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迫る2026年改定と薬剤師の未来
調剤報酬改定の度に「薬剤師不要論」が囁かれる。あなたも感じているのではないでしょうか。
処方箋枚数の減少、対物業務の評価引き下げ、AIやオンライン服薬指導の台頭。2026年の診療報酬・調剤報酬同時改定を前に、業界全体に漂う不安の空気を。
私は元調剤薬局チェーンの人事部長として、数百名の薬剤師のキャリアを見てきました。
そして断言できます。
「薬剤師オワコン説」は、準備を怠った者にとってのみ現実になるのだと。本記事では、2026年改定で予想される変化を冷静に分析し、あなたのキャリアを守り抜くための具体的な戦略をお伝えします。市場価値を高める実務スキル、転職市場での立ち回り方、年収を維持・向上させる交渉術まで。
人事部長として採用の最前線に立ち、経営層の本音を知り尽くした私だからこそ語れる、リアルな生存戦略です。
不安に支配されるのではなく、変化を機会に変える。その第一歩を、今日ここから踏み出しましょう。
2026年改定で「淘汰される薬剤師」の特徴
対物業務しかできない薬剤師の末路
2026年改定で最も警戒すべきは、調剤技術料のさらなる引き下げです。厚生労働省は一貫して「対物から対人へ」を掲げています。
しかし現実には、多くの薬局が依然として処方箋の枚数で売上を立てている。私が人事部長だった頃、ある40代の薬剤師がこう言いました。
「調剤するだけなら誰でもできる。でも私には20年の経験がある」
残念ながら、その経験は2026年以降の市場では評価されません。処方箋を受け取り、薬を取り揃え、お薬手帳に記録する。この一連の作業は、ピッキングロボットとAI監査システムで代替可能なのです。
実際に大手チェーンでは、調剤業務の自動化投資が加速しています。調剤報酬が下がれば、企業は人件費削減に動く。対物業務しかできない薬剤師は、真っ先にリストラ対象になります。
「かかりつけ薬剤師」を取得しただけで満足している人
かかりつけ薬剤師の届出をしているから安心。そう考えているなら、認識を改める必要があります。かかりつけ薬剤師指導料を算定している薬局は全体の3割程度しかありません。
しかし、患者が「かかりつけ薬剤師」を求めていないからではありません。薬剤師側が、患者にとって真に価値のある服薬フォローを提供できていないからです。
私が採用面接で「かかりつけ薬剤師の実績」を聞くと、多くの応募者が口ごもります。
「一応、同意書はもらっていますが」
「24時間対応は、実際にはほとんど連絡が来ません」
これではかかりつけ薬剤師取得が目的化している。
2026年改定では、かかりつけ薬剤師の要件がさらに厳格化される可能性が高い。形だけの届出では、評価されない時代が来ます。
専門性を磨かず「何でも屋」で終わる薬剤師
調剤薬局でもドラッグストアでも働ける。一見、選択肢が広いように思えます。しかし採用側から見ると、これは「強みがない」と同義です。
私が人事部長として最も採用したかったのは、明確な専門性を持つ薬剤師でした。在宅医療に強い、がん専門薬に詳しい、小児科の経験が豊富、漢方の知識がある。
こうした専門性は、患者満足度の向上に直結します。そして患者満足度は、調剤報酬改定がどう変わろうと、薬局経営の生命線なのです。
2026年改定では、地域包括ケアシステムにおける薬局の役割がさらに重視されるでしょう。その中で求められるのは、特定の領域で確実な価値を提供できる薬剤師です。
「何でもできます」と言う人材より、「この分野なら誰にも負けません」と言い切れる人材。
後者の市場価値が、今後ますます高まります。
生き残る薬剤師が今すぐ始めている3つの準備
対人業務の実績を「数字」で語れるようにする
まず理解すべきは、2026年改定で評価されるのは「活動量」ではなく「成果」だということです。服薬指導を何回したか、ではない。その服薬指導によって患者の服薬アドヒアランスがどう改善したか、残薬がどれだけ減ったか。
これが問われます。
私が推奨するのは、自分の業務実績を定量的に記録することです。例えば以下のようなデータです。
記録すべき業務実績の例
- 服薬フォローにより残薬を削減した金額(月間・年間)
- 副作用を早期発見し医師に疑義照会した件数
- 在宅訪問で患者のQOL改善に寄与した具体例
- OTC販売での受診勧奨により重大疾患を発見した件数
- 多剤併用患者の処方適正化を提案し採用された回数
こうした実績は、転職時の職務経歴書に記載できます。そして面接で「私はこれだけの成果を出してきました」と具体的に語れる。
採用担当者として断言しますが、この差は決定的です。
抽象的に「患者さんのために頑張っています」と言う応募者と、数字で実績を示せる応募者。後者の年収は、平均で100万円以上高くなります。
専門資格よりも「現場で使える武器」を揃える
