管理薬剤師・40歳以上は対象外?調剤ベースアップ評価料で給与が上がる薬局

管理薬剤師・40歳以上は対象外?調剤ベースアップ評価料で給与が上がる薬局
【この記事でわかること(3秒で解説)】
  • 管理薬剤師・40歳以上は評価料の対象外
  • 対象外の職員にも自腹で昇給する薬局を選ぶべき
  • 面接で直接聞かずエージェントに裏を取ってもらうべき

目次

「賃上げ3.2%」はあなたの給料に届くとは限らない

「2026年の調剤報酬改定で薬剤師の給料が上がるらしい」

そんな期待を抱いている方は多いはずです。2026年度の調剤報酬改定で新設された調剤ベースアップ評価料は処方箋受付1回につき4点が算定され、令和9年6月以降は8点に倍増します。中央社会保険医療協議会(中医協)のシミュレーションでは薬剤師3.2%・事務職員5.7%の賃上げを目標とした制度設計がなされました。

私は元・調剤薬局チェーンの人事部長として、また調剤薬局の経営コンサルタントとしての活動実績があります。この制度を経営側の視点で読み解くと「あなた自身に恩恵が届くかどうか」は年齢・役職・勤務先の届出判断という3つの変数で決まることがわかります。

厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると薬剤師の平均年収は599.3万円です。ここから3.2%のベースアップが実現すれば約19万円の年収増になる計算ですが、制度の対象外に該当する薬剤師は少なくありません。

この記事ではベースアップ評価料の仕組みを正確に理解したうえで自分が恩恵を受けられる立場にあるのかを判断し転職先を選ぶための具体的な基準を解説します。

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制度の全体像:「目的財源」として設計された賃上げ専用の点数

まず制度の構造を押さえましょう。2024年度の改定では調剤基本料を全区分一律3点引き上げて賃上げ原資に充てる方式が採られました。しかしこの方式には引き上げ分が実際に賃上げに回っているか検証しにくいという課題がありました。

2026年度改定ではこの反省を踏まえて賃上げ原資を基本料から切り離し賃上げ専用の「目的財源」として独立させた点が画期的です。令和8年6月から処方箋受付1回あたり4点(40円)が算定開始となり令和9年6月以降は8点(80円)に倍増する二段階設計です。

ここで押さえておくべき重要なルールがあります。算定によって得られた収益は全額を対象職員のベースアップに充てなければなりません。しかも通常の定期昇給とは明確に区別したうえで基本給または毎月の固定手当として支給することが求められています。つまり算定した薬局は制度上「給与を上げない」という選択肢を取れない建付けになっています。

一方で届出は任意です。届出を出さなければ算定そのものができないため制度の恩恵はゼロになります。ここに「あなたの給料に届くかどうか」を分ける最初の分岐点があるのです。

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【最重要】あなたは「対象者」に含まれていますか?

制度設計を理解したところで最も重要なポイントに進みます。ベースアップ評価料の恩恵を受けられる「対象職員」の範囲は想像以上に狭いのです。

厚生労働省の施設基準および疑義解釈によると対象から除外される人は以下の通りです。

  • 事業主・使用者・開設者
  • 管理者(管理薬剤師を含む)
  • 40歳以上の薬剤師
  • 業務委託により勤務する者
  • 本部職員やエリアマネージャーなど調剤業務に直接従事しない管理的業務の専従者

特に衝撃的なのは管理薬剤師は年齢を問わず対象外という点です。厚生労働省は2026年3月の疑義解釈で「管理薬剤師は対象とならない」と明確に回答しています。30代の管理薬剤師であっても「管理者」に該当するため評価料による賃上げの恩恵は受けられません。

さらに40歳以上の薬剤師は一律で対象外です。小規模薬局では管理薬剤師1名と40代以上の薬剤師で構成されているケースも珍しくなく対象者が事務員だけという状況も起こり得ます。

少し想像してみてください。あなたが42歳のベテラン薬剤師だとしたらどうでしょう。後輩の28歳の若手薬剤師には制度による数千円〜1万円以上のベースアップが見込まれる一方であなたの給与は制度上の対象外です。この「40歳の壁」は転職先を選ぶ際に見落としてはならない判断材料です。(※実際の支給額は薬局の規定や処方箋枚数によります)

