薬剤師は「話し方が9割」を意識すべき|評価を上げる仕事の戦略【元人事部長が解説】

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あなたの専門知識は、本当に患者さんに伝わっていますか?

「知識はあるのに、なぜか患者さんが離れていく薬剤師」と「知識は標準的でも、指名が絶えない薬剤師」。 これまで多くの薬剤師を見てきましたが、この両者の決定的な違いは、実は「薬の説明」以外の部分にありました。

「医師に電話するのが怖い」「服薬指導が尋問のようになってしまう」 そんな相談を現場から毎日のように受けてきましたが、評価され、年収が上がり続ける薬剤師は、ある一つの「伝え方のスイッチ」を知っています。

この流れは、制度面からも加速しています。 厚生労働省が2015年に「患者のための薬局ビジョン」を策定して以降、私たち採用・人事側の評価基準もガラリと変わりました。「対物業務」から「対人業務」へ。いま現場で最も切実に求められているのは、まさに「話し方」のスキルなのです。

永松茂久氏のベストセラー『人は話し方が9割』はビジネス書として有名ですが、人事の視点で読むと、これは「これからの薬剤師の教科書」そのものです。 「コミュニケーションはスキルよりメンタル」という考え方。これを日々の業務に取り入れることで、患者さんからの信頼、医師との関係、そしてあなたの年収までもが変わっていく可能性が高いと、私は確信しています。

本記事では、元人事部長としての経験を基に、薬剤師が「話し方」を武器に変え、キャリアを飛躍させるための具体的な戦略をお伝えします。


対人業務の時代に求められる薬剤師のコミュニケーション力

なぜいま「話し方」が薬剤師の評価を左右するのか

2020年の薬機法改正により、薬剤師には服薬指導後のフォローアップが義務化されました。単に薬を渡すだけでなく、患者さんの服薬状況や体調の変化を継続的に把握することが求められるようになったのです。

この変化は、薬剤師の仕事の本質を変えました。調剤報酬改定でも「対人業務」への評価が年々高まっています。2022年度には調剤管理料や服薬管理指導料が新設され、対人業務の重要性が制度面からも裏付けられました。

私が人事部長時代に経験した範囲では、昇進・昇給の審査で差がついたのは、専門知識の深さだけではありませんでした。患者さんとの関係構築力、医師とのコミュニケーション力、そして職場のチームワークへの貢献度。これらが総合的に評価されていたのです。

ある調査によると、患者さんが薬局に期待する項目として「スタッフの応対がとても良い」を挙げた方は56.9%に達していました。医薬品の知識があることは「あたりまえ」と考えられており、そこに「+α」の価値を提供できるかどうかが、選ばれる薬剤師になれるかどうかの分かれ目になっています。

評価項目昔の薬剤師(評価停滞)これからの薬剤師(年収アップ)
仕事の重心対物業務
(調剤の正確さ・早さ)
対人業務
(患者・医師との対話)
医師への対応言われた通りに調剤
恐縮して疑義照会
処方意図を汲み取り提案
対等なパートナー連携
患者への対応一方的な指導
(ティーチング)
傾聴と共感
(コーチング)
人事評価「ミスをしないか」
減点方式
「ファンを作れるか」
加点方式
市場価値平均年収止まり
(代替可能な人材)
年収600万〜800万
(指名される人材)
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「聴く力」が信頼を築く第一歩

『人は話し方が9割』で繰り返し強調されているのは、「話し方において一番大切なことは、聞くこと」という逆説的なメッセージです。

患者さんは、自分の話を聞いてほしいと思っています。自分のことを認めてほしいと熱望しています。そんな相手の自己重要感を高めるために、まず必要なのは「聴き方」をマスターすることなのです。

私が人事部長時代、管理薬剤師への昇進面談で高評価を得ていた薬剤師には、共通点がありました。彼らは患者さんの言葉の裏にある感情を読み取る力に長けていたのです。

「この薬、飲みたくないんです」

この言葉を聞いたとき、あなたならどう対応するでしょうか。

サイエンティストである薬剤師としては、「飲まないと良くなりませんから、きちんと飲んでください」と言いたくなるかもしれません。しかし、それで患者さんの行動は変わるでしょうか。

