【元人事部長が解説】調剤報酬改定で年収を上げるには?生き残る薬剤師のキャリア戦略

2025年12月時点の情報です

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改定のたびに不安を感じていませんか?

調剤報酬改定のニュースを見るたび、胸が重くなる。

「また収入が減るのではないか」「自分の働き方が評価されなくなるのでは」。そんな不安を抱えている薬剤師は少なくありません。実際、2024年の改定では地域支援体制加算が引き下げられ、多くの薬局で収益減が現実のものとなりました。

しかし、私が採用面接を重ねる中で気づいたことがあります。

同じ改定に直面しても、それを「転職のチャンス」として捉え、年収を100万円以上アップさせる薬剤師がいる一方で、不安だけを抱えて何も行動せず、結局職場で評価されないまま年収が下がっていく薬剤師もいるのです。

この差は何なのか。それは「改定をどう解釈し、どう行動するか」という思考の違いにほかなりません。

厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は約595万円(※推計値)です。しかし、この数字はあくまで平均値。改定という変化の波を上手く活用できる薬剤師は、この平均を上回る年収を手にしています。

本記事では、元・調剤薬局チェーン人事部長として薬剤師のキャリアを見てきた私が、調剤報酬改定を「逆風」ではなく「追い風」に変える具体的な思考法と行動戦略をお伝えします。

第一章:なぜ改定を「逆風」と感じてしまうのか

改定への不安の正体を理解する

調剤報酬改定に対して漠然とした不安を抱く薬剤師が多いのは事実です。

しかし、この不安の正体を分解してみると、実は2つの要素に集約されます。

第一に「収入減への恐れ」です。2024年の改定では調剤基本料が3点引き上げられた一方で、地域支援体制加算は7点引き下げられました。差し引き4点のマイナスをどう補うかが各薬局の課題となっています。

日本保険薬局協会の調査によると、2024年6月から11月の半年間で処方箋受付回数は前年比0.85%減、処方箋単価も減少傾向にあります。一方で労務費は5.36%増、経費は3.70%増と、収入は減るのにコストは上がるという厳しい状況が浮き彫りになりました。

第二に「自分の仕事が評価されなくなる不安」です。

改定のたびに評価される業務内容が変わります。かかりつけ薬剤師指導料、服薬フォローアップ、在宅医療への取り組みなど、新たに求められる業務に対応できなければ、自分の市場価値が下がると感じるのは当然です。

多くの薬剤師が陥る「思考停止」という罠

私が残念に思ったのは、改定に対して「思考停止」してしまう薬剤師の存在でした。

「うちの薬局は門前だから改定に弱い」「経営陣が何もしてくれない」「どうせ年収は上がらない」。

こうした言葉を口にする薬剤師に共通していたのは、自分のキャリアを会社任せにしていることです。確かに、薬局の経営方針や立地条件は個人の力では変えられません。

しかし、自分自身のスキルセットや働く場所を選ぶ権利は、あなた自身が持っています。

改定を「逆風」と捉える薬剤師と「追い風」と捉える薬剤師の決定的な違いは、変化を自分のキャリアに活かせるかどうかという「思考の柔軟性」にあります。

第二章:改定を「市場価値の可視化」と捉える

改定は「求められる薬剤師像」の明確化である

調剤報酬改定を紐解くと、そこには国が求める「これからの薬剤師像」が明確に示されています。

2024年の改定では、3つの重点項目が掲げられました。地域の医薬品供給拠点としての役割、質の高い在宅業務の推進、かかりつけ機能を発揮した薬学的管理です。

これは裏を返せば、「これらのスキルを持つ薬剤師の市場価値が上がる」ということです。

私が人事部長として採用活動をしていた際、在宅経験のある薬剤師、服薬フォローアップの実績がある薬剤師には、特別の評価を行っていました。

あなたの「改定対応力」をチェックする

では、あなた自身の改定対応力はどの程度でしょうか。

以下の質問に「はい」か「いいえ」で答えてみてください。

  • 在宅医療の経験がある、または研修を受けたことがある
  • 服薬フォローアップを日常的に実施している
  • かかりつけ薬剤師として患者を担当している
  • 健康サポート薬局の業務に関わったことがある
  • 地域のケアマネージャーや医師と連携した経験がある

「はい」が3つ以上なら、あなたは改定に強い薬剤師です。「いいえ」が多い場合は、今すぐスキルセットを見直す必要があります。

ただし、ここで重要なのは「今の職場でそのスキルを身につけられるか」という視点です。

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改定は「転職市場の需給バランス」を変える

調剤報酬改定は、転職市場における需給バランスを大きく変えます。

例えば、2024年の改定では在宅薬学総合体制加算が新設され、在宅対応できる薬剤師の需要が急増しました。在宅薬学総合体制加算1は15点、加算2は50点と、大きな点数を算定できるためです。

