パート薬剤師の年収「103万・130万の壁」を完全攻略|損しない働き方のルール

※2025年11月時点の情報です(2026年以降金額が変更される可能性が高いです。)

目次

「もう少し働きたいけど、扶養を外れたら損するのでは?」という不安

パート薬剤師として働くあなたは、こんな悩みを抱えていませんか?

「もう少しシフトを増やしたいけど、年収の壁を超えたら手取りが減るのでは?」 「扶養内で働いているけど、本当にこれが一番得なの?」 「103万円と130万円、どちらの基準で働けばいいのか分からない」

薬剤師という専門職でありながら、扶養の範囲内で働くことを選択する方は少なくありません。子育てや介護との両立、配偶者の扶養に入ることでの経済的メリットなど、理由は様々です。

しかし、年収の壁について正確な知識がないまま働き続けると、せっかく働いた時間が「働き損」になってしまう可能性があります。実際、「扶養から外れたら手取りが減った」と後悔するパート薬剤師を何人も見てきました。

本記事では、元調剤薬局チェーン人事部長として、パート薬剤師が知っておくべき年収の壁の正確な知識と、手取りを最大化するための実践的な戦略を解説します。扶養控除の仕組みを理解し、あなたにとって最適な働き方を見つけてください。


パート薬剤師を取り巻く「年収の壁」の全体像

扶養内で働くパート薬剤師が意識すべき年収の壁は、主に4つあります。これらの壁を正確に理解することが、働き損を防ぐ第一歩です。

年収の壁とは何か

年収の壁とは、パート・アルバイトで働く人が一定の収入を超えると、税金や社会保険料の負担が発生し、手取り収入が減少する現象を指します。

薬剤師の場合、時給が2,000円を超えることも珍しくありません。そのため、週3日程度の勤務でも年収が100万円を超えるケースが多く、知らず知らずのうちに壁を超えてしまうリスクが高いのです。

4つの壁を整理する

パート薬剤師が注意すべき年収の壁は以下の通りです。

【100万円の壁】住民税が発生
年収100万円を超えると、住民税の課税対象となります。ただし、自治体によって非課税限度額が異なる場合があるため、お住まいの市区町村に確認が必要です。

【103万円の壁】所得税が発生、配偶者控除が受けられなくなる
年収103万円を超えると、所得税の課税対象となります。さらに、配偶者の年収が一定額以下の場合、配偶者控除(38万円)が適用されなくなり、配偶者の税負担が増加します。

【106万円の壁】社会保険加入義務(条件あり)
2024年10月以降、厚生年金の被保険者数(フルタイム従業員など)51人以上の企業で働く場合、年収106万円を超えると社会保険への加入義務が発生します。健康保険料と厚生年金保険料の負担が生じるため、手取りが大きく減少します。

【130万円の壁】社会保険加入義務(全ての人)
年収130万円を超えると、勤務先の従業員数に関わらず、社会保険への加入義務が発生します。配偶者の扶養から外れるため、国民健康保険料と国民年金保険料を自己負担する必要があります。

私が人事部長として採用面接を担当していた頃、「扶養内で働きたい」と希望する薬剤師の多くが、これらの壁を正確に理解していませんでした。特に106万円の壁は、2024年の制度改正で新たに生まれたものです。最新の情報を把握しておく必要があります。


ポイント1:103万円の壁を超えると、本当に損をするのか

「103万円の壁」は、最も広く認知されている年収の壁です。しかし、この壁を超えることが必ずしも損とは限りません。

103万円を超えた場合の税負担

年収103万円を超えると、超過分に対して所得税(5%)が課税されます。例えば、年収110万円の場合、課税対象は7万円です。所得税額は約3,500円となります。

一方、配偶者の税負担はどうなるでしょうか。配偶者控除(38万円)が適用されなくなるため、配偶者の課税所得が38万円増加します。配偶者の所得税率が10%の場合、約3.8万円の増税となります。

つまり、世帯全体では約4.1万円の税負担増です。年収が7万円増えたことを考えると、手取りは約2.9万円増加します。

配偶者特別控除の活用

実は、年収103万円を超えても、201万円以下であれば「配偶者特別控除」が適用されます。控除額は年収に応じて段階的に減少しますが、急激に税負担が増えるわけではありません。

