かかりつけ薬剤師訪問加算230点とは?2026年改定の算定要件・対象患者・注意点を解説

この記事で確認できること
  • かかりつけ薬剤師訪問加算230点の対象患者と算定頻度
  • 患者・家族等の求めから算定までの実務フロー
  • 訪問前に説明する自己負担額・交通費と、訪問後の薬歴記載
  • 外来服薬支援料1・在宅患者訪問薬剤管理指導料・服薬情報等提供料等との算定関係
  • かかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点との違い
  • 2026年度改定で見直されたかかりつけ薬剤師の施設基準
  • 制度変更を薬剤師個人の年収・市場価値へ直結させない考え方

2026年度診療報酬改定で、服薬管理指導料にかかりつけ薬剤師訪問加算230点が新設されました。

名前だけを見ると、通常の在宅患者訪問薬剤管理指導料と似ています。しかし両者は同じ制度ではありません。

かかりつけ薬剤師訪問加算は、服薬管理指導料1のイまたは2のイを算定している患者について、患者または家族等の求めに応じて、かかりつけ薬剤師が患家を訪問し、服用薬の管理方法の指導や残薬整理等を行い、その結果を保険医療機関へ情報提供した場合に、6月に1回に限り算定する加算です。

点数は大きく見えますが、230点だけを見て薬局の利益や薬剤師個人の年収への影響を判断することはできません。算定には訪問、残薬確認、指導、記録、医療機関への情報提供などの実務が伴います。

この記事では、制度から確認できる内容と、薬剤師の働き方・キャリアに関する判断を分けて整理します。

制度確認の前提

本記事は、厚生労働省の令和8年度調剤報酬点数表、2026年6月19日訂正後の調剤報酬点数表に関する留意事項、中医協資料・議事録等を2026年8月16日時点で確認して作成しています。

算定実務では、今後の疑義解釈や通知訂正が追加される可能性があります。最終的な請求判断は、最新の厚生労働省通知・疑義解釈、地方厚生局等の案内を確認してください。

目次

結論|かかりつけ薬剤師訪問加算は230点・6月に1回の新設加算

最初に要点を一覧で確認します。

確認項目内容
点数230点
算定頻度6月に1回
対象の基礎服薬管理指導料1のイまたは2のイを算定している患者
訪問のきっかけ患者または家族等の求め
実施者当該患者のかかりつけ薬剤師
主な実施内容患家を訪問し、服用薬の管理方法の指導、残薬整理等を実施
訪問後結果を保険医療機関へ情報提供
事前説明実施する指導等の内容と、交通費を含む患者自己負担額を説明して了解を得る
記録訪問した旨、患家での残薬状況、実施した指導等を薬剤服用歴等へ記載
交通費実費

一次資料:厚生労働省|令和8年度 調剤報酬点数表

一次資料:厚生労働省|調剤報酬点数表に関する事項・留意事項通知(訂正後)

かかりつけ薬剤師訪問加算とは|2026年6月1日施行の調剤報酬で新設

令和8年度診療報酬改定に係る診療報酬点数表は、2026年6月1日から適用されています。

一次資料:厚生労働省|診療報酬の算定方法

2026年度改定では、従来のかかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理料という独立した評価が見直され、服薬管理指導料の中で、患者が選択したかかりつけ薬剤師による服薬指導を評価する体系へ再編されました。

服薬管理指導料では、原則3月以内に再度処方箋を持参し手帳を提示した患者について、かかりつけ薬剤師が指導した場合を1のイ45点、それ以外の患者についてかかりつけ薬剤師が指導した場合を2のイ59点としています。

かかりつけ薬剤師訪問加算230点は、この1のイまたは2のイを算定している患者を対象とする追加評価です。

したがって、薬局で通常の服薬指導を受けている患者なら誰でも対象になるわけではありません。まず、当該患者についてかかりつけ薬剤師による服薬管理指導料1のイまたは2のイを算定しているかを確認します。

