【要チェック】薬局倒産のリスク|元人事部長が教える危険な予兆

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2025年12月時点の情報です

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その違和感、見過ごしていませんか?

「最近、なんとなく会社の雰囲気がおかしい」 「給与明細を見ると、手当の計算が以前と違う気がする」

あなたが今、こうした小さな違和感を抱えているなら、この記事を最後まで読んでいただきたい。

私は調剤薬局チェーンで人事部長を務めていた経験があります。採用6年、人事部長4年という立場で、多くの薬局の「終わり」を見てきました。倒産や閉店に至る薬局には、ほぼ例外なく「予兆」がありました。そして残念なことに、現場の薬剤師がその予兆に気づいた時には、すでに手遅れになっているケースが少なくなかったのです。

東京商工リサーチの調査によると、2024年1〜7月の調剤薬局の倒産は累計22件で、前年同期比266.6%増という過去最多を記録し、2024年の年間倒産件数は過去最悪の水準となりました。負債総額は135億6,500万円を超え、大規模倒産も発生しています。
特筆すべきは、2025年1〜8月においてもすでに20件と、その勢いが衰えていない点です。一過性のブームではなく、構造的な「大倒産時代」に突入しており、2年連続で年間30件を超える高水準での倒産が現実味を帯びています。

注目すべきは、従業員数10人未満の小規模薬局だけでなく、50人以上の中堅規模の薬局にも倒産の波が押し寄せている点です。「うちは大丈夫」という根拠のない安心感は、もはや通用しない時代に入っています。

この記事では、中小企業診断士でもある私が実際に目撃した「危険な薬局の予兆」を具体的に解説します。あなたのキャリアと生活を守るための「早期警戒サイン」を、ぜひ身につけてください。

経営危機の予兆を見抜く7つの指標

指標1:処方箋枚数の継続的な減少

薬局経営の根幹は「処方箋枚数×処方箋単価」という単純な方程式で成り立っています。処方箋枚数が前年同月比で3ヶ月以上連続して減少している場合、それは経営悪化の明確なサインです。

私が人事部長時代に経験した閉店事例では、ほぼすべてのケースで処方箋枚数の減少が先行していました。ある店舗では、半年間で処方箋枚数が20%減少した時点で、経営陣は閉店を検討し始めていました。しかし現場の薬剤師には「一時的な減少」としか伝えられていませんでした。

特に危険なのは、新規患者が減少しているケースです。既存患者の処方日数が長期化しているだけであれば一時的な現象かもしれませんが、新規患者の流入が止まっている場合は、その薬局の存在価値が地域で低下していることを意味します。

あなたの薬局で、最近「新しい顔を見なくなったな」と感じることはありませんか。その感覚は、経営危機の最初の予兆かもしれません。

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指標2:門前医療機関の変化

調剤薬局の約8割は、病院やクリニックの近隣に位置する門前薬局です。門前の医療機関に起きる変化は、薬局経営に直結します。

以下のような兆候が見られたら、警戒レベルを上げてください。

門前医師の診察日数が減っている場合は要注意です。週5日だった診療が週4日になった、午後の診療を取りやめたといった変化は、医師の体調問題や後継者不在を示唆していることがあります。

門前医師が高齢で、後継者の話題が出ない状況も危険信号です。医師の引退と同時に、薬局が存続できなくなるケースは珍しくありません。

私が経験したケースでは、門前クリニックの院長が突然の体調不良で休診となり、そのまま閉院に至ったことがありました。その薬局は3ヶ月後に閉店を余儀なくされ、スタッフ全員が転職活動を強いられました。

指標3:人件費に関する不審な動き

人件費は薬局経営において医薬品仕入れに次ぐ大きな支出項目です。経営が悪化すると、まず人件費の削減が始まります。

給与支払日の変更や遅延は、最も深刻なサインです。「銀行の都合で」「システムの関係で」といった説明で給与支払日が後ろ倒しになった場合、資金繰りが逼迫している可能性を疑うべきです。

