薬剤師のコミュニケーション力とは?患者・医師・職場で使える5つの基本を解説

この記事はこんなときに見返せます
  • 患者との会話が一方的な説明になっていると感じるとき
  • 疑義照会で何から伝えればよいか迷うとき
  • 上司・同僚への報告や相談が長くなりやすいとき
  • 後輩へ注意しても何を直せばよいか伝わらないとき
  • 口下手で薬剤師に向いていないのではと不安なとき
  • 面接でコミュニケーション力をどう説明するか考えるとき

薬剤師の仕事では、患者、医師、看護師、介護職、薬局の同僚、上司、後輩など、多くの人と情報をやり取りします。

そのためコミュニケーション力は重要です。

ただし、話がうまい人ほど優秀な薬剤師である、明るく会話できれば患者から信頼される、話し方を磨けば人事評価や給与が上がる、と単純に考える必要はありません。

薬剤師の実務で重要なのは、必要な情報を聞き、曖昧な点を確認し、情報を整理し、相手が判断・行動できる形で伝え、必要な内容を記録・共有することです。

厚生労働省の患者のための薬局ビジョンでも、患者本位の医薬分業へ向け、服薬情報の一元的・継続的把握、薬学的管理・指導、医療機関等との連携などが薬剤師・薬局の役割として示されています。厚生労働省 患者のための薬局ビジョンの策定について

この記事では、調剤薬局チェーンで薬剤師採用・人事・組織運営に携わった経験と、公的な法令・資料を分けながら、薬剤師のコミュニケーションを患者・医師・職場・後輩の4場面で使える実務能力として整理します。

※個別の患者・処方への対応は、処方内容、患者情報、電子添文その他の適切な情報を確認して判断してください。この記事は個別の薬学的判断を置き換えるものではありません。

目次

結論|薬剤師のコミュニケーションは5つの基本動作で考える

基本動作実務で行うこと
1.聞く患者・医療者・同僚から必要な情報を得る
2.確認する曖昧な点、認識の違い、理解できていない点を確かめる
3.整理する事実、懸念、自分の判断、依頼を分ける
4.伝える相手に必要な情報を、判断・行動しやすい順序で伝える
5.残す・引き継ぐ必要な内容を記録し、次の担当者も判断できる状態にする

この5つは、性格の明るさや会話量とは別です。

口数が少なくても、必要な情報を確認し、相手が判断できる形で伝えられれば、実務上のコミュニケーションは改善できます。

保存用|薬剤師の業務コミュニケーション4場面テンプレート

患者、医師、職場の同僚、後輩では、会話の目的が違います。同じ話し方を使うのではなく、目的に応じて情報の並べ方を変えます。

場面情報を並べる型目的
患者確認したいこと → 患者の回答 → 今回伝えること → 理解確認薬を安全・適切に使用できる状態へ近づける
医師への疑義照会対象 → 事実 → 懸念 → 依頼疑わしい点を確認し、必要な判断につなげる
上司・同僚事実 → 自分の判断 → 依頼 → 期限・次の対応問題を共有し、次の行動を決める
後輩起きた事実 → 期待する行動 → 必要な支援 → 次回確認人格ではなく具体的な行動を修正する

まずこの4つの型を使い分けるだけでも、伝える内容を整理しやすくなります。

患者対応|話す前に何を確認するかを決める

患者対応で会話がうまくいかないと感じると、声のトーンや言い回しを変えようとしがちです。

しかし、伝え方を考える前に、今回何を確認する必要があるかを整理します。

  • 前回から何が変わったか
  • 薬を実際にどのように使用しているか
  • 飲み忘れ・使い忘れがないか
  • 気になる症状や困りごとがないか
  • 生活上、薬を使用しにくい事情がないか
  • 患者自身が確認したいことは何か

たとえば、患者が薬を飲みたくないと話した場合、その言葉だけから本音を推測して決めつけません。

副作用が不安なのか、効果を感じないのか、飲む時間が生活に合わないのか、飲みにくいのか、別の事情があるのかを本人へ確認します。

薬剤師法第25条の2では、調剤した薬剤の適正使用のため、患者等へ必要な情報を提供し、必要な薬学的知見に基づく指導を行うことが定められています。また、適正使用のため必要があると認める場合には、薬剤の使用状況を継続的かつ的確に把握し、必要な情報提供・指導を行うことも定められています。厚生労働省 薬剤師法

