- 薬剤師の面接でキャリアプランを聞かれたとき、何を答えればよいか
- 3年後・5年後・10年後の質問を、役職名を無理に決めずに考える方法
- 明確な将来像がまだない場合でも、嘘を作らずに回答を組み立てる方法
- 管理職志望・専門性重視・働き方重視など、方向性が違う場合の回答例
- 応募先でそのキャリアを本当に実現できるか、面接で確認する視点
薬剤師の転職面接で、答えに迷いやすい質問の一つが「今後のキャリアプランを教えてください」「5年後はどのような薬剤師になっていたいですか」といった将来像の質問です。
管理薬剤師を目指すべきなのか、在宅や専門領域を挙げるべきなのか。明確な目標がないと評価が下がるのではないか。模範回答を探している人もいるかもしれません。
しかし、キャリアプランは将来を約束するための回答ではありません。現時点で、自分がこれまで何を経験し、今回の転職で何を変えたいのか、応募先で何を経験したいのか、その先にどのような方向を考えているのかをつなげて説明するものです。
私は調剤薬局チェーンで薬剤師採用に約6年間携わり、そのうち約4年間は人事部長として面接・採用に関わりました。採用側で確認していたのも、立派な役職名を言えるかではなく、本人が希望する仕事と、会社が実際に提供できる仕事にずれがないかという点でした。
この記事では、厚生労働省のキャリア形成支援情報と私自身の採用経験を分けながら、面接でキャリアプランを聞かれたときに、自分の言葉で回答を作る方法を整理します。
結論|キャリアプランは将来を約束する回答ではない
面接でキャリアプランを聞かれたら、完成した10年計画を提示する必要はありません。
厚生労働省のマイジョブ・カードでは、キャリア・プランを考える流れとして、過去から現在の職務経歴を整理し、転職後の目標を考え、3年後・5年後・10年後などの時間軸で将来を検討し、そのために必要な経験を考える方法が紹介されています。
公的情報:転職活動の際にキャリア・プランを上手にアピールする方法|マイジョブ・カード
これはすべての企業が同じ面接基準を使うという意味ではありません。ただ、回答を整理する考え方としては非常に使いやすい構造です。
薬剤師の転職面接では、これを次の4段階に置き換えると整理しやすくなります。
- これまで何を経験してきたか
- 今回の転職で何を変えたいか
- 応募先で何を経験したいか
- その先に、現時点ではどの方向を考えているか
この4つがつながっていれば、3年後に管理薬剤師になる、5年後に認定資格を取る、といった具体的な肩書が決まっていなくても回答できます。
面接でキャリアプランを聞かれたら何を答えるか
キャリアプラン質問は、将来像だけを単独で考えると答えにくくなります。先に過去と現在を置くと、将来の方向が自然につながります。
| 段階 | 整理すること | 面接での役割 |
|---|---|---|
| 1.過去 | これまで担当した仕事・身につけた経験 | 回答の根拠 |
| 2.今回 | 今の仕事から何を変えたいか | 転職理由との接続 |
| 3.応募先 | 次の職場で何を経験したいか | 応募先を選んだ理由 |
| 4.将来 | 経験を積んだ先で、どの方向へ進みたいか | 現時点のキャリア仮説 |
例えば、現在は外来中心の調剤薬局で働いており、今後は在宅も経験したい場合、いきなり「5年後には在宅専門の薬剤師になります」と決める必要はありません。
これまで外来調剤と服薬指導を中心に経験してきました。今後は患者さんの生活背景まで継続して確認できる仕事も経験したいと考え、在宅に取り組む職場を検討しています。まずは現在の経験を活かしながら在宅業務を学び、その先は実際に経験したうえで、より深く関わる方向も検討したいと考えています。
この回答なら、過去・今回・応募先・将来がつながっています。将来を断定していなくても、今回なぜ転職するのかは伝わります。
キャリアプラン・転職理由・志望動機は同じ回答にしない
面接準備をしていると、転職理由、志望動機、キャリアプランの内容が似てきます。実際、3つは関連していますが、質問の中心は少しずつ違います。
| 質問 | 中心になる内容 |
|---|---|
| 転職理由 | なぜ現在の職場から環境を変えようとしているのか |
| 志望動機 | なぜ複数の求人の中からこの応募先を検討しているのか |
| キャリアプラン | 入社後に何を経験し、その先を現時点でどう考えているのか |
例えば、転職理由が勤務時間の見直しで、志望動機が自宅から通いやすく教育体制も確認できたこと、キャリアプランが服薬指導経験を深めながら将来的に後輩教育にも関わること、という組み合わせでも構いません。
