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その「仕入れ値の安さ」だけで採用メーカーを決めていませんか?
「うちの薬局、ジェネリックはとにかく安いメーカーを採用しているんですが、患者さんから『前と効き目が違う気がする』って言われることがあって」
私が人事部長時代、若手薬剤師からこうした相談を受けることが少なくありませんでした。
ジェネリック医薬品の供給不安が長期化する現在、薬局経営において「安定供給」と「品質」の両立はますます難しくなっています。日本製薬団体連合会の調査によると、2024年8月時点で後発品全体の約29%が限定出荷または供給停止の状態にあり、業界団体の試算では供給不安の完全解消は2029年度になる見込みです。
この状況下で、薬剤師には単に「処方箋通りに調剤する」だけでなく、製剤学的な視点からメーカーを選定し、患者に最適な医薬品を提供する能力が求められています。
本記事では、元・調剤薬局チェーン人事部長として多くの薬剤師と面談してきた経験と、薬剤師としての専門知識を掛け合わせ、製剤学の観点からジェネリックメーカーを選定する具体的な方法を解説します。
ポイント1:生物学的同等性試験データを「読める」薬剤師になれ
ジェネリック医薬品が先発品と「同等」であることを証明するのが生物学的同等性試験(BE試験)です。
厚生労働省は、ジェネリック医薬品と先発品の治療学的同等性を保証するため、血中薬物濃度の推移を比較するBE試験の実施を義務付けています。その評価指標は主に二つあります。一つ目は最高血中薬物濃度(Cmax)、二つ目は血中薬物濃度−時間曲線下面積(AUC)です。
PMDAが実施した調査によると、ジェネリック医薬品と先発品の差は、Cmaxで約4.6%、AUCで約3.9%と報告されており、平均値の差はほとんどないとされています。
しかし、ここで注意すべきポイントがあります。
BE試験は「集団としての同等性」を示すものであり、個々の患者における効果の同一性を保証するものではないという点です。特に治療域が狭い薬剤では、この数パーセントの差が臨床的に意味を持つケースがあります。
私が人事部長時代に面談した病院薬剤師のAさんは、こう語っていました。「BE試験のデータを見るとき、平均値だけでなく、個体間変動のバラつきにも注目しています。バラつきが大きいジェネリックは、患者によって効果に差が出やすい可能性がありますから」
Aさんのように、インタビューフォーム(IF)やオレンジブック総合版で公開されているBE試験の詳細データを確認する習慣をつけることが、製剤学的視点を持つ第一歩となります。
ポイント2:溶出試験データで「体内動態の再現性」を見極める
| 評価指標 | 略称 | 意味(何を見ているか) | 薬剤師がチェックすべき視点 |
| 最高血中濃度 | Cmax | 吸収される薬の最大の濃さ | 即効性や副作用(一過性の濃度上昇)の有無 |
| 血中濃度-時間曲線下面積 | AUC | 体内に入った薬の総量 | 全体的な有効性の担保、吸収率の差 |
| 類似性因子 | f2関数 | 先発品との溶出挙動の近似値 | 50以上で適合。 70以上なら極めて高い近似性 |
| 生物学的同等性試験 | BE試験 | 先発と後発の「同等性」の証明 | 平均値だけでなく個体間変動(バラつき) |
経口固形製剤において、溶出挙動は生物学的同等性に関する重要な情報を与えます。薬が消化管内で溶け出すスピードと量が、吸収効率を大きく左右するためです。
後発医薬品の承認審査では、複数のpH条件下での溶出試験が実施されます。具体的には、pH1.2(胃酸環境)、pH6.8(小腸環境)、水、およびその他のpH条件で試験が行われ、先発品との溶出挙動の類似性が確認されます。
ここで製剤学的に重要なのはf2関数(類似性因子)という指標です。
f2関数の値が50以上であれば、溶出挙動が類似していると判定されます。ただし、この値が50付近のメーカーと、70以上のメーカーでは、製剤設計の精度や先発品への近似性に差があると考えることもできます。
沢井製薬など大手ジェネリックメーカーは、承認試験で求められる溶出試験だけでなく、生体模倣溶出試験(消化管環境をより精密に再現した試験)を独自に実施し、先発品との体内動態の一致性を高める取り組みを行っています。
溶出試験結果は、PMDAの医療用医薬品最新品質情報集(ブルーブック)で確認できます。メーカー選定の際は、このデータを必ず参照してください。
ポイント3:添加剤の違いが「効果の違い」を生むメカニズムを理解する
ジェネリック医薬品は、先発品と同一の有効成分を同一量含有していますが、添加剤は異なる場合が多いという事実を知っていますか?
