患者に伝わる服薬指導のコツ|薬剤師が5ステップ・質問例・理解確認を解説

患者の心を掴む服薬指導術|元人事部長が教える「ありがとう」を引き出す3つの実践法
この記事はこんなときに見返せます
  • 服薬指導が一方的な説明になっていると感じるとき
  • 患者へ何を質問すればよいか迷うとき
  • 説明内容が多く、何から伝えるべきか整理したいとき
  • 患者が本当に理解できているか確認したいとき
  • 服薬後フォローが必要か考えるとき
  • 患者対応の経験を評価面談・職務経歴書で振り返るとき

服薬指導では、正しい情報を伝えることが重要です。

しかし、正しい情報を説明しただけで、患者が自宅で安全に薬を使える状態になったとは限りません。

同じ薬でも、初めて使用する人、長く使っている人、運転する人、食事時間が不規則な人、家族が服薬管理している人では、確認すべきことが変わります。

そのため、患者に伝わる服薬指導では、患者の状況を確認し、今回必要な情報を選び、分かりやすく伝え、理解できているか確認し、必要ならその後もフォローするという一連の流れで考えると整理しやすくなります。

薬剤師法第25条の2では、薬剤師は調剤した薬剤の適正な使用のため、患者等へ必要な情報を提供し、必要な薬学的知見に基づく指導を行うことが定められています。また、必要があると認める場合には、薬剤の使用状況を継続的かつ的確に把握し、必要な情報提供・指導を行うことも定められています。厚生労働省 薬剤師法

この記事では、服薬指導を患者から感謝されるための接客技術ではなく、患者が薬を理解し、自分の生活の中で安全に使用するためのコミュニケーションとして整理します。

※この記事は一般的な服薬指導の組み立て方を整理したものです。個別の薬剤・患者について必要な説明、確認、受診勧奨、処方医等への情報提供は、電子添文、患者情報、処方内容その他の情報を踏まえて個別に判断してください。

目次

結論|患者に伝わる服薬指導は5ステップで組み立てる

患者に伝わる服薬指導は、話し方だけを改善するものではありません。

ステップ行うこと
1.状況確認服薬状況、体調、生活、併用薬、困りごと等を確認する
2.情報選択今回特に確認・説明すべき内容を整理する
3.説明正確性を保ちながら患者が理解しやすい言葉・順序で伝える
4.理解確認患者自身の言葉・動作も使って、説明が伝わったか確認する
5.フォロー必要な場合は服用期間中も使用状況・副作用・効果等を確認する

長く話すほど丁寧になるわけではありません。

患者ごとに必要な確認を行い、今回重要な情報を選び、患者が実際に行動できるところまで確認することが大切です。

保存用|服薬指導前の30秒整理シート

忙しい時間帯でも、服薬指導へ入る前に確認項目を短く整理しておくと、説明内容を選びやすくなります。

確認項目今回の内容
前回から何が変わったか
今回特に確認したい患者情報
今回特に説明すべきこと
生活上確認したいこと
患者が気にしていること
理解確認するポイント
服薬後フォローが必要か

すべての患者で全項目を長く確認する必要はありません。

薬歴、処方変更、患者情報等を確認し、今回の優先順位を決めるために使います。

服薬指導の目的は患者から好かれることではない

患者から感謝されたり、相談相手として頼ってもらえたりすることはあります。

しかし、それ自体を服薬指導の目的にすると、本来必要な確認との順番が逆になる場合があります。

重要なのは、患者が今回の薬について少なくとも次のような状態へ近づくことです。

  • どの薬をどのように使用するか理解できている
  • 特に注意すべきことを理解できている
  • 問題が起きた場合にどう対応・相談するか分かっている
  • 自分の生活の中で使用できる見通しが立っている
  • 疑問や不安を医療者へ相談できることを理解している

PMDAの患者向医薬品ガイドも、患者や家族が医療用医薬品を正しく理解し、重大な副作用の早期発見などに役立てることを目的として、電子添文を基に特に知ってほしい情報を分かりやすく記載する資料として位置付けられています。PMDA 患者向医薬品ガイド

なお、患者向医薬品ガイドはすべての医療用医薬品について作成される資料ではありません。PMDAは、重篤な副作用の早期発見等のため特に患者への注意喚起が必要な一定の医薬品について作成が望まれるものとしています。該当ガイドがない場合も、電子添文その他の適切な情報源を確認します。PMDA 患者向医薬品ガイドの作成対象医薬品

