在宅薬学総合体制加算の激変!2026年調剤報酬改定で淘汰される薬局とは

在宅薬学総合体制加算の激変!2026年調剤報酬改定で淘汰される薬局とは
【この記事でわかること(3秒で解説)】
  • 26年改定は本気の在宅薬局のみを優遇する
  • 個人在宅実績と人員確保が生き残りの絶対条件
  • 在宅経験の有無が薬剤師の生涯年収を左右する
目次

在宅薬学総合体制加算の激変があなたのキャリアに与える影響

「うちの薬局、在宅はやっているけど点数が全然取れていない」

「加算の要件が厳しくなったらしいけど具体的に何が変わったのか分からない」

そんな不安を感じている薬剤師の方は多いのではないでしょうか。

私は元・調剤薬局チェーンの人事部長としての経験があります。現在は薬局経営のコンサルティングにも携わっています。その立場から断言できることがあります。

2026年度の調剤報酬改定は「在宅をやっているフリ」の中途半端な薬局を、市場から大きく淘汰しかねない厳しい設計です。

2026年2月13日の中医協総会で答申された改定内容を見ると「本気で在宅に取り組む薬局は点数倍増で報いる」「中途半端な薬局はハードルを上げて振り落とす」という国の明確な意思が読み取れます。

この記事では在宅薬学総合体制加算の改定内容を正確に整理した上で「勝ち組薬局」と「負け組薬局」を分ける具体的な分岐点を解説します。あなたの薬局がどちらに該当するのかを見極め、キャリア戦略に活かしてください。

関連記事:門前薬局等立地依存減算で今後の調剤薬局出店計画はどうなる??【元人事部長が解説】

エージェント選びに迷ったら。これまで20社以上と取引した経験から厳選した3社をまとめています。

→ 実際に20社以上と取引した経験から信頼できたエージェント3選


在宅薬学総合体制加算の改定、何がどう変わったのか

まず制度の変更点を正確に把握する必要があります。2026年度改定(令和8年度)における在宅薬学総合体制加算の主な変更を整理します。

加算1:点数は倍増、要件も倍増

在宅薬学総合体制加算1は15点から30点へ引き上げられました(2026年2月13日中医協答申)。点数が2倍になった一方で訪問実績の要件も年24回から年48回へ引き上げられています。

月換算で4回のペースです。月に4件の在宅訪問を安定的に行える体制がなければ算定できません。

ここで注意すべきは「年48回」は薬局全体の実績であるという点です。薬剤師1人当たりではありません。しかし1人薬剤師の店舗で外来をこなしながら月4回の在宅訪問を行うのは現実的に困難です。

項目 改定前(〜2025年) 2026年度改定後
算定点数 15点 30点(倍増)
訪問実績要件 年24回(月2回ペース) 年48回(月4回ペース)
※注意:実績要件は「薬局全体」の回数。1人薬剤師店舗には厳しいハードルに。

加算2:個人宅訪問を重視した2段階評価に

加算2は今回の改定で大きく姿を変えました。従来の一律50点から2段階の点数体系に移行しています。

  • 加算2イ(単一建物診療患者が1人または単一建物居住者が1人の場合):100点
  • 加算2ロ(それ以外の場合):50点

注目すべきは「単一建物1人」の場合に100点という高い評価がついた点です。これは施設在宅よりも手間のかかる個人宅への訪問を国が強く推進しているメッセージです。

施設在宅は1回の訪問で複数患者を診られるため効率が良い反面「本当に薬剤師が在宅医療に貢献しているのか」という疑問が以前から指摘されていました。今回の改定はその問題に対する国の回答です。

区分 対象となる患者・施設 点数
加算2イ 単一建物診療患者が1人、または単一建物居住者が1人の場合
(※個人宅訪問を強く評価)
100点
加算2ロ 上記「イ」以外の場合
(※従来の施設在宅など)
50点

加算2の実績要件:ハードルは劇的に上がった

加算2を算定するための実績要件は極めて厳しくなりました。具体的には以下のいずれかを満たす必要があります。

  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料1・緊急訪問・緊急時等共同指導料・単一建物1人の居宅療養管理指導費の合計が年240回以上 かつ全在宅実績に占める割合が2割超
  • または年480回以上かつ1割超