厚生労働省のQ&Aでも明言されているように、先発品が製剤特許を有している場合などは、ジェネリック医薬品は先発品と異なる添加剤を使用することがあります。日本薬局方の製剤総則では、添加剤は薬理作用を持たず、有効成分の治療効果を妨げるものであってはならないと規定されています。
しかし、外用剤においては添加剤(基剤)の違いが臨床効果に影響を与えるケースが報告されています。
軟膏とクリームの違いを例に挙げましょう。軟膏は油脂性基剤を使用し、皮膚刺激性が低く保護作用が強いのが特徴です。一方、クリームは乳剤性基剤を使用し、皮膚への浸透性が高いものの刺激性も高くなります。
明治薬科大学の研究では、ステロイド外用剤において、軟膏とクリームで有効成分の皮膚透過速度に有意な差があることが示されています(製剤設計により数倍の差が生じるケースもあります)。これは基剤中に主薬がどの程度溶解しているかに起因します。
さらに重要なのは、同じ「軟膏」という名称でも、先発品と後発品で基剤の組成が異なる場合があるという点です。
このように、外用剤のジェネリック選定においては、基剤の組成まで確認する姿勢が求められます。

ポイント4:安定性試験データで「品質の持続性」を評価する
| 比較項目 | 検討すべき製剤学的ポイント | 臨床・調剤への影響 |
| 軟膏 vs クリーム | 基剤(油脂性か乳剤性か)の違い | 有効成分の透過速度、皮膚刺激性、使用感 |
| 無包装安定性 | 光・湿度による分解・変色の有無 | 一包化調剤の可否、自動分割機への適合性 |
| 味・風味(内用液) | 矯味剤(添加剤)の種類と量 | 小児のコンプライアンス、服用継続率 |
| OD錠の崩壊性 | 口腔内での崩壊スピード、ザラつき | 高齢者の嚥下状況、水なし服用の利便性 |
医薬品の品質は、製造時だけでなく使用期限内を通じて維持されることが求められます。この品質の持続性を評価するのが安定性試験です。
安定性試験には主に三種類があります。
一つ目は長期保存試験です。通常の保存条件(25℃、相対湿度60%)で12ヶ月以上実施され、有効期間中の品質安定性を確認します。
二つ目は加速試験です。より過酷な条件(40℃、相対湿度75%)で6ヶ月間実施され、流通過程での品質変化を予測します。後発医薬品の承認審査では、この加速試験データの提出が必須となっています。
三つ目は苛酷試験です。極端な温度、湿度、光条件下で品質変化を調べ、医薬品の弱点を把握するために実施されます。
インタビューフォームには、これらの安定性試験結果が記載されています。
特に注目すべきは、無包装状態での安定性データです。一包化調剤を行う薬局では、PTPシートから取り出した状態での安定性が重要になります。2019年以降、インタビューフォームには粉砕後の安定性や簡易懸濁法に関する情報も記載できるようになりました。
「うちの薬局では、一包化の依頼が多い高齢者向けの薬について、各メーカーの無包装安定性データを比較検討しています」と語っていたのは、在宅医療に注力する薬局チェーンで管理薬剤師を務めるCさんです。
こうした視点を持つ薬剤師は、確実にキャリアアップの機会を掴んでいます。
ポイント5:オーソライズドジェネリック(AG)という選択肢を知る
製剤学的な観点から最も「先発品に近い」ジェネリック、それがオーソライズドジェネリック(AG)です。
AGとは、先発医薬品メーカーから許諾を受けて製造販売されるジェネリック医薬品です。原薬、添加物、製法等が先発品と同一であることが最大の特徴です。
AGには三つのタイプがあります。
AG1は先発品と同じ原薬、添加物、製法、工場、技術を用いて製造されるものです。中身は先発品と全く同一と言えます。
AG2は先発品と同じ原薬、添加物、製法を用いて製造されますが、工場は異なります。
AG3は先発品と同じ添加物、製法を用いて製造されますが、原薬や工場は異なる場合があります。
厚生労働省の調査によると、医療機関がジェネリック医薬品を採用する際、「オーソライズドジェネリックであること」を重視する傾向が強まっています。その理由として、先発品と同一の品質であること、医師・患者への説明がしやすいことなどが挙げられています。