対象患者|服薬管理指導料1のイ・2のイが出発点

算定可否を確認するときは、230点の要件から読むより、基礎となる服薬管理指導料から確認すると整理しやすくなります。

  1. 患者が特定のかかりつけ薬剤師を選択している
  2. 当該かかりつけ薬剤師が継続的・一元的に服薬管理している
  3. 服薬管理指導料1のイまたは2のイを算定している
  4. 患者または家族等から患家訪問を求められている
  5. 算定できない他の項目に該当していない

この順番で見ると、在宅訪問をしたという事実だけで230点を算定する制度ではないことが分かります。

どのようなときに算定する?患者・家族等の求めに応じて患家へ訪問する

点数表では、かかりつけ薬剤師訪問加算について、患者またはその家族等の求めに応じて患家を訪問することが規定されています。

ここは通常の計画的な在宅患者訪問薬剤管理指導料との違いを理解するうえで重要です。

制度の直接的な背景には、外来患者の残薬問題があります。中医協では、自宅に残薬があっても薬局へ全量を持参するとは限らず、在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定対象外の患者についても、薬剤師が患者宅へ出向いて残薬を確認している事例が議論されていました。

一次資料:厚生労働省|中央社会保険医療協議会 総会 第637回議事録

そのため、この加算を単純に国が在宅薬局への転換を促す制度と読むより、外来で一元的・継続的に服薬管理している患者について、患家でなければ把握・解消しにくい残薬や服薬管理上の課題へ対応した実務を評価する仕組みと理解する方が制度に忠実です。

6月に1回とは|訪問するたびに230点を算定できるわけではない

かかりつけ薬剤師訪問加算の算定頻度は、6月に1回に限ると定められています。

このため、同じ患者について服薬管理上の問題が複数回生じ、必要に応じて再び患家を訪問すること自体と、訪問のたびに230点を算定できることは別です。

薬剤師として必要な支援を行うかどうかは患者の状態に基づいて判断し、診療報酬請求については算定頻度を別途確認します。

また、6月に1回という数字だけを見て半年ごとの定期訪問制度と理解するのも適切ではありません。点数表では、患者・家族等の求めに応じた患家訪問が要件です。

必要な訪問が先にあり、そのうえで算定要件と頻度を確認する。この順番を崩さないことが重要です。

患者・家族等の求めをどう考える?算定のために形式だけ整えない

点数表には、患者またはその家族等の求めに応じて訪問することが明記されています。

一方、厚生労働省の留意事項には、訪問加算専用の依頼書を必ず作成する、署名を必ず取得する、といった独自様式までは今回確認した範囲では規定されていません。

そのため、サイト側で独自に患者の署名が必須、口頭依頼では不可、といった要件を追加しません。

ただし、算定要件として患者・家族等の求めがあること、訪問前には実施内容と自己負担額を説明して了解を得ること、訪問後には実施内容等を記録することが求められています。

薬局内の運用では、誰が患者・家族等の希望を確認し、誰が訪問可否を判断し、どこへ記録するかを統一しておくと、後から経緯を追いやすくなります。

ここで大切なのは、230点を算定するために患者へ訪問希望を促すことではありません。残薬や服薬管理上の問題があり、患者・家族等が患家での支援を求めているという実態を前提に運用します。

訪問先で行うこと|服用薬の管理方法の指導・残薬整理等

算定要件では、患家で服用薬の管理方法の指導と残薬の整理等を行うことが求められています。

実務では、単に薬の数を数えるだけではなく、患者の状況に応じて次のような事実を確認する場面が想定されます。

  • 処方された薬が実際にどの程度残っているか
  • 未開封・一包化・PTP・外用薬等がどの場所に保管されているか
  • 飲み忘れ、自己調整、中止、重複保管などがないか
  • 患者本人と家族の服薬管理方法が合っているか
  • 薬袋、カレンダー、一包化等の管理方法を見直す必要がないか
  • 医師へ共有すべき服薬上の問題がないか

