60代薬剤師の転職で失敗しないために|定年・雇用条件・仕事内容を元人事部長が解説

60代薬剤師が転職で失敗する5つの落とし穴|成功するためのリアル対策
この記事はこんなときに使えます
  • 60代で転職できる求人があるのか不安
  • 今の会社の再雇用と他社への転職で迷っている
  • 給与だけでなく、定年・契約更新まで確認しておきたい
  • フルタイムを続けるか勤務日数を減らすか考えている
  • 電子薬歴など新しいシステムへ対応できるか心配
  • 転職後に仕事内容や勤務条件のミスマッチを避けたい

60代で転職を考えると、年齢だけで応募先が見つからないのではないか、条件を大きく下げなければならないのではないかと不安になることがあります。

一方で、長い実務経験があるから高い年収で採用されるはずだと考えるのも危険です。

60代の転職では、年齢から自分の価値を決めるのではなく、現在の経験と希望条件に合う求人を探し、定年・雇用形態・契約更新・仕事内容まで確認することが重要です。

特に60代では、転職先の給与だけではなく、何歳までどの雇用形態で働けるのかが数年後の働き方に直結します。現職で継続雇用される場合と、別会社へ転職する場合を同じ項目で比べる必要があります。

この記事では、調剤薬局チェーンで薬剤師採用と人事に携わった経験を踏まえながら、60代薬剤師が転職前に確認しておきたい事項を整理します。

目次

結論|60代の転職は年齢より雇用条件と仕事内容を先に確認する

60代だから転職できない、60代だから経験を高く評価される、というどちらの決めつけも避けます。

先に確認したいのは次の7項目です。

  • 定年:正社員として何歳まで勤務できるか
  • 継続雇用:定年後の再雇用・勤務延長制度があるか
  • 契約:有期契約なら期間・更新条件・更新上限はどうなっているか
  • 勤務:日数、時間、残業、休日、通勤を無理なく続けられるか
  • 仕事内容:直近の経験と実際に任される業務が合っているか
  • 教育:電子薬歴や社内ルールを覚えるための研修があるか
  • 給与:平均年収ではなく、実際の提示条件を比較しているか

この7項目が確認できれば、年齢だけを理由に必要以上に条件を妥協することも、過去の年収だけを基準に求人を選ぶことも避けやすくなります。

60代でも応募できる求人はある|採用は年齢だけで判断するものではない

労働施策総合推進法では、募集・採用における年齢制限は原則として禁止されています。厚生労働省は、求人票では年齢不問としながら、実際には年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を基準に採否を判断したりすることも法の規定に反すると説明しています。

厚生労働省|募集・採用における年齢制限禁止について

ただし、年齢制限には法令上の例外があります。たとえば、定年年齢を上限として期間の定めのない労働契約の対象者を募集する場合や、60歳以上の高年齢者に限定して募集する場合などです。

したがって、60代であることだけから応募可能性を判断せず、まず求人の年齢条件とその理由、雇用形態、定年制度を確認します。

また、応募して不採用になった場合も、企業から理由を示されていなければ年齢が原因だったと外部から断定することはできません。経験、勤務条件、採用人数、応募職務との適合など複数の要素が関係します。

最初に比較する|現職の継続雇用と他社転職

60代のキャリアでは、新しい会社への転職だけが選択肢ではありません。現在の勤務先で定年後も継続して働けるなら、その条件と転職先候補を比較します。

比較項目現職継続他社転職
雇用形態再雇用後の形態を確認正社員・契約社員・パート等を確認
働ける期間再雇用の上限年齢を確認定年・契約更新上限を確認
給与定年前後での変更を確認求人票と最終提示条件を確認
勤務日数・時間短時間勤務等の選択肢を確認希望条件と一致するか確認
仕事内容定年前後で役割が変わるか配属と担当業務を確認
通勤現在の負担を確認勤務地・異動範囲を確認
教育・システム慣れた環境を継続できるか新システムへの研修を確認

給与が少し高い求人でも、1年更新で更新上限が近い、通勤時間が大幅に延びる、希望しない一人薬剤師勤務があるといった条件なら、総合的な判断は変わります。

確認1|転職先の定年・再雇用・契約更新

60代の転職で最初に確認したいのが、転職後に何歳までどのような形で働けるかです。

高年齢者雇用安定法では、事業主が定年を定める場合は60歳以上とする必要があります。また、65歳未満の定年を定めている事業主には、65歳までの定年引上げ、定年制の廃止、65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかによる雇用確保措置が求められています。

65歳から70歳までについては、就業機会を確保するための措置を講ずることが事業主の努力義務です。70歳定年がすべての会社に義務付けられているわけではありません。

厚生労働省|高齢者雇用対策ラボ 事業主の方へ

ここで注意したいのは、65歳までの雇用確保義務があるから、新しい会社が60代の応募者を必ず採用し、65歳まで雇用しなければならないという意味ではないことです。転職先で適用される定年・継続雇用制度を個別に確認します。

