- 親の介護が始まったとき、退職を決める前に何から整理すればよいか
- 介護休業・介護休暇・勤務時間を調整する制度をどう使い分けるか
- 薬局・病院勤務で、遅番・土日勤務・応援勤務・一人薬剤師・通勤をどう考えるか
- 今の職場に残る、異動する、外の求人を見る、退職するのどこまで進むべきか
- 転職する場合、親の病歴ではなくどの勤務条件を比べればよいか
親が入院した。認知機能が低下した。一人暮らしを続けることが難しくなった。
こうした変化が突然起きると、仕事を続けられるのか分からず、退職まで考えることがあります。
ただ、親の介護が始まったからといって、すぐに仕事を辞める必要があるとは限りません。一方で、制度を使えば必ず仕事と介護を両立できるわけでもありません。
薬剤師の場合は、介護休業制度の有無だけでは判断しにくいところがあります。
調剤薬局では早番・遅番、土日勤務、他店舗への応援勤務、一人薬剤師になる時間帯があります。病院では夜勤や当直がある職場もあります。さらに、親の自宅と勤務先の両方へ移動する必要があれば、通勤そのものが大きな負担になることもあります。
退職するか、何としても働き続けるかの二択で考える必要はありません。
まず介護を家族だけで抱え込まない体制を考え、次に今の職場で変えられる勤務条件を整理します。それでも両立が難しい場合に、異動や転職、退職まで選択肢を広げていきます。
私は調剤薬局チェーンで薬剤師採用、人員配置、人事労務に携わり、そのうち約4年間は人事部長を担当しました。家族の介護を理由に、勤務時間やシフト、勤務地、休業について相談を受けることもありました。
勤務調整を考える際に必要だったのは、親の病名を細かく聞くことではありません。
- どの曜日・時間帯の勤務が難しいのか
- いつ頃まで調整が必要になりそうか
- 遅番や応援勤務を減らせば働き続けられるのか
- 勤務地を変えれば通勤負担を減らせるのか
といった、本人の勤務に直接関係する情報の方が重要でした。
この記事でも、法定制度と、会社ごとに異なる勤務上の調整を分けて説明します。
※本記事は2026年9月8日時点の厚生労働省・日本年金機構等の公表情報をもとに整理しています。実際に利用できる制度や手続は、雇用契約、労使協定、就業規則、介護の状況等によって異なります。必要に応じて勤務先、ハローワーク、都道府県労働局等へ相談してください。
結論|退職を決める前に6つの順番で整理する
親の介護が仕事へ影響し始めたら、次の順番で整理すると考えやすくなります。
- 親の状態と緊急度を把握する
入院直後なのか、通院の付き添いが中心なのか、在宅で継続的な支援が必要なのかを整理します。 - 地域の介護相談・支援につなぐ
市区町村や地域包括支援センター、ケアマネジャー等へ相談し、家族だけで抱え込まない体制を検討します。 - 自分の勤務条件を書き出す
早番・遅番、土日、夜勤、応援勤務、一人薬剤師、通勤時間など、介護とぶつかる条件を見つけます。 - 勤務先で使える制度と調整できる条件を調べる
介護休業、介護休暇、短時間勤務等、残業や深夜勤務の制限、会社独自制度などを見ます。 - 勤務調整後も続けられる見通しがあるか考える
介護サービスや家族の協力も含めて、日常の勤務が回るかを考えます。 - 難しければ異動・転職・退職まで選択肢を広げる
辞めること自体を避けるのではなく、自分の健康と家族の生活まで含めて判断します。
厚生労働省も、介護休業を本人が長期間介護し続けるためだけの期間ではなく、介護サービスの手配や家族の役割分担など、仕事と介護を両立する体制を整える期間として活用する考え方を示しています。
薬剤師は介護制度だけでなくシフト・勤務地・応援体制を見る
薬剤師が仕事と介護を両立できるかは、制度の数だけでは決まりません。
実際の勤務表に落としたときに無理がないかを見ることが重要です。
| 確認項目 | 見ておきたい内容 |
|---|---|
| 始業・終業 | 早番・遅番、開局前準備、閉局後業務を含む実際の時間 |
| 土日・祝日 | 勤務頻度、固定休を相談できるか |
| 夜勤・当直 | 病院等での夜間勤務の有無と頻度 |
| 勤務地 | 現在の配属先だけでなく、異動する可能性がある地域 |
| 応援勤務 | 他店舗への応援の有無、頻度、移動範囲 |
| 一人薬剤師 | 急な早退・欠勤時に誰が交代するのか |
| 通勤 | 自宅・勤務先・親の居住地を移動する時間 |