患者さんの言葉と行動を注意深く観察してください。本当に飲みたくないなら、そもそも薬局に来ないはずです。来ているということは、心の奥底で迷いがある証拠なのです。

「観察」「傾聴」「確認」「共感」という4つの姿勢を基本にすることで、患者さんとの信頼関係は確実に深まっていきます。

関連記事:患者の心を掴む服薬指導術|元人事部長が教える「ありがとう」を引き出す3つの実践法


薬剤師の年収を左右する「話し方」の具体的戦略

医師への疑義照会で「評価」を上げる話し方

多くの薬剤師が苦手とする医師への疑義照会。「怒られたくない」「忙しい時に申し訳ない」と萎縮してしまう気持ち、痛いほどわかります。
しかし、私が現場で見てきた「評価される薬剤師」は、疑義照会を「医師との信頼関係を作るチャンス」に変えていました。

彼らが使っていたのは、心理学でいう「アサーティブ(自他尊重)」な話し方ですが、難しく考える必要はありません。以下の「魔法のクッション言葉」を挟むだけでいいのです。

× 悪い例(事実だけを伝える)
「先生、この処方だと併用禁忌なんですが、変更しますか?」
→ これでは医師のプライドを刺激し、「指摘」と受け取られかねません。

〇 評価される例(医師を尊重し、提案する)
「先生、処方意図を患者様に正しく説明したいので確認させてください。〇〇というリスクも考えられますが、このまま調剤してよろしいでしょうか?それとも△△へ変更されますか?」

この「処方意図を理解したい(=先生の治療方針を尊重している)」というスタンスを見せるだけで、医師の対応は驚くほど軟化します。私が「コミュニケーション能力が高い」と判断するのは、単に明るい人ではなく、こうした「相手の顔を立てながら、患者の安全を守れる人」です。

医師のタイプ特徴・心理効果的な切り出し方(クッション言葉)
威圧的な医師プライドが高く
否定を嫌う
「先生の処方意図を患者様に正しく説明したいので、1点だけ確認させてください」
多忙な医師時間がなく
結論を急かす
緊急で確認が必要な点が1つございます。患者様の安全のため、〇〇の併用について」
無口な医師反応が薄く
意図が読みにくい
「先生のお考えとしては、Aの方針(現状維持)でしょうか?それともB(変更)でしょうか?
※二者択一で提案する
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年収交渉で「お金にがめつい」と思われない裏技

転職時の年収交渉、自分でやっていませんか?元人事の立場から言わせてもらうと、面接の場でご自身から「年収600万欲しい」と言われると、どうしても「扱いにくい人だな」という心象が残ります。

ここで使うべきは、「第三者の口」です。「私としては御社の規定に従いますが、エージェントの担当者が『私の市場価値は600万が妥当だ』と分析しておりまして」というスタンスを取るのです。

これなら、あなたは「謙虚な人」のまま、エージェントを「悪者(交渉役)」にして希望額を通せます。企業側も「紹介会社が言うなら相場か」と納得しやすくなります。

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職場の人間関係を改善する「話し方」の技術

上司・同僚との関係構築で評価を高める

職場での人間関係は、仕事のパフォーマンスに直結します。特に薬剤師の場合、調剤過誤を防ぐためにも、報告・連絡・相談の円滑なコミュニケーションは欠かせません。

『人は話し方が9割』では、「苦手な人との対話を避け、好きな人と話す時間を増やす」ことが提案されています。好きな人との会話が弾むことで自信がつき、徐々に「話しづらいな」と感じることが減っていくという好循環が生まれるのです。

しかし、職場では苦手な人とも関わらなければならない場面があります。そんなときは「反応しない練習」を心がけてください。高圧的な言動に対して、感情的に反応するのではなく、事実に基づいた冷静な対応を続けることで、関係性は徐々に改善していきます。

