調剤ベースアップ評価料とは?2026年の対象職員・4点・賃上げルールを解説

この記事でわかること
  • 2026年6月に新設された調剤ベースアップ評価料の仕組み
  • 4点と2027年6月以降の8点が、薬剤師個人の給与とどう関係するのか
  • 管理薬剤師・40歳以上の薬剤師など、対象職員から除外される人
  • 評価料収入を基本給・固定手当・賞与等へ充てる際のルール
  • 制度上の対象・対象外と、勤務先独自の人事制度を分けて考える方法

2026年度(令和8年度)診療報酬改定では、保険薬局で働く薬剤師や事務職員等の賃上げを支援するため、調剤ベースアップ評価料が新設されました。

2026年6月からは処方箋受付1回につき4点、2027年6月以降は所定点数の200%に相当する8点を算定する仕組みです。厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」

一方で、この制度については誤解しやすい点があります。

  • 4点がそのまま担当薬剤師へ支払われるわけではない
  • すべての薬剤師が賃金改善の対象になるわけではない
  • 国が示す3.2%という数字が、個人の給与3.2%アップを保証するわけではない
  • 管理薬剤師や40歳以上の薬剤師は、調剤ベースアップ評価料による賃金改善の対象職員から除外されている

制度上の賃上げと、会社独自の昇給・給与制度は分けて考える必要があります。

この記事では、厚生労働省が公表している2026年度診療報酬改定資料、施設基準通知、疑義解釈等をもとに、調剤ベースアップ評価料の仕組みを薬局で働く薬剤師の立場から整理します。

※制度情報は2026年8月時点で確認しています。実際の届出・報告を行う場合は、厚生労働省・地方厚生(支)局の最新資料を確認してください。

目次

調剤ベースアップ評価料とは

調剤ベースアップ評価料は、保険薬局に勤務する対象職員の賃金改善を図る体制を評価する診療報酬です。

施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局へ届け出た保険薬局が調剤した場合に、処方箋受付1回につき算定します。

時期調剤ベースアップ評価料
2026年6月~4点/処方箋受付1回
2027年6月~8点/処方箋受付1回
※4点の200%

1点は10円なので、4点は診療報酬上40円、8点は80円に相当します。ただし、これは薬局が得る診療報酬上の収入です。

処方箋1枚につき40円を担当薬剤師へ支払う仕組みではありません。また、薬局の処方箋枚数から評価料収入を計算し、それを対象職員数で単純に割れば個人の昇給額が分かるという仕組みでもありません。

3.2%の賃上げは薬剤師個人への保証ではない

2026年度診療報酬改定では、薬局の対象職員について2026年度に3.2%、2027年度にさらに3.2%のベースアップ実現を支援する方針が示されています。事務職員については、それぞれ5.7%が示されています。厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】(抜粋)」

ただし、この数字は個々の薬剤師に3.2%の賃上げを保証する数字ではありません。

厚生労働省の疑義解釈でも、ベースアップ評価料を算定して3.2%または5.7%のベースアップを達成できない場合であっても、評価料の算定は可能とされています。その場合も、評価料によって得られる収入は施設基準に従って対象職員の賃金改善に用いる必要があります。厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その2)」

したがって、薬剤師の平均年収に3.2%を掛けて、自分の年収が必ずその金額だけ上がると計算することはできません。

2026年度調剤報酬改定全体と薬剤師の給与の関係については、別の記事で詳しく整理しています。

関連記事:2026年調剤報酬改定で薬剤師の給与は上がる?元人事部長がキャリアへの影響を解説

調剤ベースアップ評価料の対象職員

調剤ベースアップ評価料でもっとも重要なのが、評価料の収入を用いて賃金改善できる対象職員が限定されていることです。

施設基準通知では、保険薬局に勤務する職員から次の者を除いた人を対象職員としています。厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」第109 調剤ベースアップ評価料

  • 事業主
  • 使用者
  • 開設者
  • 管理者
  • 40歳以上の薬剤師
  • 業務委託により勤務する者

さらに、他の保険薬局や事業所を主たる勤務先とし、その薬局で調剤業務等に直接従事していない管理的業務の専従者についても対象職員に含めないとされています。本部職員やエリアマネージャー等が例示されています。