ステップ1|まず患者の現在の状況を確認する

服薬指導で説明する内容は、処方箋だけでは決まりません。

同じ薬でも、患者の生活やこれまでの使用状況によって確認すべきことは変わります。

  • 初めて使用する薬か
  • これまで問題なく使用できているか
  • 飲み忘れ・使い忘れがないか
  • 気になる症状や体調変化がないか
  • 他院処方薬・OTC医薬品・サプリメント等を使用していないか
  • 食事・勤務・睡眠等が使用方法へ影響していないか
  • 運転・危険作業等に関係する注意事項がないか
  • 患者自身が気にしていることは何か

たとえば運転に注意が必要な医薬品では、患者が日常的に自動車を運転するかどうかによって説明の重要性が変わります。

PMDAも、医療用医薬品には使用中の運転が禁止されるものや注意が必要なものがあり、個々の薬について医師・薬剤師へ確認するよう案内しています。個別薬剤の判断では電子添文等を確認します。PMDA 薬の使用中の運転に関するQ&A

広い質問から始め、必要なところを具体化する

質問は、患者の状態と確認目的に応じて使い分けます。

確認目的質問例
全体の変化前回から薬を使っていて気になったことはありましたか
服薬状況飲みにくい時間帯や忘れやすいタイミングはありますか
体調変化この薬を始めてから体調で変わったことはありますか
生活への影響お仕事や日常生活で車を運転することはありますか
患者の疑問薬について気になっていることや確認しておきたいことはありますか

何か質問はありますかという問いが悪いわけではありません。

患者が何を質問すればよいか分からない様子なら、薬の特徴や生活状況に合わせて具体的な問いへ変えます。

ステップ2|説明する情報を3段階で整理する

薬について知っていることをすべて説明すれば、良い服薬指導になるわけではありません。

一度に情報が多すぎると、患者が今回特に重要なことを把握しにくくなる場合があります。

説明内容は、患者・処方・薬剤情報を踏まえて次のように整理できます。

区分考え方
今回、確認・説明が必要なこと安全な使用や適正使用のため、今回の状況で優先して確認・説明する事項
今回伝えると理解・実行に役立つこと患者の生活、困りごと、使用状況等から今回伝える意味が大きい事項
次回以降も含めて継続して確認すること一度で完結せず、服薬状況や患者の理解に応じて継続的に確認する事項

この3区分は、具体的な医薬品の説明事項を一律に省略するための基準ではありません。

何を優先するかは、電子添文等の薬剤情報、患者情報、処方内容、前回までの経過などを踏まえて薬剤師が個別に判断します。

ステップ3|専門用語を避けるより意味が伝わるように説明する

分かりやすい説明は、専門用語をすべて使わないことではありません。

副作用、血糖値、抗凝固薬など、患者自身が今後医療者へ症状や薬について説明するときに知っておいた方がよい用語もあります。

重要なのは、用語を使うかどうかではなく、その言葉が患者の行動へつながる意味まで伝わっているかです。

伝え方考え方
専門用語だけを伝える意味や具体的な行動が伝わらない場合がある
専門用語をすべて避ける今後患者が医療者へ伝える際に必要な名称まで共有できない場合がある
用語+意味+行動を伝える正確な名称と、患者が何に気をつけるかを結び付けやすい

たとえば副作用という言葉を使う場合も、副作用に注意してくださいだけで終わらせず、今回特に確認したい症状、出現した場合の対応、どのような場合に相談するかまで整理します。

患者ごとに説明方法を変える

患者に合わせるというと、年齢だけで説明方法を決めたくなるかもしれません。

しかし、高齢だから理解しにくい、若いから短い説明でよい、と一律に決めることはできません。

  • 今回の薬についてどこまで知っているか
  • 聴こえ方・見え方への配慮が必要か
  • 日本語での説明が適切か
  • 本人が服薬管理しているか、家族等が支援しているか
  • 一度に多くの情報を伝える必要があるか
  • 書面・図・患者向け資料等を併用した方がよいか

などを確認しながら説明方法を調整します。

患者向医薬品ガイドが用意されている薬剤では、患者・家族への説明に補助資料として利用できます。PMDAも、医療関係者が患者や家族への薬の説明に使うことを認めています。PMDA 患者向医薬品ガイド

ステップ4|説明後はTeach-backで理解を確認する

薬剤師が説明したことと、患者に伝わったことは同じではありません。

重要な使用方法や注意事項については、患者自身の言葉で説明してもらう方法があります。

米国AHRQでは、このような方法をTeach-backとして整理しています。患者や家族に、知っておく必要があること・行う必要があることを自分の言葉で説明してもらい、医療者側が明確に説明できていたかを確認する方法です。服薬方法の説明も利用場面の一つとして挙げられています。AHRQ Teach-Back

Teach-backは日本の薬剤師法上の独立した義務として定められた方法ではありませんが、患者の理解を確認する実践的な考え方として参考になります。

保存用|理解確認の言い方
  • 私の説明が分かりにくくなかったか確認したいので、ご自宅ではいつ飲む予定か教えていただけますか
  • この薬を使っていて○○が出た場合、どうするか一緒に確認してもよいですか
  • ご家族にも伝えられるように、今日のポイントを一度整理してみましょうか

