- 管理薬剤師がスタッフへ注意・指導するときに、最初に確認したい責務と権限
- ミスや手順逸脱を、人格批判にせず伝えるための整理方法
- 適正な業務指示・指導とパワーハラスメントを分けて考えるポイント
- 同じ問題が繰り返される場合の記録、上司・人事、薬局開設者へのつなぎ方
管理薬剤師として働いていると、スタッフのミスや手順逸脱、役割上の問題に気づいても、どこまで自分が指摘してよいのか、強く言えばパワハラにならないかと迷うことがあります。
最初に整理しておきたいのは、管理薬剤師に必要なのは、スタッフから嫌われることでも、強く叱ることでもありません。薬局の管理者として必要な監督を行い、自分に与えられた権限の範囲で、確認できた事実と基準をもとに改善を求めることです。
医薬品医療機器等法(薬機法)第8条では、薬局の管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないよう、薬剤師その他の従業者を監督し、薬局の構造設備や医薬品その他の物品を管理し、薬局業務について必要な注意を払うこととされています。
一方で、管理薬剤師という立場だけで、人事評価、昇給、配置転換、懲戒など会社上のすべての権限を持つとは限りません。この記事では、薬機法上の薬局管理と会社上の人事権限を分けながら、現場で注意・指導が必要になったときの確認順を整理します。
結論|管理薬剤師は必要な指導を避けず、権限と事実を基準に伝える
薬機法は従業者の監督を管理薬剤師の役割としている
薬局では、患者安全、医薬品管理、調剤手順、法令遵守などについて、管理薬剤師が確認や指示を行わなければならない場面があります。
そのため、スタッフとの関係が悪くなることを心配して、必要な問題まで見なかったことにするのは適切ではありません。ただし、管理薬剤師の責務があることは、高圧的な言い方や人格否定を正当化する理由にもなりません。
まずは、自分が何を管理する役割なのか、どの事実を確認したのか、どの基準から外れているのかを整理します。そのうえで、相手の説明も確認し、必要な改善行動を具体的に伝えます。
指導することと高圧的に接することは別
スタッフへ注意する場面では、厳しく言うか、優しく言うかという二択にしないことが大切です。目的は相手を萎縮させることではなく、業務上必要な状態へ戻すことです。
患者安全に直結する問題であれば、その場で業務を止めたり、確認をやり直したりする必要がある場合もあります。一方、単なる方法の違いや好みの違いなら、管理者のやり方を一方的に押し付ける前に、どの基準を優先するのかを確認します。
人事評価・懲戒など会社上の権限は別に確認する
管理薬剤師は薬局管理上の責務を持ちますが、会社組織では店長、薬局長、エリアマネージャー、人事部などが別に権限を持つことがあります。
たとえば、業務手順を守るよう指示することと、本人の評価を下げることは別です。再教育を依頼することと、懲戒処分を決めることも別です。会社の職務権限規程、就業規則、社内ルール等で、自分がどこまで判断できるかを確認してください。
管理薬剤師にある薬局管理の責務と権限を確認する
薬機法第8条の従業者監督
薬機法第8条は、薬局の管理者について、従業者の監督、構造設備や医薬品等の管理、薬局業務について必要な注意を行うことを定めています。
また、薬局管理に関して必要があると認めるときは、薬局開設者へ必要な意見を書面で述べなければならないとされています。
この仕組みを見ると、管理薬剤師は単に調剤業務を行う薬剤師の代表者ではなく、薬局業務を適切に運営するための管理者として位置づけられていることが分かります。
業務指示・監督に関する権限を明確にする
厚生労働省「薬局開設者及び医薬品の販売業者の法令遵守に関するガイドライン」では、管理者が適切に業務を遂行できるよう、薬剤師その他の従業者への業務指示・監督等に必要な権限を明確にし、その内容を社内で周知することが求められています。
管理薬剤師本人が、どこまで指示できるのか分からない状態では、必要な是正も行いにくくなります。着任時や組織変更時には、薬局管理上の権限、店長等との役割分担、上位者への報告先を確認しておくと判断しやすくなります。
店長・薬局長など会社上の肩書との指揮命令系統を確認する
会社によっては、管理薬剤師とは別に店長、薬局長、店舗責任者などの役職を置いています。管理薬剤師が人事上の上司とは限りません。