ただし、本部職員・エリアマネージャーという役職名だけで一律に対象外になるわけではありません。2026年4月1日付の疑義解釈では、保険薬局で調剤業務や保険請求事務等を主として行いながら管理業務を兼務する場合、その実績がある月は対象職員として取り扱ってよいとされています。厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その2)」

管理薬剤師は年齢にかかわらず対象外

管理薬剤師については、厚生労働省の疑義解釈で明確に確認されています。

管理薬剤師は調剤ベースアップ評価料による賃金改善の対象職員にはなりません。したがって、30代の管理薬剤師であっても、40歳未満だから対象になるという扱いではありません。厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その1)」

40歳以上という除外は薬剤師に対するもの

もう一つ注意したいのが、40歳という年齢基準です。

施設基準で除外されているのは40歳以上の薬剤師です。40歳以上の職員が全員対象外になる制度ではありません。

したがって、事務職員については、40歳以上であるという理由だけで対象外になる規定ではありません。

職員基本的な扱い
40歳未満の勤務薬剤師他の除外要件に該当しなければ対象
管理薬剤師対象外
40歳以上の薬剤師対象外
事務職員他の除外要件に該当しなければ対象
業務委託職員対象外
本部職員・エリアマネージャー等主たる勤務先と実際の業務内容によって判断

派遣職員は一定の条件を満たせば対象にできる

派遣職員は、業務委託職員とは取扱いが異なります。

厚生労働省の疑義解釈では、派遣元と相談・協力したうえで、薬局に勤務する直接雇用職員と同程度以上の賃金改善を行うことなど、所定の要件を満たす場合には、派遣職員を対象に含めることが可能とされています。一方、請負業務を行う業務委託職員は対象外です。厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その2)」

管理薬剤師とエリアマネージャーなどの企業内管理職は役割が異なります。管理職キャリアについては次の記事で整理しています。

関連記事:薬剤師のエリアマネージャー・SVとは?仕事内容・年収・向いている人を元人事部長が解説

評価料の収入は何に使われるのか

調剤ベースアップ評価料を算定した薬局は、その収入を自由に利益として残せるわけではありません。

施設基準では、評価料によって得られる収入を対象職員の次のような賃金改善に用いることとされています。厚生労働省「調剤ベースアップ評価料の施設基準」

  • 基本給の引上げ
  • 決まって毎月支払われる手当の引上げ
  • 基本給等の引上げに伴って増加する賞与
  • 基本給等の引上げに伴って増加する時間外手当
  • 基本給等の引上げに伴って増加する法定福利費の事業者負担分等

このため、評価料収入の全額が対象職員の手取り給与としてそのまま配られるわけではありません。基本給等の増加に伴う会社負担の社会保険料等も制度上の使途に含まれます。

定期昇給とベースアップは同じではない

この制度でいうベースアップは、賃金表の改定などによって、同じ年齢・職位の職員の賃金水準自体を引き上げることを指します。勤続年数や年齢が上がったことによる通常の定期昇給とは区別されます。厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】(抜粋)」

賞与だけで処理するのが原則ではない

基本となるのは、基本給または決まって毎月支払われる手当を引き上げるベア等です。

ただし、すでにベア等を実施した薬局で、処方箋受付回数の変動等により評価料収入がベア等に用いた金額を上回り、追加のベア等を行うことが困難な場合に限り、賞与等の手当など、ベア等以外の方法による賃金改善も認められています。厚生労働省「調剤ベースアップ評価料の施設基準」

したがって、賞与には絶対に使えないと説明するのも、余った評価料は必ず期末賞与として支給されると説明するのも正確ではありません。

評価料以外の固定賃金を下げて帳尻を合わせてよいわけではない

施設基準では、調剤ベースアップ評価料によって賃金改善を行う項目以外の賃金項目について、業績等に応じて変動するものを除き、水準を低下させてはならないとされています。