患者を試験するのではなく、こちらの説明が伝わったかを確認するという立て付けにします。

理解が十分でなければ、同じ説明を繰り返すだけでなく、言葉・順序・資料等を変えてもう一度説明します。

操作が必要なものはShow-meで確認する方法もある

吸入器など、言葉だけでなく操作の理解が重要な場合には、患者に実際の使用方法を示してもらう方法があります。

AHRQではTeach-backに関連するShow-me methodとして、患者が特定の指示を実行できるかを動作で確認する方法を紹介しており、吸入器の使用も例として挙げています。AHRQ Use the Teach-Back Method

実際の指導では、各製品の電子添文・患者向け資材・使用手順等に基づいて確認してください。

ステップ5|必要な患者は服用期間中も確認する

服薬指導は、薬を渡したその日だけで完結しない場合があります。

薬剤師法第25条の2第2項では、調剤した薬剤の適正使用のため必要があると認める場合に、使用状況を継続的かつ的確に把握し、必要な情報提供・指導を行うことが定められています。

対象者や連絡方法を一律に決めるのではなく、患者ごとの必要性を判断します。

  • 新しい薬を開始した
  • 用量・用法が変更された
  • 副作用等について継続確認が必要と判断した
  • 服薬・使用状況に問題がある
  • 前回確認できなかった事項がある

など、患者の状態に応じて必要性を考えます。

患者から信頼を得るために連絡するのではなく、薬物療法を安全に続けるために必要な確認を行うことが目的です。

患者の小さな変化は診断ではなく追加確認のきっかけにする

継続して患者と関わっていると、以前との違いに気づくことがあります。

  • 眠そうにしている
  • 歩きにくそうにしている
  • 食欲が落ちたと話している
  • 薬の理解が以前と違う
  • 服薬状況が変わっている

こうした変化は、追加確認のきっかけになります。

ただし、表情・動作・発言だけで副作用や疾患を診断することはできません。

症状、発現時期、薬剤変更との時間関係、併用薬、原疾患など必要な情報を確認し、必要に応じて処方医等へ情報提供・相談します。

PMDAも、薬を使用して異常を感じた場合には医師・薬剤師へ詳しく状況を伝えるよう患者向けに案内しています。PMDA 知っておきたい薬の知識

保存用|服薬指導の6項目振り返り

服薬指導を改善するときは、話し方だけでなく一連の流れを振り返ります。

確認項目次回変えること
患者の現在の状況を確認できた
今回重要な情報を選べた
意味と行動まで分かる説明ができた
患者の理解を確認できた
必要な記録・引き継ぎを行った
継続フォローの必要性を判断した

○の数を人事評価や技能点へ変換するものではありません。

△になった項目のうち一つを選び、次の服薬指導で改善するために使います。

説明そのものを練習する場合は、自分一人のロールプレイを録音して確認する方法もあります。

一方、実際の患者との会話を勤務先の承認や情報管理ルールを確認せず、個人端末へ保存することは避けた方が安全です。患者情報・プライバシーを含む可能性があるため、研修・記録目的で音声等を扱う場合は勤務先の規程、承認手続、患者への説明の要否等を確認してください。

忙しい薬局では説明時間より事前確認と優先順位を見直す

患者数が多い時間帯では、一人の患者へ長時間対応することが難しい場合があります。

このとき、忙しいから説明を削ると考えるより、患者情報を事前に確認し、今回必要な説明・確認の優先順位をつける方が適切です。

たとえば、新規薬剤・変更薬がある、使用状況に問題がある、重要な注意事項がある、前回から確認事項が残っている場合などは、確認内容が増えることがあります。

反対に、長期間同じ薬を問題なく使用し、必要事項を理解できている患者へ、毎回同じ説明を最初から読み上げることが最適とは限りません。

必要な説明・確認を省略せず、薬歴・前回情報・処方変更等を服薬指導前に確認し、患者ごとに今回の重点を決めます。

服薬指導で伝えにくい場面は説明の順序・言い方も見直す

正しい内容でも、患者が聞いていないと感じた、副作用の説明で不安が強くなった、同じ質問が繰り返される、といった場面では、情報の順序や言い方を見直す余地があります。

このページでは服薬指導全体の組み立てを扱っています。説明時の摩擦やクレーム場面での言い換えは、服薬指導のクレーム対応|薬剤師が説明の順序・言い換えを考える方法で詳しく整理しています。