3つの回答を同じ美しいストーリーへそろえる必要はありません。重要なのは、互いに明らかな矛盾がないことです。
採用側で面接をしていたときも、回答の表現が完全に一致しているかより、応募者が何を変えたいのか、入社後に何をしたいのかをこちらが理解できるかを重視していました。
元人事部長としてキャリアプラン質問で確認していたこと
キャリアプランを聞く目的は、すべての会社で同じではありません。面接官ごとに質問の意図も異なります。そのため、面接官は必ずこの4点を見る、と全国共通の採用基準にはできません。
その前提で、私が調剤薬局チェーンの採用側にいたときは、主に次のようなことを確認する材料としてキャリアの話を聞いていました。
- 応募者が次に経験したい仕事を自社で提供できるか
- 今回の転職理由と、入社後に希望する仕事が大きく矛盾していないか
- 本人が現在の経験をどのように捉えているか
- 入社時点で決まっていないことを、本人も把握しているか
例えば在宅を希望している応募者がいても、その人を評価するために在宅志望かどうかを見ていたわけではありません。配属予定の店舗で在宅を担当できないのであれば、入社前にその認識差を確認する必要があります。
逆に管理職を希望していない応募者でも、一般薬剤師としてどのような仕事を続けたいかが分かれば、会社側も配属や役割を考えやすくなります。
つまり、キャリアプラン質問は応募者を立派に見せるためのプレゼンだけではなく、入社後の仕事をすり合わせる会話として考えると準備しやすくなります。
ステップ1|これまでの経験を一つ選ぶ
キャリアプランを考えるとき、最初に未来だけを想像する必要はありません。まず現在までの経験を棚卸しします。
面接では、これまで経験したことをすべて話す必要もありません。今回の転職先とつながる経験を一つか二つ選びます。
- 外来で幅広い処方の調剤・服薬指導をしてきた
- 在宅訪問を担当してきた
- 病棟業務や多職種連携を経験した
- OTC相談やセルフメディケーション支援をしてきた
- 新人教育・後輩指導を担当した
- 管理薬剤師として店舗運営を経験した
- 製薬企業・CRO等で医薬品関連業務を経験した
ここで重要なのは、経験を大きく見せることではありません。実際に自分が担当した仕事だけを使います。
採用側にいたときも、整った言葉そのものより、回答の根拠になる本人の経験があるかを確認していました。地域医療に貢献したい、患者に寄り添いたい、といった言葉だけでは、なぜそう考えたのかが分かりません。
自分の経験から一つ選ぶと、その後の転職理由や将来像につなげやすくなります。
ステップ2|今回の転職で変えたいことをつなぐ
次に、今回なぜ転職を考えているのかをつなぎます。
キャリアプランと転職理由が完全に同じ文章である必要はありません。ただし、互いに大きく矛盾しない方が、応募先も入社後の希望を理解しやすくなります。
例えば、現在の職場では勤務時間との両立が難しいことが転職理由なのに、キャリアプランでは「今後は管理職として長時間働き、店舗運営に専念したい」と話せば、本人の希望が分かりにくくなります。
反対に、転職理由が人間関係だったとしても、キャリアプランまで人間関係の話にする必要はありません。
現在の職場では勤務体制を含め、長期的な働き方を見直したいと考えています。次の職場では勤務条件を確認したうえで、これまで経験してきた服薬指導を続けながら、後輩教育にも少しずつ関わりたいと考えています。
このように、今回変えたい条件と、次にしたい仕事を分けても構いません。
面接全体で退職理由や志望動機をどう整理するかは、薬剤師の転職面接で見られるポイントと質問への答え方で確認してください。
ステップ3|応募先で経験したい仕事を具体化する
キャリアプラン回答で特に大切なのが、応募先で何を経験したいのかを確認することです。
会社の理念に合わせるために、応募先が強調している言葉をそのまま自分の目標にする必要はありません。
先に自分の希望があり、その仕事を応募先で実際に経験できるかを確認します。
| 自分が経験したいこと | 応募先で確認すること |
|---|---|
| 在宅を経験したい | どの店舗で実施しているか、入社後に担当できるか |
| 幅広い処方を経験したい | 配属予定店舗の主な診療科・処方内容 |
| 後輩教育を経験したい | 教育担当の役割があるか、どの時点で担当するか |
| 店舗運営を経験したい | 管理薬剤師の役割、候補者の育成方法 |