認定薬剤師や専門薬剤師の資格取得に励む。これ自体は悪いことではありません。
しかし資格がキャリアアップに直結すると考えるのは、大きな誤解です。私が人事部長として評価したのは、資格の有無ではなく「その知識を現場でどう活用しているか」でした。
がん専門薬剤師の資格を持っていても、門前が整形外科なら意味がない。在宅医療の経験がない薬剤師が、在宅療養支援認定薬剤師を取っても評価されません。
逆に、資格がなくても以下のような実務能力があれば、市場価値は格段に上がります。
2026年以降に求められる実務スキル
- 多職種連携における調整力(ケアマネ・訪問看護師との連携実績)
- 服薬フォローシステムの構築・運用経験
- オンライン服薬指導の実施ノウハウ
- 地域住民向け健康講座の企画・実施経験
- 後輩育成・薬局マネジメントの経験
ある30代の薬剤師Cさんは、資格は認定薬剤師のみでした。しかし彼女は、門前クリニックの医師と連携し、糖尿病患者の服薬フォロー体制を独自に構築していた。
その結果、患者の平均HbA1c値が0.8ポイント改善。この実績を職務経歴書に記載したCさんは、3社から内定を得て年収を120万円アップさせました。
資格は手段であり、目的ではない。現場で成果を出すための「武器」を優先的に揃えましょう。
転職市場での自分の「現在価値」を把握する
多くの薬剤師が犯す致命的なミスがあります。それは「転職を考え始めてから」情報収集を始めることです。
これでは遅い。なぜなら、自分の市場価値を正しく把握していないまま、焦って転職先を決めてしまうからです。私が推奨するのは、転職の意思がなくても定期的に転職エージェントと面談することです。
具体的には以下の情報を収集します。
定期的に確認すべき市場情報
- 自分と同年齢・同経験の薬剤師の平均年収
- 自分のスキルセットが評価される求人の相場
- 今後需要が高まる専門分野のトレンド
- 自分の職務経歴書の客観的評価
ファルマスタッフやレバウェル薬剤師の担当者は、こうした相談にも親身に対応してくれます。登録したからといって、すぐに転職しなければならないわけではない。
情報収集のためだけに利用するのは、むしろ賢い戦略です。ある50代の薬剤師Dさんは、2年前から定期的にエージェントと面談していました。そして2026年改定の動向を見据え、「今がタイミング」と判断して転職活動を開始。
準備万端だった彼は、わずか1ヶ月で年収680万円の在宅専門薬局への転職を決めました。情報は、最大の武器です。それも鮮度の高い情報を、常にアップデートし続けることが重要なのです。
年収を下げずに2026年改定を乗り切る転職戦略
「安定」を求めるなら大手チェーンは避けろ
2026年改定後、最も厳しい状況に陥るのは大手調剤薬局チェーンです。意外に思われるかもしれません。大手は資金力があり、経営が安定していると考える人が多い。
しかし人事部長の視点から見ると、大手こそがリストラの嵐に晒されます。
理由は単純です。
大手チェーンは、処方箋枚数に依存したビジネスモデルを取っている。調剤技術料が下がれば、利益は直撃を受ける。そして大手は株主への説明責任があるため、人件費削減に踏み切らざるを得ないのです。私が在籍していた調剤薬局チェーンでも、改定の度に人員削減計画が策定されました。
パート薬剤師の時給カット、正社員の早期退職募集、新卒採用の抑制。こうした施策は、まず大手から始まります。では、どこを選ぶべきか。
2026年改定後に強い薬局の特徴
- 在宅医療に特化し、施設との強固な関係を持つ薬局
- 特定の専門科目(がん、緩和ケアなど)に強みを持つ薬局
- 地域密着型で、門前依存度が50%以下の薬局
- 調剤以外の収益源(健康相談、介護用品販売など)を持つ薬局
こうした薬局は、調剤報酬が下がっても経営への影響が限定的です。そして何より、薬剤師一人ひとりの専門性を重視し、教育投資を惜しまない。年収の安定性は、会社の規模ではなく、ビジネスモデルの持続可能性で決まります。
面接で必ず確認すべき「5つの質問」
転職面接では、多くの薬剤師が遠慮しすぎです。年収や休日について聞くのは失礼だと考え、会社の説明を黙って聞いている。
これは大きな間違いです。面接は、あなたが会社を「選ぶ」場でもある。人事部長として数百回の面接を行った私が、あなたに必ず確認してほしい質問があります。
面接で必ず聞くべき5つの質問
1. 「調剤報酬改定による業績への影響と、その対策を教えてください」
この質問で、経営陣が改定をどう捉えているかが分かります。 具体的な数字を示さず曖昧に答える会社は、準備不足です。
2. 「薬剤師の平均勤続年数と、直近3年の離職率を教えてください」
離職率が年10%を超える薬局は、何らかの問題を抱えています。 「把握していない」と答える会社は、労務管理がずさんな証拠です。
3. 「年収アップの具体的な評価基準と、実際に昇給した薬剤師の事例を教えてください」
