- 退職前に残った有給休暇を取得できるか判断できる
- 退職日・最終出勤日・有給取得期間を分けて整理できる
- 有給残日数から最終出勤日の候補を逆算できる
- シフト制・一人薬剤師・管理薬剤師でも何を確認すればよいか分かる
- 引継ぎと有給取得をどのように分けて考えるか分かる
- 会社と有給の扱いについて認識が合わない場合の次の確認先が分かる
退職を決めたとき、有給休暇が10日、20日と残っていることがあります。
このとき迷いやすいのが、いつまで出勤し、いつから有給を取り、何日を退職日にするかです。
特に薬局は、土日固定休とは限りません。シフト制、一人薬剤師の時間帯、店舗間応援、在宅担当、管理薬剤師など、職場によって勤務日と引継ぎ内容が大きく違います。
結論から言えば、退職直前でも年次有給休暇を取得できます。
ただし、残っている有給が自動的にすべて消化されるわけではありません。
退職日、所定労働日、有給残日数、最終出勤日、引継ぎを一つずつ分けて整理し、自分が取得したい日を勤務先へ伝える必要があります。
私は調剤薬局チェーンで人事部長を務め、薬剤師の入退社、人員配置、労務管理等に関わってきました。
退職時に有給が残っている場合は、少なくとも次の4つを分けると整理しやすくなります。
- 退職日
- 最終出勤日
- 有給休暇を取得する日
- 次の職場の入社日
この4つを最初に一つのカレンダーへ置くと、引継ぎ・有給・次の勤務先の調整まで考えやすくなります。
※本記事は2026年9月時点の厚生労働省・都道府県労働局等の公開情報をもとに一般的な制度を整理しています。個別の労働契約・就業規則・事実関係によって判断が異なる場合があります。
結論|退職前でも有給は取れる。まず退職日と残日数を分ける
大阪労働局は、退職直前でも年次有給休暇を取得できると明示しています。
使用者には、事業の正常な運営を妨げる場合に取得時季を変更する時季変更権があります。
しかし、退職日を越えて別の日へ変更することはできません。
一方で、有給休暇が残っているだけで会社が自動的にすべてを有給扱いにする制度でもありません。
まず、
- 有給残日数
- 退職希望日
- 退職日までの所定労働日
- 取得したい有給の日
を整理してください。
最初に区別|退職日・最終出勤日・有給取得期間は別
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 退職日 | 勤務先との雇用契約が終了する日 |
| 最終出勤日 | 実際に最後に勤務する日 |
| 有給取得期間 | 所定労働日のうち年次有給休暇を取得する日 |
| 公休日 | もともと労働義務のない日 |
例えば月末を退職日とし、その前に年次有給休暇を取得する場合、最終出勤日は退職日よりかなり前になることがあります。
一方、公休日はもともと働く予定のない日です。
厚生労働省は年次有給休暇を、所定の休日以外の日に賃金を受けながら仕事を休める制度として説明しています。
そのため、有給残日数を単純に暦日で退職日から引けば最終出勤日が出るわけではありません。
退職時の有給消化を5ステップで組み立てる
会社の勤怠システム、給与明細、人事への確認等で現在の残日数を把握します。
付与日数・比例付与・繰越の計算自体は、パート薬剤師の有給日数・比例付与・シフト制の計算方法で詳しく整理しています。
シフトや勤務カレンダーを見て、退職日までに実際に勤務予定となっている日を並べます。
公休日を有給1日として数えないようにします。
退職日までの所定労働日を後ろから数え、有給を取得したい日数を当てはめます。
その直前の所定労働日が、最終出勤日の候補になります。
退職日・最終出勤候補日・有給取得希望日・引継ぎ予定を勤務先へ提示します。
口頭だけでなく、会社の申請システム・メール・書面等、後から内容を確認できる方法を併用すると整理しやすくなります。
保存用|退職カレンダーはこう作る
例えば、退職日を3月31日、有給残日数を10日とします。
この場合、3月31日から暦日で10日前を最終出勤日にするわけではありません。
次の順番で考えます。
- 3月31日までのシフトを確認する
- 公休日を除く
- 残った所定労働日を後ろから10日分数える
- その10日を有給取得希望日にする
- その直前の勤務日を最終出勤候補日にする
薬局では勤務曜日が固定されていないことも多いため、カレンダーよりシフト表を基準にした方が間違いにくいです。
退職直前でも有給を取れる?
