毎日同じ作業で消耗していませんか?元人事部長が教える、”年収とやりがい”を同時に上げる『小さな業務改善』5選

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毎日同じ作業の繰り返しに、心のどこかで「このままでいいのか」と感じていませんか?

処方箋を受け取り、調剤し、監査して、服薬指導を行う。この一連の流れを何十回と繰り返す毎日。患者さんから「ありがとう」と言われることはあっても、ふと立ち止まったとき「自分はこの職場で成長できているのだろうか」という疑問が頭をよぎることはないでしょうか。

マイナビ薬剤師の「薬剤師白書2023年度版」によると、薬剤師が退職を考え始めるきっかけとして「仕事内容・やりがいに関する理由」が31.4%を占めています。給与条件(34.6%)や人間関係(31.7%)とほぼ同水準であり、やりがいの喪失が離職の大きな要因となっていることがわかります。

私は調剤薬局チェーンで人事部長として4年間、採用担当としては計6年間、多くの薬剤師のキャリア相談に向き合ってきました。その中で確信を持って言えることがあります。やりがいは「与えられるもの」ではなく「自ら創り出すもの」だということです。

そして、やりがいを創出するための最も効果的な方法の一つが「業務改善プロジェクト」への主体的な参画です。本記事では、業務改善を通じてやりがいを取り戻し、さらにはキャリアアップにつなげるための具体的な行動術を解説します。


なぜ業務改善がやりがい創出につながるのか

対物業務から対人業務へのシフトという時代背景

2015年に厚生労働省が公表した「患者のための薬局ビジョン」では、薬剤師の業務について「対物業務から対人業務へ」という明確な方針が示されました。調剤や薬袋の作成といった薬中心の業務から、服薬指導や継続的なフォローアップといった患者中心の業務へのシフトが求められています。

しかし現実はどうでしょうか。多くの薬剤師が日々の対物業務に追われ、患者さん一人ひとりに十分な時間を割けていないと感じているはずです。

この課題を解決するカギが「対物業務の効率化」です。業務を見直し、無駄を省くことで生まれた時間を対人業務に充てる。この構造的な転換こそが、薬剤師としてのやりがいを取り戻す第一歩になります。

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「自分の意見が反映される」ことの重要性

薬剤師を対象にしたアンケート調査では、やりがいを感じられる職場の条件として「自分の意見が反映されやすい環境」が上位に挙げられています。ある回答者は「意見が反映されるということは、信頼してくれているということ。だからこそ力を発揮でき、やりがいを感じられる」と述べています。

業務改善プロジェクトに参画することは、まさにこの「自分の意見が反映される」経験を得る機会です。現場の課題を発見し、解決策を提案し、実行に移す。このサイクルを回すことで、単なる作業者ではなく「職場を良くする当事者」としての実感が生まれます。


業務改善プロジェクトで成果を出す5つの行動術

行動術1:まず「小さな不便」を言語化する

結論から言えば、改善の種は日常の小さな違和感の中に隠れています。

私が人事部長だった頃、ある店舗で処方箋の受付から薬のお渡しまでの時間を3分短縮した薬剤師がいました。彼女が最初にやったことは「何となく不便だな」と感じていたことを具体的な言葉にすることでした。

「なぜ薬棚から目的の薬を取り出すのに時間がかかるのか」「動線が非効率ではないか」「この入力作業は本当に必要なのか」。こうした問いを立てることから改善は始まります。

実践のポイントとして、1週間の業務の中で「ここが不便」「ここに時間がかかる」と感じた場面を3つ書き出してみてください。具体的に記録することで、改善すべき課題が見えてきます。

日常の「不便」なシーン改善への「問い」の立て方最初のアクション例
薬を探す時間
「あの薬、どこだっけ?」と探す時間が頻繁にある
50音順以外の、使用頻度別配置はできないか?直近1ヶ月の出荷数上位10品目をリストアップし、一番取りやすい棚に移動を提案する
在庫切れの対応
発注漏れで急配を頼むことが週に1回以上ある
発注点のルールは明確か?人に依存していないか?発注点を記載したカードを棚に設置し、誰でも発注タイミングが分かるように可視化する
患者さんの待ち時間
特定の時間帯だけ待ち時間が30分を超える
予製(予備調剤)できるセットはないか?よく出る「軟膏の混合」や「粉薬の予製」リストを作成し、空き時間に作り置きするルールを作る
疑義照会
同じ医師に同じ内容の疑義照会を繰り返している
プロトコール(事前合意)を結べないか?過去3ヶ月の疑義照会内容を集計し、包括的指示が出せる項目がないか薬局長に相談する

