- 2026年度薬価改定の改定率と実施時期
- 平均乖離率4.8%と個別薬局の薬価差益の違い
- G1ルール、不採算品再算定、最低薬価等の主な変更
- 共同購買・価格交渉代行をどう見るか
- 薬価改定後に自店舗で確認したい数字
- 薬価改定と薬剤師個人の給与・転職を分けて考える方法
2026年度の薬価基準改定は、2026年4月1日に実施されました。
厚生労働省による改定率は、医療費ベースで▲0.86%、薬剤費ベースで▲4.02%です。また、改定の基礎となった2025年薬価調査では、薬価と市場実勢価格の平均乖離率が4.8%まで縮小しました。
ただし、ここで最も注意したいのは、平均乖離率4.8%を自分の薬局の薬価差益率と同じ数字だと考えないことです。
全国平均の乖離率は薬価制度全体の動きを見るうえで重要ですが、個別薬局の収益は、品目構成、実際の仕入単価、処方数量、在庫、廃棄、取引条件などで変わります。
私は調剤薬局チェーンで経営企画・人事に関わり、診療報酬・薬価改定後の店舗収支を見る立場も経験してきました。この記事では、全国平均の数字と自店舗の数字を分けながら、2026年度薬価改定を薬局経営の視点から整理します。
結論|平均乖離率4.8%と自店舗の薬価差益は別の数字
2026年度薬価改定を理解するときは、最初に次の3つを分ける必要があります。
| 数字 | 何を示すか | 注意点 |
|---|---|---|
| 改定率 ▲0.86% | 薬価改定による医療費ベースの影響 | 個別薬局の売上減少率ではない |
| 薬剤費ベース ▲4.02% | 薬剤費ベースで見た薬価改定の影響 | 全品目が4.02%下がる意味ではない |
| 平均乖離率 4.8% | 薬価と市場実勢価格の全国的な差 | 個別薬局の薬価差益率ではない |
厚生労働省の薬価基準改定資料では、薬価調査結果に基づき薬価基準を全面改定し、市場実勢価格の加重平均値を基礎とする方法で薬価を算定するとしています。
薬価差益と平均乖離率はどう違う?
薬価は、保険診療で医薬品の価格を計算するときに使う公定価格です。一方、医療機関や薬局が卸売業者から医薬品を購入するときの実際の価格は、取引条件等によって異なります。
薬価調査では、品目ごとの販売価格・販売数量などを調査し、薬価と市場実勢価格の差を全国的に集計します。
2025年薬価調査の平均乖離率は4.8%でした。厚生労働省資料に示された近年の数字を見ると、2023年調査6.0%、2024年調査5.2%、2025年調査4.8%と縮小しています。
| 薬価調査 | 平均乖離率 |
|---|---|
| 2023年 | 6.0% |
| 2024年 | 5.2% |
| 2025年 | 4.8% |
ここから分かるのは、全国集計で見た薬価と市場実勢価格の差が近年縮小していることです。
一方で、平均乖離率4.8%だから、自店舗でも薬価の4.8%がそのまま粗利になるわけではありません。
自店舗の実際の薬価差を確認するには、品目ごとの薬価、実仕入単価、数量を自社データで確認する必要があります。
2026年度薬価改定|医療費ベース▲0.86%、薬剤費ベース▲4.02%
2026年度薬価基準改定は2026年3月5日に告示され、4月1日に実施されました。
改定率は医療費ベース▲0.86%、薬剤費ベース▲4.02%です。
ただし、この数字を全医薬品の一律値下げ率と理解してはいけません。2026年度改定には、市場実勢価格に基づく引下げだけでなく、不採算品再算定や最低薬価など、医薬品の安定供給を下支えする仕組みも含まれています。
つまり、2026年度薬価改定は、薬価を一方向に下げるだけの改定ではありません。
変更1|G1ルールは後発品上市後5年へ前倒し
2026年度薬価制度改革では、長期収載品の薬価を見直すG1ルールが大きく変更されました。
従来は後発医薬品上市後10年を基本としていた適用時期を、上市後5年へ前倒ししています。また、後発品置換率にかかわらずG1を適用する方向へ整理され、Z2・G2は廃止されました。
2026年度改定で、G1適用時期を5年へ前倒ししたことで新たに加わったものは59成分145告示品目です。
薬局経営側では、制度名だけで影響を判断するのではなく、自店舗で採用している長期収載品について、改定前後の薬価、仕入単価、処方数量、在庫を確認する必要があります。
変更2|市場拡大再算定の類似品への連動適用を廃止
市場拡大再算定等についても見直しがあります。
2026年度改革では、市場拡大再算定または持続可能性特例価格調整の対象となった品目について、薬理作用類似品へ同じ再算定を連動して適用する仕組みを廃止しました。
一方で、薬理作用類似薬についてはNDB等を用いて使用量を把握し、必要に応じて個別に再算定を検討する仕組みへ変更されています。
したがって、単純に共連れがなくなったから類似品の薬価リスクもなくなった、と理解するのも適切ではありません。
変更3|不採算品再算定で232成分・704告示品目を下支え
