【元人事部長が解説】薬剤師の面接で「今後のキャリアプラン」を聞かれた時のベストな答え方

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2025年12月時点の情報です

目次

なぜ面接官は「キャリアプラン」を聞いてくるのか

「今後のキャリアプランを教えてください」

この質問を投げかけられた瞬間、頭が真っ白になった経験はありませんか。

私は調剤薬局チェーンで採用担当6年(うち人事部長4年)の経験を持っています。その間、多くの薬剤師の面接を担当してきました。そして断言できることがあります。

この質問への回答次第で、採用の合否だけでなく、提示される年収が50万円単位で変わることも珍しくありません。なぜなら、キャリアプランは「あなたが会社にいくら利益をもたらすか」の試算根拠になるからです。

実は、キャリアプランの質問は単なる将来像を聞いているわけではありません。面接官は、あなたの仕事に対する姿勢、自己分析力、そして何より「この会社で長く活躍してくれるか」を見極めようとしています。

「3年後には管理薬剤師を目指したいです」

一見、立派な回答に聞こえます。しかし、この回答だけでは面接官の心には響きません。なぜなら、具体性と根拠が欠けているからです。

本記事では、私が人事部長として見てきた「採用される回答」と「不採用になる回答」の決定的な違いを解説します。薬剤師としてのキャリアを真剣に考えているあなたに、面接で確実に評価される答え方をお伝えします。


キャリアプランを聞く面接官の「3つの意図」を理解する

面接官がキャリアプランを質問する背景には、明確な意図があります。この意図を理解せずに回答すると、的外れな印象を与えてしまいます。

意図1:入社後のミスマッチを防ぎたい

私が人事部長だった頃、入社半年で退職した薬剤師がいました。理由を聞くと「思っていたキャリアが描けなかった」とのこと。採用手法にも寄りますが、薬剤師1人の採用には最低でも数十万円、多いと200万円前後の紹介手数料を支払っています。半年で辞められると、この費用と半年分の給与と採用に要した労力の全てを「ドブに捨てた」ことになるのです。

だからこそ面接官は、あなたのキャリアビジョンが自社で実現可能かを確認したいのです。応募者の希望と会社の提供できる機会にずれがないかを見極める。これが質問の根底にあります。

意図2:成長意欲と計画性を確認したい

「なんとなく働いていたい」という薬剤師と「3年後には在宅医療の分野で専門性を高めたい」という薬剤師。どちらを採用したいかは明白です。

具体的な目標を持ち、そこに向かって行動できる人材は、入社後も主体的に成長してくれます。面接官は、あなたが自分のキャリアを真剣に考えているかを見ています。

意図3:会社への貢献度を測りたい

キャリアプランは自分の成長だけを語る場ではありません。「あなたが成長することで、会社にどんな価値をもたらすのか」という視点が求められます。

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面接で「落とされる」キャリアプランの回答例

私が面接で実際に聞いた「これではダメだ」と感じた回答パターンを紹介します。あなたの準備している回答が該当していないか、確認してみてください。

NG例1:抽象的で具体性がない

「スキルアップして、いい薬剤師になりたいです」

面接でこう言われた瞬間、私は心の中でペンを置きました。「いい薬剤師」とはあまりに便利な言葉です。しかし、採用側が知りたいのは「あなたが稼げる薬剤師になるための計画」です。具体性のない「いい人」は、厳しい医療現場では「使いにくい人」と判断されてしまうのです。

NG例2:応募先で実現できないプランを語る

「将来的にはMRとして製薬会社で働きたいと思っています」

調剤薬局の面接でこの回答をした方がいました。正直なのは良いことですが、面接官は「うちの会社は踏み台なのか」と感じてしまいます。

NG例3:志望動機との一貫性がない

志望動機では「地域医療に貢献したい」と言いながら、キャリアプランでは「早く本社の管理部門に異動したい」と語る。このような矛盾は、面接官に不信感を与えます。

NG例4:プライベートな目標だけを語る

「5年後には結婚して、育児と両立できる働き方をしたいです」

ライフプランとキャリアプランは別物です。面接で聞かれているのは仕事における目標であり、私生活の計画ではありません。

評価項目❌ そのままでは落ちるNG回答⭕️ 採用したくなるOK変換例
具体性「スキルアップして良い薬剤師になりたい」
(定義が曖昧)
「3年後には在宅医療の認定薬剤師を取得し、地域医療の要となりたい」
(目標と期限が明確)
実現性「将来は製薬会社のMRになりたい」
(自社で叶わない)
「御社の地域連携の実績に惹かれました。ここで多職種連携のノウハウを深めたい」
(自社の強みと合致)
貢献度「育児と両立して働きたい」
(自分本位な権利主張)
「限られた時間でも効率的に服薬指導を行い、チームの負担を減らせる働き方を確立したい」
(組織への配慮)
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評価される回答の「3つの構成要素」