つまり、評価料による手当を新設する一方で、別の固定手当を同額減らして形式上だけ賃金改善したように見せることは、制度の考え方と整合しません。

なお、事業継続のために対象職員の賃金水準を引き下げたうえで賃金改善を行う必要がある場合には、薬局の収支状況や賃金水準の引下げ内容等を記載した特別事情届出書を提出する仕組みがあります。厚生労働省「調剤ベースアップ評価料の施設基準」

管理薬剤師や40歳以上の薬剤師は昇給できないのか

ここは制度と会社の人事制度を分けて考える必要があります。

管理薬剤師や40歳以上の薬剤師が対象外なのは、調剤ベースアップ評価料によって得た収入を使った賃金改善です。

勤務先が自社の利益やその他の原資を使って、管理薬剤師や40歳以上の薬剤師を昇給させることまで禁止されているわけではありません。

人事側から見ると、ここを分けることが重要です

私が人事部長として給与制度を見る立場にいた経験からも、公的制度上の対象範囲と、会社独自の給与改定方針は別の問題として考える必要があります。

たとえば管理薬剤師が評価料の対象外であっても、役職手当や給与テーブルを会社独自に見直すことはできます。

一方で、対象外職員まで独自に昇給していることだけをもって、その薬局を優良と判定することもできません。人件費負担、給与体系、役割、評価制度、事業収益などを含めて会社ごとに判断する必要があります。

勤務薬剤師が確認しておきたい5つのこと

調剤ベースアップ評価料を自分の給与との関係で確認したい場合は、次の順番で整理すると分かりやすくなります。

1.自分は制度上の対象職員か

まず、管理薬剤師に該当するか、40歳以上の薬剤師か、本部・管理業務の専従者かなどを確認します。

2.勤務先が評価料を届け出ているか

調剤ベースアップ評価料を算定するには施設基準への適合と届出が必要です。届出方法や最新様式は厚生労働省の特設ページで更新されています。厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」

ただし、届出をしていないという事実だけから、その会社が賃上げに消極的だと判断することはできません。対象職員の有無など、薬局ごとの事情も確認する必要があります。

3.どの給与項目で賃金改善されているか

基本給なのか、毎月固定的に支給される手当なのかなどを確認します。

対象職員に対しては、薬局が賃金改善の方法等を周知することが施設基準で求められています。また、対象職員から照会を受けた場合には、その職員についての賃金改善内容を、書面を用いて説明すること等により分かりやすく回答することも求められています。厚生労働省「調剤ベースアップ評価料の施設基準」

4.通常の昇給と制度による賃金改善を分けて理解する

調剤ベースアップ評価料による処遇改善が行われていても、それが会社の通常の定期昇給や人事評価による昇給と同じとは限りません。

給与全体を見る場合は、評価料だけではなく、基本給、役職手当、昇給制度、賞与などを含めて確認する必要があります。

5.対象外なら会社独自の給与制度を見る

管理薬剤師や40歳以上の薬剤師の場合、評価料の対象外であることだけを見ても、自分の将来の給与は分かりません。

役職ごとの給与、昇給基準、評価制度、手当など、会社独自の人事制度を見る必要があります。

届出薬局には中間報告・実績報告もある

調剤ベースアップ評価料は、届け出て算定すれば終わる制度ではありません。

施設基準では、毎年8月に前年度の取組状況を確認する賃金改善実績報告書と、算定中の年度の取組状況を確認する賃金改善中間報告書を報告する仕組みが設けられています。厚生労働省「調剤ベースアップ評価料の施設基準」

2026年8月時点で厚生労働省が示している令和8・9年度算定分の提出スケジュールは、次のとおりです。厚生労働省「ベースアップ評価料等について」

提出時期提出する報告書
2026年8月2026年度算定分の中間報告書
2027年8月2026年度算定分の実績報告書
2027年度算定分の中間報告書
2028年8月2027年度算定分の実績報告書
2028年度算定分の中間報告書