ただし、上記は患家で確認し得る実務例です。算定要件を独自に追加するものではありません。患者ごとの薬学的必要性に応じて対応します。

訪問前に説明すること|指導内容・患者自己負担額・交通費

留意事項通知では、患家を訪問する前に患者または家族等へ説明し、了解を得ることが求められています。

説明事項は大きく2つです。

  1. 患家を訪問して実施する指導等の内容
  2. かかりつけ薬剤師訪問加算によって発生する患者自己負担額
    交通費を含めて説明します。

ここは、230点という点数だけを患者へ伝えるのでは不十分です。実際の患者自己負担は保険負担割合等で異なり、さらに訪問に係る交通費は実費とされています。

訪問してから初めて費用を説明するのではなく、あらかじめ説明して了解を得ることが留意事項で明記されています。

訪問後に必要なこと|医療機関への情報提供と薬剤服用歴への記載

訪問加算は、患者宅へ行って残薬整理をした時点で完結する評価ではありません。

点数表では、患家で行った残薬整理・服用薬管理方法の指導等の結果を保険医療機関へ情報提供することが算定要件になっています。

さらに留意事項では、次の内容を薬剤服用歴等へ記載します。

  • 患家を訪問したこと
  • 患家における残薬の状況
  • 実施した指導等の内容

制度を現場で運用する場合は、訪問する薬剤師だけでなく、店舗内で情報提供・薬歴記載・請求確認を誰がどのタイミングで行うかも決めておくと漏れを防ぎやすくなります。

医療機関への情報提供|訪問しただけでは算定要件を満たさない

かかりつけ薬剤師訪問加算では、患家で残薬整理や服用薬管理の指導を行った後、その結果を保険医療機関へ情報提供することまでが点数表に組み込まれています。

つまり、患者宅で残薬を整理して管理方法を説明しただけで、医療機関への情報共有を行わない場合には、点数表に記載された一連の要件を完了したことにはなりません。

訪問時に把握した内容のうち、医療機関へ共有する必要がある情報は患者ごとに異なります。例えば、残薬量、飲めていない背景、管理方法を変更した内容、今後処方側でも確認してほしい事項など、実際に把握した事実を整理します。

ただし、本記事では独自の情報提供テンプレートや必須項目を制度要件として作りません。厚生労働省の点数表・通知で求められている情報提供を軸に、薬局の運用や患者の状況に応じて必要な内容を整理してください。

医療機関への情報提供を転職市場向けの実績作りとして考えるのではなく、患家で把握した服薬上の問題を処方側へ戻し、次の薬物療法へつなぐ工程として扱うことが重要です。

患者自己負担額と交通費|230点だけを説明しない

訪問前の説明では、かかりつけ薬剤師訪問加算によって発生する患者自己負担額について、交通費を含めて説明することが留意事項に明記されています。

230点は診療報酬上の点数であり、患者が窓口で一律2,300円を支払うという意味ではありません。医療保険の自己負担割合等によって患者負担は異なります。

さらに交通費は実費とされています。

そのため、患者へ説明するときは、加算の内容、保険診療として生じる自己負担、別途生じる交通費を混同しないことが大切です。

交通費について全国一律の固定額が今回の留意事項に示されているわけではありません。薬局側で実費の取扱いをどのように運用するかを確認し、訪問前に患者が理解できる形で説明します。

費用説明が後回しになると、患者側は薬の整理を頼んだだけなのに追加費用が発生したと感じる可能性があります。制度上求められている事前説明を、患者との認識合わせにも使ってください。

算定できないケース|他の服薬支援・在宅関連評価との重複に注意する

かかりつけ薬剤師訪問加算は、対象患者であっても他の算定状況によって算定できない場合があります。

確認する項目訪問加算との関係
外来服薬支援料1当該患者について算定している場合は訪問加算を算定しない
施設連携加算当該患者について算定している場合は訪問加算を算定しない
在宅患者訪問薬剤管理指導料当該患者について算定している場合は訪問加算を算定しない
服薬情報等提供料当該患者について算定している場合は訪問加算を算定しない
該当する居宅療養管理指導費点数表上の該当区分を算定している場合は訪問加算を算定しない
該当する介護予防居宅療養管理指導費点数表上の該当区分を算定している場合は訪問加算を算定しない

