かかりつけ薬剤師を増やす地域住民へのアプローチと広報戦略5選

※2025年9月時点の情報です

目次

かかりつけ薬剤師が増えない本当の理由

「かかりつけの算定件数、今月も目標未達だぞ」 「声かけしてるのか?」

上層部からこんなプレッシャーをかけられ、胃がキリキリする思いをしている薬剤師さんは多いのではないでしょうか。 現場はただでさえ対人業務や調剤で手一杯。「これ以上、患者さんに営業なんてできない」「金銭的な負担をお願いするのは気が引ける」というのが本音ですよね。

私は元調剤薬局チェーンの人事部長として、現場の悲鳴も、経営側の論理も見てきました。 正直に言います。かかりつけ薬剤師が増えないのは、あなたのトークスキルが低いからではありません。「患者さんが断る理由」を先回りして潰せていないだけなのです。

この記事では、精神論や根性論は一切抜きにします。 私が現場の薬剤師と共に試行錯誤し、実際に「断られるストレス」を減らしながら件数を積み上げた具体的な手順だけを共有します。

そして記事の後半では、苦労して積み上げたその「かかりつけ実績」を使って、年収を確実に引き上げるキャリア戦略についても、人事の裏側から暴露します。 会社に使われるのではなく、会社を利用できる薬剤師になりましょう。

【現実】かかりつけ薬剤師算定が年収に与える影響

かかりつけ薬剤師算定と評価制度の関係

かかりつけ薬剤師の算定件数は、あなたの年収に直接影響します。多くの調剤薬局チェーンでは、かかりつけ薬剤師の算定件数が人事評価の重要指標になっています。算定件数が多い薬剤師は、昇給や賞与で優遇されるのです。

私が人事部長だった頃、こんなケースがありました。30代の薬剤師Aさんは、かかりつけ薬剤師の算定件数を1年で5件から30件に増やしました。その結果、人事評価がS評価となり、年収が50万円アップしました。一方、同期の薬剤師Bさんは、算定件数が3件のまま。評価はC評価で、昇給は基本給で月5000円だけでした。

この差は何から生まれたのか。Aさんは地域住民へのアプローチ方法を学び、実践していました。一方Bさんは、患者さんに声をかけることすらしていませんでした。

私の知るある企業の実例を挙げると、評価への影響は以下のように露骨でした。

  • 算定0〜5件(評価C): 昇給は月3,000円程度(ほぼ定昇のみ)
  • 算定20〜30件(評価A): 昇給月1.5万円〜2万円+賞与アップ
  • 算定30件以上(評価S): 昇給月3万円以上+管理職候補への抜擢

もちろん企業によりますが、多くのチェーン薬局で「かかりつけ算定件数」はKPI(重要業績評価指標)の最上位に置かれています。会社によっては、件数に応じたインセンティブ(1件あたり数百円〜)を支給するケースもあり、やればやるほど明確に年収が開く仕組みになっています。

かかりつけ薬剤師の算定件数は、あなたのキャリアを左右する重要な指標なのです。

【重要】転職市場でのかかりつけ薬剤師経験の価値

かかりつけ薬剤師の算定実績は、転職市場でも高く評価されます。私が人事部長として採用活動をしていた時、かかりつけ薬剤師の算定実績がある応募者は優先的に採用していました。それだけ貴重なスキルなのです。

特に高く評価されるのは、以下の実績です。かかりつけ薬剤師算定件数30件以上、在宅医療の訪問実績、服薬指導の質的向上の取り組み、地域連携の実践経験などです。これらの実績があれば、転職時に年収100万円以上のアップも可能です。

私が採用した薬剤師Cさんは、前職でかかりつけ薬剤師を50件算定していました。その実績を評価し、年収600万円の条件を提示しました。「前の職場では評価されませんでしたが、この実績が転職で武器になるとは思いませんでした」とCさんは驚いていましたが、かかりつけ薬剤師の算定実績は、それだけ価値があるのです。

もしあなたが転職を考えているなら、今すぐかかりつけ薬剤師の算定件数を増やすべきです。それが最も確実な年収アップの方法だからです。

【実践】地域住民へのアプローチ5つの戦略

戦略1:薬局内POPと待合室活用による認知拡大

かかりつけ薬剤師を増やす第一歩は、地域住民への認知拡大です。多くの患者さんは、かかりつけ薬剤師制度を知りません。制度を知らなければ、利用することもできません。

私が見てきた中で最も効果的だったのは、薬局内POPの活用です。待合室に分かりやすいポスターを掲示する。受付カウンターにリーフレットを置く。これだけで、患者さんの認知度は大幅に向上します。