| 急な呼び出し | 早退や当日欠勤が必要になった場合の連絡・代替体制 |
同じ介護休業制度がある会社でも、固定時間・固定勤務地の職場と、遅番や他店舗応援が多い職場では、両立しやすさが変わります。
制度があるかではなく、自分が必要な時間を確保できる働き方かを見ることが大切です。
シフトを相談するときの考え方は、薬剤師のシフトを相談するときの整理方法で詳しくまとめています。
通勤負担まで比べたい場合は、薬剤師の通勤時間はどこまで許容?年間時間の考え方と職場選びも参考にしてください。
今の職場で続けられるかを見る6項目
介護制度を調べたら、現在の働き方を次の6項目に分けて考えます。
| 判断項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 勤務時間 | 介護に必要な時間と早番・遅番・残業等が重ならないか |
| 勤務地 | 通勤、異動、応援勤務を含めて無理なく続けられるか |
| 休暇・休業 | 介護休業・介護休暇・年休を必要な場面で使えるか |
| 勤務調整 | 短時間勤務等や残業・深夜業の制限で必要な時間を作れるか |
| 職場体制 | 急な休み・早退があったときに応援や交代が可能か |
| 介護体制 | 自分が勤務中でも家族や介護サービスで支援を続けられるか |
この6項目を整えても負担が大きい場合は、現在の職場だけにこだわらず、異動や他社の勤務条件も比べてみます。
介護休業・介護休暇・勤務時間を調整する制度の違い
仕事と介護の両立に使える制度は、介護休業だけではありません。
困っている場面によって役割が違います。
| 制度 | 主な使い方 |
|---|---|
| 介護休業 | まとまった期間を休み、介護体制を整える |
| 介護休暇 | 通院、手続き、ケアマネジャーとの打合せなどで一時的に休む |
| 短時間勤務等の措置 | 勤務時間を変えながら仕事を続ける |
| 所定外労働の制限 | 所定労働時間を超える残業を原則なくす |
| 時間外労働の制限 | 法定時間外労働を一定範囲までに抑える |
| 深夜業の制限 | 午後10時から午前5時までの勤務を制限する |
| テレワーク等 | 勤務先に制度があり、対象業務で利用できる場合に検討する |
一つの制度だけで対応する必要はありません。
例えば、介護休業で介護体制を整え、復職後は短時間勤務等や残業の制限を利用するといった組み合わせも考えられます。
要介護状態とは|介護保険の要介護認定とは別に考える
育児・介護休業法でいう要介護状態と、介護保険制度の要介護認定は同じものではありません。
法上は、負傷、疾病または身体上・精神上の障害によって、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態が基準になります。
そのため、要介護認定をまだ申請していない、認定結果が出ていないという理由だけで、介護休業等の対象にならないとは限りません。
勤務先から対象家族の状態を確認する書類を求められる場合があります。どの書類が必要かは勤務先へ尋ねてください。
介護休業|対象家族1人につき通算93日・3回まで
介護休業は、要介護状態にある対象家族を介護するために、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できる制度です。
対象家族には、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母等が含まれます。
希望する日から取得する場合は、原則として休業開始予定日の2週間前までに書面等で事業主へ申し出ます。
親が急に倒れた場合など、事前に予定できないこともあります。その場合も、まず人事・労務担当者へ早めに相談し、社内の手続を把握しておくと動きやすくなります。
93日間ずっと自分で介護するための制度ではない
介護休業を、本人が93日間付きっきりで介護する期間と考える必要はありません。
むしろ休業中に、復職後も介護が回る仕組みを整えておくことが大切です。
- 地域包括支援センター等へ相談する
- ケアマネジャー等へつなぐ
- 利用する介護サービスを決める
- 家族の役割分担を見直す
- 復職後の勤務時間や通院付き添いの方法を考える
パート・有期雇用でも対象になる場合がある
正社員でなければ介護休業を取得できないわけではありません。
パート・アルバイト等の有期雇用労働者も対象になる場合があります。
