:【2026改定】調剤時残薬調整加算とは?元人事部長が語る50点の裏側

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吸入指導が報われる調剤報酬へ

ポイント1:2026年改定の核心はインフル吸入薬の評価追加

今回の改定で押さえるべき変更点は二つです。

一つ目は対象疾患の拡大です。従来は喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者に限定されていました。2026年度改定では新たにインフルエンザウイルス感染症の患者が対象に加わります。

二つ目は算定間隔の変更です。これまで3月に1回までだった算定可能間隔が、6月に1回まで延長されました。慢性疾患患者の定期算定タイミングが半年に一度へと変わる点は、薬局運営上の重要な変化です。

点数は30点で従来と変わりません。親点数は服薬管理指導料となります。

項目 改定前(2024年度) 改定後(2026年度)
対象疾患 喘息・COPD 喘息・COPD・インフルエンザ
算定間隔 3月に1回まで 6月に1回まで
点数 30点 30点(据置)
かかりつけ指導料との関係 併算定可 同指導料が廃止により再編

出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」より作成

少し想像してみてください。インフルの流行期にイナビル処方が10人来局して、全員に薬剤師の看視下で吸入を実施した場合、これまでゼロ評価だった業務が3,000円分の評価対象になります。

経営コンサルタントとして薬局経営を見る立場から申し上げると、対人業務評価の取りこぼしは月単位の積み上げで年間ベースの収益差を生みます。経営者目線では、算定スキルを持つ薬剤師は処遇で報いるべき人材なのです。

ポイント2:算定漏れが起きる3つの典型パターン

結論から述べます。算定漏れの主因は要件理解の浅さです。

これまで多くの調剤薬局の現場を見てきた中で、算定可能なのに取れていないケースが頻発していました。典型例を三つ整理いたします。

  • 情報提供の手段不足:吸入指導は実施したが、医療機関への文書提供を失念しているパターン
  • 同意取得プロセスの欠落:医師の指示や患者同意の確認記録が薬歴に残っていないパターン
  • インフル吸入薬での新ルール未対応:従来の喘息・COPD用フローのまま運用しているパターン

ある中堅薬局の管理薬剤師Aさんは「うちはイナビル指導をきっちりやっているから大丈夫」と話していました(説明のための想定事例)。ところが薬歴を確認すると同意取得の記載がなく、結果として個別指導で算定根拠を示せない状態だったのです。

パターン 起きる原因 対策
情報提供の漏れ 指導後の医療機関への文書提供を失念 標準テンプレートを薬局内で統一
同意取得の記録なし 口頭同意のみで薬歴記載なし 電子薬歴で同意確認欄を必須化
インフル新ルール未対応 喘息・COPD用フローのまま運用 看視下吸入を初動プロセスに組込

「指導はしている」と「算定要件を満たしている」は同じではありません。この差を埋める運用設計が要となります。

元人事部長の視点

採用面接で「これまでに算定した加算で印象に残るものを教えてください」と質問していた時期があります。算定スキルは現場では当たり前と思われがちですが、面接官の視点ではその薬剤師の制度理解度と運用力を測る最強の質問でした。

きっちり答えられる薬剤師は、入社後の評価でも高い位置に置かれる傾向にありました。逆に「指導はしているが算定要件は意識していない」と答える方は、対人業務評価への意識ギャップがあるサインでした。

今回の吸入薬指導加算のインフル拡大は、この算定意識を試される改定です。算定要件を制度として理解し運用できる薬剤師は、今後の薬局経営者から見て手放しがたい存在になっていきます。

ポイント3:喘息・COPDとインフルで指導内容が違う

ここが最重要ポイントです。同じ吸入薬指導加算でも、対象疾患によって求められる指導内容が異なります。

喘息・COPD患者の場合は、文書および練習用吸入器を用いた手技指導が必要です。患者が正しい手順で吸入薬を使用できているか確認します(出典:厚生労働省「保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項」)。

一方でインフルエンザ患者の場合は、薬剤師の看視下での吸入実施が要件となります。短期使用が前提の薬剤特性に合わせた評価設計です。

両者に共通するのは以下の点です。

  • 医師の指示または患者・家族からの求めに対する医師の了解
  • 患者の同意取得
  • 保険医療機関への文書または手帳による情報提供

イナビルは1回吸入で治療が完結するという特性があります。だからこそ薬局での看視下吸入が制度設計上、評価対象になったのです。これまでサービスとして提供してきた業務が、ようやく報酬として評価されるようになりました。

項目 喘息・COPD インフルエンザ
対象疾患 喘息または慢性閉塞性肺疾患 インフルエンザウイルス感染症
指導内容 文書+練習用吸入器で手技指導 薬剤師看視下での吸入実施
算定間隔 6月に1回まで 6月に1回まで
情報提供先 保険医療機関(文書または手帳) 保険医療機関(文書または手帳)
点数 30点 30点