年収150万円までは配偶者特別控除が満額(38万円)適用されるため、配偶者の税負担は変わりません。103万円の壁を意識しすぎて働く時間を制限するよりも、150万円を目安に働く方が手取りは増えます。

私が人事として相談を受けた際、多くのパート薬剤師が「103万円を超えたら大変なことになる」と誤解していました。実際には、配偶者特別控除の仕組みを理解すれば、150万円まで働いても世帯の税負担は大きく変わらないのです。


ポイント2:106万円・130万円の壁が最大の難関

税金よりも深刻なのが、社会保険料の負担です。106万円と130万円の壁を超えると、手取りが大幅に減少します。

106万円の壁:社会保険加入の条件

2024年10月以降、以下の条件を全て満たす場合、年収106万円を超えると社会保険への加入義務が発生します。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない
  • 厚生年金の被保険者数(フルタイム従業員など)が51人以上の企業

【重要】「51人以上」の数え方に注意
ここでの「51人」とは、その会社で働く全従業員数ではありません。「現在、社会保険(厚生年金)に加入しているフルタイム等の従業員数」を指します。 そのため、パート・アルバイトを含めた総人数が100人いる薬局チェーンでも、フルタイム社員が50人以下であれば、この「106万円の壁」は適用されず、130万円まで扶養内で働ける可能性があります。勤務先に「うちは特定適用事業所ですか?」と確認するのが確実です。

130万円の壁:全ての人に適用

年収130万円を超えると、勤務先の規模に関わらず、配偶者の扶養から外れます。自分で国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。

年間の社会保険料負担は、概ね20万円から30万円です。つまり、年収130万円と150万円では、手取りがほぼ同じになってしまいます。これが「働き損」の正体です。

年収110万円から120万円程度で働くことは、社会保険料の負担を考えると最も非効率な選択です。どちらの壁を意識するかを明確にし、戦略的に働く時間を調整する必要があります。


ポイント3:「働き損」にならないための年収設定戦略

それでは、パート薬剤師はどの年収帯を目指すべきでしょうか。以下に、3つの戦略を提示します。

戦略1:年収105万円以内に抑える

社会保険料の負担を避け、手取りを最大化する最も安全な選択です。配偶者特別控除も適用されるため、世帯の税負担も最小限に抑えられます。

ただし、薬剤師の時給が高いため、週2日程度の勤務に制限する必要があります。キャリアのブランクを避けたい方や、子育て・介護との両立を優先する方に適しています。

戦略2:年収150万円以上を目指す

社会保険に加入することを前提に、年収150万円以上を目指す戦略です。社会保険料の負担はありますが、将来の年金額が増加します。また、傷病手当金や出産手当金などの給付も受けられるようになります。

年収150万円以上であれば、社会保険料を支払っても手取りは130万円の場合とほぼ同等かそれ以上になります。週3日から4日程度の勤務が可能です。

戦略3:完全に扶養を外れてフルタイム勤務

年収200万円以上を目指し、正社員やフルタイムのパート薬剤師として働く選択です。社会保険の保障が充実し、キャリアも継続できます。

ただし、配偶者の扶養から完全に外れるため、世帯の税負担は増加します。将来的に正社員を目指す方や、経済的に自立したい方に適しています。

最も後悔していたのは「年収110万円から120万円で働いていた」パート薬剤師です。社会保険料の負担が発生し、手取りが年収105万円の時とほとんど変わらなかったのです。

年収の壁を正確に理解し、自分のライフスタイルに合った働き方を選択することが重要です。


ポイント4:勤務先の選び方で年収の壁は変わる

年収の壁を意識した働き方をする上で、勤務先の選択も重要な要素です。特に、106万円の壁が適用されるかどうかは、企業の規模によって異なります。

中小規模の調剤薬局を選ぶメリット

厚生年金の被保険者数(フルタイム従業員など)が50人以下の調剤薬局であれば、106万円の壁は適用されません。年収130万円までは社会保険に加入せずに働けるため、手取りを最大化できます。

例えば、地域密着型の個人経営薬局や、小規模チェーンの薬局は、この条件を満たすことが多いです。求人を探す際は、企業規模を確認することをお勧めします。

大手チェーンで働く場合の注意点

厚生年金の被保険者数(フルタイム従業員など)が51人以上の大手調剤薬局チェーンやドラッグストアでは、106万円の壁が適用されます。年収を105万円以内に抑えるか、150万円以上を目指すかの選択を迫られます。