年240回は月20回ペースです。年480回なら月40回ペースとなります。さらに「全在宅実績に対する割合要件」があるため外来中心の大型門前薬局は分母が大きすぎて割合のハードルを越えにくい設計になっています。

設備要件から実績要件へ:「持っている」から「やっている」へ

これまで加算2の算定に必要だった無菌室やクリーンベンチなどの設備要件は廃止されました。その代わりに以下のいずれかの実績を求める形に変わっています。

  • 麻薬管理指導加算等の算定が年10回以上
  • 無菌製剤処理加算の算定が年1回以上
  • 乳幼児加算・小児特定加算の算定が年6回以上(新設の選択肢)

「設備を買ったが使っていない」薬局は要件を満たせなくなりました。国は実績ベースでの評価に明確に舵を切ったのです。

人員配置要件の強化

加算2には新たに常勤換算で3名以上の薬剤師勤務が求められます。さらに開局時間中は原則2名以上の薬剤師が常駐し調剤応需と在宅患者の急変対応が可能な体制を取ることが条件です。

従来は「2名以上の勤務」で足りていました。今回は3名体制が求められるため小規模薬局にとっては大きなハードルとなります。

関連記事:薬局倒産の危険な予兆|元調剤薬局人事部長が見抜き方を解説


「勝ち組薬局」と「負け組薬局」を分ける5つの差

制度の変更点を理解した上で本題に入ります。今回の改定で明暗が分かれる薬局の特徴を具体的に解説します。

チェック項目 🟢 生き残る「勝ち組薬局」 🔴 淘汰される「負け組薬局」
訪問先の内訳 個人宅への訪問に注力している(加算2イ算定可能) 効率重視で施設在宅に偏っている
人員・定着率 常勤換算3名以上を維持し、離職率が低い 慢性的な人手不足。特定の人に負担が集中
高度な薬学管理 麻薬・無菌・小児在宅のいずれかの実績がある 処方が来ない、設備がないで諦めている

差1:個人在宅実績があるかどうか

加算2イの100点は「単一建物1人」の在宅訪問に対する評価です。施設在宅しかやっていない薬局はこの高い点数を取れません。

これまでの薬局経営では施設在宅の収益性にフォーカスが当たり個人在宅の優先順位は低い傾向にありました。ある薬局では在宅件数が月60件あっても個人在宅は3件だけというケースがありました。管理薬剤師に理由を聞くと「施設の方が効率が良いから」という答えが返ってくるのです。

効率を求めた結果がこの改定では裏目に出ます。

勝ち組薬局は個人宅への訪問を積極的に行い地域のケアマネージャーや訪問看護ステーションとの連携体制を構築しています。 単に「在宅をやっている」のではなく「個人宅で薬学的管理を行う体制」を持っているかどうかが分岐点です。

差2:薬剤師の人員確保と定着ができているか

加算2の算定には常勤換算3名以上が求められます。薬剤師が定着しない薬局はこの要件を継続的に満たすことが困難です。

少し想像してみてください。常勤3名体制を維持するには最低でも常勤2名と非常勤で常勤換算1名分が必要です。1人でも退職すれば要件を満たせなくなります。

「うちは人が辞めないから大丈夫」と言い切れる薬局がどれだけあるでしょうか。

これまでの実務経験から断言できますが薬剤師の定着率が低い薬局には共通点があります。評価制度が不透明であること。在宅業務の負担が特定の薬剤師に偏っていること。研修体制が不十分であること。この3つです。

関連記事:調剤薬局のマンネリ脱却法|目標設定で変わるキャリアと年収

差3:麻薬・無菌・小児の実績があるか

加算2の「質の高い薬学的管理の実績」は3つの選択肢から1つを満たせばよい仕組みです。しかし逆に言えば麻薬・無菌・小児のいずれの実績もない薬局は算定できません。

知人の薬剤師からよく聞く話ですが「うちの薬局は麻薬の処方自体がほとんどない」「無菌調剤の設備もないし小児の在宅患者もいない」という薬局は珍しくありません。

こうした薬局が突然実績を作ることは現実的ではありません。麻薬や無菌製剤の取り扱い実績は一朝一夕では積めないのです。

勝ち組薬局は数年前から緩和ケアに関わる医療機関との連携を進めターミナルケアの患者を受け入れる体制を整えてきました。この「先を見据えた投資」が今回の改定で大きなリターンを生む形になっています。