出典:日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和8年6月1日施行)」より作成

ポイント4:薬歴とレセプト記載の押さえどころ

算定漏れを防ぐ第二の鍵は記録の精度です。

薬歴には以下の3項目を必ず記載してください。

  • 算定根拠(対象疾患の特定と医師の指示・患者同意の確認)
  • 指導内容の要点
  • 情報提供文書の写しまたは要点

レセプト摘要欄には、対象吸入薬の調剤年月日(コード850100480)と吸入薬の名称(コード830100446)の記載が必要です。

これまでの経験の中で、個別指導で指摘を受ける典型例は「指導したが情報提供文書の写しが薬歴に残っていない」というパターンでした。お薬手帳での情報提供を選んだ場合は、特に記録の徹底が求められます。

少し想像してみてください。半年後に個別指導の連絡が来た時、薬歴を見返して「あの時きちんと指導したな」と思い出せるかどうか。記憶ではなく記録で証明できる体制を整えることが、薬局運営の土台です。

関連記事:【元人事部長が解説】調剤過誤・インシデント発生時の対応法

ポイント5:現場運用ノウハウ5選

実務に落とし込むためのチェックポイントをまとめます。

  • インフル吸入薬の処方を受けたら、看視下吸入の同意確認を最初のステップに組み込む
  • 練習用吸入器(プラセボキット)を主要デバイス分そろえる
  • 情報提供文書の標準テンプレートを薬局内で統一する
  • 算定可能間隔(6月に1回)を電子薬歴で管理する
  • 別の吸入薬が処方された場合は6月以内でも算定可能というルールを共有する

知人の薬剤師が勤める薬局では、インフル流行期に向けた事前準備として、9月から練習機器の整備と手順書の改訂を進めた事例があります。シーズン本番では算定機会を逃さず、対人業務の収益が前年同期比で大きく改善したそうです。

準備の差が収益の差を生みやすい構造です。実務上、これは押さえておくべきポイントです。

ポイント6:併算定の制限を見落とすな

算定可能性を最大化するには、併算定ルールの理解が欠かせません。

服薬情報等提供料との併算定はできません。同一内容の情報提供では算定の重複を避ける必要があります。また服薬管理指導料の特例適用時や、特別調剤基本料Bの薬局では、親点数の算定不可に伴って本加算も原則算定できません。

2026年改定でかかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理料が廃止されたため、従来の併算定制限の一部は構造上消滅しました。一方で対人業務の評価軸が大きく変わったため、薬局全体の算定戦略を見直す必要があります。

対人業務系加算の算定が伸びている薬局ほど、薬剤師の評価制度を整備しているという傾向を耳にしてきました。逆に算定が伸び悩んでいる薬局では、薬剤師の処遇も停滞しがちでした。

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FAQ

吸入薬指導加算は処方箋を渡した時点で算定できますか?

渡すだけでは算定できません。喘息・COPDでは文書と練習用吸入器を用いた手技指導、インフルエンザでは薬剤師看視下での吸入実施が必要です。いずれの場合も、医療機関への文書または手帳による情報提供を実施した上で算定可能となります。

算定間隔の「6月に1回」は厳格な縛りですか?

原則として6月に1回までですが、別の吸入薬が処方され必要な吸入指導等を別に行った場合は、前回算定から6月以内でも算定可能です。レセプト摘要欄に直近の調剤年月日と吸入薬名称を記載してください(出典:日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和8年6月1日施行)」)。

算定スキルを正しく評価してくれる薬局を見つけるにはどうすればよいですか?

求人票だけでは薬局内部の評価制度は見えにくいため、薬剤師職業紹介会社を経由した情報収集が現実的な選択肢となります。採用側として実際に信頼できると感じたエージェント3社を厳選した記事をご参照ください。→【元人事部長が厳選】採用側から見て「本当に信頼できた」薬剤師転職エージェント3選

算定漏れを防ぐ運用が、市場価値を引き上げる

吸入薬指導加算のインフル拡大は、表面的には小さな改定です。しかし本質を読み解けば、薬剤師の専門性をどう評価するかという制度設計の方向性が見えてきます。

これまでの経験から申し上げると、算定スキルを正しく身につけた薬剤師は、薬局運営の中核として評価されやすくなります。薬局経営者の立場からすれば、収益に直結する人材は手放したくない存在なのです。

5分以上かけて丁寧にイナビルの吸入指導をしたのに、薬局の収益にも自分の評価にも繋がらない。そんな現場の歯がゆさを、これまで本当に多くの薬剤師から聞いてきました。

算定要件を制度として正しく運用し、収益に貢献できる薬剤師は、調剤報酬改定が進めば進むほど希少価値が増していきます。

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