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「年上のスタッフに指示を出すのが怖い」と感じていませんか?
管理薬剤師に昇格した途端、ベテランパートさんの冷たい視線を感じるようになった。10年以上のキャリアを持つ先輩薬剤師に業務改善を提案したら、あからさまに無視された。
こんな経験に心当たりはないでしょうか。
私が調剤薬局の人事部長として、およびコンサルタントとして現場を回る中で、受けた相談の一つが「年上部下との関係」でした。厚生労働省の「令和4年医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、薬局に従事する薬剤師の平均年齢は46.8歳です。30代で管理薬剤師に昇格すれば、事務員も含めて職場の過半数が年上という状況は珍しくありません。
そしてビズリーチ WorkTech研究所が2025年11月に発表した調査では、管理職経験者の83.2%が「年上の部下を持った経験がある」と回答し、そのうち68.0%が「そのマネジメントに悩んだ経験がある」と報告されています。あなたは決して一人ではないのです。
本記事では、私が人事部長・コンサルタントとして10年間以上見てきた「年上部下との関係構築に成功した管理薬剤師」と「失敗した管理薬剤師」の違いを徹底分析し、実践的な7つのマネジメント術をお伝えします。
| 比較項目 | ⭕ 成功する管理薬剤師 | ❌ 失敗する管理薬剤師 |
|---|---|---|
| 指示の出し方 | 敬語を使いつつ、期限と内容を明確に伝える | 「言わなくても分かるだろう」と曖昧にする |
| 経験の捉え方 | 「頼れる武器」として積極的に相談する | 「自分の立場を脅かすもの」と警戒する |
| ルールの運用 | シフトや評価基準を全員に「見える化」する | 年上スタッフにだけ気を使い、特別扱いする |
術1:「役職」と「人間としての敬意」を明確に分離する
年上部下のマネジメントで最初につまずくのが、「上司として指示を出すこと」と「年上への敬意」の両立です。
私が見てきた成功例に共通していたのは、この2つを明確に分離している点でした。ある30代の管理薬剤師Aさんは、50代のベテランパートBさんに対して常に敬語を使いながらも、業務上の指示は明確に出していました。
「Bさん、いつもありがとうございます。本日の在庫確認の件ですが、15時までに完了をお願いできますでしょうか」
このように、敬語で丁寧に接しながらも、期限と内容は具体的に伝える。曖昧さを残さないことがポイントです。
逆に失敗するケースでは、「Bさんは経験豊富だから分かってくれるだろう」と期待して指示を省略してしまう。結果として業務が滞り、「なぜやってくれなかったんだ」と不満を募らせる悪循環に陥ります。
実践ポイント
- 業務上の指示は「いつまでに」「何を」「どこまで」を明確に
- 言葉遣いは敬語を基本とし、年長者への敬意を示す
- 指示の内容と人格への尊重は別物だと自分に言い聞かせる

術2:「経験」を武器に変える相談型マネジメント
年上部下が持つ最大の財産は「経験」です。この経験を脅威と捉えるか、チームの武器と捉えるかで、マネジメントの成否は大きく分かれます。
私が過去に接した店舗で印象的だったケースがあります。32歳で管理薬剤師になったCさんは、着任直後に58歳のベテラン薬剤師Dさんから露骨に距離を置かれました。Dさんは「若い管理者に何が分かる」という態度を隠そうともしませんでした。
Cさんが取った行動は、Dさんに相談することでした。
「Dさん、この門前クリニックの処方傾向について、私よりずっと詳しいと思うんです。最近の傾向で気になることがあれば教えていただけませんか?」
最初は警戒していたDさんも、自分の知識や経験が認められたことで徐々に態度が軟化。3ヶ月後には「管理薬剤師として店舗をどうしていきたいか」という相談にも乗ってくれるようになりました。
実践ポイント
- 年上部下の専門分野や得意領域を把握する
- 意思決定の前に「〇〇さんはどう思われますか?」と意見を求める
- 採用した意見は「〇〇さんのアドバイスのおかげで」と必ずフィードバック