差4:かかりつけ薬剤師の算定体制があるか

2026年度改定では「かかりつけ薬剤師指導料」が廃止され、服薬管理指導料(かかりつけ薬剤師が行う場合:45点・59点等)に統合されました。単なる「同意取得」という形から、具体的な介入実績を評価する「かかりつけ薬剤師フォローアップ加算」などの新設へと、対人業務の実質的な評価に軸足が移っています。

要件の形は変わりましたが、かかりつけ薬剤師として地域の患者を継続的に支援できる「個のスキル」を持つことは、加算要件を満たす上でも、あなたの市場価値を高める上でも強力な武器になります。

在宅業務とかかりつけ機能は表裏一体の関係にあります。かかりつけ薬剤師として地域の患者を継続的に支援できる薬局が在宅でも強い薬局です。

差5:経営者が在宅シフトの本気度を持っているか

最後の差は目に見えにくいものです。経営者の姿勢です。

ある薬局の経営者は在宅薬学総合体制加算の要件変更を受けてすぐに「加算2イの100点を全店舗で算定する」という経営方針を打ち出しました。薬剤師の採用計画を見直し研修プログラムを整備し医療機関への営業活動を強化したのです。

一方で「在宅は儲からないから」とまだ言い続けている経営者もいます。

在宅薬学総合体制加算1の30点は処方箋1枚ごとに加算されます。 在宅患者からの処方箋を月100枚受け付ける薬局であれば月3,000点(約30,000円)の増収です。加算2イの100点なら月10,000点(約100,000円)です。年間にすれば加算2イだけで約120万円の差が生まれます。

この数字を見て動かない経営者の下で働き続けることがあなたのキャリアにとって正しい選択なのかを考える時期に来ています。

関連記事:ブラック薬局は社長で見抜く|元調剤薬局人事部長が危険サイン5選を解説


在宅シフトがあなたの市場価値を劇的に変える理由

ここからは薬剤師個人のキャリア戦略について踏み込みます。

在宅医療の経験は転職市場であなたの年収を大きく左右する要素です。採用に携わっていた頃の経験を基にお伝えします。

在宅経験がある薬剤師とない薬剤師では面接での印象が明らかに異なりました。個人の在宅訪問実績がある薬剤師は即戦力として評価が高く年収交渉でも有利に働きます。

特に個人在宅の中でどういった苦労を経験してきたかを実体験に基づいてお話いただける方は極めて魅力的に感じます。

特に今回の改定で加算2の要件が厳格化されたことで「在宅に強い薬剤師」の希少価値はさらに高まります。麻薬管理指導加算の算定経験がある薬剤師。無菌調剤の実務経験がある薬剤師。小児在宅に対応できる薬剤師。これらのスキルを持つ人材は採用市場で引く手あまたです。

逆に外来調剤しか経験がない薬剤師は今後ますます選択肢が狭まる可能性があります。門前薬局の収益構造が厳しくなる中で外来専門の薬剤師を高年収で採用する理由が薄れているからです。

不思議だと思いませんか。同じ薬剤師免許を持っていても、在宅経験の有無が市場価値を左右し、提示年収に100万円以上の差がつくケースを、私は現場で実際に見てきました。

関連記事:【元人事部長が解説】薬剤師の年収交渉、知らなきゃ損する交渉タイミングと相場感


今の職場で在宅シフトが見込めないなら

今の薬局に在宅体制がないのであれば環境を変えることも前向きな選択です。

転職を検討する際に確認すべきポイントを整理します。

  • 在宅薬学総合体制加算2を算定しているか(算定実績の有無は薬局の在宅への本気度を測る指標です)
  • 個人在宅への訪問件数は月にどの程度あるか
  • 薬剤師の配置人数は常勤換算で何名か
  • 麻薬調剤や無菌調剤の実績があるか
  • 在宅に関する研修体制は整っているか

これらの質問を面接で直接聞くのは勇気がいります。特に労務に関わる踏み込んだ内容は角が立つこともあります。

だからこそ転職エージェントを活用する価値があるのです。エージェントに任せれば「エージェントが確認してくれた」というスタンスを取れます。企業側も「エージェントの質問だから」と受け止めやすいのです。


2026年改定で新設された在宅関連の注目項目

在宅薬学総合体制加算だけでなく2026年度改定では在宅関連の新設項目が複数あります。キャリア形成の観点から押さえておくべき項目を紹介します。

訪問薬剤管理医師同時指導料(150点・新設)