2026年度改定では、不採算品再算定の特例的対応として、232成分・704告示品目について薬価の引上げまたは現行薬価の維持が行われました。
対象は、医療上の必要性が特に高く、継続的な確保が重要な品目を中心に整理されています。
これは、原材料費や安定供給上の問題に対して、必要な医薬品を供給し続けられるよう薬価を下支えする制度です。
ただし、不採算品再算定で薬価が上がったから、薬局の仕入価格も同じ割合で必ず上がるという意味ではありません。個別の仕入価格は実際の取引条件から確認します。
変更4|最低薬価も引き上げられた
最低薬価は、剤形ごとに必要最低限の製造コストを確保するため、薬価の下限として設定される仕組みです。
2026年度改定では最低薬価を引き上げるとともに、外用塗布剤の最低薬価設定なども見直されました。
厚生労働省資料では、最低薬価品目として585成分3,186品目が示されています。ただし、すべてが一律に同じ率で引き上げられたという意味ではなく、乖離率等によって引上げ対象外となる品目もあります。
ここでも、薬価改定を一律の値下げと考えないことが重要です。
自店舗の薬価差益を見るときに確認したい数字
全国平均の改定率や平均乖離率だけでは、自店舗への影響額は分かりません。
店舗・法人で影響を確認するなら、少なくとも次の項目を品目別に見ます。
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 改定前薬価 | 改定前の公定価格を確認する |
| 改定後薬価 | 公定価格がどの程度変わったか確認する |
| 実仕入単価 | 自社の実際の取引価格を確認する |
| 処方・購入数量 | 金額影響の大きい品目を把握する |
| 改定日時点の在庫 | 旧薬価時に仕入れた在庫の影響を確認する |
| 返品・廃棄・不動在庫 | 帳簿上の差だけでなく実損も把握する |
| 取引条件 | 割戻し等を含め契約内容を確認する |
| 次回価格交渉時期 | 改定後の取引価格をいつ見直すか確認する |
特に処方数量の多い品目は、薬価が数円変わるだけでも年間影響額が大きくなる場合があります。一方、薬価下落率が大きくても使用量が少なければ店舗全体への影響は限定的な場合があります。
そのため、改定率ではなく、単価差×数量で自店舗へ置き換えるのが基本です。
共同購買・価格交渉代行はどう考える?
複数の薬局が共同で価格交渉を行ったり、外部事業者へ価格交渉を委託したりする仕組みもあります。
ここで、共同購買や価格交渉代行そのものが禁止されている、と理解するのは適切ではありません。
厚生労働省の医療用医薬品流通改善ガイドラインでは、原則として全品目で単品単価交渉を行うこと、個々の医薬品の価値や安定供給に必要な流通コストを踏まえることなどを求めています。
また、複数施設の価格交渉を一括受託する場合でも、地域差や取引条件を考慮しない一律価格交渉等は問題となる取引例として示されています。
厚生労働省|医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン
したがって、共同購買を使っているかどうかだけで良し悪しを判断せず、実際の取引条件と単品ごとの価格形成を確認します。
インフレ・中東情勢は薬価改定とは別軸の供給リスク
医薬品を取り巻くコストには、薬価制度だけでなく、原材料、エネルギー、物流、為替、国際情勢も影響します。
2026年には中東情勢を受け、厚生労働省が医薬品・医療機器・医療物資等の供給状況を把握するための対応を実施しました。
一方、2026年4月10日時点で厚生労働省は、医療機器等について直ちに供給が滞る状況ではないとして、必要量に見合った発注など冷静な対応を求めていました。
したがって、中東情勢から薬局の仕入価格上昇、人員削減、給与低下までを直線的に予測するのではなく、薬価制度とは別の供給・コストリスクとして、実際の品目別状況を確認するのが適切です。
調剤薬局の倒産30件を薬価差益だけで説明しない
帝国データバンクによると、2025年度の調剤薬局倒産は30件で、前年度29件を上回り、2年連続で過去最多となりました。また、8割超が資本金1,000万円未満の小規模事業者でした。
ただし、この30件を薬価差益縮小だけの結果と考えるのも適切ではありません。
同調査では、薬価改定のほか、大手ドラッグストアとの競争、近隣病院・クリニックの閉院、薬剤師確保、借入過多など複数の要因が示されています。
倒産件数は薬局経営環境の厳しさを考える材料の一つですが、個別薬局の経営状態は決算、資金繰り、立地、人員、処方箋構成などを含めて判断する必要があります。
元経営企画として薬価改定時に確認していたこと
私が調剤薬局チェーンで経営企画に関わっていた際も、全国平均の改定率だけから店舗利益への影響を決めることはしていませんでした。
実際に確認する必要があるのは、自社で取り扱っている品目、改定前後の薬価、実仕入単価、数量、改定日時点の在庫などです。
特に薬価差を見る場合、全国平均乖離率は業界全体の方向を把握する指標としては有用ですが、自店舗の管理会計では自社の実データへ置き換える必要があります。