「頑張れば上がる」という抽象的な回答はNGです。 具体的な評価指標と昇給実績を示せない会社は、給与テーブルが機能していません。
4. 「着替えや開局準備の時間は、勤務時間に含まれますか」
この質問で、会社のコンプライアンス意識が測れます。 「含まれない」と即答する会社は、労働基準法の認識が甘い可能性があります。
5. 「未消化の有給休暇の取り扱いと、実際の有給取得率を教えてください」
有給取得率が50%未満の薬局は、実質的に有給が取れない環境です。 「忙しい時期は取りづらい」という回答も要注意。
これらの質問に対し、具体的かつ誠実に答えられる会社を選びましょう。
面接で遠慮は不要です。
あなたのキャリアと生活がかかっているのですから。
年収交渉は「転職エージェント」に任せるべき理由
多くの薬剤師が、年収交渉を苦手としています。
「お金の話をするのは気が引ける」
「条件を言い過ぎて、内定が取り消されたらどうしよう」
こうした不安から、提示された年収をそのまま受け入れてしまう。これは、非常にもったいない。年収交渉は、転職成功の最重要ポイントです。そして交渉の成否は、「誰が交渉するか」で決まります。
結論から言えば、年収交渉は必ず転職エージェントに任せるべきです。
理由は3つあります。
第1に、エージェントは交渉のプロだから
ファルマスタッフやレバウェル薬剤師の担当者は、年間何十件もの年収交渉を行っています。どのタイミングで、どう切り出せば年収が上がるか。そのノウハウを熟知しているのです。
第2に、直接交渉は印象を悪くするリスクがあるから
あなたが面接で「年収をもう少し上げてほしい」と言ったとします。
採用担当者はこう思います。
「この人は、お金のことしか考えていないのか」
しかしエージェント経由なら、こうした印象を与えません。「候補者様は御社を強く希望されていますが、現職の年収と比較すると少し厳しいとのことで」このように、第三者が客観的に伝えることで、交渉がスムーズに進みます。
第3に、エージェントの報酬は「採用年収」に連動するから
転職エージェントは、あなたの年収が高いほど、企業から受け取る報酬も増えます。つまり、あなたの年収を上げることが、エージェントの利益にもなる。この利害の一致が、強力な交渉の原動力になります。
ある40代の薬剤師Eさんは、自分で交渉して年収600万円の内定を得ました。しかし念のためエージェントに相談したところ、エージェントが再交渉し、最終的に650万円まで引き上げました。
年収交渉は、プロに任せる。これが2026年改定を乗り切るための、最も確実な戦略です。
「にゃん部長」が推奨する転職エージェント3社
ここまで2026年改定を乗り切る戦略をお伝えしてきました。しかし戦略を立てても、実行しなければ意味がありません。そして実行の第一歩は、信頼できる転職エージェントへの登録です。
私が人事部長として数多くのエージェントと取引してきた経験から、薬剤師の転職に本当に強い会社を3社厳選しました。

私の推奨は、3社すべてに登録し、担当者の質や求人の内容を比較することです。
2026年改定は「チャンス」に変えられる
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
2026年の調剤報酬改定は、確かに薬剤師にとって厳しい環境をもたらすでしょう。処方箋枚数の減少、調剤技術料の引き下げ、AIによる業務代替。不安材料は数多くあります。
しかし、だからこそチャンスなのです。変化の時代は、準備した者が勝つ時代でもあります。対物業務だけで満足していた薬剤師が淘汰される一方で、対人業務で成果を出せる薬剤師の価値は急上昇します。
大手チェーンが人員削減に動く一方で、専門性の高い中小薬局は優秀な人材を高待遇で迎え入れます。
漫然と今の職場に留まる薬剤師が年収を下げる一方で、戦略的に転職した薬剤師は年収を100万円以上アップさせます。この差は、準備の差です。情報を持っているか、持っていないか。
行動したか、しなかったか。ただそれだけの差が、5年後10年後のあなたのキャリアを大きく変えるのです。今の環境で悩み続けたあなたを、誰も責めることはできません。毎日の業務に追われ、将来のことを考える余裕がなかったのは当然です。
しかし、この記事を最後まで読んだあなたは、もう「準備ができていない薬剤師」ではありません。2026年改定で何が起こるか、どう備えるべきかを知っています。あとは、行動するだけです。
まずは転職エージェントに登録し、自分の市場価値を確認する。これだけで、あなたの選択肢は大きく広がります。そして選択肢があることが、最大の安心材料になるのです。
あなたの市場価値は、あなたが思っているよりずっと高い。その価値を正しく評価してくれる職場は、必ず見つかります。2026年改定という波を、あなたのキャリアを飛躍させる追い風に変えましょう。