術3:「公平性」を可視化する仕組みを作る
年上部下との関係で最も危険なのは、「えこひいき」の疑惑です。年下の上司が年上部下に対して腫れ物に触るような対応をすると、他のスタッフから「不公平だ」という不満が噴出します。
前述のビズリーチの同調査によると、マネジメントが難しくなっている理由として「多様性の増大と価値観の多様化への対応(34.6%)」が上位に挙げられています。年齢だけでなく、働き方や価値観が異なるメンバーを公平にマネジメントする難しさは年々増しているのです。
私が推奨していたのは、評価基準やシフト決定のルールを「見える化」することでした。
具体的には以下の取り組みが効果的です。
- シフト希望の提出期限と優先順位のルールを文書化
- 業務分担表を作成し、誰がどの業務を担当しているかを明確に
- 評価面談の内容をメモとして残し、本人にも共有
「なぜあの人は優遇されているのか」という疑念は、ルールの不透明さから生まれます。全員に同じルールを適用していることが見えれば、年上部下への配慮も「特別扱い」ではなく「ルールに基づいた対応」として受け入れられやすくなります。

術4:「モチベーション低下」の本当の原因を探る
年上部下のマネジメントで最も多い悩みは何でしょうか。
ビズリーチの調査によると、年上部下のマネジメントにおける具体的な課題として「モチベーション維持の難しさ(40.1%)」がトップに挙げられています。次いで「指示やアドバイスの伝えにくさ(34.6%)」が続きます。
しかし私の経験では、モチベーション低下には必ず原因があります。その多くは「役割の喪失感」と「将来への不安」に起因していました。
ある店舗で、55歳のベテラン薬剤師Eさんが急に無気力になったケースがありました。調べてみると、Eさんは以前担当していた在宅業務から外され、調剤のみを担当するようになっていました。表面上は「体力的に楽な業務を」という配慮でしたが、Eさんにとっては「自分はもう必要とされていない」というメッセージに感じられたのです。
管理薬剤師が取るべき行動は、まず1対1で話を聞くことです。
「最近、どうですか?何か気になることがあれば教えてください」
この一言から始まる対話が、問題の本質を明らかにします。Eさんのケースでは、在宅業務の「後進指導」という新しい役割を提案することで、再びやりがいを取り戻してもらえました。
| よくある低下サイン | 根本原因と管理薬剤師が取るべきアクション |
|---|---|
| 急に無気力になり、最低限の業務しかしない | 【原因】役割の喪失感 【対策】「後進指導」など、経験を活かせる新しい役割を相談して任せる |
| 新しいシステムやルール変更に強く反発する | 【原因】自分のやり方を否定されたという不安 【対策】導入前に意見を求め、「〇〇さんの知見を貸してほしい」と巻き込む |
| 他の若手スタッフに対して当たりが強くなる | 【原因】職場での居場所への不安・承認欲求の不足 【対策】面談を実施し、これまでの貢献に感謝を伝えた上で、若手のフォローをお願いする |
実践ポイント
- 月に1回は1対1の面談時間を確保する
- 「最近どうですか?」ではなく「〇〇の業務について率直な感想を聞かせてください」と具体的に
- 役割の変更や業務の縮小は、必ず本人の希望を確認してから
術5:「問題行動」を「行動」と「人格」に分けて指摘する
年上部下への指導で最も難しいのが、問題行動への指摘です。
「指示を無視する」「他のスタッフの前で管理薬剤師を批判する」「業務改善に協力しない」
こうした問題行動に直面したとき、多くの若手管理薬剤師は萎縮してしまいます。「年上だから仕方ない」「波風を立てたくない」と放置した結果、職場全体の規律が緩み、他のスタッフにも悪影響が広がります。
私が指導していたのは、「行動」と「人格」を明確に分けて指摘することでした。
悪い例:「Fさんは協調性がないですね」(人格への批判)
良い例:「先週の棚卸し業務で、Fさんが担当分を終えずに帰宅されたことがありました。他のスタッフがフォローに入る形になったのですが、今後は終わらない場合は事前に相談いただけますか」(具体的な行動への指摘)
行動を具体的に指摘することで、年上部下も「何を改善すべきか」が明確になります。人格を否定されたと感じれば反発しますが、行動の改善を求められれば受け入れやすいのです。
| 発生した問題 | ❌ 人格否定(NG例) | ⭕ 行動への指摘(OK例) |
|---|---|---|
| 業務のやり残し | 「〇〇さんは無責任ですね」 | 「昨日の分包作業が残っていました。終わらない場合は事前に相談してください」 |
| 独自のルールで動く | 「勝手なことをしないでください」 | 「この手順は先週変更されたルールと異なります。新しい手順でお願いできますか」 |
| 遅刻や無断欠勤 | 「社会人としての自覚が足りないのでは」 | 「今週2回遅刻がありました。シフトの運営に影響が出るので、何か事情があるか聞かせてください」 |
実践ポイント
- 問題が起きたら記録を残す(日時、場所、内容)
- 指摘は1対1の場で、他のスタッフがいない環境で
- 「〇〇という行動があったのですが、背景を教えていただけますか」とまず理由を聞く