| 専門性を深めたい | 対象患者・業務・研修機会が実際にあるか |
採用ページに在宅医療と書かれていても、すべての店舗で同じ業務をしているとは限りません。キャリアプランを応募先へ接続するときは、会社全体のイメージではなく、自分が入社後に実際に経験できるかを見ることが重要です。
ステップ4|その先の方向を現時点の言葉で伝える
最後に、その経験を積んだ先でどの方向を考えているかを話します。
ここで役職名や資格名を無理に決める必要はありません。
- 患者対応を深めたい
- 特定領域の知識を深めたい
- 後輩教育に関わりたい
- 店舗運営にも関心がある
- 働き方と両立しながら長く現場を続けたい
これらも十分にキャリアの方向です。
将来は管理薬剤師になりたいと本当に考えているなら、そのまま話して構いません。しかし、管理職を希望していない人が、面接で評価されそうだからという理由だけで管理職志望を作る必要はありません。
現時点で方向が一つに絞れていないなら、関心がある仕事と、実際に経験した後で適性を見極めたいことを説明できます。
保存用|キャリアプラン回答作成シート
次の表は、そのままコピーして埋めるための記入用シートです。面接で全項目を話す必要はありません。まず自分の考えを整理するために使ってください。
| 項目 | 自分の内容 |
|---|---|
| これまでの経験 | 実際に担当した仕事を1〜2個 |
| 今回変えたいこと | 仕事内容・役割・働き方など |
| 応募先で経験したいこと | 求人・採用ページ・面接で確認できた仕事 |
| その先の方向 | 現時点で関心のある役割・専門性・働き方 |
| まだ決まっていないこと | 実際に経験してから判断したい部分 |
このシートの最後に「まだ決まっていないこと」を置くのがポイントです。
キャリアプランを考えると、すべて決めなければならないと感じる人がいます。しかし、転職前には分からないことがあって当然です。未確定部分を自覚しておけば、面接で必要以上に断定することも防げます。
3年後・5年後・10年後を聞かれたときの考え方
面接では「3年後はどうなっていたいですか」「5年後のキャリアをどう考えていますか」と、具体的な年数で聞かれることがあります。
厚生労働省のマイジョブ・カードでも、3年後・5年後・10年後と時間を区切ってキャリアを考える方法が紹介されています。これは未来を正確に予測するためではなく、短期と中長期を分けて考える方法として使えます。
| 時間軸 | 考えやすい内容 |
|---|---|
| 1〜3年後 | 入社後まず身につけたい仕事、現在の経験をどう広げたいか |
| 5年後 | 一人で担当したい仕事、深めたい専門性、担いたい役割 |
| 10年後 | 長期的に大切にしたい仕事・役割・働き方の方向 |
3年後に管理薬剤師、5年後にエリアマネージャーという階段を作る必要はありません。
例えば5年後について、「幅広い処方に対応できる薬剤師として現場を続けたい」という回答でも、その人が本当に目指している方向なら成立します。
キャリアプランがまだ明確でない場合の答え方
転職時点で、5年後や10年後の目標まで明確に決まっていない人もいます。
その場合、存在しない目標を作る必要はありません。現時点の関心と、応募先でまず経験したいことを答えます。
現時点では、将来の役職まで一つに決めているわけではありません。これまで外来中心で経験してきたため、次は在宅も含めて患者さんを継続的に支援する仕事に関心があります。まずは実際の業務を経験し、その中で自分がより深めたい領域を見極めたいと考えています。
これなら、明確な役職は決まっていなくても、次の転職で何を経験したいのかは伝わります。
一方で、そもそも仕事で何を優先したいのか、自分がどの方向へ進みたいのか整理できていない場合は、面接回答を先に作るより自己分析をした方がよいでしょう。
薬剤師のキャリアの軸が見つからないときの自己分析4ステップで、仕事内容・働き方・収入・勤務地などの優先順位から整理できます。
管理職を目指していない場合も問題ない
薬剤師のキャリアプランというと、一般薬剤師から管理薬剤師、さらにエリアマネージャーや本部職へ進む話を想像するかもしれません。
しかし、管理職志望だけがキャリアプランではありません。
患者対応を続けたい、専門領域を深めたい、教育に関わりたい、家庭と両立しながら長く現場で働きたい、といった方向もあります。
採用側としても、すべての応募者が管理職を目指す必要はありません。重要なのは、応募先が期待する役割と本人の希望が大きくずれていないことです。
