やりがいが見つからない時の整理術|離職を決める前に試すチェックリスト

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2025年11月時点の情報です

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今の職場に「やりがい」を感じられないあなたへ

毎日調剤をこなし、服薬指導を繰り返す。

気づけば「薬剤師として何がしたかったのか」が見えなくなっていませんか。朝目覚めても出勤する気力が湧かない、処方箋をこなすだけの日々に虚しさを感じる。

そんな状態が続くと「もう辞めるしかない」と考えてしまうのも無理はありません。

しかし、離職という重大な決断を下す前に、立ち止まって整理すべきことがあります。私は元・調剤薬局チェーンの人事部長として、多くの薬剤師のキャリア相談に携わってきました。その経験から断言できるのは、「やりがいが見つからない」という悩みには、必ず具体的な原因があるということです。

そして、その原因を正確に把握しないまま転職しても、同じ問題が繰り返される可能性が高いのです。

退職を考えるきっかけとして「仕事内容・やりがいに関する理由」を挙げる薬剤師は常に上位です。

つまり、あなたと同じ悩みを抱える薬剤師は決して少なくありません。

本記事では、元人事部長としての実務経験をもとに、離職を決断する前に必ず試すべきチェックリストと、やりがいを再発見するための具体的な整理術をお伝えします。あなたのキャリアを守り、より良い選択をするための「判断材料」として活用してください。


第1章:そのモヤモヤ、実は「5つの原因」のどれかです

〜人事部長の視点で「感情」と「事実」を分けてみよう〜

「やりがいがない」という感覚は、実は複数の具体的な問題が絡み合っています。

人事部長時代、私が面談した薬剤師の多くは、最初「なんとなくやりがいを感じない」と表現していました。しかし、丁寧に話を聞いていくと、必ず明確な理由が見えてきたのです。

まず取り組むべきは、あなたの「やりがいがない」という感覚を、言語化して可視化することです。感情のままにしておくと、判断を誤ります。

以下の5つの視点から、自分の状況を整理してみてください。

【視点1】業務内容の単調さ

処方箋の受付、調剤、服薬指導の繰り返しになっていませんか。機械的な作業が続き、専門性を活かせていないと感じる状態です。患者一人ひとりに向き合う時間が取れず、表面的な対応で終わってしまう。

このパターンは、忙しすぎる職場や、対物業務が中心の環境で起こりやすいです。

【視点2】成長実感の欠如

入社時と比べて、自分が成長しているという実感がありますか。新しい知識やスキルを身につける機会がなく、同じレベルの業務を何年も続けている状態です。

研修制度が整っていない職場や、業務の幅が狭い環境では、この問題が顕著に現れます。

【視点3】貢献感の不足

「自分がいなくても回る」と感じていませんか。患者からの感謝の言葉も少なく、医師や看護師からも薬剤師としての専門性を認められていないと感じる状態です。

チーム医療に参加できていない、または薬局内で意見が通らない環境で起こります。

【視点4】キャリアパスの不透明さ

5年後、10年後の自分の姿が想像できますか。昇進制度が曖昧で、頑張っても評価されない、給与が上がらないという状態です。

「この職場にいても将来が見えない」という不安が、やりがいの喪失につながります。

【視点5】価値観とのミスマッチ

あなたが薬剤師として大切にしたいことと、職場が求めることにズレがありませんか。

たとえば、あなたは「患者との丁寧なコミュニケーション」を重視したいのに、職場は「処方箋の処理スピード」ばかり評価する。このような価値観の不一致は、深刻なやりがいの喪失を引き起こします。


【重要】あなたの状態を数値化する

次に、現在の状態を客観的に把握するため、以下の質問に答えてください。5段階評価(1=全くない、5=非常にある)で採点します。

  1. 患者の役に立っていると実感できる:□点
  2. 新しい知識やスキルを身につけている:□点
  3. 同僚や上司から認められていると感じる:□点
  4. 3年後の自分の成長が想像できる:□点
  5. 朝、職場に行くのが楽しみだと感じる:□点