この場合、薬局管理に関する指示は管理薬剤師、人事評価や勤怠承認は店長、配置や懲戒はエリアマネージャー・人事というように、権限が分かれていることがあります。
誰が最終判断者か分からないままスタッフへ強い指示を出すと、本人だけでなく管理者側も困ります。問題が起きたときだけではなく、平時から指揮命令系統を確認しておくことが重要です。
スタッフへの注意が必要な場面を3つに分ける
患者安全・法令・手順に関わる問題
調剤、監査、医薬品管理、情報管理などで患者安全や法令遵守に関わる問題がある場合は、管理薬剤師として確認を先送りしにくい領域です。
ただし、問題があると思った時点で相手を責めるのではなく、まず事実を確認します。実際に何が行われたのか、どのルールが適用されるのか、例外運用はなかったのかを確認してください。
担当業務・役割上の問題
引き継ぎ漏れ、期限遅れ、決められた担当業務が行われていないなど、患者安全へ直結しなくてもチーム運営上は確認が必要な問題があります。
この場合も、本人が役割を理解していたか、期限や基準が明確だったか、必要な情報や時間が与えられていたかを確認します。指示が曖昧だったのに、結果だけを見て本人の責任にするのは避けます。
単なる方法・価値観・意見の違い
自分とやり方が違うだけで、法令・安全・社内手順に反していない場合もあります。
この場合は是正指導より、論点をそろえた話し合いが向いています。職場で意見が合わないときの整理方法は、薬剤師の職場で意見が合わないときの対処法で詳しく整理しています。
注意する前に本人の説明を確認する
まず何が起きたのか事実をそろえる
注意する前に、日時、場所、対象業務、確認できた行動、関係する手順などを整理します。
「いつも雑だ」「責任感がない」のような評価語ではなく、第三者が読んでも何があったか分かる事実へ置き換えるのが基本です。
別の指示や例外対応がなかったか確認する
本人には本人なりの理由があるかもしれません。別の上司から異なる指示を受けていた、手順書と実際の運用が一致していなかった、患者対応上の事情があったなど、背景を確認しなければ判断できないことがあります。
たとえば、最初に次のように確認できます。
「この手順になった経緯を確認したいのですが、当時どのような判断をしましたか?」
先に理由を聞くことで、本人の認識違いなのか、教育や仕組み側の問題なのかを切り分けやすくなります。
教育不足・手順不備・人員配置等の組織要因も確認する
同じミスが複数人で起きているなら、個人指導だけでは解決しない場合があります。
- 手順書が実態と合っていない
- 教育を受ける機会がない
- 確認工程に必要な時間が確保されていない
- 役割分担が曖昧
- 人員配置や業務量に無理がある
などの可能性も確認します。問題行動を見過ごさないことと、すべてを本人の性格や能力の問題にすることは別です。
注意・指導は4つの要素で整理する
事実|確認できた行動を伝える
最初に、実際に確認できた事実を伝えます。
「今日の監査で、確認欄への記録がない処方が2件ありました。」
ここで「あなたはいつも確認が甘い」のように人格・能力へ広げないことが大切です。
基準|法令・手順・会社ルール・役割を示す
次に、何と比較して問題だと判断しているのかを示します。
「当薬局の手順では、この工程を実施した後に確認欄へ記録することになっています。」
基準が曖昧なら、本人へ改善を求める前に管理側でルールを整理する必要があります。
影響|患者安全や業務への影響を説明する
なぜその行動を変える必要があるのかを説明します。影響を過度に大きく言う必要はありません。
「確認した記録が残らないと、後から工程を追えなくなるため、実施したことが分かる形にそろえたいです。」
事故が起きていない段階で「免許を失う」「患者に重大な被害が出る」と断定すると、必要以上に威圧的になることがあります。実際の影響に合わせて説明します。
次の行動|いつから何を変えるかをそろえる
最後に、次回から何をしてほしいのかを具体的にします。
「次の勤務から、この工程を終えた時点で確認欄へ記録してください。分かりにくい点があれば、その場で確認してください。」
指導後に本人が何をすればよいか分からなければ、注意だけが残ってしまいます。改善行動と確認時期までそろえると、次のフォローもしやすくなります。
患者安全・法令遵守に関わる問題は曖昧にしない