POPの作成で重要なポイントは以下の通りです。タイトルは「あなた専属の薬剤師がいます」など親しみやすく。イラストや写真を使って視覚的に訴求する。メリットを具体的に3つ箇条書きする。担当薬剤師の顔写真と名前を掲載する。料金を明記して不安を解消する。これらを意識することで、効果的なPOPが作成できます。

特に重要なのが、料金の「目安」を明記することです。患者さんの多くは「かかりつけ薬剤師は高い」と誤解しています。

薬剤師Dさんの事例では、A4ポスターに「月々約70円〜(※1割負担の場合)」と記載しました。 重要なのは、注釈を入れることです。「高い」と思っている患者さんには、「1割負担の方なら缶ジュース1本より安いですし、3割負担の方でも月々220円程度(コーヒー2杯分)ですよ」と比較対象を出して伝えることで、金銭的な心理ハードルは劇的に下がります。イラスト付きで、メリットを分かりやすく説明していました。このポスターを待合室に掲示したところ、1ヶ月で10名の患者さんから問い合わせがありました。そのうち8名が、かかりつけ薬剤師に同意してくれたのです。(月々70円は1割負担の患者が月に1回だけ指導を受けた場合の自己負担額。)

「ポスターを見て、こんな便利な制度があるなんて知りませんでしたと言われました」とDさんの取り組みは、認知拡大の重要性を示しています。待合室は、患者さんが必ず目にする場所です。この空間を有効活用しない手はありません。

戦略2:初回服薬指導時の戦略的説明

かかりつけ薬剤師の同意を得る最大のチャンスは、初回服薬指導時です。初めて来局した患者さんは、薬局への期待値が高い状態です。このタイミングでかかりつけ薬剤師制度を説明すれば、同意率は格段に上がります。

上手い薬剤師でも、同意率は30〜40%程度あれば十分優秀です。数を打つことが重要です。実際のトークでは、「当薬局では、私〇〇が専属で担当する制度があります。24時間いつでも携帯電話でつながりますので、夜間の急な体調変化でも安心してください」と言い切ります。

薬剤師の皆さんの中には「本当に24時間電話が来たらどうしよう」と不安になる方もいるでしょう。しかし、実際には「いつでもかけられる安心」だけで満足され、滅多に電話は鳴りません。 堂々と「安心」を売ってください。

鉄則は「その場で提案すること」です。「後日また〜」という案内では、患者さんの熱量は冷めてしまいます。 もちろん、無理やりサインさせるのは禁物です。 「今日決めていただく必要はありませんが、もしもの時のために同意書だけお渡ししておきますね」と伝え、次回の来局時に「この前の件、いかがでしたか?」と回収するフローを作るだけでも、同意率は格段に上がります。

私が見た中で印象的だったのは、薬剤師Eさんの説明方法です。Eさんは初回服薬指導時、必ずこう言っていました。「当薬局では、患者さんお一人お一人に専属の薬剤師がつく制度があります。お薬の相談だけでなく、健康に関することなら何でもお気軽にお電話ください。24時間対応しています」この説明に、多くの患者さんが関心を示しました。

「そんな制度があるんですか?ぜひお願いします」とEさんの同意率は、80%を超えていました。初回服薬指導は、かかりつけ薬剤師獲得の最大のチャンスなのです。

※算定には当該薬局での在籍期間や認定薬剤師の資格など、事前の要件があります。まずはご自身が要件を満たしているか確認しましょう。

戦略3:お薬手帳への情報記載による信頼構築

お薬手帳は、患者さんとの継続的な関係を構築する重要なツールです。かかりつけ薬剤師を増やすためには、お薬手帳への情報記載を戦略的に活用すべきです。私が見てきた中で効果的だったのは、以下の方法です。

お薬手帳活用の5つのテクニックをご紹介します。薬剤師の顔写真と連絡先を記載したシールを貼る。服薬指導の内容を具体的に記載する。次回来局時の確認事項をメモする。季節ごとの健康アドバイスを記載する。「いつでもご相談ください」と手書きメッセージを添える。これらを実践することで、患者さんとの信頼関係が深まります。