現時点では管理職よりも、患者さんへの服薬支援を継続して経験したいと考えています。まずは幅広い処方に対応できる力を身につけ、将来的には後輩から相談されたときに実務面で支えられる薬剤師を目指したいです。
このように、役職昇進ではなくても、経験の広げ方や役割の持ち方を話せます。
育児・介護などと両立したい場合の考え方
仕事と育児・介護などを両立したいという希望も、長期的な働き方を考えるうえで重要です。
ただし、面接で家族構成や将来の私生活を詳しく説明する必要はありません。仕事として必要な勤務条件へ整理できます。
厚生労働省の公正採用選考では、採用は本人の適性・能力に基づいて行うことを基本とし、家族構成や家族の職業、生活環境・家庭環境など、本人の適性・能力に関係のない事項を把握することは就職差別につながるおそれがあると示しています。
公的情報:求職者の皆様へ|厚生労働省 公正採用選考特設サイト
したがって、自分からキャリアプランを説明するときも、家族の詳細を話すより、長期的に働くために必要な条件を仕事の言葉で整理できます。
今後も薬剤師として現場経験を積み続けたいと考えています。そのため、長期的には勤務時間との両立も大切にしながら、服薬指導や後輩支援など、現在の経験を継続して広げたいです。
勤務可能時間や曜日など、求人との適合を判断するために必要な条件は別途確認します。
応募先に合わせることと、模範回答を作ることは違う
キャリアプラン回答では、応募先について調べることが重要です。しかし、会社のホームページに書かれている言葉を、そのまま自分の目標へ置き換えることではありません。
例えば応募先が在宅に力を入れていても、自分が在宅を希望していないなら「在宅を極めたい」と言う必要はありません。
先に自分がしたい仕事を整理し、その仕事が応募先で実現できるかを調べます。
会社に合わせた回答を作りすぎると、入社後に自分の希望と仕事内容のずれが残ります。面接は採用されるためだけでなく、双方が仕事の一致を確認する場でもあります。
回答例1|明確な目標がある場合
明確に経験したい仕事がある場合は、過去の経験と応募先をつなぎます。
これまで外来調剤と服薬指導を中心に経験し、患者さんが自宅へ戻った後の服薬状況まで継続して確認する重要性を感じるようになりました。今後は在宅業務も経験したいと考えています。貴社では在宅を担当する店舗があると確認しているため、まず外来での経験を活かしながら訪問業務を学びたいです。将来的には、外来と在宅の両方を経験した薬剤師として、患者さんの生活に合わせた服薬支援を続けたいと考えています。
ポイントは、在宅という流行のキーワードを入れたことではなく、自分の経験から関心が生まれ、応募先で経験できることを確認している点です。
回答例2|まだ方向を絞り切れていない場合
現時点では、将来の役職や専門分野まで一つに決めているわけではありません。これまで単科の処方を中心に経験してきたため、次の職場ではより幅広い処方と患者対応を経験したいと考えています。まず薬剤師として対応できる範囲を広げ、その中で自分がさらに深めたい領域を見つけたいです。
未確定であることを隠さず、それでも今回の転職で何を経験したいかは具体化しています。
回答例3|管理職ではなく現場を続けたい場合
これまで患者さんへの服薬指導に最もやりがいを感じてきました。今後も管理職になることだけを目標にするのではなく、幅広い処方に対応し、患者さんや後輩から相談されたときに根拠をもって説明できる薬剤師でありたいと考えています。貴社では複数の診療科の処方を扱う店舗があるため、まず実務経験を広げたいです。
管理職志望でないことを弱点として扱わず、現場でどのように経験を深めたいかを説明します。
回答例4|働き方との両立を重視する場合
今後も薬剤師として長く現場で働きたいと考えています。これまでの調剤・服薬指導経験を活かしながら、勤務時間との両立も大切にして継続的に経験を積みたいです。将来的には、新しく入った方への実務支援など、自分の経験を周囲へ還元できる役割にも関心があります。
働き方を重視することと、仕事への意欲がないことは同じではありません。長く働くために必要な条件と、仕事として続けたい経験を一緒に説明できます。
応募先の情報が足りないときは、断定せず確認事項を残す
キャリアプランを応募先へつなげたいと思っても、求人票や採用ページだけでは入社後の仕事が分からない場合があります。
その状態で「貴社なら必ず○○を経験できると確信しています」と答える必要はありません。
分かっていることと、面接で確認したいことを分けます。