では、どのような回答が面接官の心に響くのか。私の経験から、評価される回答には共通する構成要素があります。

要素1:具体的な時間軸を設定する

「3年後には」「5年後には」という時間軸を明確にすることで、あなたのキャリアプランに現実味が生まれます。漠然と「将来は」と言うのではなく、具体的な期間を示してください。

要素2:応募先で実現可能な内容にする

事前に企業研究を行い、その会社でどんなキャリアパスがあるのかを把握しておくことが不可欠です。「御社では在宅医療に力を入れていると伺いました。3年後には在宅患者さんへの服薬指導で御社に貢献したいと考えています」というように、会社の方針と自分のプランを結びつけてください。

要素3:会社への貢献を語る

自分の成長だけでなく、その成長が会社にどう還元されるのかを伝えます。「スキルを高めることで、より多くの患者さんの健康に貢献したい」「後輩の育成にも携わり、組織全体の底上げに寄与したい」という視点が評価されます。


【実践編】薬剤師のキャリアプラン回答例文

ここからは、実際の面接で使える回答例を職場別にご紹介します。あなたの状況に近いものを参考にしてください。

志望業態1〜3年目のキーワード(基礎)3〜5年目のキーワード(応用・貢献)人事部長が好む「キラーワード」
調剤薬局・正確な調剤スキル
・処方解析能力
・患者対応の基礎
かかりつけ薬剤師
在宅医療(訪問)
・管理薬剤師(店舗運営)
「地域包括ケアシステムの一員として」
「店舗の収益性も意識した管理」
病院・病棟業務の習得
・当直対応
・チーム医療への参加
専門・認定薬剤師
・がん薬物療法
・後輩指導・教育
「高度医療を支えるチームの一員」
「資格取得を患者利益に還元」
ドラッグストア・OTC医薬品知識
・セルフメディケーション
・店舗計数管理
エリアマネージャー
・健康イベント企画
・登録販売者指導
「未病・予防からの地域貢献」
「物販を含めたトータルヘルスケア」

調剤薬局志望の場合

「まず入社後3年間は、調剤業務の基本を確実に習得し、幅広い処方に対応できる力を身につけたいと考えています。御社では在宅医療にも積極的に取り組まれていると伺いました。5年後には在宅患者さんへの訪問薬剤管理指導にも携わり、地域包括ケアの一員として貢献できる薬剤師を目指します。

私がこのようなキャリアを描いている理由は、前職で高齢患者さんの服薬管理の難しさを痛感したからです。薬を届けるだけでなく、生活に寄り添った服薬支援ができる薬剤師になりたい。御社であれば、その目標が実現できると確信しています」

この回答が評価される理由は、時間軸が明確であること、応募先の特徴を理解していること、そして自分の経験に基づいた具体的な動機が含まれていることです。

病院志望の場合

「入社後まず2〜3年は病棟業務の基礎を固め、チーム医療の一員として医師や看護師と連携できる力を養いたいと考えています。その後、5年を目処にがん領域の専門知識を深め、がん薬物療法認定薬剤師の取得を目指します。

御社ではがん専門薬剤師の資格取得支援制度があると伺いました。この環境を活かして専門性を高め、患者さんへのより質の高い薬物療法の提供に貢献したいと考えています」

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ドラッグストア志望の場合

「まずは調剤部門で経験を積みながら、OTC医薬品やサプリメントの知識も深めていきたいです。3年後には、処方薬だけでなく健康相談全般に対応できるかかりつけ薬剤師を目指します。

御社は地域密着型の店舗展開をされており、セルフメディケーション支援にも力を入れていると存じています。私は前職でOTC販売に携わった経験がありますので、その経験を活かしながら地域住民の健康増進に貢献したいと考えています」


年代別:キャリアプランの伝え方のポイント

年代によって、面接官が期待するキャリアプランは異なります。あなたの年代に合った伝え方を意識してください。

20代の薬剤師へ

20代は経験よりもポテンシャルを見られています。「新しいことを積極的に学びたい」「様々な経験を通じて成長したい」という姿勢をアピールしてください。

具体的には「入社後は先輩方から多くのことを吸収し、3年後には一人で服薬指導を完結できる力を身につけたいです。その上で、在宅医療や健康相談など新しい領域にも挑戦していきたいと考えています」といった回答が効果的です。