特に効果的なのが、手書きメッセージです。印刷されたシールだけでなく、手書きで一言添えることで、患者さんは特別感を感じます。

私が人事部長だった頃、薬剤師Fさんはお薬手帳に必ず手書きメッセージを記載していました。「○○さん、血圧が少し高めでしたね。塩分を控えめに。また様子を教えてください」このような具体的なメッセージを書くことで、患者さんは「この薬剤師さんは、私のことを見てくれている」と感じます。Fさんのかかりつけ薬剤師算定件数は、1年で40件を超えました。

「患者さんから、手帳のメッセージを見て安心しましたと言われることが多いです」とFさんの取り組みは、お薬手帳活用の重要性を示しています。お薬手帳は、患者さんが必ず持ち帰るものです。この特性を活用しない手はありません。

戦略4:定期薬服用患者へのフォローアップ電話

定期薬を服用している患者さんは、かかりつけ薬剤師の最適なターゲットです。なぜなら、継続的な服薬管理が必要だからです。私が見てきた中で、定期薬服用患者へのフォローアップ電話は、同意率が最も高い方法でした。

フォローアップ電話の効果的な方法は以下の通りです。服薬開始2週間後に電話する。副作用や困りごとがないか確認する。生活習慣のアドバイスを提供する。次回来局時の日程を確認する。「いつでも電話してください」と伝える。これらのポイントを押さえることで、患者さんとの信頼関係が構築できます。

特に重要なのが、タイミングです。服薬開始2週間後は、患者さんが副作用や疑問を感じやすい時期です。このタイミングで電話することで、患者さんは薬剤師のサポートを実感します。

私が見た中で印象的だったのは、薬剤師Gさんの取り組みです。Gさんは高血圧の新規患者さんに対し、必ず2週間後に電話していました。「○○さん、お薬を飲み始めて2週間経ちましたが、体調はいかがですか?めまいや立ちくらみはありませんか?」この電話に、多くの患者さんが感激していました。「わざわざ電話をくれるなんて、親身な先生だね」と信頼関係が一気に深まります。Gさんはこのテレフォンフォローを徹底することで、通常の窓口対応に比べて約2倍の確率で同意を獲得していました。

定期薬服用患者は、かかりつけ薬剤師を最も必要としている人たちです。積極的にアプローチすべきなのです。

戦略5:地域イベントでの健康相談会開催

地域イベントでの健康相談会は、薬局の認知度を高める最良の方法です。薬局の外に出て、地域住民と直接コミュニケーションを取ることで、信頼関係を構築できます。私が見てきた中で、健康相談会を定期開催している薬局は、かかりつけ薬剤師の算定件数が2倍以上になっていました。

健康相談会の効果的な開催方法は以下の通りです。月1回の定期開催で認知を定着させる。血圧測定や骨密度測定など体験型にする。薬剤師の顔と名前を覚えてもらう。かかりつけ薬剤師のリーフレットを配布する。参加者に薬局の連絡先を渡す。これらを実践することで、地域での認知度が高まります。

特に効果的なのが、体験型のコンテンツです。血圧測定や骨密度測定など、その場で結果が分かる体験は、住民の参加意欲を高めます。

私が人事部長だった頃、ある薬局でこんな取り組みがありました。薬剤師Hさんは、毎月第3日曜日に地域の公民館で健康相談会を開催していました。血圧測定と健康相談を無料で提供し、かかりつけ薬剤師制度のリーフレットを配布していました。この取り組みを1年間継続した結果、Hさんのかかりつけ薬剤師算定件数は60件を超えました。

「健康相談会に参加した住民の方々が、薬局に来てくださるようになりました。顔を覚えていただけたことが大きかったです」とHさんの取り組みは、地域密着の重要性を示しています。薬局は地域に根ざした存在です。地域住民との接点を増やすことが、かかりつけ薬剤師獲得の近道なのです。

【説明術】患者さんが思わず同意するトークスクリプト

料金への不安を解消する説明方法

かかりつけ薬剤師の同意を妨げる最大の障壁は、料金への不安です。「高いんじゃないか」「追加料金を取られるのでは」このような不安を持つ患者さんは多く存在します。私が見てきた中で、料金の説明が上手い薬剤師は、同意率が格段に高いです。

