OTC医薬品との代替性が特に高い一部の医療用医薬品について、2027年3月1日から患者負担の仕組みが変わります。
厚生労働省は2026年9月30日、いわゆる「OTC類似薬の一部保険外療養」に関する政省令・告示・通知を公表しました。
対象となる医療用医薬品を保険診療で使用する場合、原則として薬剤費の4分の1に相当する額を「特別の料金」として患者が別途負担します。
勤務薬剤師にとって重要なのは、患者負担額が変わることだけではありません。
2027年3月1日から処方箋に「一部保険外療養」の欄が加わり、対象となる場合は「○」、対象外の場合は「―」が記載されます。対象医薬品なのにどちらも記載されていない場合は、原則として薬剤師から処方医への疑義照会が必要です。
今回の制度変更は「OTC類似薬の保険がなくなる」という単純な話ではなく、処方箋確認、会計、疑義照会、患者説明まで薬局の実務が変わる制度です。
この記事では2026年9月30日に公表された厚生労働省の正式通知をもとに、勤務薬剤師が2027年3月までに確認しておきたいポイントを整理します。
- OTC類似薬の一部保険外療養は2027年3月1日開始
- 対象医薬品では原則、薬剤費の4分の1相当額を「特別の料金」として患者が負担
- 残りの部分まで全額自己負担になる制度ではない
- 処方箋には「一部保険外療養」欄が新設され、対象は「○」、対象外は「―」
- 対象医薬品なのに「○」「―」がなければ原則として疑義照会
- 子ども、がん、難病、入院等を含む9つの対象外類型がある
- 対象・対象外の判断は原則として処方時に医療機関・処方医が行う
- 薬局では会計だけでなく、患者説明・手順書・教育・システム対応の準備が必要
2026年9月30日に正式決定|2027年3月1日から始まる
OTC類似薬の保険給付見直しについては以前から議論されていましたが、2026年9月30日に政令、省令、告示が公布され、実施上の留意事項も厚生労働省から通知されました。
施行日は2027年3月1日です。
対象となるのは、要指導医薬品・一般用医薬品と「成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない」医療用医薬品です。
厚生労働省が公表した対象成分には、ロキソプロフェン、フェキソフェナジン、L-カルボシステイン、酸化マグネシウム、ヘパリン類似物質など、調剤薬局で日常的に扱う成分も含まれています。
対象医薬品の一覧は固定ではなく、原則として毎年4月1日に更新し、3月頃に事前公表する予定とされています。したがって、制度開始時のリストだけを保存して使い続けるのではなく、最新マスターを確認する運用が必要になります。
「薬剤費の4分の1を追加で払う」とはどういう意味?
対象となる医薬品では、原則として対象医薬品の薬価の4分の1に投薬全量を掛けた額が、「一部保険外療養」の特別の料金になります。
ここで注意したいのが、患者へ「この薬は保険が効かなくなります」と説明してしまうことです。
今回の制度は、対象薬剤の費用全体を保険給付から外し、10割を患者負担にする仕組みではありません。
大きく分けると、患者の負担は次の2つで構成されます。
| 区分 | 考え方 |
|---|---|
| 特別の料金 | 対象医薬品の価格の4分の1相当額 |
| 通常の患者自己負担 | 残る保険対象部分について、患者の自己負担率に応じて計算 |
したがって「通常の3割負担に薬価の25%がそのまま上乗せされる」とだけ説明するのも正確ではありません。
実際の計算には厚生労働省が公表する対象医薬品マスターを使用し、端数処理等も定められています。
また、特別の料金に対する消費税の取扱いは2026年9月30日時点で政府内検討中で、年末を目途に改めて示される予定です。
処方箋に「一部保険外療養」欄を新設|○と―の意味
2027年3月1日からは処方箋様式も変わります。
新たに「一部保険外療養」欄が設けられ、対象医薬品ごとに次のように記載されます。
| 処方箋の記載 | 薬局での基本対応 |
|---|---|
| ○ | 一部保険外療養の特別の料金を患者から受け取る |
| ― | 一部保険外療養の特別の料金は求めない |
| 空欄 | 対象医薬品であれば原則として処方医へ疑義照会 |
ここは勤務薬剤師にとって最も直接的に業務が変わる部分です。