合計点が15点以下の場合、深刻な「やりがい欠如状態」です。 このまま放置すれば、心身の健康を損なうリスクがあります。

ただし、だからといって即座に離職を決めるべきではありません。次の章で、具体的な対処法を確認していきましょう。


第2章:離職を決める前に試す7つのチェックリスト

私が人事部長として多くの薬剤師と向き合ってきた経験から、「離職を決断する前に必ず確認すべき項目」をまとめました。

このチェックリストを実践することで、約6割の薬剤師が「もう一度この職場で頑張ってみよう」という気持ちを取り戻しています。

チェック1:上司との1対1の面談を申し出たか

最も効果的で、最も実践されていないのがこれです。

「どうせ話しても無駄」と決めつけていませんか。私が人事部長だった頃、退職面談で初めて本音を聞き、「もっと早く言ってくれれば対応できたのに」と感じたケースが数え切れないほどありました。

具体的な伝え方を示します。

「今後のキャリアについて相談したいことがあります。30分ほどお時間をいただけませんか」

このように切り出してください。「辞めたい」と言う必要はありません。あなたが感じている業務の課題や、やりたいことを率直に伝えるだけで十分です。

優れた管理者であれば、業務の配置転換や研修機会の提供など、具体的な解決策を提示してくれます。もし、何の対応もしてくれないなら、それは離職を検討する材料の一つになります。

チェック2:業務の「やり方」を変える提案をしたか

やりがいの欠如は、業務内容そのものではなく、その「進め方」に原因があることも多いです。

例えば、服薬指導の時間が足りないなら、調剤業務の効率化を提案する。薬歴記載に追われているなら、テンプレート作成を提案する。

私が見てきた中で印象的だったのは、ある薬剤師が「患者向け勉強会の開催」を提案し、それが実現したケースです。彼女は「ルーティンワークに疲れていた」と話していましたが、自ら企画した勉強会で患者から感謝の言葉をもらい、やりがいを取り戻しました。

提案が通らなくても、それは貴重な情報です。「この職場は変化を受け入れない」という事実が明確になり、転職の判断材料になります。

チェック3:他部署・他店舗への異動は可能か

同じ会社でも、店舗が変われば環境は大きく変わります。

人間関係の問題であれば、異動で解決する可能性が高いです。また、処方箋の内容や患者層が変われば、業務の幅も広がります。

チェーン薬局に勤務しているなら、人事部に直接相談することも検討してください。「現在の店舗で成長の機会が限られていると感じており、より専門性を活かせる店舗への異動を希望しています」と伝えれば、真摯に対応してもらえる可能性があります。

ただし、小規模な薬局では異動の選択肢が限られます。その場合は、次のチェック項目に進んでください。

チェック4:認定薬剤師・専門薬剤師の取得を目指したか

資格取得は、やりがいを取り戻す強力な手段です。

新しい知識を学ぶプロセスそのものが刺激になりますし、資格取得後は業務の幅が広がります。何より、「成長している」という実感が得られます。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、認定・専門薬剤師を持つ薬剤師は、そうでない薬剤師と比べて年収が高い傾向にあります。一般的な「研修認定薬剤師」の手当相場は月額数千円〜1万円程度ですが、これをきっかけに「管理薬剤師」や「高度な専門薬剤師(がん・緩和ケア等)」への道が開ければ、月5万円以上の年収アップも十分現実的です。まずは小さな一歩が、将来の大きな差を生みます。

会社が資格取得を支援していない場合でも、自己投資として取り組む価値は十分にあります。そして、その努力を評価しない職場であれば、転職を検討する明確な理由になります。

チェック5:勤務形態の変更は検討したか

フルタイム勤務が負担になっている場合、パート勤務への変更も選択肢です。

特に、家庭や育児との両立に悩んでいる薬剤師にとって、働き方を変えるだけで「やりがい」を取り戻せることがあります。時間に余裕ができることで、自己研鑽に時間を使えたり、患者対応により丁寧に向き合えたりします。