料金の効果的な説明方法は以下の通りです。「月々70円」と月額で伝える。「1日約2円」と1日当たりに換算する。「コーヒー1杯より安い」と身近なものに例える。保険適用で負担額が少ないことを強調する。「24時間いつでも相談できる安心料」と価値を伝える。これらのテクニックを使うことで、料金への不安を解消できます。

特に効果的なのが、身近なものに例える方法です。「月々70円で、24時間いつでも相談できる専属の薬剤師がつきます。コーヒー1杯より安い金額で、健康の安心が買えるんです」このように説明すると、多くの患者さんは「それなら安い」と感じます。

私が見た中で印象的だったのは、薬剤師Iさんの説明方法です。Iさんは料金を説明する際、必ず電卓を使って計算していました。「1ヶ月の負担額は70円です。1日に換算すると、約2円。缶ジュース1本より安い金額で、お薬の専門家に24時間相談できます」この具体的な説明に、患者さんは納得していました。

料金への不安は、具体的な金額と比較対象を示すことで解消できるのです。

メリットを具体的に伝える3つのシナリオ

かかりつけ薬剤師のメリットは、抽象的に説明しても伝わりません。患者さんの生活シーンに即した、具体的なメリットを伝えるべきです。私が見てきた中で効果的だったのは、以下の3つのシナリオです。

シナリオ1は夜間の体調不良時です。「夜中に急に体調が悪くなったとき、お薬を飲んで良いか不安になったことはありませんか?かかりつけ薬剤師なら、24時間いつでも電話相談できます。救急病院に行くべきか、様子を見て良いか、その場で判断できます」このシナリオは、高齢者や持病を持つ患者さんに特に響きます。

シナリオ2は複数の医療機関受診時です。「内科と整形外科、両方から薬をもらっていて、飲み合わせが心配になったことはありませんか?かかりつけ薬剤師なら、あなたの全てのお薬を把握して、飲み合わせをチェックします。重複や相互作用を防げます」このシナリオは、複数の医療機関を受診している患者さんに効果的です。

シナリオ3は服薬の疑問や不安についてです。「薬を飲み忘れたとき、どうすれば良いか迷ったことはありませんか?かかりつけ薬剤師なら、電話一本で適切なアドバイスができます。わざわざ薬局に来る必要もありません」このシナリオは、全ての患者さんに共通する悩みです。

私が見た中で、薬剤師Jさんはこれら3つのシナリオを使い分けていました。患者さんの年齢や服薬状況を見て、最も響きそうなシナリオを選択。具体的なメリットを伝えることで、同意率を高めていました。「シナリオを使うようになってから、患者さんの反応が全く変わりました。みなさん、自分のことだと感じてくださるんです」とJさんの同意率は、75%を超えていました。

メリットは、患者さんの生活に即して具体的に伝えるべきなのです。

断られた時の切り返しトーク

かかりつけ薬剤師の説明をしても、断られることはあります。しかし、断られ方によっては、切り返すチャンスがあります。私が見てきた中で、切り返しが上手い薬剤師は、一度断られても半数以上を同意に持ち込んでいました。

効果的な切り返しトークをご紹介します。「お金がかかるなら結構です」と言われたら、まずは負担割合を確認しつつこう返します。

「そうですよね、負担は気になりますよね。ただ、〇〇さんは1割負担ですので、月々約70円、1日換算だとたったの2〜3円なんです。この金額で24時間相談できる『安心料』と考えていただければ、決してお高くはないかと思います」

ポイントは「1日換算」で伝えること。そして「いつでも解除できます」と逃げ道を用意してあげることです。「今すぐは必要ないです」と言われたら、「そうですよね。でも、いざという時に困るのがお薬のことなんです。夜中に体調が悪くなった時、相談できる薬剤師がいると安心ですよ」と返します。

「考えさせてください」と言われたら、「もちろんです。でもせっかくなので、今日だけでも説明を聞いていただけませんか?3分で終わります」と提案します。特に効果的なのが、「いつでも解除できる」という説明です。患者さんの多くは、一度同意したら解除できないと思っています。この不安を解消することで、同意率は高まります。