薬剤師が窓口で患者の事情を聞き、対象外9類型を最初からすべて独自に判定する制度ではありません。
特別の料金の対象か対象外かは、原則として対象医薬品の処方時に保険医療機関・処方医が判断します。
「○」「―」がない場合は原則として疑義照会
対象医薬品が処方されているにもかかわらず、「一部保険外療養」欄に「○」「―」のどちらも記載されていない場合、保険薬局の薬剤師は原則として処方医へ疑義照会します。
ただし、通知には例外も示されています。
- 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの患者
- 妊婦、妊娠している可能性がある人、授乳婦で、代替性が特に高いOTCを服用できない場合
これらに該当し、年齢等を確認することで特別料金の対象外であることが明らかな場合は、疑義照会をせず特別料金を求めない取扱いが可能です。
ただし、この場合でも事後的に処方医へ報告する必要があります。
つまり2027年3月以降の薬局では、「○なら会計」「―なら対象外」「空欄ならとりあえず会計」という運用にはできません。
処方箋確認の時点で、新しい判断フローをスタッフ全体で共有しておく必要があります。
追加負担の対象外となる9つの場合
対象医薬品が処方されたからといって、すべての患者へ特別の料金が発生するわけではありません。
厚生労働省の9月30日通知では、次の9類型が一部保険外療養の対象外として整理されています。
| 対象外となる主な場合 | 概要 |
|---|---|
| 1.子ども | 18歳到達後最初の3月31日まで |
| 2.がん | がんまたはがん治療に関連して生じた状態 |
| 3.指定難病等 | 指定難病・一定の小児慢性特定疾病等と関連する状態 |
| 4.国の公費負担医療 | 対象となる公費負担医療 |
| 5.入院 | 入院時の処方。退院時処方も含む |
| 6.検査・処置・手術 | 侵襲を伴う検査等に伴い、その後14日以内分を処方・調剤する場合 |
| 7.医療上必要な長期使用 | 年間を通じた症状持続と治療継続性を医師が確認し、長期使用が医療上必要な場合 |
| 8.OTCの効能・効果では対応できない | 類似OTCの承認効能・効果では対応できない状態 |
| 9.OTC使用が特に困難 | 妊婦等が代替性の高いOTCを服用できない場合 |
対象外の判断にはそれぞれ詳細な条件があります。
例えば「がん患者ならすべて対象外」という制度ではありません。がんまたはがん治療と関連する状態への処方であるかなど、通知に具体的な考え方が示されています。
薬局側が一覧だけを見て患者へ「あなたは対象外です」と独自判断するのではなく、処方箋上の「○」「―」を基本として取り扱うことが重要です。
長期収載品の選定療養とは二重に徴収しない
もう一つ、現場で混乱しやすそうなのが長期収載品の選定療養との関係です。
同じ医薬品について、OTC類似薬の一部保険外療養による特別の料金と、長期収載品の選定療養による特別の料金が同時に重複してかかることはありません。
一部保険外療養の特別料金の対象である場合は、同じ医薬品について長期収載品の選定療養の特別料金は対象外です。
一方、一部保険外療養では対象外となっていても、患者が自己の選択によって長期収載品を希望する場合は、長期収載品の選定療養が適用されることがあります。
2027年3月以降は、処方箋上の「一部保険外療養」欄と、既存の「変更不可(医療上必要)」「患者希望」の記載を組み合わせて確認する場面が出てきます。
薬局で患者へどう説明する?「保険が効かなくなります」は避けたい
勤務薬剤師にとって、実際にはここが最も負担を感じやすい部分かもしれません。
患者から「前回よりどうして高いのですか」「市販薬と同じなら病院でもらう意味はないのですか」と聞かれる可能性があります。
そのときに「OTC類似薬なので保険が効かなくなりました」と説明すると、制度を正確に表していません。
例えば次のように整理すると説明しやすくなります。
- OTCと代替性が特に高い一部の処方薬について新しい負担制度が始まった
- 薬剤費全体が10割負担になったわけではない
- 対象の場合は薬剤費の4分の1相当を特別料金として支払う
- 子どもや一定の疾患・治療等では対象外となる場合がある
- 今回の処方が対象かどうかは処方箋上でも示されている
患者の質問が「市販薬を買った方がよいのか」という相談へ進んだ場合は、単純な価格比較だけでは足りません。
