退職願と退職届の違い・書き方|薬剤師が提出前に確認することを元人事部長が解説

退職願・退職届を提出する前に確認したいこと
  • 退職願・退職届という書類名だけで法的な意味が決まるわけではありません
  • 先に就業規則や会社所定の退職手続、提出先、指定書式の有無を確認します
  • 退職希望日・書類の提出日・最終出勤日は別の日付になることがあります
  • 会社指定書式がない場合は、この記事の記載例を参考に必要事項を整理できます

退職を決めたとき、退職願と退職届のどちらを出せばよいのか、何を書けばよいのか迷う薬剤師は少なくありません。

インターネット上では、退職願は会社にお願いする書類、退職届は一方的に退職を通告する書類と説明されることがあります。実務上、そのような名称で使い分ける会社もあります。しかし、法律上の評価は書類の表題だけで機械的に決まるわけではありません。

厚生労働省は、一般に退職願と呼ばれる意思表示にも、会社の承諾を求める合意退職の申込みと、会社の承諾の有無にかかわらず退職する辞職の意思表示の2つがあり得ると説明しています。退職届という名称が辞職に使われることはありますが、両者が厳密に区別されず使われる場合もあるため、意思表示の内容から判断する必要があります。

参考:厚生労働省「退職願を出した労働者がこれを撤回したいと言ってきた場合」

私は調剤薬局チェーンで人事業務に携わり、薬剤師の退職に伴う手続にも関わってきました。実務では表題だけを見るのではなく、本人の意思、退職希望日、会社所定の手続、提出先、退職日が確定しているかなどを一つずつ確認することが重要でした。

このページは一般的な制度と退職書類の準備方法を整理するものです。個別の退職意思表示の法的評価や、会社との間で争いになっている事案の結論を断定するものではありません。判断が難しい場合は、契約書・就業規則・提出した書類等を持って公的相談窓口や法律専門家へ確認してください。

目次

結論|まず会社の退職手続きを確認し、書類名だけで法的性質を決めない

退職願と退職届のどちらを作るか迷ったら、最初に勤務先の就業規則や退職手続を確認してください。

会社によっては退職願、退職届、退職申出書などの所定様式が用意されていたり、社内システム上で退職申請を行ったりすることがあります。提出先も直属の上司、人事部、総務部など会社によって異なります。

そのうえで確認するのが、自分は会社との合意によって退職日等を決めたいのか、それとも退職する意思を確定的に伝えるのかという点です。

確認することポイント
会社所定の手続指定書式、提出先、申出期限、申請方法を確認
自分の意思会社の承諾を求める申込みなのか、退職する意思を確定的に伝えるのか
雇用契約期間の定めがない契約か、有期契約かを確認
日付書類提出日、退職希望日または退職日、最終出勤日を区別
記録いつ、誰に、どの方法で提出したか後から確認できるようにする

薬剤師の場合も、調剤薬局だから退職願、病院だから退職届というように職場の種類だけで決めるものではありません。まず自分の勤務先の手続と、自分が何を意思表示するのかを確認することが出発点です。

退職願と退職届の違い|重要なのは意思表示の内容

退職書類を理解するうえで、先に合意退職と辞職を分けておくと整理しやすくなります。

合意退職の申込みとは

合意退職は、労働者と会社が合意して労働契約を終了する方法です。労働者側から退職したいと申し込み、会社が承諾することで合意が成立します。

厚生労働省は、労働者からの合意退職の申込みについて、使用者が承諾するまでの間は原則として撤回できると説明しています。

参考:厚生労働省「解雇と合意退職・辞職の違いについて教えてください」

会社と相談しながら退職日を調整したい場合や、会社の承認を前提とする文面を提出する場合は、合意退職の申込みとして評価される可能性があります。

辞職の意思表示とは

辞職は、労働者からの一方的な意思表示によって労働契約を終了させるものです。

期間の定めのない労働契約について、厚生労働省は、労働者はいつでも退職を申し出ることができ、法律上は退職申出の日から起算して14日を経過したときに退職となると案内しています。一方、有期労働契約では別の確認が必要です。