私が見た中で、薬剤師Kさんの切り返しは見事でした。患者さんに「今すぐは必要ない」と断られた時、Kさんはこう言いました。「分かりました。でも、もし夜中にお薬のことで困ったら、薬局に電話してくださいね。ただ、かかりつけ薬剤師じゃないと24時間対応できないんです。いざという時のために、同意だけしておきませんか?」この切り返しに、多くの患者さんが「それならお願いします」と同意してくれました。

断られても諦めない。適切な切り返しトークを用意しておくことが重要なのです。

【組織戦略】薬局全体でかかりつけ薬剤師を増やす仕組み

薬局長のリーダーシップと目標設定

かかりつけ薬剤師を増やすには、個人の努力だけでは限界があります。薬局全体で取り組む仕組みが必要です。私が人事部長として見てきた中で、かかりつけ薬剤師の算定件数が多い薬局は、薬局長のリーダーシップが強力でした。

薬局長が明確な目標を設定し、スタッフ全員で取り組む。この体制があるかどうかが、成果を左右します。効果的な組織戦略は以下の通りです。月ごとの算定目標を明確に設定する。週1回のミーティングで進捗を共有する。成功事例を全員で学び合う。事務スタッフも巻き込んで声かけする。達成した薬剤師を表彰する。これらを実践することで、薬局全体の算定件数が向上します。

特に重要なのが、事務スタッフの巻き込みです。受付で患者さんに「かかりつけ薬剤師制度をご存知ですか?」と声をかけてもらう。これだけで、患者さんの認知度は格段に上がります。

私が見た中で、ある薬局の取り組みが印象的でした。薬局長は、毎月の薬剤師ミーティングでかかりつけ薬剤師の算定件数を発表していました。そして、最も件数が多かった薬剤師に「MVP賞」を授与。全員で拍手して称えていました。この取り組みにより、薬局全体のモチベーションが向上。1年で薬局全体の算定件数が3倍になりました。

組織全体で取り組むことで、個人では達成できない成果が生まれるのです。

スタッフ間での情報共有と教育体制

かかりつけ薬剤師を増やすには、スタッフ間での情報共有が不可欠です。成功事例を共有し、全員で学び合う。この文化があるかどうかが、薬局の成果を左右します。私が見てきた中で効果的だったのは、以下の方法です。

情報共有の3つの仕組みをご紹介します。週1回のミーティングで成功事例を発表する。患者さんへの説明トークをロールプレイで練習する。ベテラン薬剤師が若手にOJTで指導する。これらを実践することで、スタッフ全員のスキルが向上します。

特に効果的なのが、ロールプレイです。実際の患者さんへの説明を想定して、薬剤師同士で練習する。この訓練により、本番での説明がスムーズになります。

私が見た中で、ある薬局では毎週金曜日の閉局後、30分間のロールプレイを実施していました。新人薬剤師が患者役、ベテラン薬剤師が薬剤師役。実際の説明場面を再現し、改善点をフィードバックしていました。この取り組みにより、新人薬剤師でも3ヶ月で10件以上の算定を達成していました。「ロールプレイで練習したおかげで、本番でも自信を持って説明できました」と新人薬剤師からは、こんな声が聞かれました。

情報共有と教育体制が整っている薬局は、スタッフ全員が成長します。そして薬局全体の成果も向上するのです。

【ケーススタディ】かかりつけ薬剤師で年収アップした実例

30代・算定件数50件達成のケース

30代前半の薬剤師Nさんは、地方の調剤薬局で5年間勤務していました。年収は480万円。かかりつけ薬剤師の算定件数は、入社時から5件のままでした。Nさんは、このままでは成長できないと感じていました。そこで、かかりつけ薬剤師を増やすための戦略を学び、実践することを決意しました。

まず取り組んだのが、薬局内POPの作成です。待合室に分かりやすいポスターを掲示し、受付カウンターにリーフレットを設置。患者さんの認知度を高めることから始めました。次に、初回服薬指導時の説明を徹底しました。新規の患者さんには必ずかかりつけ薬剤師制度を説明し、その場で同意を得る。この取り組みにより、月に3〜5名の新規同意を獲得しました。

さらに、定期薬服用患者へのフォローアップ電話も開始。服薬開始2週間後に電話し、体調確認と服薬指導を行う。この取り組みにより、患者さんとの信頼関係が深まりました。1年後、Nさんのかかりつけ薬剤師算定件数は50件を突破。人事評価はS評価となり、年収は580万円にアップしました。「地道な取り組みを続けた結果、患者さんからの信頼を得られました。年収も上がり、仕事のやりがいも感じています」とNさんの成功は、適切な戦略と継続的な努力の成果です。