取得できます。
大阪労働局の年次有給休暇Q&Aでも、退職直前の年休取得について明確に認めています。
ただし、年休は労働者から取得希望があって初めて具体的な取得日が決まります。
残日数が20日あるからといって、退職時に自動的に20日すべてが年休として処理されるわけではありません。
退職日前に取得したいなら、取得希望日を具体的に勤務先へ伝えます。
会社の時季変更権は退職日を越えて使えない
年次有給休暇は原則として労働者が請求した時季に取得します。
一方、その日に休まれると事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者が別の時季へ変更できる場合があります。これが時季変更権です。
しかし退職が決まっている場合、変更先には限界があります。
退職日より後は、すでに労働契約が終了しているため、退職後の日へ年休取得時季を変更することはできません。
退職日までに他の所定労働日が残っていなければ、時季変更の余地がなくなることがあります。
一般的な時季変更権・有給申請ルールは、薬剤師は有給を取れない?申請・時季変更権・年5日義務と対処法で詳しく整理しています。
シフト制の薬剤師でも年次有給休暇はある
シフト制だから年次有給休暇の制度がなくなるわけではありません。
厚生労働省は2026年6月、シフト制で働く労働者の年次有給休暇について、適切な取得・管理を進めるための留意事項を改正しました。
退職時の有給日程を考える場合も、
- 確定している勤務シフト
- 所定労働日
- 公休日
- 有給取得希望日
を分けてください。
特に週1~4日勤務等で付与日数そのものを確認したい場合は、「パート薬剤師の有給は何日?週1〜4日・比例付与・シフト制の計算方法」で確認できます。
引継ぎが終わらないと有給を取れない?
引継ぎを完了すること自体が、年次有給休暇を取得するための法定要件として定められているわけではありません。
一方、退職する薬剤師には実務上整理しておいた方がよい業務があります。
ここは、有給を取る権利と、業務を整理する実務を分けて考えます。
調剤薬局・店舗勤務
- 未処理業務
- 発注・在庫関連
- 医療機関等との継続対応
- 会社貸与物・鍵・端末
在宅担当
- 担当患者
- 次回訪問予定
- 医師・訪問看護・ケアマネジャー等との継続事項
- 処方・服薬管理上の継続事項
管理薬剤師・店舗責任者
- 管理業務の進捗
- 行政・本部へ継続報告が必要な事項
- 店舗運営上の定例業務
- 会社が後任者へ渡す必要がある情報
より具体的な引継ぎ項目は、薬剤師の退職・異動で使える引継ぎ書の作り方で確認してください。
退職前の手続全体は、薬剤師の退職前チェックリストで整理しています。
一人薬剤師・人手不足でも有給の考え方は変わらない
一人薬剤師や人員不足の店舗では、自分が休むと店舗運営への影響が大きいため、有給取得を言い出しにくいことがあります。
しかし、一人薬剤師という勤務形態そのものに、別の年次有給休暇制度があるわけではありません。
人員配置の問題と、自分に付与されている年次有給休暇を分けて考えます。
実務上は、退職日が決まった段階で早めに有給取得希望を伝えた方が、会社も店舗応援やシフト変更を検討しやすくなります。
有給取得希望はいつ会社へ伝える?