術6:「小さな成功体験」を共有する仕掛けを作る
チームとしての一体感を生み出すには、「一緒に何かを成し遂げた」という経験が欠かせません。年上部下との関係も、共通の目標に向かって協力した経験を通じて改善されることが多いのです。
私が見てきた好例を紹介します。ある店舗では管理薬剤師と年上のパート薬剤師の関係が最悪でした。お互いに口も利かない状態が続いていました。
転機となったのは、その店舗が「かかりつけ薬剤師」の算定件数で地区1位を目指すプロジェクトを始めたことでした。管理薬剤師は年上パートに「患者様への声かけのコツ」を教えてほしいと依頼。ベテランの接客スキルが評価されたことで、年上パートは積極的に協力するようになりました。
3ヶ月後、実際に地区1位を達成。管理薬剤師が社内表彰で「〇〇さんの協力があってこその結果です」とスピーチしたとき、年上パートは涙を流していたそうです。
実践ポイント
- 店舗として達成可能な「少し背伸び」の目標を設定する
- 年上部下が活躍できる役割を意図的に作る
- 成果が出たら、貢献者を具体的に称える

術7:自分一人で抱え込まない「相談先」を確保する
最後にお伝えしたいのは、「助けを求める勇気」の大切さです。
年上部下との関係に悩む管理薬剤師の多くは、「自分の力で何とかしなければ」と一人で抱え込みます。しかし人事部長として断言できるのは、一人で解決できる問題には限界があるということです。
特に深刻なケース、たとえばパワハラに近い言動や、業務命令の明確な無視が続く場合は、早めにエスカレーションすべきです。具体的には以下の相談先を確保しておくことをお勧めします。
- 直属の上司(エリアマネージャー、SV)
- 人事部門
- 社内のハラスメント相談窓口
「相談したら負け」ではありません。適切なタイミングで適切な人に相談できることも、管理職としての重要なスキルです。
私の知るケースでは、管理薬剤師から早期に相談があったことで、年上部下との配置転換や、第三者を交えた面談設定など、組織としての対応が可能になることが多いです。一人で抱え込んで心身を壊してしまっては、誰も幸せになりません。
実践ポイント
- 問題が発生したら記録をつける習慣を
- 「1週間改善が見られなければ上司に相談する」など、自分の中で期限を設ける
- 相談するときは「何が起きているか」「何を試したか」「どうしてほしいか」を整理して