参考:厚生労働省「労働契約の終了」

退職できる時期の法律上の基本、有期契約、繁忙期、管理薬剤師などの論点は、薬剤師が繁忙期に退職するときのルールで詳しく整理しています。

退職願・退職届という名称だけでは判断できない

実務では、退職願という表題で辞職の意思を明確に示す文書が使われることもあれば、退職届という表題でも会社との合意を前提に提出されることがあります。

そのため、次のような単純な対応表にはしない方が安全です。

  • 退職願なら必ず会社の承諾が必要
  • 退職届なら必ず一方的な辞職になる
  • 退職願なら必ず撤回できる
  • 退職届なら提出した瞬間にすべて確定する

表題、本文、提出時の説明、会社の手続、本人の意思などを含めて判断する必要があります。

退職願と退職届のどちらを出す?提出前の判断フロー

どちらを出すか迷ったときは、書類名から選ぶのではなく、次の順番で確認してください。

  1. 就業規則・社内規程で退職手続きを確認する
  2. 会社指定の書式・申請システムがあるか確認する
  3. 自分の退職意思が確定しているか確認する
  4. 会社との合意を求めるのか、退職意思を確定的に伝えるのか整理する
  5. 退職希望日・退職日・提出日を確認する

会社指定の書式・申請方法を確認する

会社所定の退職申出書があるのに、自分で作った退職願を先に提出すると、後から所定書式での手続きを案内されることがあります。これは二度手間になりやすいため、通常の手続で確認できる状況なら先に所定様式の有無を確認します。

一方、会社が指定書式を用意しているからといって、その書式に書かれた内容へ十分確認せず署名する必要はありません。退職理由、退職日、誓約事項など、自分の認識と異なる項目があれば提出前に確認してください。

退職について会社の承諾を求めるのか確認する

まだ退職日を会社と相談したい、条件変更によっては残る可能性があるなど、会社との話し合いを前提にする場合があります。

この場合は、退職希望日を示しながら会社の承諾を求める形で書類を準備することが考えられます。ただし、会社所定様式がある場合はその文言を先に確認します。

退職意思が確定している場合に確認すること

退職意思が固まっている場合でも、すぐに書類名だけで辞職かどうかを決めるのではなく、雇用契約が無期か有期か、就業規則上の手続、希望する退職時期を確認します。

会社から強い引き止めを受けている場合は、書類の選び方だけで解決しようとせず、薬剤師の退職引き止めへの対応も確認してください。

提出前チェック|書類を作る前に7項目をそろえる

退職願・退職届は、文章を書き始めてから必要事項を調べるより、先に情報をそろえた方が修正を減らせます。特に店舗勤務の薬剤師は、直属上司と会社本部で退職手続の担当が分かれていることもあるため、提出先を思い込みで決めないことが大切です。

確認項目提出前に確認すること
1.雇用契約無期契約か有期契約か。契約書・労働条件通知書を確認
2.就業規則退職申出の期限、提出先、必要な社内手続
3.会社指定書式退職願・退職届・退職申出書・電子申請等の指定があるか
4.自分の意思会社の承諾を求めるのか、退職する意思を確定的に示すのか
5.日付提出日、退職希望日または退職日、最終出勤日の候補
6.宛先・提出先誰宛てに作成し、誰へ提出するのか
7.保存方法提出した文書と提出日時を自分でも後から確認できるか

この7項目のうち、特に重要なのが自分の意思と会社所定の手続を分けて確認することです。会社に退職申請フォームがあることと、自分の退職意思の法的性質が自動的に決まることは同じではありません。

また、退職希望日を決める際に、インターネットで見た14日という数字だけから日付を決めるのも避けます。無期契約と有期契約では確認事項が異なり、就業規則上の合理的な退職手続も確認が必要です。退職時期自体の判断は、契約種類を確認したうえで行ってください。

会社の書式が見つからないときは、次のように確認すれば十分です。

「退職手続について確認したいのですが、会社指定の書式、提出先、申請方法があれば教えてください。」

この段階では、インターネット上のテンプレートを先に完成させる必要はありません。会社指定があるなら、その内容を確認してから自分の意思と一致しているかを見ます。

退職願の書き方|会社指定書式がない場合の例

勤務先に指定書式がない場合は、一般的な退職願の形を参考に作成できます。ただし、以下は法律で定められた唯一の書式ではありません。会社の運用や自分の意思に合わせて調整してください。