40代・転職で年収150万円アップのケース

40代後半の薬剤師Oさんは、中堅チェーンの調剤薬局で15年間勤務していました。年収は520万円。かかりつけ薬剤師の算定件数は60件を超えており、薬局内でもトップクラスでした。しかし、Oさんはこの実績が正当に評価されていないと感じていました。「これだけ頑張っているのに、評価は変わらない。このままでいいのか」とOさんは転職を決意し、転職エージェントに相談しました。

担当者は、Oさんのかかりつけ薬剤師実績を高く評価しました。「この実績なら、年収650万円以上を狙えます。地域密着型の薬局なら、さらに高い評価を得られるでしょう」と担当者は、かかりつけ薬剤師の算定件数を重視する大手チェーンを紹介。面接では、具体的な取り組み内容とエピソードを丁寧に説明しました。結果として、年収670万円の条件で内定を獲得。前職より150万円のアップを実現しました。

「自分の実績が、こんなに評価されるとは思いませんでした。転職エージェントに相談して本当に良かったです」とOさんは、新しい職場でもかかりつけ薬剤師の算定に注力しています。実績は転職後も評価され続け、さらなる年収アップも視野に入っています。Oさんの成功は、実績を適切にアピールすることの重要性を示しています。

【キャリア戦略】かかりつけ薬剤師経験を転職に活かす方法

職務経歴書での効果的なアピール方法

かかりつけ薬剤師の算定実績は、転職時の最強の武器です。しかし、ただ「算定件数○○件」と書くだけでは、あなたの価値は伝わりません。私が人事部長として採用活動をしていた時、職務経歴書の書き方で評価が大きく変わることを実感しました。

効果的な職務経歴書の書き方は以下の通りです。算定件数の推移を時系列で示す。地域住民へのアプローチ方法を具体的に記載する。在宅医療との連携実績も併記する。患者さんからの感謝の声を引用する。薬局全体の算定件数向上への貢献を数値化する。これらを盛り込むことで、あなたの実力が明確に伝わります。

特に効果的なのが、数値での実績提示です。「入社時5件→1年後30件→2年後50件」このように推移を示すことで、あなたの成長力と継続力が伝わります。

私が見た中で印象的だったのは、薬剤師Lさんの職務経歴書でした。Lさんは、かかりつけ薬剤師の算定実績だけでなく、具体的な取り組み内容も記載していました。「地域住民への健康相談会を月1回開催し、薬局の認知度を向上。かかりつけ薬剤師算定件数を1年で5件から35件に増加。薬局全体の算定件数も前年比150%を達成し、店舗の調剤報酬増加に貢献」この職務経歴書を見て、私は即座に面接を設定しました。

数値と具体的な取り組みが明確に示されており、Lさんの実力が一目で分かったからです。結果として、Lさんには年収650万円の条件を提示しました。前職より100万円以上のアップです。「かかりつけ薬剤師の実績が、こんなに評価されるとは思いませんでした」とLさんは驚いていましたが、実績を適切にアピールできれば、転職市場での評価は格段に上がるのです。

面接で人事が聞きたいポイント

面接では、かかりつけ薬剤師の算定件数だけでなく、その背景にある取り組みが評価されます。私が人事部長として面接をしていた時、必ず聞いていた質問があります。面接で必ず聞かれる5つの質問をご紹介します。

どのように患者さんにアプローチしましたか?断られた時、どう対応しましたか?地域住民との信頼関係をどう構築しましたか?かかりつけ薬剤師として印象に残っているエピソードは?転職先でも同じ取り組みができますか?これらの質問に対して、具体的に答えられる準備が必要です。

特に重要なのが、具体的なエピソードです。数字だけでなく、実際にどんな患者さんとどう関わったのか。その具体性が、あなたの実力を証明します。

私が面接した中で印象的だったのは、薬剤師Mさんの回答でした。「かかりつけ薬剤師として最も印象に残っているのは、80代の独居女性の患者さんです。この方は夜間に何度も体調不良で救急搬送されていました。私がかかりつけ薬剤師になってからは、夜中に電話相談を受けることで適切な判断ができ、不要な救急搬送が減りました。患者さんからは『あなたがいてくれて本当に助かる』と感謝されました」このエピソードを聞いて、私はMさんの実力を確信しました。

かかりつけ薬剤師の本質を理解し、患者さんに真摯に向き合っている。そのことが伝わってきたからです。面接では、数字だけでなく具体的なエピソードを準備してください。それがあなたの価値を最大限に伝える方法です。

【元人事部長からの警告】その努力、搾取されていませんか?