つまり、患者とのコミュニケーションは、患者から好かれるための会話ではなく、必要な情報を双方向に確認し、薬の適正使用につなげるための業務です。

服薬指導そのものの組み立て方、情報の優先順位、患者の理解確認は、患者に伝わる服薬指導のコツ|薬剤師が5ステップ・質問例・理解確認を解説で詳しく整理しています。

患者への説明は正確さと分かりやすさを二者択一にしない

分かりやすく説明することは、専門用語をすべて避けることではありません。

患者が今後、医師・薬剤師へ症状や薬について説明する際に、知っておいた方がよい名称もあります。

重要なのは、言葉を簡単にすること自体ではなく、用語の意味と、患者が何をすればよいかまで伝わることです。

PMDAの患者向医薬品ガイドも、患者・家族が医療用医薬品を正しく理解し、重大な副作用の早期発見等に役立てるため、医療関係者向けの電子添文を基に特に知ってほしい情報を分かりやすく記載する資料として提供されています。PMDA 患者向医薬品ガイド

ただし、患者向医薬品ガイドはすべての医療用医薬品について作成されるものではありません。個別の薬剤について必要な情報は電子添文その他の適切な資料も確認します。

医師への疑義照会|対象・事実・懸念・依頼の4点で整理する

医師への疑義照会を苦手と感じると、クッション言葉や相手を怒らせない言い方ばかり意識することがあります。

丁寧な言葉遣いは必要ですが、疑義照会の目的は医師の機嫌を取ることではありません。

薬剤師法第24条では、処方箋中に疑わしい点があるときは、その処方箋を交付した医師・歯科医師・獣医師へ問い合わせ、その疑わしい点を確かめた後でなければ調剤してはならないと定めています。厚生労働省 薬剤師法 第24条

保存用|疑義照会4行メモ
  1. 対象:どの患者・どの処方についてか
  2. 事実:処方内容、患者情報、確認できている情報は何か
  3. 懸念:何が疑わしいのか、何を確認する必要があるのか
  4. 依頼:何を確認・判断してほしいのか

提案できる選択肢がある場合は、確認した根拠とともに簡潔に示します。

相手を威圧的、話を聞かないタイプなどと先に分類するのではなく、相手が判断するために必要な情報を短時間で把握できるよう整理する方が再現性があります。

疑義照会の伝え方の例

患者Aさんの本日の処方について1点確認です。現在確認できている併用薬に○○があります。今回処方の△△との併用について確認が必要と考えています。処方意図と、処方変更の要否についてご確認いただけますでしょうか。

実際の問い合わせ内容は薬剤・患者の状況によって異なります。電子添文、患者情報、関連資料等を確認したうえで対応してください。

上司・同僚への報告|事実・判断・依頼・次の対応を分ける

職場内のコミュニケーションでは、感じの良さ以上に、必要な情報が必要な人へ届くことが重要です。

報告が分かりにくくなる原因の一つが、事実・推測・自分の希望が混ざることです。

保存用|上司・同僚への報告4項目
  1. 事実:何が起きているか
  2. 判断:自分は何が必要だと考えているか
  3. 依頼:相手に何をしてほしいか
  4. 次の対応:いつまでに誰が何をするか

たとえば、患者が怒っていますだけでは、受け手が状況を把握しにくい場合があります。

患者が待ち時間について説明を求めている、現在30分待っている、こちらからはあと10分程度と案内した、自分では薬局長から追加説明した方がよいと考えている、というように分けて伝えます。

すべて自分で解決してから報告する必要はありません。対応の選択肢が残っている段階で共有した方が、チームで対処しやすい場合があります。

引き継ぎは詳細説明より次の人が判断できる情報を残す

引き継ぎでは、今日こういうことがありましたと出来事だけを共有しても、次の担当者が何をすればよいか分からない場合があります。

  • 何が起きたか
  • どこまで確認したか
  • 誰へ連絡したか
  • 何が決まったか
  • 何が未解決か
  • 次回誰が何を確認するか

まで整理し、勤務先のルールに沿って適切な記録へ残します。

引き継ぎや属人化防止を含めた仕事の進め方そのものは、職場で信頼される薬剤師とは?元人事部長が7つの仕事の進め方を解説で詳しく扱っています。

後輩への指摘|人格ではなく事実・行動・支援を伝える

後輩へ修正を依頼するとき、優しく言えばよいわけでも、強く言えば伝わるわけでもありません。

重要なのは、本人の性格ではなく、起きた事実と次に変えてほしい行動を扱うことです。

伝え方
抽象的もっと注意して仕事をしてください
具体的今回、監査前の確認欄が未入力でした。次回から監査へ回す前にこの2項目を確認してください。分かりにくいところがあれば一緒に確認します
保存用|後輩へ伝える4項目
  1. 事実:何が起きたか
  2. 期待する行動:次回何を変えるか
  3. 支援:分からない場合に誰がどう支援するか
  4. 確認:次回どこを見て確認するか