有期雇用では契約終了の見込みを確認します。また、勤務先が労使協定を結んでいる場合には、継続雇用1年未満、申出日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな場合、週所定労働日数が2日以下の場合などに対象外となることがあります。
雇用形態の名称だけでは決まらないため、自分の契約内容と勤務先の労使協定を見てください。
介護休業給付金|原則67%だが手取り8割とは限らない
雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす場合は、介護休業中に介護休業給付金を受けられます。
給付額は原則として、休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%を基礎に計算します。
ただし、休業中に会社から賃金が支払われる場合や、休業中に働いた日数などによって取扱いが変わります。
67%という数字だけを見て、実際の手取り額を決めない方が安全です。
育児休業の社会保険料免除とは分けて考える
育児休業には健康保険・厚生年金保険料の免除制度があります。
しかし、その取扱いを介護休業へそのまま当てはめて、給付67%だから手取りはおよそ8割になると計算するのは適切ではありません。
介護休業中の給与、健康保険・厚生年金保険料、住民税、賞与や手当の扱いは勤務先の給与担当等へ尋ねておきましょう。
最初から退職する予定なら介護休業給付の対象にならない
介護休業給付は、介護休業が終わった後に職場へ戻ることを前提とした給付です。
そのため、介護休業へ入る時点ですでに退職する予定であれば、介護休業給付の対象になりません。
一時的に休業して復職を目指すのか、すでに退職する意思が固まっているのかは分けて考えてください。
介護休暇|年5日・対象家族2人以上なら10日
介護休業とは別に、通院付き添いや手続きなどで短時間仕事を離れたい場合に使える介護休暇があります。
- 対象家族が1人なら1年度に5日
- 対象家族が2人以上なら1年度に10日
- 1日単位だけでなく時間単位でも取得できる
通院の付き添い、介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの打合せなどにも利用できます。
介護休暇中を有給とするか無給とするかは、勤務先の規定によります。
2025年4月からは、労使協定によって継続雇用6か月未満の労働者を介護休暇の対象外とする仕組みが廃止されました。一方で、週所定労働日数が2日以下の労働者は、労使協定によって対象外になる場合があります。
年次有給休暇とは別の制度
年次有給休暇と介護休暇は別制度です。
介護休暇が無給の会社であれば、年休を使った方がその日の収入を維持できる場合もあります。
今後の介護予定、年休の残日数、介護休暇の賃金扱いを見ながら使い分けます。
年休の申請や時季変更権については、薬剤師は有給を取れない?申請・時季変更権・年5日義務と対処法で詳しく整理しています。
短時間勤務・フレックス・時差出勤|勤務先がどの制度を採用しているかを見る
介護のための短時間勤務等について、すべての会社が短時間勤務・フレックス・時差出勤の全部を用意しているわけではありません。
事業主は、次のうちいずれか1つ以上の制度を設ける必要があります。
- 短時間勤務制度
- フレックスタイム制度
- 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
- 介護サービス費用の助成等
対象家族1人につき、利用開始の日から連続する3年以上の期間で2回以上利用できる制度にする必要があります。
そのため、法律に短時間勤務制度があるから毎日17時に帰れる、フレックス勤務に変えられる、と考えるのは早計です。
自分の勤務先が実際にどの制度を採用しているのかを就業規則や人事担当者から把握しておく必要があります。
残業や夜間勤務が難しいときに使える制度
所定外労働の制限|所定時間を超える残業を原則なくす
一定の要件を満たす労働者が介護のために請求した場合、事業主は原則として所定労働時間を超えて働かせることができません。
勤務先でいう定時を超える勤務を避けたい場合に関係する制度です。
時間外労働の制限|月24時間・年150時間まで
別に、法定時間外労働の上限を制限する制度もあります。