年次有給休暇について、全国一律で「必ず1週間前までに申請する」といった法律上の期限が定められているわけではありません。
一方、就業規則や社内ルールで申請手続が定められている場合があります。
退職時にまとまった年休を取得したい場合は、
- 退職希望日
- 残日数
- 取得希望日
- 最終出勤日の候補
- 引継ぎ予定
をまとめて提示する方が、単に「残った有給を全部使います」とだけ伝えるより日程を共有しやすくなります。
会社から有給を認めないと言われたら確認する5項目
- 自分の有給残日数は合っているか
- どの日を有給として申請したのか
- 会社はどのような理由を説明しているか
- 別の取得日を提示しているか
- 提示された変更日が退職日より後になっていないか
まず会社の説明を具体化します。
有給の申請・時季変更権そのものを詳しく確認する場合は、「薬剤師は有給を取れない?申請・時季変更権・年5日義務と対処法」で整理しています。
労働基準関係法令について会社との認識が解消しない場合は、管轄の労働基準監督署等へ相談する方法もあります。
使い切れない有給は会社に買い取ってもらえる?
会社に未消化の年次有給休暇を買い取る一般的な法的義務があるわけではありません。
一方、退職に伴って消滅する年休について、会社の判断や社内制度により金銭を支給するケースまで一律に禁止されているわけでもありません。
そのため、
- 未消化分は必ず買い取ってもらえる
- 会社は絶対に買い取れない
のどちらとも一律には考えません。
勤務先に未消化年休の取扱いに関する規程があるかを確認してください。
退職後に残った有給は使えない
退職日を過ぎると、その勤務先との労働契約は終了しています。
大阪労働局も、退職後に年次有給休暇を請求することはできないと案内しています。
使いたい年休がある場合は、退職日前の所定労働日へ取得希望を出す必要があります。
有給消化中も退職日までは在籍している
最終出勤日を終えて有給休暇へ入ったとしても、退職日を迎えるまでは前職に在籍しています。
このため、次の会社の入社日を決めるときは、前職の退職日も確認してください。
前職の在籍期間と新しい勤務先の雇用開始日を重ねる場合は、双方の就業規則、兼業・副業の取扱い、労働時間、社会保険等の確認事項が増えます。
特別な理由がなければ、前職の退職日の翌日以降を新しい勤務先の入社日にすると手続を整理しやすくなります。
人事実務では退職日が決まったら4つの日付を一列にする
退職前の有給について相談を受けるとき、日数だけを確認しても全体像は見えません。
次のように4つの日付を一列にすると整理できます。
| 日付 | 決めること |
|---|---|
| 引継ぎ完了予定日 | 自分が対応する業務をどこまで整理するか |
| 最終出勤日 | 最後に実際に勤務する日 |
| 有給取得開始日 | 所定労働日のうち年休取得へ切り替える日 |
| 退職日 | 雇用契約が終了する日 |
さらに転職先が決まっているなら、ここへ次の勤務先の入社日を追加します。
この順番で考えれば、「有給が15日あるからいつから休めるのか」という疑問を、具体的な勤務スケジュールへ変えられます。
退職時の有給消化だけで転職先の良し悪しを判断しない
退職時に有給取得の調整が難しかったからといって、それだけで会社全体を一言で評価する必要はありません。
一方、次の職場を選ぶときに年休取得のしやすさを重視するなら、求人票の年間休日数だけではなく、実際の運用を確認する意味があります。
- 希望休の申請方法
- 有給申請の手続
- 店舗間応援の有無
- 欠員時のシフト調整
- 一人薬剤師になる時間帯
- 管理薬剤師も休暇を取れる体制か
自分にとって重要な条件なら、次の職場では入社前に具体的に確認してください。
まとめ|有給残日数ではなく退職スケジュール全体で考える
- 退職直前でも年次有給休暇は取得できる
- 使用者の時季変更権も退職日を越えて行使することはできない
- 有給が残っているだけでは自動消化されないため、取得希望日を整理する
- 退職日・最終出勤日・有給取得日・公休日を分ける
- 有給残日数は暦日ではなく所定労働日へ当てはめる