ここでは制度名だけで機械的に判定せず、当該患者について今回どの項目を算定しているのかを確認してください。

複数の保険薬局で1のイ・2のイを算定していた場合

複数の保険薬局で服薬管理指導料1のイまたは2のイを算定していた場合は、いずれの保険薬局もかかりつけ薬剤師訪問加算を算定できません。

このルールからも、かかりつけ薬剤師による一元的・継続的な服薬管理を前提とした評価であることが分かります。

複数薬局を利用する患者|かかりつけ機能の前提から確認する

患者が複数の薬局を利用していること自体だけで、直ちに訪問加算が禁止されると説明するのは正確ではありません。

制度上明確なのは、複数の保険薬局で服薬管理指導料1のイまたは2のイを算定していた場合、いずれの保険薬局もかかりつけ薬剤師訪問加算を算定できないという点です。

服薬管理指導料1のイ・2のイは、患者が選択した特定のかかりつけ薬剤師による一元的・継続的な服薬管理を前提としています。

したがって、訪問加算を確認する前に、患者のかかりつけ薬剤師の選択と算定状況が制度上整合しているかを確認します。

複数の医療機関から処方を受けていることと、複数の薬局で1のイ・2のイを算定していることも分けて考えてください。複数医療機関の薬を一元的に把握することは、かかりつけ機能の重要な役割の一つです。

特別調剤基本料A・Bの薬局も確認する

特別調剤基本料Aを算定する薬局が、当該薬局と不動産取引等その他の特別な関係を有する保険医療機関へ情報提供を行った場合は算定できません。

また、特別調剤基本料Bを算定する保険薬局は、かかりつけ薬剤師訪問加算を算定できません。

フォローアップ加算50点との違い|電話等による継続確認と患家訪問を分ける

2026年度改定では、かかりつけ薬剤師訪問加算230点と同時に、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点も設けられました。

どちらもかかりつけ薬剤師による継続的な関与を評価しますが、算定場面は異なります。

比較フォローアップ加算訪問加算
点数50点230点
頻度3月に1回6月に1回
主な方法電話等による服薬状況・残薬状況等の継続的確認と必要な指導患家訪問による服用薬管理方法の指導・残薬整理等
対象の基礎1のイ・2のイに加えて、前段階で所定の残薬調整・薬学的介入等を行った患者1のイ・2のイを算定している患者
きっかけ患者・家族等の求めに応じた継続フォロー等患者・家族等の求めに応じた患家訪問

フォローアップ加算50点と訪問加算230点を、単純にセットで定期的に算定する収益モデルとして理解しないでください。それぞれに対象患者・実施業務・算定不可条件があります。

患者に必要な薬学的支援を実施した結果として、各要件を満たす場合に算定するものです。

在宅患者訪問薬剤管理指導料との違い|外来患者への患家訪問と計画的在宅訪問は別制度

かかりつけ薬剤師訪問加算で最も混同しやすいのが、在宅患者訪問薬剤管理指導料です。

両方とも薬剤師が患家を訪問しますが、制度上の入口が異なります。

比較かかりつけ薬剤師訪問加算在宅患者訪問薬剤管理指導料
位置づけ服薬管理指導料への加算在宅患者への訪問薬剤管理指導そのものの評価
対象の入口1のイ・2のイを算定しているかかりつけ患者在宅で療養し、通院が困難な患者等
訪問の入口患者・家族等の求めに応じる医師の指示に基づき薬学的管理指導計画を策定して訪問
主な目的服用薬の管理方法の指導、残薬整理等計画的な訪問薬剤管理指導
頻度6月に1回点数表に定める別の算定上限
両者の関係在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者では算定しない訪問加算とは別体系