退職願に記載する項目

  • 表題:退職願
  • 退職を希望する旨:会社へ退職を申し込む文面
  • 退職希望日:会社と調整する前提なら希望日であることを意識する
  • 提出日:書類を提出する日
  • 所属・氏名:会社が本人を特定できる情報
  • 宛先:会社所定の宛先を確認する

押印が必要かどうかも勤務先の書式・ルールを確認します。代表取締役宛が全国共通の必須ルールというわけではありません。

コピーして使える退職願の記載例

一般的な自己都合退職で、会社へ退職の承諾を求める文面の一例です。

退職願

私事、今般一身上の都合により、○年○月○日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。

○年○月○日
○○部・○○薬局
氏名 ○○ ○○

株式会社○○
○○ ○○ 様

一身上の都合は自己都合退職で一般的に使われる表現の一つですが、すべての退職で機械的に使うものではありません。会社から退職を勧められたなど、実際の離職経緯と自己都合退職が一致しない場合は、書類の文言を慎重に確認してください。

退職理由を会社へどう伝えるかは、薬剤師の退職理由の伝え方で詳しく整理しています。

退職届の書き方|会社指定書式がない場合の例

会社で退職届を提出する運用になっている場合や、自分の退職意思を確定的に示す書面を準備する場合も、まず会社所定の書式を確認します。

退職届に記載する項目

  • 表題:退職届
  • 退職する旨:自分が何を意思表示する書面なのかを明確にする
  • 退職日:会社と合意済みの日付を記載する運用か、辞職として通知する日付かを確認
  • 提出日:実際に提出する日
  • 所属・氏名
  • 宛先:会社指定の提出先・宛先を確認

コピーして使える退職届の記載例

会社と退職日が決まり、その内容を届け出る場合の一般的な文面例です。

退職届

私事、今般一身上の都合により、○年○月○日をもって退職いたしますので、ここにお届けいたします。

○年○月○日
○○部・○○薬局
氏名 ○○ ○○

株式会社○○
○○ ○○ 様

この文例を使ったから自動的に特定の法的効果になると考えないでください。退職の意思表示は、書類の名称だけでなく文面や提出時の状況等を含めて評価されます。

退職日・提出日・最終出勤日を混同しない

退職書類では日付の書き間違いが起きやすいため、3つの日付を分けて確認します。

日付意味
提出日退職願・退職届等を会社へ提出する日
退職希望日・退職日労働契約を終了したい日、または終了する日
最終出勤日実際に勤務する最後の日。退職前に年次有給休暇を取得する場合は退職日より前になることがある

たとえば3月31日が退職日で、3月21日以降に年次有給休暇を取得する場合、最終出勤日は3月20日になることがあります。この場合も雇用契約が終了する日は3月31日です。

年次有給休暇の取得時期や時季変更権については別の確認事項があります。詳しくは、薬剤師の有給休暇の確認方法で確認してください。

よくある書き間違い|提出前に本文と日付を見直す

退職書類は長い文章ではありませんが、短いからこそ日付や文言の違いが目立ちます。提出直前には、少なくとも次の点を見直してください。

退職希望日と退職日を同じ意味で使っている

会社との合意前に提出する退職願であれば、本人が希望する日を記載している場合があります。一方、会社と退職日が確定した後の社内届出では、確定した退職日を記載する運用もあります。

書類を作る前に、その欄が希望日なのか確定日なのかを確認します。所定様式に退職予定日退職希望日などの欄がある場合も、言葉の意味を社内担当者へ確認すると認識違いを防げます。

提出日と退職日を逆に書いている

書類下部に記載する日付は提出日、本文中の日付は退職希望日または退職日という構成が一般的な例です。会社所定様式では入力欄が明示されていることもあるため、欄名を確認して入力します。

最終出勤日を退職日として記載している

退職前に年次有給休暇を取得する場合などは、最終出勤日と退職日が異なります。退職書類に記載する日付を決める前に、雇用契約が終了する日と実際に最後に勤務する日を分けてください。