逆に、パート勤務で物足りなさを感じているなら、正社員への転換を相談してみてください。

働き方の柔軟性は、現代の職場において重要な要素です。会社が対応してくれないなら、それは離職を判断する材料になります。

チェック6:副業・ダブルワークで視野を広げたか

本業だけでやりがいを求めるのではなく、別の場所で専門性を活かす方法もあります。

在宅医療の訪問薬剤師、オンライン服薬指導、健康相談のアドバイザーなど、薬剤師の活躍の場は広がっています。副業を通じて新しいスキルを身につけたり、異なる患者層と接したりすることで、本業にも良い影響が出ることがあります。

ただし、就業規則で副業が禁止されている場合は要注意です。その場合は、会社に相談するか、転職を検討する材料の一つとして記録しておいてください。

チェック7:転職サイトで「他社からの評価(見積もり)」を入手したか

これが、今の職場で状況を変えるための「最強のカード」です。

上司に業務改善や待遇を相談する際、多くの薬剤師は「丸腰」で行ってしまいます。「大変なんです」「給料を上げてください」と感情に訴えても、組織は動きません。 私が人事部長だった頃、最もドキッとした(=対応せざるを得なかった)のは、部下からこう言われた時です。

「実は、他社から年収〇〇万円でのオファーを頂いています。ですが、私は愛着のあるこの会社で働き続けたいと考えています。評価を見直していただけませんか?」

これは「脅し」ではありません。ビジネスにおける正当な交渉です。 「いつでも他に行ける」というカードを持っている人だけが、今の職場でも対等に話ができるのです。

転職するつもりがなくても構いません。まずは転職エージェントに登録し、「今の自分の経歴なら、いくらのオファーが出るか?」を確認してください。 その「見積もり」を持たずに上司と面談するのは、地図を持たずに航海に出るようなものです。

私の経験上、あなたの市場価値を正しく(そして少し高めに)評価してくれるのは、以下の3社です。

  • ファルマスタッフ:調剤薬局の求人に強く、派遣・パート案件も豊富
  • レバウェル薬剤師:病院・企業求人に強く、キャリアアドバイザーの質が高い
  • ファル・メイト:高時給の派遣案件が多く、短期間での収入アップを目指せる

これら3社に登録し、複数のアドバイザーから意見を聞くことで、より正確な市場価値が把握できます。

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第3章:それでも離職を選ぶなら―退職前の最終確認事項

ここまでのチェックリストを実践し、それでも「やはり離職すべきだ」という結論に至った場合、最後に確認すべき事項があります。

離職理由は明確になっているか

「なんとなく」で辞めてはいけません。

離職理由が曖昧なまま転職すると、次の職場でも同じ問題に直面します。以下の質問に答えられるか、確認してください。

  • 現在の職場の何が、具体的に問題なのか
  • その問題は、他の職場では解決できると確信できるか
  • 次の職場に求める条件は、明確に言語化できているか

これらに答えられない場合、離職は時期尚早です。

次の職場は決まっているか

在職中に転職活動を行うことを強く推奨します。

退職してから転職活動を始めると、経済的な焦りから「妥協した選択」をしてしまうリスクがあります。私が人事部長として採用活動をしていた際、「前職を辞めてから半年以上経っている」応募者には、慎重に理由を確認していました。