- シフト制でも年次有給休暇制度は適用される
- 引継ぎ完了そのものを年休取得の法定条件とは考えない
- 一方、薬剤師特有の患者・在宅・店舗管理等の引継ぎは実務として整理する
- 未消化年休を会社が買い取る一般的な法的義務はない
- 退職後に前職の有給休暇を取得することはできない
退職前に有給が残っているときは、何日残っているかだけを見ないことが重要です。
退職日から逆算し、所定労働日・最終出勤日・引継ぎ・次の入社日まで一つのカレンダーへ置くと、退職スケジュールを具体化できます。
退職意思が固まり、次の職場がまだ決まっていない場合
退職日と最終出勤日が見えてきたら、次の勤務先を探すことは別の問題として考えます。
企業・医療機関への直接応募、求人サイト、ハローワーク、転職エージェントなど、求人を探す方法は複数あります。
まだ転職先が決まっていない場合は、自分の現在地に合う方法から確認してください。
- 転職活動を何から始めればよいか整理したい
薬剤師転職の流れを8ステップで確認する - 希望条件はある程度決まっていて、求人を探し始めたい
薬剤師求人を探す4つの方法を比較する - 転職エージェントも使って求人を比較したい
採用側で取引した薬剤師転職エージェント3社を比較する
この記事で確認した主な一次資料
FAQ
- 退職前に残った有給休暇を全部使えますか?
-
退職直前でも年次有給休暇は取得できます。使用者には一定の場合に時季変更権がありますが、退職日を越えて別の日へ変更することはできません。実際に取得できる日数を考えるときは、残日数と退職日までの所定労働日を確認してください。
- 会社は退職前の有給を拒否できますか?
-
年次有給休暇は原則として労働者が請求した時季に取得します。事業の正常な運営を妨げる場合は時季変更権が問題になりますが、退職日より後へ変更することはできません。会社から認めないと言われた場合は、その理由と代替日が提示されているかを具体的に確認してください。
- 引継ぎが終わらないと有給を取れませんか?
-
引継ぎ完了そのものが年次有給休暇取得の法定要件として定められているわけではありません。一方、退職する薬剤師には患者・在宅・店舗業務等の引継ぎが必要になる場合があります。有給取得と引継ぎを別々に整理し、退職日が決まった段階で日程を共有してください。
- シフト制の薬剤師でも退職前に有給を使えますか?
-
シフト制であっても年次有給休暇制度は適用されます。退職時は確定した所定労働日と公休日を分け、有給を取得したい所定労働日を確認してください。付与日数そのものが分からない場合は、比例付与・シフト制の計算記事で先に残日数を確認します。
- 公休日にも有給休暇を使いますか?
-
もともと労働義務のない公休日へ年次有給休暇を充てるものではありません。有給残日数から最終出勤日を逆算するときは、退職日までの所定労働日を数えてください。
- 最終出勤日と退職日は何が違いますか?
-
最終出勤日は実際に最後に勤務する日、退職日は雇用契約が終了する日です。最終出勤日の後から退職日まで年次有給休暇を取得する場合、2つの日付は異なります。
- 有給消化中はまだ会社に在籍していますか?
-
はい。最終出勤を終えて有給休暇を取得していても、退職日を迎えるまでは前職との雇用契約が続いています。
- 残った有給を会社に買い取ってもらえますか?
-
会社に退職時の未消化年休を買い取る一般的な法的義務があるわけではありません。一方、退職で消滅する年休について勤務先独自の取扱いがある場合があります。就業規則や会社の制度を確認してください。
- 退職後に残った有給を使えますか?
-
退職後に前職の年次有給休暇を請求することはできません。残っている年休を取得したい場合は、退職日前の所定労働日について取得希望を整理してください。
- 有給消化中に次の会社へ入社してもよいですか?
-
有給消化中も退職日までは前職に在籍しています。新しい勤務先の入社日を重ねる場合は、双方の就業規則、兼業・副業の取扱い、労働時間、社会保険等を確認してください。手続きを分かりやすくするなら、前職の退職日の翌日以降を新しい勤務先の入社日にする方法があります。