会社名・所属・宛先が現在の情報と違う

店舗名だけを書けばよいのか、法人名が必要なのか、宛先が代表者なのか人事責任者なのかは会社によって異なります。法人名の変更、所属店舗の異動、役職変更があった場合も、現在の正式な情報を確認します。

テンプレートの文言を自分の状況に合わせず使っている

一身上の都合、お願い申し上げます、お届けいたしますといった文言には、それぞれ意味があります。検索して見つけた文例をそのまま貼るのではなく、自分が会社へ何を伝えたいのかと一致しているか確認してください。

特に退職勧奨を受けている場合や、会社との間で退職理由・退職日の認識が対立している場合は、定型文で事実関係を上書きしないことが重要です。

手書き・パソコン・印鑑・封筒は会社指定を先に確認する

退職願や退職届について、白い便箋、縦書き、押印、白封筒などがマナーとして紹介されることがあります。しかし、実際には会社所定の書式や電子申請を使う職場もあります。

そのため、形式を一律の必須条件として覚えるより、会社指定があるかを先に確認し、指定がなければ読みやすく必要事項が分かる文書を作るという順番が実務的です。

手書きかパソコンか

手書きでなければならないという会社もあれば、所定ファイルへの入力や社内システム申請を採用している会社もあります。指定がなければ、人事・総務へ確認してもよいでしょう。

パソコンで作る場合でも、氏名まで入力でよいのか、自署を求められるのかは会社ルールを確認します。

押印の有無

押印についても、会社所定様式の押印欄や社内規程を確認します。押印欄がない書式へ、インターネット上のマナー情報だけを理由に必ず印鑑を押す必要があるとは限りません。

封筒が必要な場合の一般的な例

紙で手渡す場合に封筒を使用するなら、書類が折らずに入る、または三つ折りで入る無地の封筒を使い、表面に退職願または退職届、裏面に所属・氏名を書く方法があります。

ただし、封筒の色、二重封筒、縦書きか横書きかなどを法律上の必須事項として扱う必要はありません。勤務先から指定があれば、その方法に合わせます。

会社所定の書式があるときに確認したいポイント

会社指定の退職書式がある場合も、空欄を機械的に埋めるのではなく、各項目が自分の認識と合っているかを確認します。

  • 退職理由:自己都合として記載してよい経緯か
  • 退職日:会社と確認した日付と一致しているか
  • 有給休暇:退職書類と年休申請を混同していないか
  • 貸与物・引継ぎ:別の手続として何が必要か
  • 誓約事項:秘密保持、競業避止、返却義務等の内容を理解できているか

退職書類と一緒に秘密保持や競業避止に関する誓約書を渡される場合もあります。退職手続に必要と言われたからという理由だけで内容を読まずに署名せず、義務の範囲を確認してください。

競業避止義務や退職時の誓約書については、薬剤師の競業避止義務と退職時の誓約書で確認ポイントを整理しています。

分からない項目がある場合は、提出前に次のように確認できます。

「この書式の退職理由と退職日の欄について、会社ではどのような内容を記載する運用でしょうか。提出前に確認させてください。」

退職願・退職届は誰にいつ提出する?

書類を完成させても、提出先や提出方法が会社ルールと違えば手続が止まることがあります。作成前に就業規則や社内規程を確認しておく方が効率的です。

就業規則と正式な提出先を確認する

直属の上司を経由して人事部へ提出する会社もあれば、総務や本部へ直接提出する会社もあります。小規模薬局では経営者が窓口になっていることもあります。

代表取締役を宛先にすればすべての会社で正しい、直属上司へ渡せば必ず完了する、と一般化せず、自社の正式な提出先を確認してください。

書面・社内システム・メールなど提出方法を確認する

紙の書面を手渡す会社だけでなく、所定フォームやワークフローシステムを使用する会社もあります。体調不良やハラスメント等で通常の提出方法が難しい場合は、人事・総務等へ別の提出方法を確認することも考えます。

メールだから必ず無効、手渡しだから必ず有効というように、伝達手段だけで法的効果を決めることも避けます。会社との間で意思表示の到達自体が争いになっている場合は、一般的なマナー論ではなく個別に相談してください。