行動術2:データで現状を可視化する

改善提案を通すためには、感覚ではなく数字で語ることが重要です。

「忙しい」「大変」という主観的な表現では、経営層や管理職を動かすことはできません。ビジネス改善の鉄則として、業務効率化に成功している組織では必ず業務を計測し、客観的に現状を可視化することで改善余地を明確にしています。実際に大手コンサルティングファーム等でも、業務量の可視化(ログ取得など)が改善の第一歩として推奨されています。

具体的には「1処方あたりの調剤時間」「疑義照会の発生頻度と対応時間」「患者1人あたりの服薬指導時間」などを記録します。1週間でも記録を続ければ、改善すべきボトルネックが数字として見えてきます。

私がかつて見てきた成功事例では、ある薬剤師が「午後2時台の処方箋集中率」をデータ化し、その時間帯に事務スタッフの配置を増やす提案をしました。感覚ではなくデータで示したからこそ、経営陣は即座に改善策を承認しました。

行動術3:「自分が解決する」姿勢を見せる

問題を指摘するだけの人と、解決策まで考える人では、評価は天と地ほど違います。

業務改善において最も避けるべきは「あれが悪い」「これが問題だ」と指摘だけして終わることです。人事部長として多くの薬剤師を見てきましたが、評価されるのは必ず「では、こうすれば解決できます」と提案できる人でした。

課題を発見したら「なぜそうなっているのか(原因分析)」「どうすれば解決できるか(解決策)」「実行したらどんな効果があるか(期待成果)」の3点セットで提案しましょう。

この姿勢は上司からの信頼獲得につながり、より大きな裁量を任されるようになります。そして、それ自体が新たなやりがいを生み出すのです。

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行動術4:周囲を巻き込み、チームで取り組む

一人で抱え込まず、周囲を味方につけることが成功の鍵です。

業務改善は孤独な作業ではありません。むしろ、同僚や事務スタッフ、場合によっては他店舗のメンバーを巻き込むことで、より大きな成果を生み出せます。

厚生労働省のワーキンググループ報告でも、薬局薬剤師は「症例検討会などを通じ多職種や病院薬剤師との連携を進めるべき」と提言されています。業務改善も同様で、複数の視点を取り入れることで盲点に気づきやすくなります。

私が過去に経験した好事例があります。ある店舗では「お薬手帳の電子化促進」という改善テーマについて、薬剤師だけでなく事務スタッフからもアイデアを募りました。事務スタッフから「受付時に電子手帳の利便性を一言添えるだけで反応が違う」という意見が出て、導入率が大幅に向上したのです。

改善プロジェクトを進める際は、関係者全員が「当事者」として参加できる仕組みを作ることを意識してください。

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行動術5:成果を「見える化」して共有する

改善の成果を記録し、共有することで、自分のキャリア資産になります。

業務改善に取り組んでも、成果を記録していなければ「何となくやった」で終わってしまいます。転職や社内での昇進を考えるとき、具体的な実績として語れなければ意味がありません。

改善前後の数値変化を記録しておきましょう。例えば「処方箋1枚あたりの平均処理時間を8分から6分に短縮」「疑義照会の電話対応時間を月間で5時間削減」「患者待ち時間を平均2分短縮」といった形式です。

これらの実績は職務経歴書に記載でき、面接でも具体的なエピソードとして語れます。「業務改善によって対人業務の時間を創出し、かかりつけ薬剤師の算定件数を月10件増加させた」という実績は、どの企業の人事担当者にも響くものです。

改善カテゴリー測定すべき数値(KPI)職務経歴書でのアピール文例
生産性向上・処方箋1枚あたりの処理時間
・調剤過誤(ヒヤリハット)件数
「ピッキング動線の見直しにより、1枚あたりの平均調剤時間を6分から4分へ短縮しました」
コスト削減・廃棄医薬品の金額
・残業時間
「在庫管理ルールの徹底により、年間約50万円分の期限切れ廃棄ロスを削減しました」
対人業務の質・かかりつけ薬剤師算定件数
・服薬指導の平均時間
「業務効率化で創出した時間を対人業務に充て、かかりつけ同意数を月平均3件から10件へ増加させました」
患者満足度・クレーム件数
・患者アンケートの満足度
「待ち時間表示システムを導入し、待ち時間に関するクレームを月5件から0件へ解消しました」
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業務改善がキャリアアップにつながる理由