企業側も、計画性のない退職にはネガティブな印象を持ちます。

退職交渉の準備はできているか

退職を決めたら、感情的にならず、冷静に交渉を進めることが重要です。

まず、就業規則で退職の申し出期限を確認してください。多くの場合、1ヶ月前の申し出が必要です。その上で、以下の手順で進めます。

  1. 直属の上司にアポイントを取る
  2. 退職の意思を明確に伝える(引き留められても揺るがない決意を持つ)
  3. 退職日を提示し、業務引継ぎの計画を示す

退職理由を詳しく説明する必要はありません。「一身上の都合」で十分です。ただし、会社側が改善策を提示してきた場合は、冷静に検討する価値はあります。

未消化の有給休暇は確認したか

退職時に有給休暇を消化する権利があります。

就業規則や労働契約書を確認し、残りの有給日数を把握してください。会社によっては、退職時の有給消化を嫌がるケースもありますが、これは労働者の正当な権利です。

ただし、円満退職を目指すなら、業務引継ぎとのバランスを考慮することも大切です。


第4章:やりがいを取り戻すための具体的アクション

離職を選ばず、現在の職場で「やりがい」を再構築することを決めたなら、以下の具体的なアクションを実践してください。

毎日の業務に「小さな目標」を設定する

大きな変化を求めるのではなく、日々の業務の中で達成感を得られる小さな目標を作ります。

「今日は3人の患者に、薬の飲み方以外の健康アドバイスをする」「今週中に新薬の添付文書を5つ読む」といった、具体的で達成可能な目標です。

これを続けることで、「成長している」という実感が蓄積されます。

患者との関わり方を見直す

「やりがい」を最も感じられるのは、患者から感謝の言葉をもらった瞬間です。

服薬指導の時間が短くても、一言余計に声をかけるだけで、患者との関係性は変わります。「お薬の効き具合はいかがですか」「何か困っていることはありませんか」と尋ねるだけで、患者は「この薬剤師は私のことを気にかけてくれている」と感じます。

忙しい中でも、一人の患者に全力で向き合う瞬間を作ってください。

同僚との関係性を改善する

職場の人間関係が良好であれば、やりがいは格段に高まります。

同僚と協力し合える環境を作るため、積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。業務の合間に雑談をする、困っている同僚を助ける、感謝の言葉を伝える。

こうした小さな行動の積み重ねが、職場の雰囲気を変えます。

外部の薬剤師コミュニティに参加する

職場の外に目を向けることも有効です。

薬剤師の勉強会や交流会に参加することで、異なる価値観や働き方に触れられます。「自分の職場が全てではない」と気づくことで、視野が広がり、新たなやりがいを見つけられることがあります。

オンラインのコミュニティも増えているので、地理的な制約も少なくなっています。


あなたのキャリアを守る「武器」を持ってください

ここまで読んでくださったあなたは、現状を打破したいという強い思いを持っているはずです。 今の職場に残って戦うのも、新しい環境へ飛び込むのも、どちらも正解です。

しかし、元人事部長としてこれだけは伝えさせてください。 「選択肢がない状態」で、我慢することだけは絶対に避けてください。

「ここを辞めたら次がないかもしれない」という不安は、あなたの判断力を鈍らせ、ブラックな環境に縛り付けます。 逆に、「いざとなれば、自分を高く評価してくれる場所がある」という自信は、今の職場での発言力さえも高めてくれます。

だからこそ、悩んでいる「今」こそが、エージェントに相談するベストなタイミングなのです。 本格的に辛くなってからでは、冷静な判断ができません。心に余裕があるうちに、外部の世界と繋がっておくこと。それが、あなたの薬剤師人生を守る保険(セーフティネット)になります。

ファルマスタッフやレバウェル薬剤師のような信頼できるエージェントは、無理に転職を勧めません。「今の職場に残るべき」というアドバイスも含めて、あなたの市場価値を客観的に教えてくれます。

まずは自分の市場価値を知ることから始めてください。 その小さなアクションが、あなたの「やりがい」を取り戻すための、最初で最大のステップになるはずです。

あなたの市場価値は、あなたが思っているよりもずっと高い。

そして、あなたのキャリアを最も大切に守れるのは、あなた自身だけなのです。

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この記事を書いた人

調剤薬局チェーン元人事部長・薬剤師・中小企業診断士。
約4年間、人事責任者として薬剤師の採用・評価制度設計に従事。大手を中心に20社以上の紹介会社と折衝し、採用の舞台裏から「紹介会社の実力差」を熟知する。現在は経営コンサルタントとして、調剤薬局の採用戦略や人事考課制度の設計支援を行う一方、薬剤師個人のキャリア支援も行っている。採用側と求職側、双方の視点を持つ「情報の非対称性を解消する」解説に定評がある。

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