私が人事部長時代に関わった薬局では、在宅未経験の薬剤師を採用して育成するより、経験者を高給で引き抜く方が経営的にメリットがあると判断し、年収650万円以上の条件で募集をかけたこともあります。

つまり、改定によって「高く評価されるスキル」を持っていれば、転職市場での交渉力が格段に上がるのです。

第三章:改定を「自己成長の機会」として活用する

改定がもたらす「学習の必然性」

改定のたびに新しい算定要件が生まれ、薬剤師には新たな知識やスキルが求められます。

これを「負担」と捉えるか「成長のチャンス」と捉えるかで、5年後のキャリアが大きく変わります。

評価していたのは、改定のたびに自己学習を重ね、職場内で改定内容を共有し、新たな算定項目の取得に積極的に動ける薬剤師でした。こうした薬剤師は、管理薬剤師やエリアマネージャーへの昇進も早く、30代で年収700万円を超えるケースも珍しくありません。

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「学ぶべきスキル」を明確にする

改定対応で身につけるべきスキルは、大きく3つに分類されます。

第一に「算定スキル」です。調剤報酬の算定要件を正確に理解し、漏れなく請求できる能力は、薬局経営にとって極めて重要です。調剤後薬剤管理指導料、外来服薬支援料、特定薬剤管理指導加算など、算定項目は多岐にわたります。

第二に「対人業務スキル」です。服薬指導、服薬フォローアップ、在宅訪問など、患者と直接関わる業務の質を高めることが、今後の薬剤師に最も求められています。

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第三に「連携スキル」です。医師、看護師、ケアマネージャーなど多職種との連携が、地域包括ケアシステムの中で薬剤師の役割を高めます。

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学習コストを「投資」として考える

新しいスキルを身につけるには、時間とお金がかかります。

しかし、これを「コスト」ではなく「投資」として捉えることが重要です。

例えば、在宅医療の研修に3万円を支払い、週末2日間を使ったとします。一見、負担に感じるかもしれません。しかし、その結果、在宅対応できる薬剤師として年収が50万円上がれば、投資回収期間はわずか1か月です。

面接を行う際、「これまでどんな自己投資をしてきましたか?」という質問を必ずしていました。積極的に学び続けている薬剤師は、年齢に関わらず高く評価されます。

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第四章:改定を「転職の好機」に変える戦略

改定直後は「求人の質」が変わる

調剤報酬改定の直後は、転職市場が大きく動くタイミングです。

改定によって経営方針を変更する薬局、新たな加算取得のために人材を求める薬局、逆に経営が厳しくなり待遇を下げざるを得ない薬局など、様々な動きが見られます。

このタイミングで転職活動を始めると、「改定対応できる人材」として高く評価される可能性が高まります。

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「改定に強い薬局」を見抜く力

転職を考える際、最も重要なのは「改定に強い薬局」を選ぶことです。

改定に弱い薬局に転職してしまうと、数年後にまた転職を余儀なくされます。

私が人事部長として面接官を務めていた際、応募者から「御社は今回の改定にどう対応していますか?」と質問されたことがあります。このような質問ができる薬剤師は、経営視点を持っており、非常に高く評価していました。

改定に強い薬局の特徴は以下の通りです。

まず、複数の収益源を持っていることです。調剤だけでなく、OTC販売、健康相談、在宅医療など、多角的に事業を展開している薬局は改定の影響を受けにくいです。

次に、薬剤師の教育に投資していることです。研修制度が充実し、資格取得支援がある薬局は、改定に対応できる人材を育てる土壌があります。

最後に、経営者が改定内容を薬剤師に共有し、一緒に対策を考える文化があることです。

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年収交渉の「タイミング」と「根拠」

改定直後は、年収交渉の絶好のタイミングです。

「改定に対応できるスキルを持っている」という事実は、交渉の強力な武器になります。

ただし、交渉には明確な根拠が必要です。「在宅経験があります」「服薬フォローアップの実績が月20件あります」といった具体的な数字を示すことで、説得力が増します。

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ただし、年収交渉を自分で行うのは難しいと感じる方も多いでしょう。基本的に、転職エージェントを活用するのが賢明です。

エージェントに任せれば、あなたは「エージェントが勝手に交渉してくれた」というスタンスを取れます。企業側も「エージェントの要求だから仕方ない」と受け止めやすいのです。実際に私が人事の裏側を見て「ここは信頼できる」と判断したエージェントだけを厳選しました。

【元人事が証言】交渉力が違うエージェント3選

人事の裏側を見てきた私だから言えることですが、エージェントによって「企業へのプッシュ力」は天と地ほどの差があります。 大手だから安心というわけではありません。

担当者の質、企業とのパイプの太さ、そして何より「求職者を守る気概」が全く違うのです。 ここでは、私が採用担当として対峙した際に「ここは手強い(=求職者のために粘り強く交渉してくる)」と感じた、信頼できる3社を厳選しました。