この違いを理解すると、かかりつけ薬剤師訪問加算が、従来の在宅訪問を単に230点へ置き換えた制度ではないことが分かります。

2026年度改定では在宅患者訪問薬剤管理指導料そのものにも別の見直しがあります。在宅制度全体を確認したい場合は、令和8年度改定の全体記事で整理してください。

関連記事:2026年度調剤報酬改定を薬剤師向けに解説|主な変更点・点数・現場への影響

かかりつけ薬剤師の要件は2026年度改定でどう変わった?

2026年度改定では、かかりつけ薬剤師に係る施設基準も見直されています。

中医協では、従来のかかりつけ薬剤師指導料・包括管理料を廃止し、実際に行った服薬指導、フォローアップ、患家訪問・残薬対策等を服薬管理指導料の中で評価する方向へ変更することが説明されました。

また、所属する薬剤師の要件について、当該薬局に継続して6か月以上在籍する要件へ見直されたことが中医協で説明されています。

一次資料:厚生労働省|中央社会保険医療協議会 総会 第644回議事録

かかりつけ薬剤師の届出には、この在籍期間だけでなく、保険薬剤師としての勤務経験、所定の研修認定、地域活動等を含む施設基準があります。算定を開始する際は、最新の施設基準通知を一式で確認してください。

一次資料一覧:厚生労働省|令和8年度診療報酬改定について

在籍6か月への短縮をどう理解する?転職直後の年収上昇を意味しない

当該薬局での継続在籍要件が従来より短くなったことは、異動・転職等で新しい薬局へ勤務した薬剤師にとって、かかりつけ薬剤師の要件を満たすまでの時間に関係します。

ただし、6か月になったことから、転職直後に高評価される、年収が上がる、転職市場が有利になるとは判断できません。

診療報酬上の施設基準は、保険薬局で所定の算定を行うための基準です。求人企業の人事評価制度や給与制度とは別です。

採用する側から見ても、在宅・訪問経験が必要な求人であればその経験を確認することはありますが、かかりつけ薬剤師訪問加算を算定した経験だけで採用条件や給与が決まるわけではありません。

週31時間の見直し|2026年度は常勤職員の基準全体が32時間から31時間へ

2026年度改定では、診療報酬における常勤職員の所定労働時間の基準について、週32時間から週31時間への見直しが行われています。

このため、かかりつけ薬剤師に関連する勤務時間要件を確認するときも、旧制度の32時間という数字をそのまま流用せず、令和8年度の最新施設基準で確認する必要があります。

重要なのは、1時間短くなったから薬剤師の負担が軽くなる、短時間勤務なら全員算定できる、と考えないことです。他の勤務経験・在籍・研修等の基準と合わせて判断します。

旧制度から何が変わった?存在そのものではなく実施した業務の評価へ

2026年度改定の大きな特徴は、かかりつけ薬剤師という役割を一つの包括的な点数で評価する構造から、かかりつけ薬剤師が実際に行った業務を個別に評価する方向へ再編されたことです。

改定前2026年度改定後
かかりつけ薬剤師指導料独立した項目としては廃止し、服薬管理指導料1のイ・2のイでかかりつけ薬剤師による指導を評価
かかりつけ薬剤師包括管理料廃止
継続的な電話等による確認要件を満たす場合にフォローアップ加算50点で評価
患者宅での残薬整理・服用薬管理要件を満たす場合に訪問加算230点で評価

中医協でも、かかりつけ薬剤師の普及と患者による選択を促進しつつ、継続的な服薬指導や患家訪問・残薬対策など実務への評価を設けることが説明されています。

なぜ230点が新設された?中医協で議論された残薬問題から読む

新設の背景を理解するうえでは、改定前の中医協で残薬対策がどのように議論されたかが参考になります。

2025年12月の中医協では、患者意識調査として自宅に残薬があると回答した人が一定割合存在すること、薬剤師が残薬の相談相手として挙げられていること、患者が薬局へ全ての残薬を持参するとは限らないことなどが説明されています。