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30代の薬剤師へ

30代は即戦力として期待されます。これまでの経験で培ったスキルと、今後どのように会社に貢献できるかを具体的に伝えてください。

「これまで5年間、調剤薬局で服薬指導や在宅訪問に携わってきました。御社では、この経験を活かしながら、3年後には管理薬剤師として店舗運営にも携わりたいと考えています。後輩の育成にも力を入れ、組織全体のレベルアップに貢献できればと思います」

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40代以上の薬剤師へ

豊富な経験をどう活かすかがポイントです。また、年下の上司や同僚と協調して働ける柔軟性もアピールしてください。

「これまで15年以上、様々な現場で経験を積んできました。御社では、その経験を後進の育成に活かしたいと考えています。また、新しい環境で学ぶことも多いと思いますので、謙虚な姿勢で業務に取り組みます。患者さんへの丁寧な対応と、チームへの貢献を大切にしていきたいです」

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面接官に「この人と働きたい」と思わせる補足テクニック

キャリアプランの回答をさらに印象的にするテクニックをお伝えします。

テクニック1:現在の取り組みを具体的に語る

「そのキャリアプランに向けて、今何をしているか」を伝えると説得力が増します。

「在宅医療に携わりたいという目標に向けて、現在は在宅療養支援認定薬剤師の研修に参加しています。また、月1回の多職種連携の勉強会にも自主的に参加し、ケアマネージャーや訪問看護師との連携について学んでいます」

このように現在進行形の努力を伝えることで、あなたのキャリアプランが絵空事ではないことを証明できます。

テクニック2:応募先の強みと自分のプランを結びつける

「御社だからこそ実現できる」という視点を入れてください。企業研究の成果を見せることで、志望度の高さもアピールできます。

「御社は地域支援体制加算を取得されており、かかりつけ薬剤師としての活動に力を入れていると伺いました。私が目指す『患者さんの生活に寄り添う薬剤師像』は、まさに御社の理念と合致していると感じています」

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テクニック3:質問されたら深掘りに備える

キャリアプランを話した後、面接官から「なぜそう思うのですか」「具体的にはどのようなことをしたいですか」と深掘りされることがあります。

これに対応するために、回答の背景にある経験や思いを整理しておいてください。「前職で〇〇という経験をして、こう感じた」「患者さんから〇〇と言われて、この道を目指そうと思った」というエピソードを用意しておくと安心です。

評価軸5点(即採用レベル)3点(合格ライン)1点(不採用リスク)
一貫性過去の退職理由・志望動機・未来のプランが一本の線で繋がっている少し飛躍はあるが、説明を聞けば納得できる。志望動機とやりたいことが矛盾している(例:地域医療志望なのに本社勤務希望)。
準備度会社のHPや特徴を深く調べ、「御社だからこそ」の理由が明確。HPは見てきているが、他社でも通じる一般的な回答。「勉強させていただきます」など、受け身の姿勢が目立つ。
本気度目標に向けて「現在すでに行動していること」(勉強会など)を語れる。目標はあるが、具体的な行動はまだ起こしていない。「なれたらいいな」という願望レベルで、計画性がない。

薬剤師の将来性とキャリアプランの関係

キャリアプランを考える上で、薬剤師を取り巻く環境の変化も理解しておく必要があります。

厚生労働省の需給推計によると、将来的には薬剤師の供給が需要を上回る可能性が指摘されています。しかし、これは「資格を持っているだけの薬剤師」の話です。

専門性を持ち、対人業務に強い薬剤師の需要は今後も高まります。在宅医療、かかりつけ薬剤師、専門薬剤師など、付加価値を持つ人材は引く手あまたです。

だからこそ、面接で「どんな薬剤師になりたいか」を明確に語れることが重要なのです。自分のキャリアを主体的に考えている薬剤師は、変化の時代でも求められ続けます。

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待遇面の確認はエージェント経由が鉄則

ここで一つ重要な点をお伝えします。

キャリアプランの質問に上手く答えられても、待遇面の交渉で失敗する薬剤師が少なくありません。「キャリアアップしたいのですが、年収はいくらですか」「昇給制度はどうなっていますか」と直接聞くのは角が立ちます。

実は、このような確認こそ転職エージェントを介すべきなのです。

エージェント経由で確認すれば、あなたは「エージェントが勝手に聞いていた」というスタンスを取れます。企業側も「エージェントの質問だから」と受け止めやすい。私が人事部長だった頃も、エージェントからの問い合わせには丁寧に回答していました。

なぜ私が人事部長時代、この3社の電話は優先的に取っていたのか?採用裏話を含む、本当に信頼できるエージェントの選び方についてはこちらの記事をご覧ください。

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薬剤師のキャリアプランに関するよくある質問

読者の皆様からよくいただく相談について、元人事部長の視点でお答えします。

Q1. 正直、明確なキャリアプランが思いつきません。嘘をついてもいいですか?