一定の要件を満たして請求した場合、事業主は原則として1か月24時間・1年150時間を超える時間外労働をさせることができません。
残業を原則なくしたい場合と、長時間残業を一定範囲に抑えたい場合では使う制度が違います。
深夜業の制限|午後10時から午前5時まで
病院勤務や夜間営業店舗などで深夜勤務がある場合は、深夜業の制限も関係します。
一定の要件を満たす労働者が請求した場合、事業主は原則として午後10時から午前5時までの時間帯に働かせることができません。
対象家族を介護できる同居家族の状況など、対象外になる要件もあります。夜勤がある人全員が自動的に免除される制度ではありません。
2025年4月から会社側の介護離職防止策も強化された
2025年4月1日から、介護離職を防ぐために事業主へ求められる対応が増えています。
介護に直面したことを伝えると個別周知・意向確認が行われる
労働者が介護に直面したことを申し出た場合、事業主は介護休業・介護両立支援制度等、申出先、介護休業給付金などを個別に周知し、制度を利用する意向があるか確認する必要があります。
労働者がすべての制度を自分で調べ終えてから、会社へ個別にお願いしなければ利用できないわけではありません。
制度を使いやすくするための職場環境整備
事業主には、研修、相談窓口等の整備、自社での利用事例の収集・提供、利用促進方針の周知など、介護休業・両立支援制度を利用しやすくするための取組も求められています。
40歳前後で介護制度の情報提供
介護に直面する前に制度を知っておけるよう、40歳前後の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の情報を提供することも事業主の義務になりました。
40歳前後で勤務先から介護制度の資料が届いても、会社が個人の家庭事情を把握しているという意味ではありません。
介護中でもテレワークが当然に認められるわけではない
2025年4月から、介護する労働者がテレワーク等を選べるよう措置を講じることは、事業主の努力義務となっています。
ただし、介護中の労働者全員に在宅勤務を認める義務が生じたわけではありません。
薬剤師は、調剤、監査、患者対応など、薬局や医療機関内で行う業務が多い職種です。
自分の勤務先に制度があるか、薬剤師のどの業務が対象になるのかを個別に見ていく必要があります。
職場へは親の病歴より、自分に必要な勤務調整を伝える
介護について勤務先へ相談するとき、親の診断名や家庭事情を細部まで説明しなければならないとは限りません。
勤務時間や人員配置を考えるうえでは、本人の仕事にどのような影響が出るのかが重要です。
| 整理する項目 | 例 |
|---|---|
| 必要な期間 | 当面2週間、要介護認定の結果が出るまで等 |
| 勤務できない時間 | 朝の送り出し、週1回の通院等 |
| 使いたい制度 | 介護休業、介護休暇、短時間勤務等 |
| 変えたい勤務条件 | 遅番、残業、応援勤務、勤務地等 |
| 現在勤務できる範囲 | 週5日は勤務できるが、水曜日のみ17時まで等 |
介護の状況は変化します。最初の相談時点で半年後まで正確な予定を出す必要はありません。
現時点で分かっていることと、いつ頃もう一度勤務条件を相談するかを共有する方法があります。
制度利用を理由とする解雇・雇止め・降格等は禁止されている
介護休業等を申し出たことや利用したこと等を理由として、解雇、雇止め、降格などの不利益な取扱いをすることは禁止されています。
介護休業等に関するハラスメントを防ぐ措置を講じることも事業主の義務です。
制度を利用させてもらえない、制度利用後に不利益な扱いを受けたなどの問題があれば、勤務先の相談窓口に加え、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ相談できます。
介護を自分だけで抱えない|地域包括支援センター等へ相談する
勤務先の制度だけ整えても、介護そのものを一人で抱え続ければ、仕事との両立は難しくなります。
親が住んでいる市区町村や地域包括支援センター、ケアマネジャー等へ相談し、利用できる介護サービスや今後の見通しを聞いてみてください。
介護休業中も、自分がすべてを担うのではなく、職場へ戻った後も続けられる介護体制を作れるかという視点が重要です。
現職を続ける・異動する・外の求人を見る・退職するを比べる
介護制度と現在の勤務条件が分かったら、次の選択肢を並べて考えます。
| 選択肢 | 考えやすい状態 |