ただし、全ての医薬品にAGが存在するわけではありません。AGはジェネリック医薬品の中では比較的薬価が高い傾向にありますが、「先発品と同じ製法で作られている」という説明は、ジェネリックへの変更に不安を感じる患者さんに効果的です。

ポイント6:供給安定性を「見える化」する情報収集術
2020年以降続くジェネリック医薬品の供給不安は、薬局経営と患者ケアの両面で深刻な影響を与えています。
供給不安の原因は複合的です。一部メーカーの品質不正問題による業務停止、製造キャパシティの不足、海外原薬への依存、そして薬価引き下げによる不採算品目の増加などが絡み合っています。
このような状況下で、メーカーの供給安定性を事前に評価することは、ジェネリック選定において欠かせない要素となっています。
評価のポイントは以下の通りです。
複数の原薬メーカーとの取引があるかを確認してください。原薬の調達先が一社に依存していると、その調達先に問題が生じた場合に供給が途絶えるリスクがあります。
自社工場での製造か、委託製造かという点も重要です。自社製造の方が品質管理の一貫性を保ちやすいとされています。
過去の出荷調整・回収の履歴も参考になります。頻繁に出荷調整を行っているメーカーは、製造キャパシティに余裕がない可能性があります。
厚生労働省は2024年6月から、後発薬メーカーの製造体制に関する情報公開を開始しました。製造能力、在庫状況、原薬の製造国などの情報が公表されています。
また、日本製薬団体連合会のウェブサイトでは、医薬品の供給状況に関する調査結果が定期的に公開されています。これらの公的情報を活用し、エビデンスに基づいたメーカー選定を行うことが求められます。

ポイント7:患者目線の「使用感」評価を忘れるな
製剤学的な品質評価に加えて、患者が実際に使用した際の体験も無視できない要素です。
保険薬局を対象としたアンケート調査では、ジェネリック医薬品から先発品に戻った事例の理由として「先発品に比べ効果が弱い」(45%)、「使用感が悪い」(23%)、「先発品で出なかった副作用が発現」(13%)などが報告されています。
特に使用感の違いが問題になりやすい医薬品群があります。
皮膚科領域の外用剤は、基剤の違いにより塗り心地や伸びが異なることがあります。貼付剤も、粘着力や剥がれやすさに差が出ることがあります。また、抗不安薬・睡眠薬・抗てんかん薬などの中枢神経系薬剤は、治療域が狭く個人差が出やすい傾向があります。
大手調剤薬局チェーンでは、薬剤師が実際にジェネリック医薬品の使用感を試して評価する取り組みを行っています。錠剤の大きさ、味のマスキング、PTPシートからの取り出しやすさなど、患者目線での評価基準を設けています。
「私が人事部長時代、『このメーカーの○○は小粒で飲みやすい』『この△△は一包化しても変色しにくい』といった情報を蓄積し、共有している薬局は、患者からの信頼も高かった」
このような地道な情報収集と共有が、差別化につながります。
| スキルフェーズ | 具体的なアクション | 職場での貢献度(市場価値) |
| Lv.1:基礎読解 | IF(インタビューフォーム)を読み解く | 根拠に基づいた疑義照会・服薬指導ができる |
| Lv.2:戦略的選定 | AG(オーソライズドジェネリック)を使い分ける | 患者の不安払拭、GE変更率の向上と安定供給 |
| Lv.3:品質評価 | 安定性・溶出データから採用可否を判断 | 薬局全体の在庫ロス削減、クレーム防止 |
| Lv.4:専門特化 | 在宅・外用剤等の専門知識を経営に活かす | 年収アップ・管理薬剤師・本部採用候補 |

ポイント8:転職エージェントを活用して「製剤学を活かせる職場」を見つける
ここまで読んで、「うちの薬局では、こうした製剤学的な視点でのメーカー選定ができる環境じゃない」と感じた方もいるかもしれません。
残念ながら、全ての薬局が専門性を発揮できる環境ではありません。経営効率だけを追求し、薬価差益の大きいメーカーを一律採用している薬局も存在します。
あなたの製剤学的知識を正当に評価し、活かせる職場は必ず存在します。
特に以下のような職場では、今回解説した知識が武器になります。
在宅医療に注力する薬局では、一包化や簡易懸濁法に関する製剤学的知識が求められます。高齢患者の服薬アドヒアランス向上に直結するスキルです。