提出した事実を後から確認できるようにする

提出前の書類を自分用に保存し、提出日、提出相手、会社からの回答をメモしておくと、後で日付や内容を確認しやすくなります。

必ず受領印をもらわなければならないという全国共通ルールではありません。重要なのは、自分が何をいつ伝えたのか確認できる状態を作ることです。

退職に関する書類を受け取ってもらえない、退職日について話が進まない場合は、薬剤師の退職引き止め対処法で、記録の整理や相談先を確認できます。

提出後に書き直し・差し戻しを求められたら

退職書類を提出した後、日付、宛先、会社指定様式などの理由で書き直しを求められることがあります。その場合は、何を修正するよう求められているのかを確認してから対応してください。

単純な誤字や会社名の修正であれば、正しい内容へ直せばよい場合が多いでしょう。一方、退職日を別の日へ変更する、自己都合ではない経緯を一身上の都合へ変更する、追加の誓約事項へ同意するなど、内容そのものが変わる修正は意味が異なります。

書き直す場合も、最初に提出した書類と修正版を自分で確認できるようにしておくと、どこを変更したのか分かります。提出日まで変更するのか、修正版の作成日を記載するのかは、会社の手続を確認してください。

また、退職日や退職理由について会社との認識が一致していない状態で、書式上の修正として処理しないことが重要です。日付や離職経緯に争いがある場合は、その論点を別に整理し、必要に応じて公的相談窓口や法律専門家へ確認してください。

退職書類は、きれいに完成させることより、自分が提出した内容と会社が受け取った内容の認識を一致させることが大切です。

提出後に撤回したくなった場合

退職願を出した後に待遇改善や異動を提案され、残ることを考え直す場合があります。このときも、退職願か退職届かという表題だけで撤回可能性を決めません。

合意退職の申込みの場合

厚生労働省は、合意退職の申込みであれば、原則として会社が承諾するまで撤回できると説明しています。

ただし、すでに誰が会社を代表して承諾したのか、どの段階で合意が成立したのかが問題になる場合があります。撤回を考えたら早めに会社へ伝え、経緯を確認してください。

辞職の意思表示の場合

厚生労働省は、辞職の場合、使用者へ意思表示が到達すると、その段階で労働者が一方的に撤回することはできなくなると説明しています。

もっとも、法律上労働者が一方的に撤回できない場面でも、会社と本人が改めて合意することは別問題です。提出後に意思が変わった場合は、書類の名称だけで自己判断せず、会社へ速やかに相談してください。

参考:厚生労働省「退職願を出した労働者がこれを撤回したいと言ってきた場合」

一身上の都合と書く前に実際の離職経緯を確認する

一般的な自己都合退職の退職願・退職届では、一身上の都合という表現が使われることがあります。会社へ詳細な不満をすべて文書で説明しなければならないわけではありません。

ただし、実際の経緯が自己都合退職ではない可能性がある場合まで、形式だけを整えるために一身上の都合と書くことは慎重に判断してください。

たとえば会社側から退職を勧められている場合、解雇を通知されている場合、労働条件をめぐる問題がある場合などは、離職理由が雇用保険等の手続にも関係する可能性があります。

会社へどの程度まで退職理由を伝えるか、退職勧奨やハラスメント等がある場合にどう記録するかについては、薬剤師の退職理由の伝え方で確認してください。

元人事部長の経験|書式より先に確認していたこと

私が調剤薬局チェーンの人事業務で退職手続に関わった際、書類がきれいな縦書きか、封筒が白色かといったことより、先に確認したい事項がありました。

  • 本人の退職意思は固まっているか
  • 退職希望日と会社側の認識は一致しているか
  • 会社所定の退職手続が進んでいるか
  • 書類が誰へ、いつ提出されたか
  • 退職日と最終出勤日が混同されていないか
  • 引継ぎや貸与物返却等をどのスケジュールで行うか

会社によって退職申請の承認権限や書類運用は異なります。そのため、人事経験から全国共通の提出順序を決めることはできません。

一方で、本人が退職願と退職届の違いをインターネットで調べすぎた結果、自社の指定書式を確認していなかったり、退職日と最終出勤日を同じだと思っていたりすると、修正が必要になります。