採用ページで在宅にも取り組まれていることを拝見し、関心を持っています。入社後にどのような経験を積んだ方が在宅を担当されているのかは、今日の面接でも確認したいと考えています。まずは現在の外来経験を活かしながら、担当できる業務を広げたいです。
これなら企業研究をしていることは伝わりつつ、確認できていない事実を作っていません。
面接前に会社のすべてを理解することはできません。むしろ、分からない部分を自覚して質問できる方が、入社後のミスマッチ防止につながります。
現在の取り組みを聞かれたら、実際にしていることだけを答える
キャリアプランを話した後に、「その目標に向けて今していることはありますか」と聞かれる場合があります。
ここでも、面接用に資格勉強や勉強会参加を作る必要はありません。
実際にしていることがあれば、その事実を答えます。
- 現在の店舗で未経験業務に同行している
- 公的資料やガイドラインを確認している
- 社内研修へ参加している
- 求人を比較し、必要な経験を整理している
- 上司へ今後担当したい仕事を相談している
まだ具体的な行動を始めていない場合も、嘘を作らず「現在は転職先で必要になる経験を整理している段階です」と説明できます。
キャリアプランは、何か資格を取っている人だけが話せるものではありません。現在地と次の方向を自分で把握できていることの方が、回答を作るうえでは重要です。
一貫性とは、すべての回答を同じキーワードにそろえることではない
面接では一貫性が重要と言われますが、志望動機、転職理由、キャリアプランのすべてに同じ言葉を入れる必要はありません。
例えば、転職理由は通勤負担、志望動機は教育体制、キャリアプランは患者対応の経験を広げることでも成立します。
確認したいのは、それぞれを並べたときに本人の希望として理解できるかです。
| 回答 | 内容 |
|---|---|
| 転職理由 | 現在の長時間通勤を見直し、長く働ける環境へ変えたい |
| 志望動機 | 希望勤務地に加え、中途入社者の教育体制を確認できた |
| キャリアプラン | 外来経験を広げ、将来的には後輩支援にも関心がある |
内容は違いますが矛盾していません。
反対に、転職理由では管理業務から離れたいと話し、キャリアプランでは入社後すぐ管理薬剤師を目指すと答えれば、理由を確認されるでしょう。その場合も間違いと決めるのではなく、本人の意図を説明できるかが大切です。
深掘り質問に備えて確認しておくこと
キャリアプランを答えると、その後に理由を聞かれることがあります。
- なぜその仕事に関心を持ったのですか
- なぜ現在の職場では実現しにくいのですか
- なぜ当社を選んだのですか
- そのために今取り組んでいることはありますか
- 実際に働いて考えが変わった場合はどうしますか
すべてに立派な答えを用意する必要はありません。自分の経験から説明できる範囲を整理します。
例えば、在宅を経験したい理由を聞かれたとき、制度や将来性を語る必要はありません。現在の仕事で感じたことや、次に確認したい患者支援とのつながりを説明できます。
また、「今取り組んでいること」がなければ、存在しない勉強会参加や資格勉強を作らないでください。現在は求人を比較し、必要な業務を整理している段階だと正直に話すこともできます。
回答が長くなるときは、結論・根拠・応募先の順に絞る
キャリアプランを丁寧に準備すると、話したいことが増えすぎることがあります。過去の経験、転職理由、資格、応募先の特徴、将来像をすべて一度に話すと、結局何を目指しているのか伝わりにくくなります。
長くなりそうな場合は、次の3つまで絞ります。
- 結論:次の職場でまず何を経験したいか
- 根拠:なぜそう考えるようになったか
- 応募先:その経験が応募先とどうつながるか
将来の細かい話は、面接官から深掘りされたときに追加できます。
今後は在宅業務も経験したいと考えています。外来で患者さんと接する中で、来局時だけでは分からない生活上の課題にも関心を持つようになったためです。貴社では在宅に取り組む店舗があるため、まず現在の外来経験を活かしながら学びたいです。
この程度まで整理しておけば、その後に「将来はどこまで専門性を高めたいですか」と聞かれたときに続けられます。
面接で希望と会社の仕事が合わないと分かったら、無理に回答を合わせない
面接で話を聞く中で、自分が考えていたキャリアと、応募先で実際に経験できる仕事が違うと分かることもあります。
例えば在宅を希望して応募したものの、配属予定店舗では当面在宅を担当する予定がないと分かる場合があります。そのとき、採用されるために「在宅には特にこだわっていません」と急に話を変える必要はありません。