医師の訪問診療に薬剤師が同行した場合に算定できる新設点数です(2026年2月13日中医協答申)。医科側でも6月に1回300点が算定されるため医師側にも薬剤師の同行を歓迎するインセンティブが生まれました。

この点数の新設は「薬剤師は在宅で医師と協働する存在である」という国の位置づけを明確に示しています。

複数名薬剤管理指導訪問料(300点・新設)

身体的・精神的に困難な事例に対して複数名で訪問した場合の評価です。300点という高い点数がつきました。

訪問間隔の6日以上制限が撤廃

これまで在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定には「6日以上の間隔」が必要でした。この制限が撤廃され週1回が上限となりました。患者の状態に応じてより柔軟な訪問スケジュールが組めるようになったのです。

これらの新設点数と要件緩和は全て在宅医療に積極的に取り組む薬局にとって追い風です。逆に在宅を「おまけ」程度にしか考えていない薬局との収益格差はさらに広がります。

関連記事:年収850万円の薬剤師は何が違う?エリアマネージャーの1週間から見る働き方の差

関連記事:薬剤師面接の逆質問で評価が分かれる理由|元調剤薬局人事部長が質問術を解説


あなたの価値は在宅医療の現場でこそ発揮される

ここまで読んでくださったあなたは在宅医療の重要性を理解し自分のキャリアを真剣に考えている方です。

2026年度の調剤報酬改定は薬局業界の勢力図を塗り替える転換点です。在宅薬学総合体制加算の点数倍増と要件厳格化は「在宅に本気で取り組む薬局だけが生き残る」という国からの明確なメッセージです。

在宅医療の現場では患者さんの生活に寄り添い医師や看護師やケアマネージャーと連携しながら薬学的な専門性を発揮する機会が溢れています。処方箋を待つだけの調剤業務では得られないやりがいがそこにはあります。

今の職場で在宅のスキルを磨ける環境があるなら全力で取り組んでください。もし今の職場にその環境がないのであれば「環境を変える」という選択を恐れないでください。

薬剤師の市場価値は今後ますます在宅医療の実績と連動するようになります。あなたがこれまで積み上げてきた臨床経験と薬学的知識は在宅の現場で大きな力を発揮するはずです。

関連記事:ファルマスタッフの評判は?採用側が語る薬剤師転職の実態

関連記事:レバウェル薬剤師の高年収交渉の評判は?|元調剤薬局人事部長の評価は?

関連記事:ファル・メイトのリアルな評判!派遣薬剤師の時給交渉の裏側【元人事部長が暴露】

FAQ

今回の改定で、一番キャリアに危機感を持つべきなのはどんな薬剤師ですか?

外来調剤のみで業務が完結している薬剤師や、施設在宅しか受けていない薬局に勤めている方です。今回の改定で国は個人宅の高度な在宅管理に大きく点数を振りました。この経験が積めない環境に留まることは、将来の市場価値低下に直結すると予想されます。

今の職場では在宅を経験できません。未経験からでも在宅に強い薬局へ転職できますか?

はい、可能です。2026年改定を受けて、教育体制を整えてでも人員を確保したい(常勤換算3名要件を満たしたい)「勝ち組薬局」は増えています。ただし、薬局によって教育の質に天と地ほどの差があるため、ポテンシャル採用をしてくれる優良企業を見極めることが重要です。

在宅に本気で取り組んでいて、かつ教育体制が整っている薬局の求人はどう探せばいいですか?

薬局の在宅の実績件数や実際の教育体制などの内部事情は、求人票からは絶対に読み取れません。そのため、医療機関へのヒアリング力が高い転職エージェントを活用するのが確実です。詳しくはこちらの記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。

💡 元人事部長が厳選|本当に信頼できた薬剤師転職エージェント3選

「どのエージェントに相談すればいいか分からない」という声をよく聞きます。

私は調剤薬局チェーンの人事部長として20社以上のエージェントと取引してきました。その中で「この会社なら薬剤師のキャリアを本気で考えてくれている」と感じたのはごくわずかです。

採用する側だった私が、求人票には載らない職場の内情まで把握していると確信できたエージェントだけを3社に厳選しました。

「まだ本気で転職するか決めていない」という段階でも相談は無料です。まずは今の自分の市場価値を知ることから始めてみてください。

  • URLをコピーしました!
目次