私が人事部長時代に見てきた中で、「この人は昇進させたい」と思わせる薬剤師には共通点がありました。彼らは周囲の人を巻き込み、チーム全体のパフォーマンスを高める力を持っていたのです。

具体的には、新人薬剤師への丁寧な指導、困っている同僚へのさりげないサポート、そして管理薬剤師への適切な報告と提案。これらすべてに「話し方」のスキルが関わっています。

関連記事:年上部下を動かす!問題スタッフを味方に変える7つのマネジメント術

「正論」を伝えるときこそ変化球で

薬剤師は正しいことを伝える仕事です。しかし、正論をストレートに伝えると、相手を傷つけたり、反発を招いたりすることがあります。

『人は話し方が9割』では、「正論はストレートではなく変化球で伝える」ことが推奨されています。

たとえば、患者さんに服薬遵守を促す場面。「飲まないと良くなりませんよ」と正論を突きつけるのではなく、「お薬を飲み続けるのは大変ですよね。何か困っていることはありませんか?」と、まず相手の立場に寄り添う言葉をかけてみてください。

相手が「分かってもらえた」と感じたとき、初めてこちらの言葉を受け入れる準備が整うのです。

職場でも同様です。後輩のミスを指摘するとき、「ここが間違っている」と直接的に言うのではなく、「ここはこうすると、もっと良くなると思うよ」と提案形式で伝える。この違いが、チームの雰囲気を大きく左右します。

関連記事:新人薬剤師が育たない職場の共通点|元人事部長が教える指導力UPの5つのスキル


転職活動で「話し方」を武器にする方法

面接官の心を掴む自己紹介の作り方

転職面接において、第一印象はきわめて重要です。そして第一印象を決めるのが、自己紹介の「話し方」なのです。

私が採用面接で見てきた中で、印象に残る自己紹介には共通点がありました。

単なる経歴の羅列ではなく、ストーリーがあるのです。

「なぜ薬剤師になったのか」「これまでどんな経験を積んできたのか」「なぜ転職を決意したのか」「入社後にどう貢献したいのか」

この流れを、簡潔に、しかし熱意を込めて語れる薬剤師は、採用側に強い印象を残します。

『人は話し方が9割』では、「最強のネタ帳はしくじりリスト」と紹介されています。自分の失敗体験を語ることで、人間味が伝わり、親近感が生まれるのです。

「調剤過誤を起こしかけた経験から、ダブルチェックの重要性を学びました」

「患者さんとのコミュニケーションで失敗した経験が、傾聴力を磨くきっかけになりました」

このような「学びにつながった失敗談」は、実は面接官の心にかなり響きます。

評価カテゴリー一般的な準備(面接で弱い)人事が「採用・高年収」を出したくなる加点ポイント
スキル評価経験科目数
管理薬剤師経験の有無
「店舗の利益改善」
「かかりつけ算定件数」の実績数値
対人能力「コミュ力には自信があります」
(抽象的)
「苦手な医師/患者とどう関係を築いたか」
(具体的エピソード・失敗談)
志望動機「家から近い」
「給与が良い」
「御社の〇〇というビジョンに対し、私の△△な経験で貢献できる」という提案
逆質問「残業はありますか?」
「有給は取れますか?」
「入社までに準備すべきことは?」
「活躍している人の共通点は?」
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面接官が「合格」とメモする逆質問、「お祈り」と決める逆質問

面接の最後にある「何か質問はありますか?」という逆質問。ここで「残業は月何時間ですか?」「有給はすぐ取れますか?」と聞いてしまう方がいますが、これは非常にもったいないです。

私が面接官をしていた時、その質問が出た瞬間に手元の評価シートの「意欲・熱意」の項目に『△(条件重視)』と書き込んでいました。条件確認はもちろん大切ですが、それは「あなたではなく、エージェントに聞かせるべきこと」だからです。

逆に、この質問が出たら『◎(採用候補)』と書き込んでいたキラー質問があります。

「御社で活躍されている薬剤師の方に、共通点はありますか?」
「もしご縁をいただけた場合、入社までに勉強しておくべきことはありますか?」

これらの質問は、「入社後の活躍」をイメージしている証拠です。「条件はエージェント経由で徹底的に確認し、面接の場では『働く意欲』だけを見せる」。これが、年収交渉を有利に進めつつ、内定を勝ち取る賢い戦略です。