書式の完成度より、自分の意思と会社の手続が一致しているかを先に確認する。退職書類を準備するときに最も実務的なポイントはここだと考えています。

引き止め・有給・引継ぎ・退職後手続きはそれぞれ確認する

退職願・退職届を準備し始めると、引き止め、有給休暇、引継ぎ、離職票なども気になります。ただし、これらは書類の書き方とは別の論点です。

困っていること確認する内容
退職を引き止められている退職意思・退職日・記録・相談先を整理する
2週間・有期契約・繁忙期が気になる契約種類と退職時期のルールを確認する
有給休暇を使いたい残日数・取得時期・時季変更権を確認する
引継ぎを整理したい業務・在宅・在庫・権限等を引き継ぐ
返却物・離職票等を確認したい退職前後の手続きをチェックする

次の職場も探す場合は、退職書類の手続と求人探しを混ぜる必要はありません。企業への直接応募、求人媒体、ハローワーク、転職支援サービスなど、自分に合う方法を選べます。

薬剤師向け転職支援サービスを比較したい場合は、薬剤師転職エージェントの比較記事で、各サービスの特徴と利用前の確認点を整理しています。

FAQ

退職願を出さず、退職届だけ提出してもよいですか?

退職願と退職届を必ず両方この順番で提出するという全国共通ルールはありません。まず就業規則や会社所定の手続を確認してください。また、書類名だけでは合意退職の申込みか辞職かは決まらないため、自分が何を意思表示する文書なのかも確認する必要があります。

会社指定の退職届フォーマットがある場合は使うべきですか?

通常の社内手続で対応できる状況なら、まず会社指定書式を確認するのが実務的です。ただし、退職理由、退職日、誓約事項など自分の認識と異なる記載がある場合は、内容を確認してから提出してください。指定書式があることと、その内容を無条件に受け入れることは別です。

退職願は手書きでなければいけませんか?

勤務先の指定を確認してください。手書きの書面を求める会社もあれば、パソコン作成の所定様式や社内システムを使う会社もあります。指定がなければ、人事・総務等へ確認すると確実です。

退職願を提出した後でも撤回できますか?

書類名だけでは決まりません。厚生労働省は、合意退職の申込みであれば原則として会社が承諾するまで撤回可能と説明する一方、辞職の意思表示であれば会社へ到達した後は一方的に撤回できないと説明しています。実際の意思表示がどちらに当たるか不明な場合は個別に確認してください。

退職届に書く日付は最終出勤日ですか?

通常、退職日と最終出勤日は区別します。退職前に年次有給休暇を取得する場合などは、最後に勤務する日が退職日より前になることがあります。会社所定書式がある場合は、どの日付を記載する欄なのかも確認してください。

退職届を受け取ってもらえない場合はどうすればよいですか?

まず就業規則で正式な提出先と手続を確認し、いつ誰にどのような退職意思を伝えたか整理します。通常の提出先で手続が進まない場合は、人事・総務等の窓口へ確認します。退職意思の到達や法的効力自体が争いになっている場合は、公的相談窓口や法律専門家へ相談してください。

まとめ|会社の書式と自分の意思表示を確認して提出する

退職願と退職届は、表題だけで法的な意味を完全に区別できるものではありません。厚生労働省も、退職願という名称の意思表示に合意退職の申込みと辞職の双方があり得ること、退職届という名称も厳密に使い分けられていない場合があることを説明しています。

提出前は次の順番で確認してください。

  1. 就業規則と会社所定の退職手続を確認する
  2. 指定書式・提出先・提出方法を確認する
  3. 自分が合意退職を申し込むのか、退職意思を確定的に伝えるのか整理する
  4. 提出日・退職希望日または退職日・最終出勤日を区別する
  5. 提出した書類と経緯を後から確認できるようにする

会社指定書式がない場合は、この記事の文例を土台に必要事項を整理できます。ただし、文例そのものより、自分の意思と実際の離職経緯に合った内容になっているかを優先してください。

退職書類を整えることはゴールではありません。自分の契約、退職日、引継ぎ、年次有給休暇、退職後の手続きを一つずつ確認し、認識のずれを減らしながら退職準備を進めていきましょう。

  • URLをコピーしました!
目次