薬剤師の属性ベースアップ評価料
の対象?
元人事部長のリアルな解説
39歳以下の勤務薬剤師〇 対象制度のメインターゲット。若手の定着率を上げるための切り札になります。
管理薬剤師(年齢問わず)× 対象外店舗の責任者ですが、制度上は一律除外。会社独自の昇給枠があるか要確認です。
40歳以上の薬剤師× 対象外「40歳の壁」。若手だけ給与が上がり、不満を抱えて退職するベテランが急増するリスクがあります。

転職先を選ぶ際に確認すべき4つの新基準

この制度を踏まえて「賃上げに本気で取り組む薬局」を見極めるための基準を4つ解説します。

基準1:調剤ベースアップ評価料の届出をしているか

繰り返しますが届出は任意です。届出を出さない薬局には二つのパターンがあります。一つは対象職員がいない(全員が管理薬剤師や40歳以上など)ため算定要件を満たせないケース。もう一つは事務負担や実績報告の義務を嫌って意図的に見送るケースです。

後者のような薬局はあなたの処遇改善よりも経営側の管理コスト削減を優先していることになります。転職候補の薬局がどちらに該当するのかを確認する価値は大きいです。

基準2:対象外の職員への独自の処遇改善方針があるか

評価料の対象外となる管理薬剤師や40歳以上の薬剤師への賃上げは薬局の完全な持ち出しになります。ここに経営者の姿勢が如実に表れます。

実際に耳にする厳しい現実として、「うちは評価料で若手の給与を上げる分、対象外の中堅以上は完全に据え置く」と方針を示している薬局も存在します。こうなるとベテラン層の離職が加速することが予想されます。「責任は重いのに報酬は上がらない」という不満は職場崩壊の引き金になります。

逆に「評価料の対象外の職員にも会社独自の原資でベースアップを実施する」と明言している薬局は組織全体の処遇改善に本気で取り組んでいる証拠です。この方針の有無は転職先の将来性を測る強力な指標になります。

薬局の対応方針 経営層のホンネ 転職先としての評価
対象外(管薬・40代以上)にも自腹で賃上げする 全社員の士気を下げたくない。人材投資は惜しまない。 ★★★★★
(超優良)
対象者(若手)のみ賃上げし、対象外は据え置き 国の補助分だけ上げればいい。持ち出し(自腹)は嫌だ。 ★★☆☆☆
(将来性に不安)
そもそも制度の届出をしない 事務作業が面倒。どうせ対象者も少ないしやらなくていい。 ☆☆☆☆☆
(論外)

関連記事:薬局倒産の危険な予兆|元調剤薬局人事部長が見抜き方を解説

基準3:給与テーブルの透明性

評価料は定期昇給とは明確に区別して支給するルールが設けられています。つまり「評価料のおかげで上がった分」と「通常の昇給」が給与明細上で区別できなければ制度の趣旨に反します。

採用に携わっていた頃の経験から言えば透明な給与テーブルを持つ薬局は面接時に具体的な等級と昇給幅を提示できます。「頑張ったら上がる」としか言えない薬局は制度設計が曖昧な証拠であり評価料の運用も不透明になりがちです。

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基準4:処方箋枚数に見る「1人あたりの恩恵」

評価料による収入は処方箋枚数に比例します。同じ4点でも月間3,000枚の薬局と月間800枚の薬局では原資に大きな差が出ます。

月間処方箋枚数ごとの年間収入を比較してみましょう。

月間処方箋枚数 対象職員数 薬局に入る月間原資
(4点算定時)
1人あたりの増額目安
(月額・参考値)
800枚(小規模) 2人 32,000円 約14,000円
800枚(小規模) 5人 32,000円 約5,500円
2,000枚(中規模) 2人 80,000円 約35,000円
2,000枚(中規模) 5人 80,000円 約14,000円

注目すべきは処方箋枚数が多くても対象人数が多ければ1人あたりの金額は大きく変わらない点です。一方で処方箋枚数が多く対象者が少ない薬局では1人あたりの恩恵が跳ね上がります。