指導の目的は相手を反省させることではなく、必要な行動を次回再現できる状態にすることです。

コミュニケーションで解決できる問題と組織で直す問題を分ける

職場の人間関係や業務上の問題を、すべて本人のコミュニケーション能力の問題として扱う必要はありません。

自分の伝え方で改善できること組織として調整が必要なこと
報告の順序が分かりにくい恒常的な人員不足
確認せずに推測で進める業務量が勤務時間内に収まらない
依頼内容が曖昧役割・権限が決まっていない
必要な共有が遅い相談先が設計されていない
事実と感情が混ざっている継続する高圧的・侮辱的な言動

後者まで、自分の話し方が悪いからだと抱え込むと、問題の原因を取り違えます。

自分の伝達方法で変えられる部分を修正したうえで、それでも解決しない場合は、業務分担、人員配置、権限、上司のマネジメント等の組織課題として扱います。

口下手でも業務ごとの型を持てば改善できる

雑談が得意ではない、即興でうまく話せない、緊張すると言葉が出にくいという薬剤師もいます。

しかし、薬剤師の実務で必要なのは、いつでも場を盛り上げられる能力ではありません。

患者には患者の型、疑義照会には疑義照会の型、報告には報告の型を持っておけば、性格を変えなくても準備できます。

  • 確認したい項目を先に決める
  • よく使う説明を短く整理する
  • 分からないときに確認する言葉を用意する
  • 事実と判断を分ける
  • 相手に何をしてほしいかを明確にする

コミュニケーションが苦手という性格評価を、どの手順が不足しているかという業務評価へ変えると改善点が見えやすくなります。

コミュニケーション練習は準備・実践・振り返りの3段階で行う

1.準備|話す前に短いメモを作る

患者対応なら確認したいこと、疑義照会なら対象・事実・懸念・依頼、報告なら事実・判断・依頼を短く書き出します。

文章として完成させる必要はありません。話す順序を決めるためのメモです。

2.実践|相手の反応を確認しながら伝える

自分が話し終えることを目標にせず、相手が必要な情報を理解できているか、追加確認が必要かを見ます。

患者説明では理解確認、職場内の報告では依頼内容や次の担当者の確認など、場面ごとに会話の終了条件を決めます。

3.振り返り|人格ではなく不足した手順を見る

うまくいかなかった会話の後に、自分はコミュニケーションが苦手だと結論づける必要はありません。

  • 確認する前に説明を始めた
  • 一度に情報を伝えすぎた
  • 事実と推測を混ぜた
  • 相手に何をしてほしいか伝えなかった
  • 次の対応を確認しなかった

というように行動単位へ分解し、次回一つだけ変えます。

実際の患者との会話を個人端末へ安易に録音しない

話し方を改善するため、会話を録音して振り返りたいと考えることがあります。

練習用のロールプレイを自分たちで録音し、説明の長さや分かりやすさを確認する方法はあります。

一方、実際の患者との会話には健康情報・個人情報等が含まれる可能性があります。勤務先の承認や情報管理ルールを確認せず、個人のスマートフォン等へ保存することは避けてください。

研修・記録等で音声を扱う必要がある場合は、勤務先の規程、承認手続、患者への説明の要否等を確認します。

採用面接では流暢さより実際の仕事の進め方を伝える

転職面接でも、話が滑らかだから採用される、口下手だから不採用になる、と一律に考えることはできません。

コミュニケーション力をアピールする場合も、コミュニケーション能力には自信がありますと抽象的に話すより、実際の業務経験を説明した方が伝わります。

面接で経験を説明する6項目
  • どのような状況だったか
  • 何が課題だったか
  • 誰からどの情報を確認したか
  • 何をどのように伝えたか
  • 誰と連携したか
  • その後どう対応・確認したか

患者から感謝された、医師と仲良くなったという結果だけではなく、仕事上どのような情報交換を行ったかを説明します。

採用側の経験から

私が薬剤師採用を担当していた範囲でも、話が滑らかな応募者だから高く評価するという見方はしていませんでした。

質問を最後まで聞ける、分からないことを確認できる、経験したことと経験していないことを分けて説明できる、具体的な事実をもとに話せる、といった点の方が仕事の進め方を理解する材料になりました。