A. 嘘はNGですが、「仮説」で構いません。
全くの嘘をつくと、深掘りされた時にボロが出ますし、ミスマッチの原因になります。「現時点では〇〇に興味があり、御社の環境で働きながら適性を見極めたい」という正直さと前向きさをセットにするのが正解です。もしどうしても思いつかない場合は、転職エージェントに「他の人はどんなプランを話していますか?」と相談して、自分の考えに近いものをカスタマイズするのが一番の近道です。

Q2. 「管理職になりたい」と言うと、残業が増えそうで怖いです。

A. 「視座の高さ」をアピールする材料として使いましょう。
面接で管理職志望と伝えたからといって、すぐに激務になるわけではありません。人事が評価したいのは「自分の業務だけでなく、店舗全体のことを考えようとする姿勢」です。「将来的にはマネジメントにも携わりたい」と伝えることで、単なる作業員ではなく、経営視点を持てる人材だと評価され、年収交渉でも有利になります。

Q3. 面接で言ったキャリアプランは、入社後に絶対守らないといけませんか?

A. いいえ、変わっても全く問題ありません。
実際に働き始めれば、新しい興味やライフステージの変化があるのは当然です。面接官が見ているのは「約束を守れるか」ではなく、「自分の未来を真剣に考え、論理的に説明できる能力があるか」です。入社後は、その時々の状況に合わせて上司と相談しながらキャリアを修正していけば大丈夫です。

キャリアプランは「自分を売り込む最高の武器」になる

最後に、私からあなたへのメッセージです。

面接でキャリアプランを聞かれたとき、それは「あなたという人材を売り込む最高のチャンス」です。

今の環境で悩み、転職を決意したあなたの勇気を私は知っています。「このままでいいのか」と葛藤しながらも、一歩を踏み出そうとしている。その決断は正しい。

あなたの市場価値は、あなたが思っているよりずっと高いのです。

キャリアプランを明確に語れる薬剤師は、どの企業からも求められます。この記事で解説した内容を参考に、自分だけの回答を作り上げてください。

面接は怖いものではありません。あなたの価値を正しく伝える場です。しっかり準備をして、自信を持って臨んでください。

あなたの転職成功を、心から応援しています。

⚠️ 12月は「好条件求人」の争奪戦です

正直にお伝えします。12月10日のボーナス支給後は、一年で最も転職希望者が増える人材争奪戦のピークです。 完全週休二日制かつ年収650万以上の求人、本当に残業のない求人は、すぐに埋まってしまう恐れがあります。残り物で妥協しないよう、年内に「求人の枠(席)」だけは確保してください。

ただし、焦って変なエージェントを選ばないでください。

私は人事責任者として、大手を中心に20社以上の紹介会社と渡り合ってきました。その中で、「この担当者は信用できる」「求職者の利益を第一に考えている」と私が裏側から認定できたのは、わずか数社しかありません。

彼らは、私が求人者として「担当者の固定化」などの厳しい要望を出しても誠実に対応し、何より薬局側にとって都合の悪い情報(実際の残業時間や離職率の高さ)まで、求職者に包み隠さず伝えていました。

あなたの市場価値を正当に評価してくれる職場を見抜くために、私が人事の裏側から見て「本物だ」と確信したエージェントとその理由を記事にしました。転職に失敗したくない方はぜひご覧ください。

あなたの薬剤師としてのキャリアが、より良い方向に進むことを心から願っています。

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この記事を書いた人

調剤薬局チェーン元人事部長・薬剤師・中小企業診断士。
約4年間、人事責任者として薬剤師の採用・評価制度設計に従事。大手を中心に20社以上の紹介会社と折衝し、採用の舞台裏から「紹介会社の実力差」を熟知する。現在は経営コンサルタントとして、調剤薬局の採用戦略や人事考課制度の設計支援を行う一方、薬剤師個人のキャリア支援も行っている。採用側と求職側、双方の視点を持つ「情報の非対称性を解消する」解説に定評がある。

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