|---|---|
| 現職を続ける | 制度、勤務調整、介護サービスを組み合わせれば両立できる |
| 異動する | 勤務時間や勤務地の問題が店舗・部署変更で改善できる |
| 他社求人を比べる | 現職では必要な条件を作れないが、働き続けること自体はできる |
| 退職する | 勤務先を変えても両立が難しく、本人の健康や生活を守る必要がある |
転職するかどうか自体で迷っている場合は、薬剤師のキャリアの軸を整理する方法で、現職に残る場合も含めて条件を整理できます。
転職するなら介護に理解がある会社より、実際の勤務条件を見る
現職で両立が難しく転職を考える場合も、介護に理解のある職場という表現だけでは判断できません。
自分が働き続けるために必要な条件へ分解して比較します。
- 最も早い始業時刻と遅い終業時刻
- 恒常的な残業の有無
- 土日・夜間勤務の頻度
- 配属予定店舗
- 異動・他店舗応援の範囲
- 急な欠勤・早退時の代替体制
- 介護休暇が有給か無給か
- 短時間勤務等で会社が採用している制度
- 法定制度を上回る独自制度の有無
フルタイムより短い勤務時間の正社員も選択肢に入れる場合は、薬剤師は時短正社員で転職できる?週30・32・35時間求人の見分け方も参考にしてください。
求人の探し方そのものは、薬剤師求人の探し方|求人サイト・ハローワーク・直接応募・転職エージェントを比較で整理しています。
転職エージェントを使う場合も、介護に理解がありますかと聞くだけではなく、勤務時間、勤務地、異動、応援体制など、必要な条件を具体的に求人企業へ聞いてもらう方が実用的です。
具体的な使い方は、薬剤師転職エージェントを求人条件の確認に使う方法で解説しています。
転職面接で親の介護をどこまで伝えるか
転職時に、親の病名や要介護度、家庭事情を必要以上に詳しく伝える必要はありません。
厚生労働省は公正な採用選考について、家族の職業、健康、病歴、収入や家庭環境など、本人の適性・能力に関係のない事項を把握しないよう事業主へ求めています。
応募者として整理しておきたいのは、自分がどの条件なら働けるのかです。
平日は8時30分から17時30分までの勤務を希望しています。恒常的な残業への対応が難しいため、通常の退勤時刻と、短時間勤務等を利用できる要件を教えていただけますでしょうか。
このように、家族の詳しい事情ではなく、本人の勤務可能条件を中心に聞くことができます。
退職が適切な選択になる場合もある
介護休業や介護休暇、勤務調整、介護サービスを使っても、仕事との両立が難しい人はいます。
本人の体調が悪化している、遠距離介護で移動負担が大きい、複数の家族を支援している、夜間の対応が続いているなど、事情は人によって異なります。
退職を考えるときは、次の点まで一度整理しておくと、その後の生活を考えやすくなります。
- 休業・休暇・勤務時間制度で一時的に負担を下げられないか
- 異動・勤務地変更で通勤やシフト負担を減らせないか
- 介護サービスや家族の分担を増やせないか
- 転職すれば必要な勤務条件を満たせるか
- 退職後の家計、健康保険・年金、再就職時期をどうするか
それでも退職が必要だと判断するのであれば、辞めること自体を否定的に捉える必要はありません。
本人と家族の状況に合わせて働き方を変えることも、一つの選択です。
親の介護が始まった直後に確認したい7項目
親の入院や状態悪化などで介護が急に始まり、何から手を付ければよいか分からない場合は、まず次の7項目を順番に整理します。
- 親の医療・介護上の状態を把握する
- 地域包括支援センター等の相談先を調べる
- 家族で当面の役割分担を決める
- 自分の早番・遅番・休日・勤務地を書き出す
- 勤務先へ介護に直面したことを伝える
- 利用できる制度と社内の申出先を聞く
- 勤務調整後も続けられそうか、時期を決めて見直す
介護が始まった直後に、転職先を探すことから始める必要はありません。
先に介護の状況と自分の勤務条件を整理すると、今の職場に残る場合にも、別の職場を探す場合にも必要な条件が見えやすくなります。
まとめ|辞めないことを目的にせず、続けられる条件があるかで判断する
- 親の介護が始まっても、最初から退職する・しないを決める必要はない
- 薬剤師は介護制度だけでなく、早番・遅番・土日・応援勤務・一人薬剤師・通勤まで見る
- 介護休業は対象家族1人につき通算93日・3回まで
- 介護休業は、復職後も回る介護体制を整えるためにも使える