自分にとって在宅経験がどれほど重要なのかを考えます。必須条件なら、その求人との相性を見直す必要があります。将来的に経験できればよいのであれば、異動や担当変更の可能性を確認できます。
面接は、自分のキャリアプランを会社に合わせて修正するだけの場ではありません。会社側の仕事内容を知り、自分の希望も修正する必要があるか、それとも別の求人を選ぶかを判断する場でもあります。
キャリアプランを実現できる会社かは応募者側も確認する
キャリアプランは、面接官に答えて終わりではありません。
自分が在宅を経験したい、幅広い処方を経験したい、教育に関わりたいと考えていても、応募先で実際にその機会がなければ、入社後のずれが残ります。
面接の逆質問では、例えば次のように確認できます。
- 入社後はどのような業務から担当しますか
- 在宅業務を希望する場合、どのような流れで担当することがありますか
- 中途入社者が後輩教育や店舗運営に関わる例はありますか
- 異動希望やキャリア希望はどのように確認していますか
面接の最後に使える質問や、人員体制・研修・一人薬剤師などの確認項目は、薬剤師の面接で使える逆質問で詳しく整理しています。
キャリアプランで避けたい4つの作り方
評価されそうな役職を選ぶ
管理薬剤師やエリアマネージャーを目指すこと自体は問題ありません。しかし、本当は希望していないのに、評価されそうだからという理由だけで役職を入れると、入社後の希望とずれることがあります。
年代だけで模範回答を決める
20代だから成長、30代だから即戦力、40代だから管理職・教育という全国共通の回答ルールはありません。同じ年代でも経験・生活・応募先は違います。
応募先の言葉をそのまま借りる
採用ページに地域医療、在宅、かかりつけ等が書かれているからという理由だけで、それを自分の目標にする必要はありません。自分の経験から関心があるかを先に確認します。
将来を断言しすぎる
5年後の自分を正確に予測することはできません。現時点での方向を話し、実際の経験によって考えが変わる余地を残して構いません。
FAQ
- キャリアプランが思いつかなくても面接を受けて大丈夫ですか?
-
大丈夫です。将来の役職まで決まっていなくても、これまでの経験、今回変えたいこと、応募先でまず経験したいことを整理すれば回答できます。仕事で何を優先したいか自体が分からない場合は、先にキャリアの軸を整理してください。
- 3年後・5年後を具体的に決める必要はありますか?
-
役職や資格まで固定する必要はありません。短期では入社後に経験したい仕事、中期では自立して担当したい仕事、長期では大切にしたい役割や働き方など、時間軸に合わせて回答の粒度を変えられます。
- 管理薬剤師を目指さないと評価されにくいですか?
-
一律にはいえません。管理職を目指す人もいれば、患者対応、専門領域、教育、働き方との両立を重視する人もいます。重要なのは、応募先が期待する役割と自分の希望が大きくずれていないことです。
- 面接で答えたキャリアプランは入社後も守る必要がありますか?
-
面接時点の回答が将来を固定する契約になるわけではありません。実際の仕事を経験し、興味や生活状況が変わればキャリアの方向も変わります。面接では現時点の考えとして説明し、入社後も必要に応じて見直してください。
- 育児や介護との両立をキャリアプランで話してもよいですか?
-
長期的な働き方として必要な条件を整理することはできます。ただし、家族構成や家庭事情を必要以上に詳しく説明する必要はありません。勤務可能時間や希望する働き方など、仕事に必要な条件へ整理して伝えられます。
まとめ|キャリアプランは自分と応募先の接点を説明する
薬剤師の面接でキャリアプランを聞かれても、面接官を唸らせる回答や、年収を上げるためのキーワードを探す必要はありません。
これまで何を経験してきたか、今回何を変えたいのか、応募先で何を経験したいのか、その先に現時点ではどの方向を考えているのか。この4つをつなげてください。
明確な将来像がなくても、現時点の仮説で構いません。管理職を目指さなくても、働き方との両立を重視しても、それ自体でキャリアプランにならないわけではありません。
採用側にいた経験からも、立派な将来像を言えるかより、本人が希望する仕事と会社が提供できる仕事が合っているかを確認できる方が重要だと考えています。
キャリアプランは、採用されるために作る未来ではなく、自分が次の職場で何を経験したいのかを相手と確認するための言葉です。
