【パート薬剤師の権利】「有給なし」は嘘?元人事部長が教える日数計算とブラック薬局回避法

2025年10月時点の情報です。

目次

パート薬剤師が知らない有給休暇の真実

パート薬剤師であっても、有給休暇を取得する権利があります。

しかし、多くのパート薬剤師は「パートだから有給休暇はない」「有給は正社員だけの制度」という誤解を持ったまま働いています。その誤解の背景には「企業側が有給休暇について正しく説明していない」という問題があるのです。

実際のところ、労働基準法により「パート薬剤師であっても、条件を満たせば有給休暇を取得する権利がある」と明確に定められています。その条件とは「勤続期間が6ヶ月以上」かつ「全労働日の8割以上出勤」です。

私が調剤薬局チェーンの人事部長として見てきたのは、この権利を理解していないパート薬剤師が「せっかくの休暇の権利を失っている」という悲劇的な状況です。知らず知らずのうちに、年間数万円〜十数万円分の権利を捨てているケースも少なくないのです。これは「タダ働き」をしているのと同じことです。

さらに悪いことに「有給休暇を消化させない薬局」も存在するのです。年度終了時に「未消化の有給は失効します」と一方的に宣告し、休暇取得を妨害する企業も存在するのです。これは労働基準法違反です。

パート薬剤師として働くあなたが「正しい有給休暇の知識」を持つことで、自分の権利を守り、より良い労働環境を実現することができるのです。


正しい知識:パート薬剤師の有給休暇の真実

【法的根拠】パート薬剤師にも有給休暇の取得権がある

パート薬剤師の有給休暇取得権は、労働基準法第39条に明確に定められています。

この法律では「勤続期間が6ヶ月以上かつ全労働日の8割以上出勤した労働者には、有給休暇を付与しなければならない」と規定されているのです。この「労働者」には、正社員、パート、契約社員などの雇用形態は関係ないのです。つまり、パート薬剤師も対象なのです。

重要な点は「パートだから有給がない」という規定は法律には存在しないということです。もし、企業側が「パートには有給がない」と説明してくる場合、それは労働基準法違反(第39条)です。「うちはそういうルールだから」という社内規定は、法律の前では無効です。

労働基準法第39条に基づいた有給休暇の付与条件は以下の通りです。

  • 勤続期間:6ヶ月以上
  • 出勤率:全労働日の8割以上
  • これらの条件を満たしたとき、有給休暇が付与される

この条件をクリアしているパート薬剤師なら、有給休暇を取得する法的権利があります。それを企業側が妨害した場合、労働基準監督署に申告することもできるのです。


【計算方法】パート薬剤師の有給休暇日数を正確に計算する

パート薬剤師の有給休暇日数は「週の勤務日数」と「勤続年数」によって決まります。

法定の計算基準は「6ヶ月ごとに、以降6ヶ月間に予定されている勤務日数に応じた有給休暇を付与する」というものです。具体的には、厚生労働省が定めた「勤務日数別有給休暇日数表」に基づいて計算されます。

【パート薬剤師の有給休暇付与日数表】

週の勤務日数勤続0.5年勤続1.5年勤続2.5年勤続3.5年勤続4.5年勤続5.5年勤続6.5年以上
週4日7日8日9日10日12日13日15日
週3日5日6日6日8日9日10日11日
週2日3日4日4日5日6日6日7日
週1日1日2日2日2日3日3日3日

※週の所定労働時間が30時間未満の労働者に適用される「比例付与」の日数です。週30時間以上の場合は正社員と同じ日数が付与されます。

このように、例えば「週3日勤務」であっても、長く勤めれば最大11日の有給休暇が付与されるのです。


【時間給への対応】パート薬剤師の有給休暇の給与扱い

パート薬剤師が有給休暇を取得した場合、その日の給与をどのように扱うかは、企業側の規定によって異なります。

法律では「有給休暇中の給与支払い方法」について、以下の3つの方法が認められています。

その1:通常の時給で支払う

パート薬剤師の通常時給が2,500円であれば、有給休暇の日も2,500円×勤務時間で給与が支払われます。これが最も一般的な方法です。

その2:平均給与で支払う

過去3ヶ月の平均給与を基に計算して支払う方法です。この場合、時給が変動している薬剤師にとって有利に働くこともあります。

その3:企業側の合意に基づく特別な計算方法

企業側とパート薬剤師の合意があれば、特別な計算方法を採用することも可能です。ただし「有給休暇を給与なし」という選択肢は法律で禁止されています。

多くのパート薬剤師が認識していないのは「有給休暇は無給で取得できない」ということです。有給休暇を取得した場合、必ず何らかの給与が支払われなければならないのです。

私が人事部長だった頃、「パート薬剤師の有給休暇は給与なし」という企業規定を見たことがあります。これは労働基準法違反であり、即座に改正させたのです。


【実務的な申請】パート薬剤師が有給休暇を申請する流れ

有給休暇を取得するためには「事前に企業側に申請する」必要があります。

適切な申請方法は以下の通りです。

Step1:申請のタイミング

有給休暇の取得を希望する日の「少なくとも1週間前」に企業側に通知するのが一般的です。突然の申請では企業側の業務調整が困難になるため、可能な限り早期の通知が望ましいのです。

Step2:申請方法

口頭で報告するのではなく「有給休暇申請書」に記入して提出するのが正式な方法です。多くの薬局では人事担当者や店舗長に申請用紙を提出します。

Step3:企業側の対応

適正な企業なら「有給休暇申請書」に承認印を押して返却してくれます。この書類は「有給休暇を取得した証拠」となるため、大切に保管してください。

パート薬剤師が「有給休暇を申請したい」と言った場合、企業側が「絶対にダメ」と却下することは違法です。ただし、企業側には「時季変更権」という権利があります。「どうしてもこの日は人が足りず、薬局が開けられない」といった正当な理由がある場合に限り、「別の日ずらしてもらえないか」とお願いすることは認められています。