さらに、在宅訪問指導料の算定対象外の患者でも訪問が行われている事例が示されました。

この流れを踏まえると、230点は高い点数を付けて薬剤師を一律に在宅へ誘導する制度と読むより、外来で継続管理している患者の残薬問題を、必要に応じて患家まで確認しに行う実務を新たに評価したものと捉える方が妥当です。

薬局現場での確認フロー|対象確認から請求前チェックまで

実務では、次の順番で確認すると論点を整理しやすくなります。

段階確認すること
1 基礎確認当該患者について服薬管理指導料1のイまたは2のイを算定しているか
2 他薬局確認複数薬局で1のイ・2のイを算定していないか
3 他算定確認外来服薬支援料1、在宅患者訪問薬剤管理指導料、服薬情報等提供料等の除外項目に該当しないか
4 求めの確認患者または家族等から患家訪問の求めがあるか
5 事前説明実施内容と、交通費を含む患者自己負担額を説明して了解を得たか
6 訪問患家を訪問し、服用薬管理方法の指導・残薬整理等を行ったか
7 情報提供実施結果を保険医療機関へ情報提供したか
8 記録訪問した旨、患家の残薬状況、指導等の内容を薬剤服用歴等へ記載したか
9 頻度確認6月に1回の算定上限を超えていないか
10 請求前確認特別調剤基本料等を含む算定不可条件と最新疑義解釈を再確認したか

この表は厚生労働省通知を読みやすい順番へ並べた確認用の整理です。独自の算定要件を追加するものではありません。

算定開始前に薬局内で決めておきたい運用|制度要件と社内手順を分ける

新しい加算を現場へ導入するときは、厚生労働省が定める算定要件と、各薬局が安全に運用するための社内手順を分けて考えます。

例えば、次のような項目は店舗・法人内で決めておくと実務を標準化しやすくなります。

  • 対象患者候補を誰が把握するか
  • 患者・家族等から訪問希望があった場合の相談先
  • 訪問前の費用説明を誰が行うか
  • 訪問日程と店舗人員をどう調整するか
  • 移動手段と交通費実費をどう扱うか
  • 患家で確認する情報をどう整理するか
  • 医療機関への情報提供を誰が確認するか
  • 薬剤服用歴等への記録漏れをどう確認するか
  • 請求前に併算定不可項目を誰が確認するか
  • 疑義解釈や通知訂正を誰が更新するか

これらは厚生労働省が全国一律の必須様式として定めたものではなく、制度要件を漏れなく実施するための運用設計例です。

独自の社内ルールを作る場合も、それを診療報酬上の必須要件であるかのように患者や職員へ説明しないよう注意してください。

算定件数をKPIにするときの注意|患者の必要性より数字を先にしない

新設加算ができると、法人内で算定件数を管理したくなる場合があります。

ただし、かかりつけ薬剤師訪問加算は、患者・家族等の求めに応じた患家訪問と残薬整理等の実務を評価する制度です。

算定件数だけを目標にすると、本来は患家訪問を必要としていない患者へ訪問を促す、患者の求めを形式的に作る、といった制度趣旨と合わない運用につながりかねません。

組織として管理するのであれば、算定件数だけではなく、患者がどのような服薬管理上の課題を抱えていたか、訪問後にどのような支援を行ったか、情報提供まで完了したか、記録・請求が適切だったかまで確認する方が実務に沿います。

これは診療報酬点数から経営成果を逆算する考え方ではなく、制度どおりの業務を安全に実施するための管理です。

よくある誤解1|230点なら薬局の利益が2,300円増えるとは限らない

診療報酬は1点10円で計算されるため、230点は診療報酬上2,300円に相当します。

しかし、2,300円をそのまま薬局の利益と考えることはできません。

  • 患家までの移動時間
  • 患家での確認・指導時間
  • 残薬整理等の実務時間
  • 医療機関への情報提供
  • 薬剤服用歴等への記録
  • 店舗側の人員配置・業務調整