ただし、大手企業は福利厚生が充実しており、社会保険に加入することで得られるメリットも大きいです。将来のキャリアを考えると、あえて社会保険に加入する選択も賢明です。

複数の薬局でダブルワークをする場合

複数の薬局でパート勤務をする場合、年収は合算されます。それぞれの勤務先で年収が106万円以下でも、合計が130万円を超えれば社会保険加入義務が発生します。

ダブルワークを検討する際は、トータルの年収を正確に把握し、扶養の範囲内に収まるよう調整する必要があります。

私が人事として採用面接を担当していた際、「他の薬局でも働いている」と申告するパート薬剤師がいました。その方は、合計年収が130万円を超えていたため、扶養から外れることになりました。事前に全体の収入を把握しておくことが重要です。


ポイント5:薬剤師職業紹介会社を活用した最適な職場探し

年収の壁を意識しながら最適な職場を見つけるには、薬剤師専門の職業紹介会社の活用が有効です。

パート薬剤師に特化した求人情報

薬剤師転職エージェントは、扶養内勤務を希望するパート薬剤師向けの求人を多数保有しています。週2日勤務、時短勤務、曜日固定など、柔軟な働き方が可能な職場を紹介してもらえます。


なぜ私が人事部長時代、この3社の電話は優先的に取っていたのか?採用裏話を含む、本当に信頼できるエージェントの選び方についてはこちらの記事をご覧ください。

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企業規模の確認と年収シミュレーション

職業紹介会社のキャリアアドバイザーは、勤務先の企業規模や社会保険の適用条件を事前に確認してくれます。さらに、年収シミュレーションを行い、扶養内で最大限の手取りを得られる働き方を提案してくれます。

例えば、「年収105万円以内で働きたい」という希望を伝えれば、週の勤務時間や時給を調整した求人を紹介してもらえます。自分で計算する手間が省け、安心して転職活動ができます。

非公開求人の活用

エージェントは、一般には公開されていない非公開求人を保有しています。これらの求人は、条件が良く、扶養内勤務を希望する薬剤師にとって理想的な職場が多いです。

私も優秀なパート薬剤師を確保するため、エージェントに非公開求人を依頼していました。扶養内勤務を希望する薬剤師にとって、こうした非公開求人は貴重な機会です。

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エージェントを活用することで、年収の壁を意識した最適な職場を効率的に見つけることができます。登録は無料ですので、まずは相談してみることをお勧めします。


あなたの働き方は、あなた自身が決めていい

ここまで、パート薬剤師が知っておくべき年収の壁と、働き損にならないための戦略を解説してきました。

103万円、106万円、130万円という年収の壁は、確かに存在します。しかし、これらの壁を正確に理解すれば、決して恐れるものではありません。あなたのライフスタイルや将来の目標に合わせて、最適な働き方を選択できるのです。

年収105万円以内で扶養の範囲内に留まるのも、年収150万円以上を目指して社会保険に加入するのも、どちらも正しい選択です。大切なのは、曖昧な不安に縛られるのではなく、正確な知識に基づいて戦略的に働くことです。

私が知る多くのパート薬剤師が「扶養から外れるのが怖い」と感じていました。しかし、年収の壁を正確に理解し、自分に合った働き方を選択した薬剤師は、みな充実したキャリアを築いています。

あなたは、薬剤師という専門職です。その知識と経験は、多くの患者さんの健康を支えています。あなたの働き方を、他人や制度に縛られて決める必要はありません。

年収の壁を理解し、あなた自身が納得できる働き方を選択してください。そして、もし今の職場があなたの希望に合わないのであれば、薬剤師職業紹介会社に相談することをお勧めします。

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この記事を書いた人

調剤薬局チェーン元人事部長・薬剤師・中小企業診断士。
約4年間、人事責任者として薬剤師の採用・評価制度設計に従事。大手を中心に20社以上の紹介会社と折衝し、採用の舞台裏から「紹介会社の実力差」を熟知する。現在は経営コンサルタントとして、調剤薬局の採用戦略や人事考課制度の設計支援を行う一方、薬剤師個人のキャリア支援も行っている。採用側と求職側、双方の視点を持つ「情報の非対称性を解消する」解説に定評がある。

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