皮膚科・小児科門前の薬局では、外用剤や小児用製剤に関する基剤の知識が重宝されます。医師からの信頼獲得にもつながります。
DI業務を重視する病院薬局では、インタビューフォームやブルーブックの読解力が評価されます。
しかし、こうした「製剤学を活かせる職場」を自力で見つけることは容易ではありません。求人票だけでは、その薬局がどのような方針でジェネリック採用を行っているかまでは分からないためです。
エージェントを活用すれば、あなたの代わりに「この薬局はジェネリック選定にどのような基準を設けていますか?」「DI業務に力を入れていますか?」といった踏み込んだ質問を行ってもらえます。
求職者自身がこうした質問をすると「細かいことを言う人だ」という印象を与えかねませんが、エージェント経由であれば「エージェントが確認していた」というスタンスを取れます。

製剤学の知識は、あなたの市場価値を高める
製剤学的な視点からジェネリックメーカーを選定できる薬剤師は、まだ少数派です。だからこそ、この能力を身につけることは、あなたの市場価値を確実に高める投資となります。
本記事で解説した8つのポイントを振り返ります。
まずBE試験データを読む習慣をつけること。次に溶出試験のf2関数に注目すること。添加剤(基剤)の違いを理解すること。安定性試験データを確認すること。オーソライズドジェネリックという選択肢を知ること。供給安定性を評価すること。患者目線の使用感を評価すること。そして製剤学を活かせる職場を選ぶこと。
これらの知識と実践は、一朝一夕で身につくものではありません。しかし、日々の業務の中で意識して取り組むことで、確実に成長につながります。
「あなたのキャリア、まだまだ伸びしろがある」
私はこれまで多くの薬剤師と面談してきましたが、製剤学的な視点を持ち、それを実務に活かそうとする薬剤師は非常に珍しく、とても高く評価していました。
今の職場で専門性を発揮できないなら、環境を変えることも選択肢の一つです。
人事の現場から率直にお伝えします。もしあなたが「理想の環境」での4月入職を目指すなら、1月に動き出すことには大きな戦略的メリットがあります。
2月・3月は転職市場が最大級に盛り上がり、求人数もピークを迎えますが、同時に「ライバルの数」も爆発的に増える時期です。人事責任者として多くの採用を見てきた経験から言えば、「高年収で、かつ残業が極めて少ない」といった希少な優良枠ほど、比較検討の時間が取れるこの1月のうちに、賢明な薬剤師の方々によって内定が埋まり始めるのが実情です。
混戦となる2月以降にスピード勝負を挑むのも一つの手ですが、今のうちなら、より多くの選択肢の中からじっくりと「自分に合う職場」を見極めることができます。
ただし、焦って「広告費の規模」だけでエージェントを選ばないでください。 私は人事の立場から20社以上の紹介会社と向き合ってきましたが、中には自社の利益を優先し、現場のネガティブな情報を伏せる担当者も少なくありませんでした。
その中で、「現場の離職率や人間関係まで正直に明かし、求職者のキャリアに誠実に向き合ってくれる」と確信できたエージェントは、本当にごく一部です。
納得のいく環境で最高のスタートを4月に迎えるために。私が人事の裏側から見て「ここなら信頼できる」と認定したエージェントと、その賢い活用術をまとめました。一歩先んじて準備を整えたい方は、ぜひ参考にしてください。
あなたの薬剤師としてのキャリアが、より良い方向に進むことを心から願っています。
あなたの専門性は、患者の安心に直結している
最後にお伝えしたいことがあります。
ジェネリック医薬品の供給不安が続く今、「どのメーカーの薬を選ぶか」は単なる経営判断ではなく、患者の治療成績に関わる医療判断です。
製剤学的な視点を持ってメーカー選定に関わることは、地味に見えるかもしれません。しかし、その一錠一錠の積み重ねが、患者の信頼を築き、地域医療を支えているのです。
あなたが今日学んだ知識は、必ず患者のためになります。
そして、その専門性を正当に評価してくれる職場で働くことは、あなた自身のためでもあります。
製剤学の知識を武器に、次のキャリアステージへ踏み出してください。