などの業務が発生するためです。

診療報酬上の点数が新設された事実と、個別薬局の採算性は分けてください。

よくある誤解2|230点の新設だけで在宅対応薬局が有利になるとは言えない

かかりつけ薬剤師訪問加算は患家を訪問する評価ですが、これだけで薬局全体の在宅対応力を評価するものではありません。

計画的な在宅患者訪問薬剤管理指導、居宅療養管理指導、在宅薬学総合体制加算等には、それぞれ別の要件・役割があります。

したがって、230点を算定している薬局なら将来性が高い、算定していない薬局は遅れている、といった二択で勤務先を評価しないでください。

薬局機能全体を確認したい場合は、地域支援・医薬品供給対応体制加算等を扱う関連記事も参照してください。

関連記事:地域支援・医薬品供給対応体制加算|2026年改定の施設基準・実績要件を解説

薬剤師のキャリアにはどう関係する?制度上の評価と個人の給与を分ける

かかりつけ薬剤師訪問加算が新設されたから、訪問経験のある薬剤師の年収が上がる、とまでは言えません。

診療報酬は薬局が提供した保険調剤上のサービスを評価する制度です。個々の薬剤師の賃金は、勤務先の給与規程、人事評価、役職、勤務時間、地域、求人条件等によって決まります。

一方、実際に患家訪問、残薬確認、服用薬管理の見直し、医療機関への情報提供を担当した経験は、同じ業務を含む求人へ応募する場合に、自分の職務経験を説明する材料にはなります。

採用側で確認するのは、制度名を知っているかだけではなく、実際に何を担当したかです。

  • どのような患者の服薬管理を担当したか
  • 残薬の背景をどのように確認したか
  • どのような管理方法を患者・家族と検討したか
  • 医療機関へどのような情報を共有したか
  • 店舗内で訪問業務をどのように分担したか

このように、算定件数を市場価値という一語へ置き換えるのではなく、担当業務を具体化して整理する方が実務的です。

2026年度改定と給与の関係全体については、次の記事で制度と個人給与を分けて整理しています。

関連記事:2026年調剤報酬改定で薬剤師の給与は上がる?キャリアへの影響を解説

訪問業務を含む求人で確認したいこと|加算の有無より実際の仕事を見る

転職を検討していて、訪問・在宅関連業務を経験したい場合も、かかりつけ薬剤師訪問加算の算定有無だけで求人を選ばない方がよいでしょう。

確認したいのは次のような事実です。

確認領域確認すること
訪問の種類かかりつけ薬剤師訪問加算の患家訪問、在宅患者訪問薬剤管理指導、介護保険の居宅療養管理指導等のどれを扱うか
担当範囲入社後いつから、どの業務を担当するのか
同行・教育初回訪問までにどのような引継ぎ・同行・研修があるか
移動社用車・自家用車・自転車等の移動手段、駐車場、経費負担
勤務時間移動、訪問、情報提供、薬歴記載まで勤務時間内に行える体制か
人員訪問中の店舗業務を誰が担うか。薬剤師・事務の配置はどうか
緊急対応夜間・休日、オンコール等の有無と担当頻度
評価・手当訪問件数だけでなく、会社の人事評価・手当制度が実際にどう定められているか

これらは求人票、企業の採用情報、面接、職場見学、労働条件通知書等を使って確認できます。転職エージェントを利用する場合は確認を依頼しても構いませんが、エージェント経由でなければ聞いてはいけない条件ではありません。

関連記事:薬剤師が転職先の薬局を確認する方法|求人票・面接・職場見学のチェックポイント

FAQ

かかりつけ薬剤師訪問加算は何点ですか?