まず安全確保を優先する
患者安全に関わる問題が進行中の場合、丁寧なフィードバックの場を設定するより前に、業務を止める、再確認する、別の薬剤師へ確認を依頼するなど、安全確保を優先する必要があります。
その場で必要な対応を行った後、落ち着いて原因と再発防止を整理します。
法令・手順書等へ戻って判断する
管理者の記憶や慣習だけで判断せず、必要に応じて法令、通知、社内手順書、医薬品の添付文書や業務マニュアル等へ戻ります。
古くから行われている方法でも、現在の基準と合っているとは限りません。反対に、新任管理薬剤師が以前の方法を知らないだけで、会社が正式に認めた運用である場合もあります。
対応後に記録と再発防止を行う
患者安全や法令遵守上の問題であれば、個人への注意だけで終わらせず、必要な報告、記録、手順見直し、教育まで確認します。
個人の注意力だけに依存した再発防止は続きにくいため、仕組みで防げる部分がないかも検討します。
適正な指導とパワハラは同じではない
適正な業務指示・指導は直ちにパワハラではない
厚生労働省の職場におけるパワーハラスメント防止に関する指針では、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、職場のパワーハラスメントには該当しないと整理されています。
つまり、スタッフを注意したという事実だけでパワハラになるわけではありません。同時に、業務上の指導という名前を付ければ何をしてもよいわけでもありません。
パワハラは3つの要素をすべて満たすかで確認する
厚生労働省は、職場のパワーハラスメントについて、次の3要素をすべて満たすものと整理しています。
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
- 労働者の就業環境が害されること
管理薬剤師と一般スタッフという役割関係があっても、必要かつ相当な業務指示であれば、直ちにパワハラと判断されるわけではありません。
目的だけでなく態様・頻度・継続性等を総合的に見る
「患者のため」「本人の成長のため」という目的を持っていれば、どのような伝え方でも適切になるわけではありません。
厚生労働省の指針では、目的だけでなく、問題行動の有無や程度、経緯、業務の性質、言動の態様、頻度、継続性、本人の状態、当事者間の関係性などを総合的に考慮するとしています。
そのため、同じ内容を伝える場合でも、大声で長時間責め続けることと、事実を確認して必要事項を伝えることは同じではありません。
人格否定・必要以上の長時間叱責・繰り返す威圧等は避ける
業務上の注意であっても、「向いていない」「だから駄目なんだ」のように人格・能力全体を否定する言い方へ広げる必要はありません。
通常のフィードバックでは、本人が事情を説明でき、不必要にさらし者にならない環境を選ぶと話しやすくなります。一方で、患者安全上すぐ止める必要がある行動なら、その場で短く明確に指示することもあります。
ハラスメントそのものに悩んでいる場合の記録・相談先・安全確保は、薬剤師のパワハラ・モラハラ・セクハラ対策で別に整理しています。
相手の経験段階によって確認する内容を変える
年上・ベテラン薬剤師には経験を尊重しつつ役割を明確にする
年上・経験年数の長いスタッフへ伝える場合も、患者安全や業務基準を曖昧にする必要はありません。一方、経験者が持つ知識や現場事情を確認することには意味があります。
年上の薬剤師への具体的な指示・注意の伝え方は、年上の部下への指示・注意の伝え方で詳しく整理しています。
新人薬剤師には是正だけでなくOJT設計を確認する
新人が同じミスを繰り返している場合、本人への注意だけでなく、そもそも教えたか、練習機会があったか、誰が確認するかが決まっているかを見直す必要があります。
新人・中途入職者のOJT設計は、新人薬剤師の指導方法|OJTで育てる7つのポイントへ分けます。
同じ問題が繰り返されるときは記録を残す
日時・事実・基準・本人の説明を整理する
同じ問題が繰り返される場合は、記憶だけで管理しないようにします。
- いつ起きたか
- 何が起きたか
- どの基準を確認したか
- 本人はどのように説明したか
- 管理者から何を伝えたか
を整理します。記録は相手を追い込むためではなく、事実関係をそろえ、次の対応を判断するために使います。
伝えた内容と次の確認時期を残す