また、賃金改善実績報告書等の記載内容の根拠となる資料は、評価料を算定した年度の終了後3年間保管することとされています。

このように、調剤ベースアップ評価料は単に薬局へ4点を上乗せするだけではなく、対象職員への賃金改善と、その実績把握・報告を組み合わせた制度として設計されています。

調剤ベースアップ評価料だけで転職先を評価しない

転職を考えている薬剤師にとっても、調剤ベースアップ評価料の仕組みを知っておくことには意味があります。

ただし、評価料を届け出ているかどうかだけで勤務先を選ぶことはおすすめできません。

たとえば、転職先の給与を判断するなら次のような情報を一緒に確認する必要があります。

  • 基本給
  • 役職手当・資格手当等
  • 通常の昇給制度
  • 賞与
  • 管理薬剤師等へ昇格した場合の給与
  • 勤務時間や休日
  • 異動・転勤の範囲
  • 担当する仕事内容と責任

調剤ベースアップ評価料は、その中の一つの制度にすぎません。

今の職場に残るか、社内で役割を変えるか、情報収集するか、転職するかを考える場合は、制度の対象・対象外だけで結論を出さず、自分が何を重視するのかを整理してから判断する方がよいでしょう。

関連記事:薬剤師のキャリアの軸が見つからないときは?元人事部長が自己分析の4ステップを解説

まとめ|制度上の賃上げと個人の給与を分けて考える

2026年度改定で新設された調剤ベースアップ評価料は、保険薬局で働く対象職員の賃金改善を目的とした制度です。

  • 2026年6月から4点
  • 2027年6月以降は8点
  • 管理薬剤師は対象外
  • 40歳以上の薬剤師は対象外
  • 事務職員等も対象になり得る
  • 派遣職員は一定の条件を満たせば対象に含めることが可能
  • 収入は基本給・毎月固定的な手当の引上げ等へ用いる
  • 一定の場合には賞与等による追加の賃金改善も可能
  • 毎年8月に中間報告・実績報告を行う仕組みがある

一方で、4点=個人への40円支給、3.2%=個人給与3.2%アップ、評価料対象外=昇給しないという意味ではありません。

診療報酬上の制度と、勤務先の給与制度・人事評価を分けて理解することが重要です。

参考にした公的資料

FAQ

管理薬剤師は調剤ベースアップ評価料の対象ですか?

対象外です。施設基準では管理者を対象職員から除外しており、厚生労働省の疑義解釈でも管理薬剤師は対象にならないと明示されています。年齢が40歳未満でも同様です。

40歳以上の薬剤師は給料を上げてもらえないのでしょうか?

調剤ベースアップ評価料による賃金改善の対象職員からは除外されていますが、勤務先が独自の原資で昇給することまで禁止されているわけではありません。評価料による賃金改善と、会社独自の給与改定は別に考える必要があります。

事務職員も調剤ベースアップ評価料の対象ですか?

他の除外要件に該当しなければ対象となり得ます。40歳以上という年齢による除外は薬剤師について定められたものであり、事務職員が40歳以上という理由だけで対象外になる制度ではありません。

派遣薬剤師や派遣事務職員は対象になりますか?

一定の条件を満たせば対象に含めることが可能です。派遣元と相談・協力して、直接雇用職員と同程度以上の賃金改善を行うことなどが求められます。一方、業務委託職員は対象外です。

4点分は対象職員へ均等に配られるのですか?

均等配分を定めた制度ではありません。評価料による収入は対象職員の基本給や毎月固定的に支払われる手当の引上げ、それに伴う賞与・時間外手当・法定福利費等の増加分に用います。処方箋枚数から単純に職員1人当たりの昇給額を計算することはできません。

評価料の収入をボーナスだけで支給できますか?

基本は基本給または毎月固定的に支払われる手当を引き上げるベア等です。ただし、すでにベア等を実施し、処方箋受付回数の変動等で評価料収入がその額を上回り、追加のベア等が困難な場合には、賞与等の手当による賃金改善も認められています。

調剤ベースアップ評価料を届け出ていない薬局は避けた方がよいですか?

届出の有無だけで職場の良し悪しを判断することはできません。対象職員の有無など薬局ごとの事情があります。職場を評価する場合は、通常の給与制度、昇給、仕事内容、勤務条件、人員体制などと合わせて確認することが重要です。

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