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第五章:改定を「職場での評価アップ」に繋げる

改定対応力を「社内での武器」にする

転職だけが選択肢ではありません。

今の職場で改定対応のキーパーソンになることで、評価を上げることも可能です。

私が人事部長として昇給・昇進を決める際、最も重視していたのは「改定・加算に対する貢献度」でした。新しい算定項目を職場に導入し、収益を上げた薬剤師には、ボーナス額を多く支給していました。

「改定勉強会」を自ら企画する

職場での評価を上げる最も効果的な方法は、改定勉強会を自ら企画することです。

改定内容を資料にまとめ、同僚に共有する。この行動だけで、あなたは「改定に詳しい薬剤師」として認識されます。

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経営視点を持つことの重要性

改定を「経営の問題」として捉えるのではなく、「自分事」として捉えることが重要です。

「この改定で薬局の収益はどう変わるのか」「自分のスキルをどう活かせば薬局に貢献できるのか」といった経営視点を持つ薬剤師は、必ず評価されます。

私が知るある管理薬剤師は、毎回の改定後に「今回の改定で当薬局が取るべき戦略」という提案書を作成し、経営陣に提出していました。その提案の多くが採用され、結果として薬局の収益向上に大きく貢献しました。

こうした行動ができる薬剤師は、エリアマネージャーや本部スタッフへのキャリアパスも開けます。

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第六章:2026年改定に向けて今からできること

次の改定は「予測可能」である

調剤報酬改定は、ある程度予測可能です。

中央社会保険医療協議会(中医協)の議論を追うことで、次の改定でどのような項目が重視されるかが見えてきます。

2026年の改定に向けて、すでに議論が始まっています。医療DXの推進、オンライン服薬指導の拡大、リフィル処方箋への対応など、今後ますます重要になるテーマです。

「先回り学習」で市場価値を高める

改定が発表されてから学ぶのでは遅い。

改定の方向性が見えた段階で、先回りして学習を始めることが重要です。

例えば、オンライン服薬指導が今後拡大することは明らかです。今のうちにオンライン服薬指導の研修を受け、実務経験を積んでおけば、2026年の改定後に高く評価されます。

私が人事部長として採用活動をしていた際、「次の改定に向けて今、何を学んでいますか?」という質問をすることがありました。この質問に明確に答えられる薬剤師は、将来性があると判断していました。

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情報収集の「質」を高める

改定に強い薬剤師になるためには、情報収集の質を高めることが不可欠です。

厚生労働省の公式サイト、中医協の議事録、日本薬剤師会の資料など、一次情報にアクセスする習慣をつけましょう。

また、転職エージェントは最新の市場動向を把握しています。転職を考えていなくても、定期的にエージェントと情報交換することで、改定の影響や求人動向を知ることができます。

【元人事が暴露】エージェント選びで失敗しないために

ここまで、改定をチャンスに変えるマインドセットをお伝えしてきました。
しかし、最後に一つだけ警告があります。それは「使うエージェントを間違えると、交渉すらしてもらえない」という事実です。

私は人事部長として20社以上の紹介会社と付き合ってきましたが、「こちらの顔色を伺って交渉してこない会社」と「職務経歴書に書かれていないあなたの魅力を武器に、強気に年収交渉してくる会社」は明確に分かれています。

私が人事の裏側から見て「交渉力が強く、プロとして本当に信頼できた」エージェントを、実名で解説した記事を用意しました。

表向きのランキングサイトには書けない「人事担当者からのリアルな評判」を知りたい方は、必ず目を通してください。

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調剤報酬改定は、薬剤師という職業を「誰でもできる仕事」から「専門性が求められる仕事」へとシフトさせています。

これは、薬剤師の二極化を意味します。

改定に対応し、スキルを磨き続ける薬剤師は年収を上げ続け、現状維持に甘んじる薬剤師は年収が下がっていく。この傾向は、今後ますます顕著になるでしょう。

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改定という波を上手く乗りこなし、年収アップと働きがいの両方を手に入れた薬剤師の姿を、私は何人も見てきました。
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この記事を書いた人

調剤薬局チェーン元人事部長・薬剤師・中小企業診断士。
約4年間、人事責任者として薬剤師の採用・評価制度設計に従事。大手を中心に20社以上の紹介会社と折衝し、採用の舞台裏から「紹介会社の実力差」を熟知する。現在は経営コンサルタントとして、調剤薬局の採用戦略や人事考課制度の設計支援を行う一方、薬剤師個人のキャリア支援も行っている。採用側と求職側、双方の視点を持つ「情報の非対称性を解消する」解説に定評がある。

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