改善を求めた場合は、何を変えることになったのか、いつ確認するのかも残します。
翌日からできる単純な手順なのか、研修が必要なのかによって確認時期は変わります。一律に1週間後などと決める必要はありません。
再教育・手順改善・人員体制のどこに問題があるか確認する
注意しても同じ問題が続く場合は、本人の理解だけでなく、教育方法、手順書、業務量、人員配置、役割分担などを確認します。
複数人に同じ問題が起きるなら、個人だけを原因と考えない方がよい場合があります。
人事措置が必要なら上司・人事へつなぐ
改善指導を繰り返しても問題が続き、人事評価、配置、懲戒等の検討が必要になる場合は、会社の正式な権限者へつなぎます。
管理薬剤師が薬局管理上の問題を把握し報告することと、会社として人事措置を決めることを分けて扱います。
薬局開設者・本部へ意見を上げる必要がある場合
法令遵守上の問題を管理薬剤師一人で抱えない
現場スタッフへの指導だけでは解決できず、薬局の運営方針や組織体制そのものに法令遵守上の問題がある場合は、管理薬剤師だけで抱え込まないことが重要です。
たとえば、必要な設備・人員・手順等について現場では改善できない場合、上位者や薬局開設者へ問題を上げる必要があります。
薬機法第8条に書面による意見申述義務がある
薬機法第8条では、薬局管理について必要があると認めるとき、管理者は薬局開設者へ必要な意見を書面で述べなければならないとされています。
厚生労働省の法令遵守ガイドラインでも、法令遵守上の問題を認識した場合の報告・意見申述と、そのための社内体制を整えることが示されています。
これは経営者と対立するための制度ではありません。現場で把握した問題を、個人間の口論ではなく、組織として検討できるルートへ乗せるための仕組みとして理解した方が実務的です。
開設者側にも意見を尊重し措置を検討する仕組みがある
薬局開設者側も、管理者の意見を尊重し、法令遵守のために必要な措置を検討します。措置を講じた場合だけでなく、講じないと判断した場合も、その内容や理由を記録する仕組みが設けられています。
そのため、重大な懸念がある場合は、口頭で繰り返し訴えるだけではなく、会社の正式な報告・意見申述ルートを確認してください。
元人事部長の経験|指導相談では誰が悪いかより確認順をそろえる
人事側で管理職から指導について相談を受けるとき、私は相手の性格評価より先に、誰が何を決める役割なのか、何が起きたのか、どの基準から外れたのか、本人にはどう説明したのか、次にどの行動を求めるのかを確認していました。
管理者から見ると本人の問題に見えていても、話を整理すると、教育不足や複数上司からの指示不一致、役割の曖昧さが背景にあることもあります。
誰が何を決める役割なのか
管理薬剤師が決められることなのか、店長・エリアマネージャー・本部・人事等の判断が必要なのかを先に確認します。
何が起きたのか
本人への印象ではなく、実際に起きた行動や結果を確認します。ここが曖昧なままでは、指導内容も曖昧になります。
どの基準から外れたのか
法令、会社手順、役割分担、合意した目標など、何を基準に改善を求めているのかを確認します。
次に何を変えてほしいのか
注意したという事実だけで終わらず、本人が次から何をすればよいかまでそろえます。必要なら教育担当者や確認者も決めます。
保存用|スタッフへ指導する前後のチェックリスト
注意しなければならないと感じたときほど、すぐに結論を出すのではなく、短い確認表を使うと整理しやすくなります。すべてを書面化する必要はありませんが、重大な問題や繰り返す問題では、後から経緯を確認できる形にしておくと上司・人事へ相談するときにも役立ちます。
| タイミング | 確認すること |
|---|---|
| 指導前 | 何が起きたのか、第三者にも説明できる事実があるか |
| 指導前 | 法令・手順・役割・会社ルールのどれを基準にするか |
| 指導前 | 自分にその業務を指示・監督する権限があるか |
| 指導前 | 患者安全上、先に止めるべき業務がないか |
| 面談時 | 本人の説明、別指示、例外事情を確認したか |
| 面談時 | 人格ではなく事実と基準を伝えたか |
| 面談時 | 次回から求める行動を具体化したか |
| 指導後 | 再確認する時期と方法を決めたか |
| 指導後 | 教育・手順・人員配置等の組織要因を確認したか |
| 繰り返す場合 | 上司・人事・開設者等へつなぐ必要があるか |