これは私自身の採用経験であり、すべての企業が同じ評価項目を採用しているという意味ではありません。

面接で強い質問を受けたときの対応や、不適切な質問との分け方は、薬剤師が圧迫面接を受けたら?対処法・不適切な質問・辞退判断を元人事部長が解説で整理しています。

コミュニケーション力と人事評価・給与は分けて考える

業務上のコミュニケーションが重要であることと、それがそのまま昇給や給与水準の上昇につながることは別です。

次の3段階を分けます。

  1. 仕事上必要なコミュニケーションができているか
  2. 勤務先の人事制度で、その行動・成果が評価対象になっているか
  3. その評価が基本給・賞与・昇格・手当等へどう反映されるか

患者対応やチームへの貢献を評価項目にする会社もあれば、異なる評価制度を採用する会社もあります。

したがって、患者から指名される、医師との関係が良い、説明が上手だという理由だけで具体的な給与水準を導くことはできません。

現在の職場で対人業務が十分評価されていないと感じる場合も、業務運用、人事評価、給与制度のどこに課題があるのかを分けて確認します。

保存用|薬剤師のコミュニケーション振り返りシート

話し上手かどうかではなく、実務動作として振り返ります。

確認項目次回変えること
相手の話を最後まで聞いた
必要な確認事項を先に整理した
事実と推測を分けた
情報を詰め込みすぎなかった
専門用語の意味も必要に応じて説明した
相手に何をしてほしいか明確だった
相手の理解・認識を確認した
必要な情報を記録した
未解決事項を次の担当者へ引き継いだ
組織課題まで自分の会話力の問題にしていない

○の数を能力点として評価するための表ではありません。

△になった項目から一つだけ選び、次の業務で変えるために使います。

まとめ|薬剤師に必要なのは話術より安全に情報をつなぐ力

薬剤師にコミュニケーション力が必要なのは確かです。

ただし、それは相手の心を動かす話術や、誰とでも会話を盛り上げる性格を意味しません。

  • 必要な情報を聞く
  • 曖昧な点を確認する
  • 事実・懸念・判断・依頼を整理する
  • 相手が判断・行動できる順序で伝える
  • 必要な内容を記録・引き継ぐ
  • 患者、医師、同僚、後輩で情報の並べ方を変える
  • 口下手という性格評価ではなく不足した手順を改善する
  • コミュニケーションで解決できない組織課題を分ける
  • 人事評価・給与制度とは別に考える

患者、医療者、同僚の間で必要な情報を正確につなぎ、より安全な判断や次の行動につなげる。

これを薬剤師のコミュニケーション力の中心に置けば、話し上手かどうかに左右されず、日々の業務の中で改善できます。

参考にした公的資料

FAQ

口下手でも薬剤師として問題ありませんか?

話が流暢であることだけがコミュニケーション力ではありません。必要な情報を聞く、分からない点を確認する、情報を整理する、相手が判断できる形で伝える、記録・共有するといった基本動作を安定させることが重要です。

患者との会話では共感を最優先した方がよいですか?

患者の話を受け止めることは重要ですが、共感だけで終わらず、薬の適正使用のために必要な情報を確認し、必要な説明・指導につなげます。患者の気持ちを推測して決めつけず、本人へ確認することも大切です。

医師への疑義照会ではクッション言葉を使った方がよいですか?

丁寧な言葉遣いは必要ですが、特定の言い回しだけでうまくいくとは限りません。対象、確認済みの事実、懸念、確認してほしいことを整理し、相手が判断しやすい順序で伝えることを優先します。

後輩へ注意するときは厳しく言った方が伝わりますか?

強さより具体性が重要です。本人の性格を評価せず、何が起きたか、次回どの行動を変えるか、必要な支援は何かを具体的に伝えます。

人間関係が悪いのは自分のコミュニケーション力不足ですか?

一律にはいえません。報告方法や確認不足など自分の行動で改善できる問題もありますが、人員不足、役割の曖昧さ、継続する高圧的言動など、組織として対応すべき問題もあります。原因を分けて考えてください。

コミュニケーション力が高い薬剤師は年収も高くなりますか?

一律にはいえません。勤務先が患者対応やチームへの貢献を評価項目にしているか、その評価が基本給・賞与・昇格等へどう反映されるかによって異なります。話し方だけから具体的な給与水準を推定することはできません。

転職面接でコミュニケーション力はどうアピールすればよいですか?

コミュニケーション能力に自信がありますと抽象的に伝えるより、実際の患者対応・疑義照会・チーム連携等について、状況、課題、確認した情報、自分が伝えたこと、その後の対応まで具体的に説明すると経験が伝わりやすくなります。

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