ここまで、現場で実践できる「かかりつけ薬剤師」の獲得ノウハウをお伝えしてきました。 しかし最後に、元人事部長として一つだけ、どうしてもお伝えしなければならない「不都合な真実」があります。

それは、あなたが身を粉にして24時間対応し、実績を作ったとしても、「会社がそれに見合う対価を払ってくれるとは限らない」ということです。

「やりがい搾取」の薬局に注意してください

私が業界を見てきた中で、最も悪質だと感じるのは、薬剤師の責任感につけ込む経営者です。

  • 「かかりつけは薬剤師の義務だ」と精神論で件数を強要する
  • 24時間携帯を持たせているのに、手当は月数千円(あるいはゼロ)
  • 夜間のコールセンター代行などを導入する気配がない
  • どれだけ件数を取っても、給与明細が変わらない

もし、あなたの今の職場がこの特徴に当てはまるなら、それは「やりがい搾取」です。 あなたのスキル不足ではありません。あなたが身を置く「環境」が間違っているのです。

実績30件=「年収100万円アップ」のプラチナチケット

断言します。今のあなたには、ご自身が思っている以上の価値があります。 かかりつけ薬剤師の算定実績(特に30件以上)を持っている薬剤師は、転職市場では「即戦力の管理職候補」として扱われます。

「実績があるが、今の会社で評価されていない」 この事実を転職エージェントに伝えるだけで、年収600万円〜700万円のオファーが出ることは珍しくありません。ホワイトな薬局チェーンほど、現場の苦労を知っている実績者を喉から手が出るほど欲しがっているからです。

あなたの市場価値を「正しく」評価してくれる場所へ

「今の職場で使い潰されるか」 「実績を武器に、正当な対価とサポート体制がある環境へ移るか」

選択権は、実績を作ったあなた自身にあります。 まずは、以下の信頼できるエージェントに登録し、「私のかかりつけ実績だと、年収いくらになりますか?」と聞いてみてください。それだけで、あなたの薬剤師人生の景色が変わるはずです。

元人事部長が推奨する「交渉力が強い」エージェント3選

実は、人事部長として多くの紹介会社と付き合う中で、「この会社の担当者からの電話なら、どんなに忙しくても取る」と決めていた会社が数社だけありました。なぜ彼らは特別だったのか?どうすれば、あなたの経験とスキルを、最大限評価してくれる職場を見つける「本物の担当者」に出会えるのか。 

ここで書くと長くなるため、採用担当しか知らない「エージェント活用の裏ノウハウ」として別の記事にまとめました。本気で転職を成功させたい方だけご覧ください。

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あなたの人生は、会社のものではありません

かかりつけ薬剤師制度は、患者さんのための制度です。しかし、それは「薬剤師が犠牲になっていい」という意味ではありません。

今日から、まずはPOPを一枚貼ってみてください。 そして同時に、転職サイトを覗いて「自分の本当の値段」を確認してみてください。

適切な場所で、適切な評価を受けながら、地域の患者さんに寄り添う。 そんな幸せな薬剤師ライフを、あなたが掴み取ることを応援しています。


私が人事部長時代、実際に『交渉力が高く、信頼できる』と感じたエージェントについては、以下の記事で実名を挙げて解説しています。失敗したくない方は、必ずチェックしてください。

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この記事を書いた人

調剤薬局チェーン元人事部長・薬剤師・中小企業診断士。
約4年間、人事責任者として薬剤師の採用・評価制度設計に従事。大手を中心に20社以上の紹介会社と折衝し、採用の舞台裏から「紹介会社の実力差」を熟知する。現在は経営コンサルタントとして、調剤薬局の採用戦略や人事考課制度の設計支援を行う一方、薬剤師個人のキャリア支援も行っている。採用側と求職側、双方の視点を持つ「情報の非対称性を解消する」解説に定評がある。

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