しかし、これはあくまで「日付の変更」であり、「取得そのものの拒否」はできません。


実践的対策:ブラック薬局の有給休暇問題を見分ける

【危険信号】「有給休暇は年3日」という説明は違法

パート薬剤師が転職面接時に「有給休暇は年3日です」と説明される場合がありますが、これは極めて危険な兆候です。

この説明が正当となるのは「週1日勤務で、まだ勤続年数が短い」といった限定的な場合だけです。もしあなたが「週3日以上働く予定」なのに、「うちはパートの有給は一律年3日です」と説明されたら、それは法律よりも自社ルールを優先するブラック薬局である可能性が高いと言えます。

採用面接時に「有給休暇について、具体的に教えていただけますか」と質問してください。その回答から、その企業が有給休暇制度を正しく理解しているか、あるいはパート薬剤師から有給休暇を奪おうとしているのかが判明するのです。


【確認項目】転職時に有給休暇について確認すべきこと

新しい職場に転職する際、労働条件通知書を受け取ります。その中に「有給休暇についての記載」があるか確認してください。

確認すべき項目は以下の通りです。

  • 有給休暇の付与日数が「勤務日数に応じた正しい計算」で記載されているか
  • 有給休暇を取得した場合の「給与扱い」が明記されているか
  • 未消化の有給休暇が「年度終了時に失効する」と一方的に宣告されていないか
  • 有給休暇の取得「方法」や「申請期限」が明記されているか

これらが不明確な企業は「有給休暇を取得させたくない企業」である可能性が高いのです。


【未消化有給の扱い】年度終了時の有給消化ルール

パート薬剤師が取得しなかった有給休暇は「自動的に失効する」わけではありません。

労働基準法では「有給休暇の消滅時効は2年」と定められています。つまり、未消化の有給休暇は「翌年度に繰り越される」ということです。最大2年間の有給休暇を保有できるのです。

企業側が「年度末で未消化の有給は失効する」と一方的に宣告してくる場合、それは違法な運用である可能性があります。ただし「計画的付与」により、企業側が指定した日程で有給休暇を取得させる制度を導入している企業もあります。その場合は、その日程に従う必要があります。

重要な点は「未消化の有給休暇について、パート薬剤師に通知なく失効させることはできない」ということです。企業側は「有給休暇を消化させる機会を提供する」必要があるのです。


実践的活用:パート薬剤師のキャリア戦略と有給休暇

パート薬剤師が有給休暇を活用するメリット

有給休暇を正しく理解し、積極的に取得することで、パート薬剤師のキャリア形成に大きなメリットがもたらされます。

メリット1:ワークライフバランスの実現

有給休暇を取得することで「仕事と私生活のバランス」を確保できます。疲弊した状態で働くより、十分に休息を取った上で働く方が、仕事の質が高まるのです。

メリット2:スキルアップの時間確保

有給休暇を利用して、認定薬剤師資格の取得や専門知識の習得に充てることができます。この休暇時間がキャリアアップの機会につながるのです。

メリット3:心身の健康維持

定期的な休息により、職業倦怠感やストレスを軽減できます。長期的には、仕事の満足度が高まり、パフォーマンスも向上するのです。


紹介会社を活用した「有給休暇が充実した薬局選び」

転職活動を進める際「有給休暇の取得実績」に関する「現場のリアルな情報」を持っているエージェントを選んでください。人事として数多くの担当者と対峙してきた私が、「この会社なら求職者のために嘘をつかない」と確信しているのが以下の3社です。

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紹介会社に確認すべき項目は以下の通りです。

  • パート薬剤師の有給休暇取得率は何%か
  • 未消化の有給休暇が「失効している」か「繰り越されている」か
  • パート薬剤師から「有給休暇取得に関する苦情」が寄せられていないか

これらの情報から「その薬局が有給休暇制度を適正に運用しているか」が判明するのです。


パート薬剤師が知るべき有給休暇の全体像

有給休暇は「パート薬剤師の権利」です。それを正しく理解し、適切に主張することが重要です。

多くのパート薬剤師が「パートだから有給がない」と思い込んでいるのは「企業側の誤った説明」を鵜呑みにしているからです。その誤解により「年間で数十万円分の給与」を失っているのです。

あなたが6ヶ月以上勤続し、8割以上の出勤率を満たしているなら「有給休暇を取得する法的権利がある」のです。その権利を主張することは「不当な要求」ではなく「法律で認められた権利の行使」なのです。

転職活動を進める際は、新しい職場の「有給休暇制度の運用」を必ず確認してください。紹介会社を活用して、有給休暇が適正に運用されている薬局を見つけることができるのです。

私が人事部長時代、実際に『交渉力が高く、信頼できる』と感じた理由について、以下の記事で生々しく解説しています。失敗したくない方は、必ずチェックしてください。

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この記事を書いた人

調剤薬局チェーン元人事部長・薬剤師・中小企業診断士。
約4年間、人事責任者として薬剤師の採用・評価制度設計に従事。大手を中心に20社以上の紹介会社と折衝し、採用の舞台裏から「紹介会社の実力差」を熟知する。現在は経営コンサルタントとして、調剤薬局の採用戦略や人事考課制度の設計支援を行う一方、薬剤師個人のキャリア支援も行っている。採用側と求職側、双方の視点を持つ「情報の非対称性を解消する」解説に定評がある。

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