転職先の処方箋枚数と対象職員数を事前に把握しておくことで自分がどの程度の恩恵を受けられるかを具体的に試算できます。

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エージェント経由で確認すべき3つの質問

ここまでの内容を踏まえてエージェントに依頼すべき確認事項を整理します。

① 調剤ベースアップ評価料の届出状況
「届出済みかどうか」だけで薬局の賃上げへの姿勢がわかります。

② 管理薬剤師・40歳以上の薬剤師への独自の賃上げ方針
評価料対象外の層への対応は薬局の経営体力と人材への投資意欲を映す鏡です。

③ 給与テーブルの有無と昇給ルールの開示可否
等級制度や号俸表が存在し開示できる薬局は処遇改善の仕組みが整っている証拠です。

これらの質問を求職者自身が面接で切り出すと「給与のことばかり気にする人」という印象を与えかねません。エージェント経由であれば採用担当者との関係を損なわずに核心的な情報を入手できます。

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評価料だけでは年収は大きく変わらないという現実

ここまで評価料の仕組みと職場選びの基準を解説してきましたが冷静な視点も必要です。

仮に対象者として月額15,000円のベースアップが実現したとしても年間で約18万円の増収です。厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると薬剤師の平均年収599.3万円に対してこの金額は約3%に相当します。生活が大きく変わる水準とは言いにくいのが正直なところです。

年齢別のデータを見ると薬剤師の年収は35〜39歳で614.1万円、50〜54歳で744.7万円にピークを迎えます。この差は約130万円であり評価料の7倍以上です。つまり「どの薬局で、どのポジションで働くか」という選択の方が年収に与える影響ははるかに大きいのです。

評価料はあくまで国による処遇改善の後押しです。あなた自身のキャリア戦略を組み立てるうえでは「評価料をきちんと運用している薬局かどうか」を経営の健全性を測る一つの指標として活用する視点が有効です。

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あなたの市場価値は制度の枠に収まらない

今の環境で悩み続けたあなたを誰も責めることはできません。ベースアップ評価料という制度が生まれた背景には薬剤師の給与が他産業に比べて十分に上がってこなかったという現実があります。

しかしこの制度を待つだけでキャリアが好転するわけではありません。「届出をしている薬局か」「対象外の職員にも独自に投資する薬局か」「給与テーブルが透明な薬局か」を見極めるための行動を起こすことがあなた自身を守る最善の手段です。

あなたの市場価値はあなたが思っているよりずっと高いはずです。制度を正しく理解し「自分で情報を取りに行く」という一歩を踏み出すことで年収もキャリアの選択肢も広がります。

FAQ

40歳以上で管理薬剤師でも、ベースアップ評価料を機に給料を上げる方法はありますか?

制度上は対象外ですが、チャンスはあります。優良な薬局は「制度の対象外となる管理薬剤師やベテラン層にも、会社独自の原資で同等の昇給を行う」という方針をとっています。そのような人材投資に積極的な薬局へ転職することが、年収アップの現実的なルートです。

応募する前に、その薬局がベースアップ評価料の届出をしているか知ることはできますか?

転職エージェント経由で確認するのが最も確実です。面接で直接「ベースアップ評価料の届出はしてますか?」と聞くと、採用側に「お金に細かい人」というネガティブな印象を与えるリスクがあります。エージェントを使えば、角を立てずに内部情報を引き出せます。私が採用側だった経験から、本当に内部情報に強いエージェントを以下の記事でまとめていますので参考にしてください。

関連記事:【元人事部長が厳選】採用側から見て「本当に信頼できた」薬剤師転職エージェント3選

評価料で上がった分は、ボーナスとしてまとめて支給されることもありますか?

原則として「毎月の給料は上げずに、全額をボーナスで支給する」ことは国のルールで禁止されており、毎月の基本給や固定手当のベースアップが必須です。ただし、薬局への評価料収入は毎月の患者数で変動するため、年度末に原資が余った場合は、100%還元ルールに則り「期末に余剰分を一時金(ボーナス)として精算・追加支給する」ことが定められています。毎月の給与が確実に上がる土台がありつつ、状況によって期末にもプラスアルファが期待できる仕組みになっています。

💡 元人事部長が厳選|本当に信頼できた薬剤師転職エージェント3選

「どのエージェントに相談すればいいか分からない」という声をよく聞きます。

私は調剤薬局チェーンの人事部長として20社以上のエージェントと取引してきました。その中で「この会社なら薬剤師のキャリアを本気で考えてくれている」と感じたのはごくわずかです。

採用する側だった私が、求人票には載らない職場の内情まで把握していると確信できたエージェントだけを3社に厳選しました。

「まだ本気で転職するか決めていない」という段階でも相談は無料です。まずは今の自分の市場価値を知ることから始めてみてください。

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