管理職候補として評価される

業務改善に主体的に取り組む薬剤師は、マネジメント能力の片鱗を見せていることになります。私が人事部長として管理薬剤師や店舗責任者を選ぶとき、最も重視したのは「与えられた仕事をこなすだけでなく、職場を良くするための行動を取れるかどうか」でした。

課題を発見し、解決策を立案し、周囲を巻き込んで実行に移し、成果を出す。このプロセスを経験している薬剤師は、管理職として必要なスキルを既に身につけています。

転職市場での価値が高まる

厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和5年)によると、薬剤師の平均年収は約595万円(企業規模計10人以上)となっています。※最新の動向では600万円に迫る水準で推移しています。

転職市場で高く評価されるのは「業務改善を通じて組織に貢献した実績」を持つ薬剤師です。単に調剤ができるだけではなく、職場の生産性向上や患者満足度向上に寄与した経験があれば、年収交渉でも有利に働きます。

実際に「前職でプロジェクトをリードし、患者待ち時間を30%短縮した」という実績を持つ応募者がいました。この方には通常より高い年収を提示しました。具体的な成果を語れることが、市場価値を高めるのです。

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業務改善を始める前に確認すべきこと

職場環境が改善提案を受け入れる土壌か見極める

残念ながら、すべての職場が業務改善に前向きとは限りません。トップダウンの意思決定が強く、現場からの提案が通りにくい職場では、せっかくの努力が報われない可能性があります。

業務改善に取り組む前に、まず小さな提案をしてみて職場の反応を確かめましょう。「この作業順序を変えてみてもいいですか」といった軽い提案に対して、上司がどう反応するかを観察してください。

もし提案が門前払いされるような職場であれば、環境を変えることも選択肢に入れるべきです。やりがいを感じながら働ける職場は必ず存在します。

あなたの提案に対する上司・職場の反応判定推奨されるアクション
「いいね、まずは小さくやってみて」
提案を歓迎し、失敗しても責めない雰囲気がある
A
優良
今の職場で実績を作るべき
この環境は貴重です。業務改善の実績を積み上げ、昇給交渉や将来のキャリアアップの材料にしましょう。
「忙しいから後にして」「今まで通りでいい」
話は聞いてくれるが、変化を嫌う・腰が重い
B
注意
粘るか、見切るか
数字でメリットを示しても動かないなら、時間の無駄かもしれません。1〜2回提案してダメなら転職準備を始めましょう。
「余計なことをするな」「前例がない」
提案すること自体を否定・叱責される
C
危険
今すぐ脱出すべき
あなたの市場価値が下がる一方です。これ以上消耗する前に、改善提案を評価してくれる環境へ移りましょう。

自分のキャリアビジョンとの整合性を確認する

業務改善に取り組むにしても、闇雲にやればいいわけではありません。自分が将来どうなりたいのかというビジョンと照らし合わせることが重要です。

在宅医療に興味があるなら、在宅訪問の効率化や多職種連携の改善に取り組む。管理職を目指すなら、店舗全体の業務フローの見直しに携わる。専門性を高めたいなら、特定領域の服薬指導の質を高める取り組みを行う。

このように、自分のキャリアプランに沿った業務改善テーマを選ぶことで、やりがいとキャリアアップを両立できます。

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業務改善を通じてやりがいを見出した薬剤師の事例

私が出会った薬剤師Aさん(30代女性)の話をさせてください。

Aさんは入社5年目、調剤薬局で働く中堅薬剤師でした。「毎日同じことの繰り返しで成長を感じられない」と相談に来たことが最初の出会いでした。

私はAさんに「何か一つ、職場の不便を解消してみませんか」と提案しました。Aさんが着目したのは「処方箋のFAX受信から調剤開始までのタイムラグ」でした。

現状を調べると、FAX受信から入力開始まで平均8分かかっていました。原因は、FAX受信に気づくのが遅れることと、受信した処方箋の仕分けに時間がかかっていたことでした。