有期雇用なら、次の点も確認してください。

  • 契約期間
  • 契約更新の有無
  • 更新判断の基準
  • 更新回数・通算契約期間の上限
  • 無期転換後の定年等の扱い

求人票だけで分からなければ、選考中または労働条件の提示時に確認します。

確認2|給与は平均年収ではなく、実際の提示条件で比較する

60代薬剤師の平均年収を調べることは、全体像を知る参考にはなります。しかし平均値から、自分が転職時に提示される給与を決めることはできません。

厚生労働省の職業情報提供サイト job tag では薬剤師の賃金統計等を確認できますが、統計値はさまざまな地域・勤務先・年齢・役割の労働者を集計したものです。

厚生労働省 職業情報提供サイト job tag|薬剤師

転職判断では、現在応募できる求人を複数見て、最終的に企業から示される条件を比較します。

  • 基本給
  • 役職・資格・地域等の手当
  • 固定残業代の有無
  • 賞与
  • 勤務日数・所定労働時間
  • 契約更新・定年後の条件

過去の年収が高かったから同額が当然とも、60代だから大幅に下がって当然とも考えません。応募職務と労働条件を見て判断します。

確認3|勤務日数・時間・業務負荷は年齢ではなく自分の条件で決める

体力面を確認することは重要ですが、60代を一括りにして勤務能力を推測する必要はありません。

自分が今後も無理なく続けられる条件を具体的にします。

  • 週何日働きたいか
  • 1日何時間程度なら継続しやすいか
  • 土日・夜間勤務は可能か
  • 立ち仕事が続く時間
  • 一人薬剤師になる時間帯
  • 在宅訪問や自動車運転の有無
  • 他店舗への応援勤務・異動範囲
  • 残業が発生しやすい業務

処方箋が1日40枚以下なら負担が軽い、といった固定基準では判断しません。処方内容、一包化、在宅、電話、薬剤師・事務員配置などによって業務負荷は異なります。

一人薬剤師の働き方に不安がある場合は、休憩や応援体制まで含めて次の記事で確認できます。

関連記事:一人薬剤師が限界と感じたら?休憩・応援体制・辞め時の判断基準を元人事部長が解説

確認4|直近の経験と応募先の仕事内容が合っているか

60代という年齢より、採用時に確認しやすいのは、直近までどの仕事を担当してきたかです。

  • 調剤・監査・服薬指導
  • 主な応需科目
  • 在宅訪問
  • 管理薬剤師業務
  • 在庫・発注管理
  • 新人・後輩教育
  • 店舗運営・シフト等への関与
  • ブランク期間

長い経験年数があっても、応募先で求める仕事と異なれば、入社後に新しく覚えることがあります。逆に、直近の担当業務と求人内容が近ければ、その経験を職務経歴書で具体的に示せます。

書類選考での経験の整理方法は、次の記事で詳しく解説しています。

関連記事:薬剤師が書類選考で落ちる理由|職務経歴書で採用側が見るポイントを元人事部長が解説

確認5|電子薬歴など未経験のシステムは教育体制を見る

電子薬歴、レセコン、調剤機器、オンライン服薬指導など、転職先で使用する仕組みが現在の職場と異なることがあります。

これは60代だけの問題ではありません。年齢にかかわらず、初めて使うシステムなら慣れるための期間が必要です。

面接や職場見学では、次のような事項を確認します。

  • 電子薬歴・レセコンの種類
  • 入社時の操作研修
  • マニュアルの有無
  • OJT担当者
  • 操作に迷った場合の質問先

患者情報が表示される実システムを見学者として操作させてもらうことを前提にはせず、研修方法や操作画面の説明など、企業が可能な範囲で確認します。

確認6|経験者採用でも入社後のOJTを確認する

実務経験が長くても、新しい会社では社内ルール、採用品目、薬歴運用、疑義照会の連絡方法、在庫管理方法などが変わります。

経験者だから初日からすべてできることを前提にせず、次の点を確認します。

  • 入社時研修の内容
  • OJT期間
  • 最初の配属店舗
  • 一人勤務を担当する場合、その開始時期
  • 業務上の相談先

特に、前職と異なる業態へ移る場合や、長いブランクがある場合は、応募時点で必要な研修内容を確認しておくと入社後のミスマッチを減らせます。

元人事部長として採用時に確認していたこと

私が調剤薬局チェーンで中途採用を担当していた際も、年齢だけで応募者の働き方を決めるのではなく、その求人で必要な業務と本人の経験を照合していました。

たとえば確認していたのは、直近の担当業務、希望する勤務時間、管理薬剤師等の役割を希望するか、どの程度新しい業務を覚える必要があるか、といった内容です。

長年勤務していること自体を即戦力と評価するのではなく、これまで何を担当し、新しい職場では何を引き継いで使えるのかを見る方が採用判断には役立ちます。

これは私が採用側で見ていた範囲でのExperienceです。すべての薬局・企業が同じ採用基準を採っているわけではありません。

退職理由は、次の職場で避けたい条件へ変換する

前職の人間関係に問題があったから、本人のコミュニケーションにも問題があると決めつけることはできません。ハラスメント、組織運営、役割分担など職場側の要因も考えられます。