服薬指導の経験を評価面談・転職面接でどう伝えるか

患者対応の経験は、患者から感謝された、指名されたという結果だけでは、仕事の中身を十分に説明できないことがあります。

私が薬剤師採用に携わっていた範囲でも、感謝された回数そのものより、具体的な患者対応について、何を確認し、どう考え、何を行ったのかを説明できる方が経験を理解しやすいと感じていました。

これは私自身の採用・人事経験であり、すべての企業が同じ評価基準を採用しているという意味ではありません。

保存用|患者対応の実績記録シート

記録項目自分の内容
どのような患者・状況だったか
何を課題として捉えたか
どの情報を確認したか
どのように説明・対応したか
患者の理解をどう確認したか
誰と連携したか
その後どのようにフォローしたか
次の担当者・職場へ何を残したか

この形で記録しておけば、人事評価面談、職務経歴書、転職面接などで患者対応の経験を具体化しやすくなります。

服薬指導の得意・不得意だけで人事評価や給与が決まるわけではありません。勤務先の評価制度や応募先が求める役割はそれぞれ異なります。

患者対応以外も含めた職場での仕事の進め方は、職場で信頼される薬剤師とは?元人事部長が7つの仕事の進め方を解説で整理しています。

服薬指導を改善しにくい原因が職場側にあることもある

自分の説明方法を改善しても、個人だけでは解決しにくい問題があります。

  • 必要な患者情報へアクセスしにくい
  • 患者対応を相談できる薬剤師がいない
  • 繁忙時間帯の人員配置に課題がある
  • 服薬後フォローの運用が整理されていない
  • 記録・引き継ぎ方法が統一されていない

こうした場合は、コミュニケーション能力の問題だけとして扱わず、薬局長・上司と業務フロー、情報共有、役割分担等を確認する必要があります。

保存用|次の服薬指導で使う5つの確認

  1. 前回から何が変わったかを一つ確認する
  2. 今回最も重要な説明事項を先に決める
  3. 専門用語を使うなら意味と行動まで伝える
  4. 重要事項は患者自身の言葉・動作でも確認する
  5. 次回フォローまたは引き継ぎが必要か判断する

まとめ|患者に伝わる服薬指導は説明の前後まで含めて考える

患者に伝わる服薬指導は、会話が上手な薬剤師になることだけを意味しません。

  • 患者の現在の状況を確認する
  • 今回必要な情報を選ぶ
  • 正確性を保ちながら意味と行動まで分かるように説明する
  • Teach-back等を参考に説明が伝わったか確認する
  • 操作が重要なものは実演での確認も検討する
  • 必要な患者は服用期間中もフォローする
  • 患者の変化を診断ではなく追加確認のきっかけにする
  • 患者対応の経験を具体的な仕事として記録する

患者から感謝されることは結果として起こることがあります。

ただ、それを目的にするのではなく、患者が薬を理解し、自分の生活の中で安全に使用できる状態へ近づけることを中心に考えます。

参考にした公的・一次資料

FAQ

服薬指導では専門用語を使わない方がよいですか?

一律に避ける必要はありません。患者が今後医療者へ伝える際に知っておいた方がよい用語もあります。用語を使う場合は、意味と患者が取るべき行動まで分かるように説明し、理解できているか確認します。

患者から何も質問がなければ説明は十分だったと考えてよいですか?

質問がないことだけでは判断できません。患者が何を質問すればよいか分からない場合もあります。重要な使用方法・注意事項は、患者の状況に応じて具体的に確認し、必要に応じて患者自身の言葉で理解を確認します。

Teach-backは患者を試験する方法ですか?

患者を評価するための試験ではありません。医療者側の説明が明確に伝わったかを確認する考え方です。理解が十分でなければ、患者を責めず、説明方法を変えて再確認します。

患者向医薬品ガイドが見つからない薬は説明資料がないということですか?

患者向医薬品ガイドはすべての医療用医薬品について作成される資料ではありません。見つからない場合も、電子添文その他の適切な医薬品情報を確認し、必要な内容を患者へ説明します。

忙しい薬局では服薬指導を短くしてもよいですか?

時間の長さだけで適否は決まりません。忙しいから説明事項を機械的に削るのではなく、患者情報を事前確認し、今回必要な説明・確認の優先順位をつけます。必要な説明や確認を省略しないことが前提です。

患者の表情がいつもと違う場合、副作用と考えた方がよいですか?

変化は追加確認のきっかけにはなりますが、表情だけで副作用と判断することはできません。症状、発現時期、薬剤変更、併用薬、原疾患などを確認し、必要に応じて処方医等へ相談します。

服薬指導が得意なら人事評価や転職で有利になりますか?

一律にはいえません。勤務先の評価制度や応募先が求める役割は異なります。患者対応の経験は、感謝されたという結果だけでなく、状況・課題・確認・対応・連携・フォローまで具体的に説明できる形で記録すると、評価面談や転職面接で経験を伝えやすくなります。

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