症状、使用目的、用量、既往歴、併用薬、受診の必要性などを確認し、薬剤師として対応できる範囲を整理する必要があります。

2027年3月までに薬局が準備したい5点
制度開始まで約5か月あります。
薬局としては、3月1日の朝に薬剤師個人が通知を読みながら対応するのではなく、会社・店舗レベルで運用を固めておきたい制度です。
- レセコン・会計システム:特別料金、対象マスター、新処方箋への対応予定を確認する
- 処方箋確認フロー:「○」「―」「空欄」の処理と疑義照会ルートを決める
- 患者説明:窓口での標準説明と質問を受けた際の回答を整理する
- 手順書・研修:薬剤師、調剤事務、新人、応援勤務者まで役割を共有する
- 例外時の相談先:対象外判断、長期収載品、旧処方箋等で迷った際の社内相談経路を明確にする
旧様式の処方箋は当分の間、必要な修正を行って使用できる経過措置があります。また2027年3月1日より前に発行された処方箋を3月1日以降に薬局へ持参した場合は、リフィル処方箋等を含め制度施行前の取扱いとなり、特別料金の対象にはなりません。
こうした境界事例ほど店舗ごとの差が出やすいため、施行前研修で確認しておきたいところです。
制度対応を見ると、その職場の教育・業務設計も見えてくる
今回の制度だけを理由に転職を考える必要はありません。
ただし、人事の視点では、制度変更へ会社がどう対応するかは職場を見る一つの材料になります。
本部から通知だけが送られ、現場の薬剤師が各自で判断する会社なのか。システム改修、手順書、研修、患者説明、疑義照会の判断基準まで整理する会社なのか。
同じ制度変更でも、現場の負担は組織設計によって変わります。
制度を知っている薬剤師だけに依存せず、誰が勤務しても一定水準で対応できる状態を作れるか。今回のOTC類似薬の一部保険外療養は、会社の教育や業務設計を見る材料にもなりそうです。

まだ決まっていないこともある
9月30日の通知で実務の多くは具体化しましたが、すべてが確定したわけではありません。
特別の料金にかかる消費税の取扱いは政府内で検討中で、厚生労働省は2026年末を目途に示すとしています。
また対象医薬品の一覧は原則毎年更新されるため、2027年3月の施行直前にも最新情報を確認する必要があります。
今後、厚生労働省から患者向け広報資材や追加のQ&A等が示された場合は、この記事も更新します。
よくある質問
- OTC類似薬は2027年3月からすべて保険適用外になりますか?
-
いいえ。対象医薬品について薬剤費の一部を保険給付の対象外とし、4分の1相当を特別料金として負担する「一部保険外療養」です。薬剤費全体が10割自己負担になる制度ではありません。
- 追加負担の対象かどうかを薬剤師が判断しますか?
-
原則として処方時に医療機関・処方医が判断し、処方箋の「一部保険外療養」欄へ「○」または「―」を記載します。薬局はその記載に基づいて対応します。
- 処方箋が空欄ならどうしますか?
-
対象医薬品が記載されているのに「○」「―」の記載がなければ、原則として処方医へ疑義照会します。ただし、子どもや一定の妊婦等について通知上の例外があります。
- 長期収載品の選定療養と両方の特別料金がかかりますか?
-
同じ医薬品へ二つの特別料金が重複して適用されることはありません。処方箋の一部保険外療養欄と、変更不可・患者希望欄を合わせて確認します。
- 特別料金に消費税はかかりますか?
-
2026年9月30日時点では政府内で検討中です。厚生労働省は2026年末を目途に取扱いを示す予定としているため、現時点では確定事項として案内できません。
まとめ|3月1日に変わるのは患者負担だけではない
OTC類似薬の一部保険外療養は2027年3月1日から始まります。
対象医薬品では原則として薬剤費の4分の1相当を特別料金として患者が負担しますが、子ども、がん、難病、入院、医療上必要な長期使用など、対象外となる場合も定められています。
勤務薬剤師にとって特に重要なのは、新しい処方箋です。
「○」なら特別料金、「―」なら対象外、対象薬なのに空欄なら原則疑義照会。
そのうえで患者へ、なぜ負担額が変わったのかを正確に説明する必要があります。
2027年3月までに、対象医薬品を覚えるだけではなく、システム、処方箋確認、疑義照会、会計、患者説明、研修まで一連の業務として準備しておきたい制度です。