転職先選びでは、誰が悪かったかを決めるより、前職で困ったことを次の確認条件へ変えます。

前職で困ったこと次の職場で確認すること
一人勤務が負担だった一人薬剤師になる時間帯と応援体制
異動が多かった勤務地・異動範囲
教育がほとんどなかった入社時研修・OJT
役割が曖昧だった配属後の仕事内容と責任範囲
勤務時間が合わなかったシフト・残業・休日
定年後の条件が想定と違った定年・再雇用・契約更新条件

こうして整理すると、退職理由が転職先を選ぶための確認項目になります。

保存用|60代薬剤師の求人比較チェック表

項目確認内容
雇用形態正社員・契約社員・パート等
定年定年年齢と適用対象
継続雇用再雇用・勤務延長の制度と上限
有期契約契約期間・更新基準・更新上限
給与基本給・手当・賞与・固定残業代
勤務日数・時間・休日・残業
勤務地配属先・異動範囲・応援勤務
仕事内容外来・在宅・管理業務等の担当範囲
一人勤務一人薬剤師になる時間帯・応援体制
システム電子薬歴・レセコン・調剤機器
教育入社時研修・OJT・相談先
運転在宅訪問等で自動車運転が必要か

求人票で分からない項目は面接・職場見学・条件提示時に確認します。最終的には企業から示された労働条件と、自分が優先する条件を照合してください。

転職先を求人票だけで判断しないための確認方法は、次の記事で詳しく整理しています。

関連記事:ブラック薬局の見分け方|求人票・面接・職場見学で確認する9項目を元人事部長が解説

転職サービスを使う場合は、現在応募できる求人を確認する手段として使う

転職サービスを利用する場合も、自分の市場価値を一つの金額で判定してもらうことを目的にする必要はありません。

利用するなら、現在の年齢・経験・希望勤務日数等で応募できる求人を確認し、雇用形態や定年、仕事内容、提示条件を比較するための情報源の一つとして使います。

企業へ直接応募する方法、ハローワーク、求人媒体などもあります。複数の方法から自分に合う応募経路を選べます。

関連記事:薬剤師転職エージェントおすすめ3社比較|元人事部長が採用側の実体験で解説

一次資料

FAQ

60代でも薬剤師として転職できますか?

60代という年齢だけから転職できないとは言えません。募集・採用の年齢制限は原則禁止されていますが例外もあり、求人ごとに雇用形態、定年、職務内容等が異なります。年齢だけで判断せず、現在応募できる求人と自分の経験・勤務条件を照合してください。

60代薬剤師の適正年収はいくらですか?

一つの金額に決めることはできません。統計上の平均年収は参考になりますが、実際の提示条件は地域、勤務時間、雇用形態、仕事内容、役割等で変わります。現在応募可能な求人を複数確認し、最終提示条件で比較します。

65歳まで働けることは法律で保障されていますか?

高年齢者雇用安定法では、65歳未満の定年を定める事業主に65歳までの雇用確保措置が求められていますが、新しい会社が60代の応募者を必ず採用するという制度ではありません。転職先の定年・継続雇用制度・契約条件を個別に確認してください。

70歳まで雇用することは企業の義務ですか?

70歳までの就業機会確保は努力義務であり、すべての会社に70歳定年が義務付けられているわけではありません。65歳以降も働きたい場合は、応募先がどのような制度を設けているか確認します。

電子薬歴に慣れていなくても転職できますか?

使用経験だけで一律に判断することはできません。応募先で使うシステム、入社時研修、OJT、質問先を確認します。未経験のシステムがあるなら、面接で現在の経験を伝えたうえで、習得方法を確認しておくとミスマッチを減らせます。

シニア歓迎の求人でも不採用になることはありますか?

あります。ただし企業から理由が示されなければ、年齢が原因だったとは断定できません。応募要件、勤務条件、経験、採用人数、他候補者等の要因があります。書類選考では応募先の仕事と自分の経験が分かるように整理します。

60代から未経験の在宅業務へ応募できますか?

年齢だけでは判断できません。未経験可の求人であれば応募を検討できますが、求人ごとの経験要件、研修体制、在宅訪問の方法、自動車運転の要否などを確認してください。60代だから歓迎される、あるいは60代だから難しいと一律には言えません。

まとめ|60代だから条件を決めるのではなく、これからの働き方で比較する

60代の薬剤師転職では、年齢を理由に必要以上に条件を下げる必要も、長い経験年数だけで高い条件を期待する必要もありません。

  • 現職の継続雇用と他社転職を同じ項目で比較する
  • 転職先の定年・再雇用・契約更新を確認する
  • 平均年収ではなく実際の提示条件を比較する
  • 勤務日数・時間・業務負荷を自分の条件で決める
  • 直近の経験と応募先の仕事内容を照合する
  • 未経験のシステムや業務には研修・OJTがあるか確認する
  • 前職で困ったことを次の職場の確認条件へ変える

60代の転職で重要なのは、年齢に対する採用側の本音を推測することではありません。自分が今後どのように働きたいかを決め、その働き方を実現できる雇用条件かを確認することです。

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