指導の目的を相手を言い負かすことにしない
資料や数字を用意するときも、相手を追い込むためではなく、認識をそろえるために使います。たとえばヒヤリ・ハット件数や処理遅延の件数を示す場合、数字そのものだけで本人の能力を評価するのではなく、いつ・どの場面で何が起きているかを確認します。
本人から別の原因が示された場合は、その内容も検討してください。管理者が最初に考えた原因と、実際の原因が一致しないことはあります。指導は結論を押し付ける場ではなく、必要な改善を合意できる状態へ近づける場として使います。
指導後は改善したかを確認する
一度伝えて終わりではなく、改善行動が実行できたかを確認します。改善していれば、その事実を確認し、必要以上に過去の問題を引きずらないことも大切です。
一方、理解しているのに同じ問題が続く、本人だけでは改善できない、周囲にも同様の問題がある場合は、個人指導から教育・業務設計・人員配置・人事上の対応へ論点を切り替えます。
本人から指導内容への異論が出た場合も、反抗的だと決めつける必要はありません。基準の読み方が違うのか、事実認識が違うのか、本人が別のリスクを見ているのかを確認します。特に医療安全に関する異論であれば、管理者の立場だけで押し切らず、必要に応じて手順書、添付文書、社内の安全管理担当者などへ戻って確認します。
指導した側も判断を修正することがあります。管理薬剤師が最終的に責任を持って判断する場面と、専門部署や上位者へ確認すべき場面を分けることで、スタッフにも説明可能な管理がしやすくなります。判断根拠を残しておくことも有効です。
管理薬剤師のスタッフ指導でよくある質問
- スタッフを注意するとパワハラになりますか?
-
注意したことだけでパワハラになるわけではありません。厚生労働省は、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示・指導は、職場のパワーハラスメントには該当しないと整理しています。一方、業務上の必要性、言動の態様、頻度・継続性などを含めて個別に判断するため、業務指導という名称だけで強い言動が正当化されるわけでもありません。
- スタッフが薬局の手順に従ってくれません。すぐに注意してよいですか?
-
まず、その手順が現在の正式な基準なのか、本人が手順を理解していたか、例外対応や別の指示がなかったかを確認してください。そのうえで、事実・基準・影響・次の行動を整理して伝えます。患者安全に直結する問題が進行中なら、先に安全確保を行います。
- 年上の薬剤師へ注意しにくいです。
-
年齢や経験への敬意と、業務上必要な指示・注意は分けて考えます。年上・ベテラン薬剤師への具体的な伝え方は、年上の部下への指示・注意の記事で詳しく整理しています。
- 管理薬剤師はスタッフの人事評価や懲戒を決められますか?
-
薬機法上の薬局管理権限と、会社上の人事権限は同じではありません。管理薬剤師として業務上必要な指示・監督を行うことはありますが、人事評価、配置転換、懲戒等を誰が決めるかは会社の職務権限や就業規則等を確認してください。
- 薬局開設者や本部の指示に法令遵守上の問題があると感じたらどうしますか?
-
問題の内容と根拠を確認し、会社の報告ルートを使って上位者へ共有します。薬機法第8条では、薬局管理について必要があると認める場合、管理者が薬局開設者へ必要な意見を書面で述べることが定められています。重大な問題を個人間の対立にせず、正式な法令遵守体制へつなげることが重要です。
まとめ|好かれる・嫌われるではなく、役割・事実・基準で判断する
管理薬剤師に必要なのは、スタッフから嫌われることを恐れない精神論ではありません。
薬局管理上の自分の責務と権限を確認し、何が起きたのかを事実で把握し、法令・手順・役割等の基準へ戻り、本人の説明も聞いたうえで、次に求める行動を具体的に伝えることが基本です。
患者安全や法令遵守に関わる問題は曖昧にせず、一方で単なる意見の違いまで是正指導へ広げないようにします。問題が繰り返される場合は記録を残し、人事措置が必要なら上司・人事へ、法令遵守上の組織的な問題なら薬局開設者への報告・意見申述へつなげます。
好かれる管理者か、厳しい管理者かではなく、必要な場面で、付与された権限の範囲内で、事実と基準に沿って説明できる管理薬剤師であることを目指す方が、現場でも判断しやすくなります。