230点です。服薬管理指導料1のイまたは2のイを算定している患者について、患者・家族等の求めに応じてかかりつけ薬剤師が患家を訪問し、残薬整理・服用薬管理方法の指導等を行い、結果を保険医療機関へ情報提供した場合に算定します。

かかりつけ薬剤師訪問加算は何か月に1回算定できますか?

6月に1回に限り算定します。患者ごとの算定状況を確認し、上限を超えないようにします。

在宅患者訪問薬剤管理指導料と一緒に算定できますか?

当該患者について在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している場合、かかりつけ薬剤師訪問加算は算定しません。両者は患家訪問という共通点がありますが、対象・入口・制度上の位置づけが異なります。

薬局側から訪問を提案すれば算定できますか?

点数表では、患者または家族等の求めに応じて患家を訪問することが規定されています。算定を目的に形式的な求めを作るのではなく、患者の服薬管理上の課題と本人・家族の意向を踏まえて対応してください。

訪問時の交通費は患者負担ですか?

留意事項では、交通費は実費とされています。また訪問前に、かかりつけ薬剤師訪問加算により発生する患者自己負担額について、交通費を含めて説明し、了解を得る必要があります。

訪問後は薬歴に何を記載しますか?

患家を訪問した旨、患家における残薬状況、実施した指導等の内容等を薬剤服用歴等へ記載します。さらに、実施した残薬整理・服用薬管理方法の指導等の結果を保険医療機関へ情報提供することが算定要件です。

かかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点と何が違いますか?

フォローアップ加算は、所定の残薬調整・薬学的介入等を行った患者について、前回調剤後から次回処方箋持参までの間に電話等で服薬状況・残薬状況等を継続確認し必要な指導を行った場合の評価です。訪問加算は患家へ訪問して残薬整理・服用薬管理方法の指導等を行う評価です。対象要件と算定頻度も異なります。

当該薬局に6か月在籍すれば誰でもかかりつけ薬剤師として算定できますか?

6か月の在籍だけでは足りません。かかりつけ薬剤師に係る施設基準には、保険薬剤師としての勤務経験、研修認定、地域活動等を含む複数の要件があります。最新の施設基準通知で全要件を確認してください。

訪問加算を算定できる薬剤師は転職で年収が上がりますか?

算定できることだけで年収上昇を判断することはできません。訪問・残薬整理・医療機関への情報提供等の経験を必要とする求人では職務経験の一つとして説明できますが、給与は求人企業の給与制度、役職、勤務条件等によって異なります。

まとめ|230点から将来を予測せず、対象患者と実施業務を正しく理解する

  • かかりつけ薬剤師訪問加算は2026年度改定で新設された230点の加算
  • 算定は6月に1回
  • 対象の基礎は服薬管理指導料1のイまたは2のイを算定している患者
  • 患者・家族等の求めに応じて患家を訪問する
  • 患家で服用薬管理方法の指導・残薬整理等を行う
  • 訪問結果を保険医療機関へ情報提供する
  • 訪問前に指導内容と交通費を含む患者自己負担額を説明し了解を得る
  • 訪問した旨、残薬状況、指導内容等を薬剤服用歴へ記録する
  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料等を算定している患者では算定できない
  • 複数薬局で1のイ・2のイを算定している場合はいずれも訪問加算を算定できない
  • かかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点とは対象・実施方法・頻度が異なる
  • 当該薬局への継続在籍要件は2026年度改定で6か月以上へ見直された
  • 230点の新設から薬局利益・薬剤師年収・市場価値を直接推定しない

かかりつけ薬剤師訪問加算で重要なのは、230点という数字そのものではありません。

どの患者に、なぜ患家訪問が必要になり、そこで何を確認・整理し、どのように服薬管理を改善し、その結果を医療機関へつなぐのか。

この一連の実務を理解することが制度理解の中心です。

2026年度改定全体の変更点を確認したい場合は、次の記事へ進んでください。

関連記事:2026年度調剤報酬改定を薬剤師向けに解説|主な変更点・点数・現場への影響


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