Aさんは事務スタッフと協力して改善策を実行しました。FAX受信時にアラート音を鳴らす設定に変更し、処方箋は受付順に番号札を付けて管理する仕組みを導入しました。結果として、タイムラグは8分から3分に短縮されました。

この経験を通じてAさんは「自分にも職場を変える力があるんだ」と実感したそうです。その後、Aさんは複数の改善プロジェクトを主導し、2年後には管理薬剤師に昇進しました。

「最初の一歩を踏み出したことで、すべてが変わりました」。Aさんの言葉が印象的でした。

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業務改善に取り組む勇気が出ないあなたへ

「業務改善なんて大げさなことはできない」「提案しても否定されるかもしれない」。そう感じている方も多いかもしれません。

しかし思い出してください。あなたが薬剤師になった理由は何だったでしょうか。患者さんの役に立ちたい、医療に貢献したい、専門知識を活かしたい。そうした想いがあったはずです。

業務改善は、その想いを実現するための手段です。効率化によって生まれた時間で、患者さんともっと向き合える。あなたの提案で職場がより良くなれば、同僚も患者さんも幸せになる。

最初から大きなことをする必要はありません。まずは「この棚の配置を変えたら取り出しやすくなるのでは」といった小さな提案から始めてみてください。

あなたの市場価値は、あなたが思っているよりずっと高いはずです。その価値を発揮する場として、業務改善プロジェクトを活用してください。


信頼できるエージェントを味方につける

業務改善に取り組んでも評価されない、そもそも改善提案ができる環境ではない。そのような場合は、環境を変えることも視野に入れるべきです。

私が人事部長時代、実際に「交渉力が高く、信頼できる」と感じたエージェントについては、以下の記事で実名を挙げて解説しています。失敗したくない方は、必ずチェックしてください。

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やりがいは自分で創り出せる

やりがいの喪失は、薬剤師にとって深刻な問題です。しかし、それは決して逃げられない運命ではありません。

業務改善という切り口から職場に貢献することで、あなたは「作業者」から「変革者」へと立場を変えることができます。その過程で得られる達成感、周囲からの信頼、そしてキャリアアップの機会。これらすべてが、あなたのやりがいを形作っていきます。

厚生労働省も薬剤師に対して「対物業務から対人業務へ」のシフトを求めています。この流れに乗り、業務改善を通じて対人業務の時間を創出する薬剤師は、これからの時代に求められる人材です。

今日から一つ、「この作業、もっと効率化できないかな」という視点で仕事を見てみてください。その小さな一歩が、あなたのキャリアを大きく変える第一歩になります。

⚠️ 12月は「好条件求人」の争奪戦です

正直にお伝えします。12月10日のボーナス支給後は、一年で最も転職希望者が増える人材争奪戦のピークです。 完全週休二日制かつ年収650万以上の求人、本当に残業のない求人は、すぐに埋まってしまう恐れがあります。残り物で妥協しないよう、年内に「求人の枠(席)」だけは確保してください。

ただし、焦って変なエージェントを選ばないでください。

私は人事責任者として、大手を中心に20社以上の紹介会社と渡り合ってきました。その中で、「この担当者は信用できる」「求職者の利益を第一に考えている」と私が裏側から認定できたのは、わずか数社しかありません。

彼らは、私が求人者として「担当者の固定化」などの厳しい要望を出しても誠実に対応し、何より薬局側にとって都合の悪い情報(実際の残業時間や離職率の高さ)まで、求職者に包み隠さず伝えていました。

あなたの市場価値を正当に評価してくれる職場を見抜くために、私が人事の裏側から見て「本物だ」と確信したエージェントとその理由を記事にしました。転職に失敗したくない方はぜひご覧ください。

あなたの薬剤師としてのキャリアが、より良い方向に進むことを心から願っています。

あなたの薬剤師としての可能性は、まだまだ広がっています。


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この記事を書いた人

調剤薬局チェーン元人事部長・薬剤師・中小企業診断士。
約4年間、人事責任者として薬剤師の採用・評価制度設計に従事。大手を中心に20社以上の紹介会社と折衝し、採用の舞台裏から「紹介会社の実力差」を熟知する。現在は経営コンサルタントとして、調剤薬局の採用戦略や人事考課制度の設計支援を行う一方、薬剤師個人のキャリア支援も行っている。採用側と求職側、双方の視点を持つ「情報の非対称性を解消する」解説に定評がある。

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