環境を変えることで解決するケースもある
ここまで7つのマネジメント術をお伝えしてきましたが、正直にお話しすると、すべてのケースがその職場で解決できるわけではありません。
組織の文化として年功序列意識が強すぎる職場、経営者が問題を放置している職場、そもそも人員配置に無理がある職場では、管理薬剤師個人の努力だけでは限界があります。
私の友人に対して、実際に「(話を聞く限り)その環境では無理だ」と判断し、転職を勧めたケースもありました。その方は新しい職場で、年上部下との関係構築に成功しています。環境が変われば、同じ人でも全く異なる結果になることは珍しくないのです。
今の職場で懸命に努力しているあなたを、誰も責めることはできません。しかし、努力しても報われない環境であれば、「環境を変える」という選択肢も持っておいてほしいのです。
私が人事部長時代、実際に「交渉力が高く、信頼できる」と感じたエージェントについては、以下の記事で実名を挙げて解説しています。失敗したくない方は、必ずチェックしてください。

人事の裏側から見ると、このケースは実は会社のマネジメント放棄です
現場の若手管理薬剤師に年上スタッフのマネジメントを丸投げし、本社やエリアマネージャーからのフォロー体制が全くない組織は、遅かれ早かれ崩壊します。
あなたが年上部下との関係に悩んで限界を感じているとき、それはあなた個人のスキル不足ではなく、組織の構造的な欠陥であることも多いのです。
一人で責任を感じすぎないでくださいね。
あなたのマネジメント力は、必ず市場で評価される
年上部下のマネジメントに苦労している今の経験は、必ずあなたのキャリアの糧になります。
厚生労働省の統計によると、薬局に従事する薬剤師の30代は約6.6万人、40代以上は約11万人以上を占めます。つまり、管理薬剤師であれば年上部下をマネジメントする経験は避けて通れないのです。この課題に真摯に向き合い、解決策を模索しているあなたは、すでに多くの管理薬剤師より一歩先を行っています。
年上部下との関係構築に成功した経験は、転職市場でも高く評価されます。面接で「チームマネジメントの経験」を聞かれたとき、具体的なエピソードとして語れる財産になるのです。
今日お伝えした7つの術を、明日から一つずつ試してみてください。すべてを完璧にこなす必要はありません。「敬語を意識する」「1対1の面談時間を作る」といった小さな変化から始めれば十分です。
あなたの市場価値は、あなたが思っているよりずっと高い。その価値を最大限に発揮できる環境を、自らの手で掴み取ってください。
- 年上のパート薬剤師に指示を出すのがどうしても苦手です。どうすればいいですか?
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まずは「言葉遣いは丁寧な敬語」と「指示内容は明確に」という2つを徹底してください。曖昧な指示はトラブルの元です。また、指示を出すだけでなく「〇〇さんの経験から見て、このやり方で問題ないでしょうか?」と相談ベースで巻き込むと、相手も快く動いてくれやすくなります。
- 色々試しましたが、ベテラン薬剤師の態度が改善せず、もう精神的に限界です。
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一人で抱え込まず、まずはエリアマネージャーや人事部に相談してください。それでも組織としてのサポートが得られず、環境が変わらない場合は、心身を壊す前に転職を検討するのも一つの正しい選択です。私が人事部長目線で「本当に信頼できる」と判断したエージェントをまとめていますので、限界を迎える前にこちらの記事をチェックしてみてください。
- 評価やシフトの決定で、他のスタッフから「年上ばかりえこひいきしている」と言われないためのコツはありますか?
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最も効果的なのは「ルールの見える化」です。シフトの提出期限や優先順位、業務の分担表を文書化し、スタッフ全員がいつでも確認できるようにしましょう。全員に同じルールを適用していることが客観的に分かれば、不満は劇的に減少します。
2月は求人数が最大化しますが、同時に「4月入職」を目指すライバルも激増します。人事の経験上、この時期に焦って転職先を決め、入社後に「聞いていた話と違う」と後悔する薬剤師の方を数多く聞きます。
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あなたの薬剤師としてのキャリアが、より良い方向に進むことを心から願っています。