- 介護休業給付金は一定要件で原則67%だが、育児休業の社会保険料免除とは分けて考える
- 介護休暇は対象家族1人なら年5日、2人以上なら10日で、時間単位でも取得できる
- 短時間勤務・フレックス・時差出勤等は、勤務先がどの措置を採用しているかを見る
- 所定外労働、時間外労働、深夜業の制限はそれぞれ別の制度
- 2025年4月から介護離職防止のための会社側の対応も強化されている
- 転職では介護に理解があるという表現より、実際の勤務時間・勤務地・応援体制を比べる
- 制度と勤務調整だけでは難しい場合は、異動・転職・退職まで選択肢を広げる
親の介護と仕事の両立では、辞めないこと自体が目的ではありません。
自分の健康を保ちながら、家族の介護を必要な支援へつなぎ、無理なく働き続けられる条件があるかを考えることが大切です。
今の職場でその条件を作れるなら、働き続ける方法があります。難しければ異動や外の求人を比べることができます。それでも両立が難しければ、退職も含めて考えて構いません。
- まだ転職するか決めていない
薬剤師のキャリアの軸を整理して、今の職場に残る・動くを考える - 今の職場と外の求人条件だけ比較してみたい
企業採用ページ・求人サイト・ハローワーク・転職エージェントで求人を探す方法を比較する - 転職エージェントも使って具体的に求人を比較したい
採用側の実体験から薬剤師転職エージェント3社を比較する
この記事で確認した主な一次資料
- 厚生労働省|介護休業制度特設サイト
- 厚生労働省|介護休業
- 厚生労働省|介護休暇
- 厚生労働省|短時間勤務等の措置
- 厚生労働省|所定外労働の制限
- 厚生労働省|時間外労働の制限
- 厚生労働省|深夜業の制限
- 厚生労働省|介護関係の法改正のポイント
- 厚生労働省|Q&A 介護休業給付
- 厚生労働省|不利益取扱いの禁止・相談窓口
- 厚生労働省|公正な採用選考の基本
- 日本年金機構|育児休業期間中の保険料免除
FAQ
- 親の介護が始まったら薬剤師の仕事は辞めた方がよいですか?
-
一律には言えません。まず地域の介護支援、介護休業・介護休暇、勤務時間の調整、シフトや勤務地の変更などで両立できるかを考えます。それでも本人の健康や介護量、勤務条件から継続が難しい場合は、異動・転職・退職を比べてください。
- 介護休業は何日まで取得できますか?
-
対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます。希望する日から取得する場合は、原則として休業開始予定日の2週間前までに書面等で事業主へ申し出ます。
- 介護休業給付金は給料の67%ですか?
-
一定の受給要件を満たす場合、原則として休業開始時賃金日額×支給日数×67%を基礎に計算します。休業中の賃金等によって取扱いが変わることがあります。また、育児休業の社会保険料免除を介護休業へそのまま当てはめて手取りを計算しないでください。
- パート薬剤師でも介護休業や介護休暇を使えますか?
-
パート・有期雇用でも対象になる場合があります。介護休業は契約終了の見込みや労使協定等を見ます。介護休暇は2025年4月から継続雇用6か月未満を労使協定で除外する要件が廃止されました。雇用形態だけで判断せず、自分の契約内容や所定労働日数、労使協定を確認してください。
- 介護中なら薬局の遅番や残業を断れますか?
-
介護中であることだけで、すべての遅番や残業が自動的に免除されるわけではありません。所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限には、それぞれ要件や申出手続があります。自分の働き方に合う制度を選んで利用します。
- 親の介護で急に休む可能性がある場合、一人薬剤師の求人は避けた方がよいですか?
-
一人薬剤師という名称だけで避ける必要はありません。ただし、急な早退・欠勤時に誰が交代するのか、応援薬剤師を手配できるのか、一人勤務になる時間帯はどの程度かを聞いておくことは重要です。介護との両立では、本人が急に抜けても業務を引き継げる体制があるかが大きな判断材料になります。
- 転職面接で親の介護を詳しく説明した方がよいですか?
-
親の健康状態や病歴、家庭事情を必要以上に詳しく話す必要はありません。勤務可能時間、残業への対応可否、勤務地、必要な制度など、自分が働くために必要な条件を中心に整理してください。