これは私が経営企画として見ていた範囲での経験談です。薬局ごとに品目構成や取引条件が異なるため、すべての薬局で同じ影響額になるわけではありません。
働く薬剤師は薬価改定と給与・転職を直結させない
薬価改定は薬局経営へ影響する要素の一つです。しかし、薬価が下がったから薬剤師個人の給与が同じ割合で下がる、とは言えません。
個人の給与・賞与は、会社全体の収益、人事制度、賃上げ方針、店舗損益、職位、評価などを経て決まります。
同様に、対人業務や在宅関連の診療報酬上の評価があるから、その経験を持つ薬剤師の市場価値が一律に上がるとも判断できません。
勤務先の経営が気になる場合は、薬価差益を推測するより、会社からの説明、実際の人員配置、業務量、店舗統廃合、給与・賞与制度の変更など、自分が確認できる事実を見る方が現実的です。
薬価改定と調剤報酬改定を混同しない
薬価改定は医薬品の公定価格に関する見直しです。一方、調剤基本料、調剤管理料、各種加算等は調剤報酬の制度です。
薬局経営では両方が収益へ関係しますが、制度上は別に確認します。
2026年度調剤報酬改定全体を確認したい場合は、次のまとめから各制度へ進んでください。
関連記事:2026年の門前薬局等立地依存減算|対象薬局・既存店への影響を元人事部長が解説
保存用|薬価差益を確認するチェックリスト
- 全国平均乖離率と自店舗の薬価差益を混同していない
- 改定前薬価を確認した
- 改定後薬価を確認した
- 実際の仕入単価を確認した
- 処方・購入数量を掛け合わせて金額影響を確認した
- 改定日時点の在庫を確認した
- 返品・廃棄・不動在庫を含めて見ている
- 共同購買等を利用している場合は実際の取引条件を確認した
- 薬価改定と調剤報酬改定を分けている
- 薬局損益と薬剤師個人給与を分けている
一次資料
- 厚生労働省|令和8年度薬価基準改定の概要
- 厚生労働省|医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン
- 厚生労働省|中東情勢を受けた医療関係団体との意見交換会
- 帝国データバンク|調剤薬局の倒産動向(2025年度)
FAQ
- 平均乖離率4.8%とは何ですか?
-
薬価と市場実勢価格の差を、販売数量等を踏まえて全国的に集計した指標です。2025年薬価調査では平均乖離率が4.8%でした。個別薬局の粗利率や薬価差益率そのものを示す数字ではありません。
- 自分の薬局の薬価差益も4.8%ですか?
-
そうとは限りません。品目構成、実仕入単価、数量、取引条件などで異なります。自店舗では、品目別の改定後薬価と実仕入単価、数量を使って確認します。
- 2026年度薬価改定ではすべての医薬品が値下げされましたか?
-
いいえ。市場実勢価格等に基づく引下げが行われる一方、不採算品再算定による薬価の引上げ・維持や、最低薬価の引上げなど安定供給を下支えする措置もあります。
- G1ルールは2026年度にどう変わりましたか?
-
長期収載品について、後発品上市後のG1適用時期が10年から5年へ前倒しされました。後発品置換率にかかわらずG1を適用する方向へ整理され、Z2・G2も廃止されています。
- 不採算品再算定で薬局の仕入価格も必ず上がりますか?
-
必ず同じ割合で上がるとは言えません。不採算品再算定は公定薬価の引上げ・維持に関する制度です。個別薬局の仕入価格は、実際の取引条件や卸との契約から確認します。
- 共同購買や価格交渉代行は禁止されるのですか?
-
共同購買や価格交渉代行そのものが一律に禁止されているわけではありません。厚生労働省は単品単価交渉や安定供給に必要な流通コストへの配慮などを求めており、地域差・取引条件を無視した一律の価格交渉等には注意が必要です。
- 薬価が下がると薬剤師の給与も下がりますか?
-
一律には判断できません。薬価改定は薬局収益に影響する一要素ですが、個人給与は会社全体の収益、人事制度、店舗損益、職位、評価、賃上げ方針等を経て決まります。薬価改定率を個人年収へ直接換算することはできません。
まとめ|全国平均ではなく自店舗の仕入単価と数量で影響を見る
2026年度薬価改定は、医療費ベース▲0.86%、薬剤費ベース▲4.02%で実施されました。2025年薬価調査の平均乖離率は4.8%まで縮小しています。
- 平均乖離率4.8%は個別薬局の薬価差益率ではない
- 2026年度薬価改定は全品目の一律値下げではない
- G1は後発品上市後5年へ前倒しされた
- 不採算品再算定では232成分・704告示品目が薬価引上げ・維持の対象となった
- 最低薬価も引上げ措置が行われた
- 共同購買の有無だけで取引の良し悪しを判断しない
- 自店舗では薬価・仕入単価・数量・在庫を品目別に確認する
- 薬局損益と薬剤師個人の給与・転職は切り分ける
薬価改定の影響を正しく把握するには、全国平均の数字をそのまま自店舗へ当てはめるのではなく、自社の実仕入単価と数量へ置き換えて確認することが重要です。