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口下手で「話し方」に自信がありません。性格は変えられないのですが。

性格を変える必要はありません。「技術」を知れば十分です。 人事が求めているのは、お笑い芸人のようなトーク力ではなく、「相手の話を聴き、意図を確認する」という技術(スキル)です。今回ご紹介した「クッション言葉」や「傾聴」は、練習すれば誰でも身につく技術です。性格を変えるのではなく、仕事のツールを一つ増やす感覚で取り組んでみてください。

今の職場は忙しすぎて、丁寧な服薬指導や対人業務が評価されません。

その環境に居続けることが、あなたの市場価値を下げる最大のリスクです。 対人業務を評価しない薬局は、報酬改定のたびに経営が苦しくなり、将来的に給与が下がる可能性が高いです。もし今の職場で「話し方」の実践が難しいなら、対人スキルを正当に評価してくれる薬局への転職を検討すべきタイミングかもしれません。環境を変えるだけで、年収が100万円上がるケースも珍しくありません。

年収交渉をエージェントに任せると、内定が出にくくなりませんか?

逆です。優秀なエージェントほど、内定率を下げずに年収を上げます。 素人が無理に交渉すると「扱いづらい」と敬遠されますが、プロのエージェントは「他社の選考状況」や「市場相場」という客観的な根拠を使って交渉するため、角が立ちません。私が人事時代、最も高い年収条件で採用したのは、決まって「交渉上手なエージェント」がついている薬剤師でした。遠慮なくプロを頼ってください。


あなたの話し方が、あなたの未来を変える

ここまで、薬剤師が「話し方」を武器に変えるための戦略をお伝えしてきました。

振り返ってみてください。あなたは今、どんな「話し方」をしていますか?

患者さんの言葉の裏にある感情を読み取れていますか?医師への疑義照会で、自信を持って提案できていますか?職場の人間関係で、周囲を巻き込む力を発揮できていますか?

もし「できていない」と感じるなら、それは悪いことではありません。気づいた今日から、変えていけばいいのです。

『人は話し方が9割』の著者・永松茂久氏は、こう述べています。

「会話はスキルよりメンタル」

特別な話術を身につける必要はありません。目の前の人に「この人と会えてよかった」と思ってもらうこと。それが最高の話し方なのです。

患者さんが「あの薬剤師さんに相談したい」と思う。医師が「あの薬剤師の意見は信頼できる」と感じる。職場の仲間が「あの人と働きたい」と願う。

そんな薬剤師になることで、評価は自然とついてきます。年収も上がっていきます。

あなたの市場価値は、あなたが思っているよりずっと高いのです。

その価値を正当に評価してもらうための「話し方」を、今日から意識してみてください。

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正直にお伝えします。12月10日のボーナス支給後は、一年で最も転職希望者が増える人材争奪戦のピークです。 完全週休二日制かつ年収650万以上の求人、本当に残業のない求人は、すぐに埋まってしまう恐れがあります。残り物で妥協しないよう、年内に「求人の枠(席)」だけは確保してください。

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あなたの市場価値を正当に評価してくれる職場を見抜くために、私が人事の裏側から見て「本物だ」と確信したエージェントとその理由を記事にしました。転職に失敗したくない方はぜひご覧ください。

あなたの薬剤師としてのキャリアが、より良い方向に進むことを心から願っています。

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この記事を書いた人

調剤薬局チェーン元人事部長・薬剤師・中小企業診断士。
約4年間、人事責任者として薬剤師の採用・評価制度設計に従事。大手を中心に20社以上の紹介会社と折衝し、採用の舞台裏から「紹介会社の実力差」を熟知する。現在は経営コンサルタントとして、調剤薬局の採用戦略や人事考課制度の設計支援を行う一方、薬剤師個人のキャリア支援も行っている。採用側と求職側、双方の視点を持つ「情報の非対称性を解消する」解説に定評がある。

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