残業代の計算方法が突然変わった、手当の支給基準が厳格化された、賞与が予告なく減額されたといった変化も警戒が必要です。これらは経営陣が人件費を圧縮しようとしている明確な証拠です。

私が人事部長として経験した中で、最も危険だったのは「固定残業代制度への突然の移行」でした。これは実質的な給与カットであり、会社がコスト削減を急いでいることを示していました。その会社は2年後に複数店舗を閉鎖することになりました。

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指標4:薬剤師の離職と補充の状況

厚生労働省の調査によると、医療・福祉業界における離職率は15.3%程度で、全産業平均とほぼ同水準です。しかし、薬局によってその数値は大きく異なります。

危険な薬局では、薬剤師が次々と辞めていくのに補充が追いつかないという状況が生まれます。これは単なる人手不足ではなく、「この会社には将来性がない」という判断が薬剤師の間で共有されていることを意味します。

私の経験では、優秀な薬剤師ほど早く見切りをつける傾向がありました。転職市場に精通している人材、情報収集能力の高い人材は、経営の危機的状況を察知する能力も高いのです。

「最近、あの先輩が辞めた」「また新人が入ってきたけど、すぐ辞めた」といった状況が続いているなら、あなた自身も情報収集を始めるべきタイミングかもしれません。

指標5:医薬品の在庫と卸との関係

経営が悪化した薬局では、医薬品の在庫管理に異変が現れます。

デッドストック(不動在庫)が増えているにもかかわらず返品が進まない、新規採用医薬品の導入が極端に減った、欠品が頻繁に発生するようになったといった状況は、資金繰りの悪化を示唆しています。

特に注意すべきは、卸への支払いサイトの変更です。支払い期限の延長を卸に求めている場合、それは会社のキャッシュフローが悪化している証拠です。卸との関係悪化は、医薬品の安定供給にも影響を及ぼします。

ある薬局では、卸への支払いが滞った結果、新薬の納入を断られるようになりました。その薬局は患者の処方に対応できなくなり、結果として処方箋枚数の減少に拍車がかかるという悪循環に陥りました。

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指標6:設備投資の停滞

調剤薬局業界では、DX化への対応が生き残りの鍵となっています。電子処方箋、オンライン服薬指導、処方薬のネット注文など、デジタル化への投資を怠る薬局は淘汰される可能性が高まっています。

レセコンが古いままアップデートされない、分包機の故障が修理されず放置される、調剤過誤防止システムの導入が検討すらされないといった状況は、会社が将来への投資を諦めていることを示しています。

東京商工リサーチのデータによると、2024年度の調剤薬局の業績は資本金1億円以上の大手が増収増益である一方、資本金1億円未満の中小薬局は増収大幅減益という二極化が進んでいます。この差は、DX投資への対応力の差でもあります。

「うちは昔からこのやり方でやってきた」という言葉を経営者から聞いたら、それは変化を恐れているのではなく、変化するための資金がないのかもしれません。

指標7:経営者の言動の変化

経営者やエリアマネージャーの言動には、会社の状況が如実に表れます。

「頑張れば報われる」という抽象的な言葉が増え、具体的な昇給基準や評価制度の説明を避けるようになった場合は警戒が必要です。私が人事部長時代に見てきた危険な経営者には共通点がありました。

将来のビジョンを語らなくなる、あるいは逆に非現実的な夢物語ばかりを語るようになる傾向が見られました。また、従業員からの質問に対して「今は言えない」「後で説明する」と先延ばしにすることが増えていました。

あるオーナー経営者は、会社の資金繰りが厳しくなると、急に高級車を購入したり、海外出張を増やしたりしていました。これは「会社の金を自分の懐に移す」行動であり、経営者自身が会社の将来を見限っているサインでした。

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危険信号を察知したら取るべき行動

情報収集を始める

まず行うべきは、冷静な情報収集です。感情的にならず、客観的な事実を集めてください。

会社の登記情報や決算公告を確認することで、財務状況の概要を把握できます。同業他社の動向、特に近隣の薬局の求人状況を調べることで、業界全体の状況と自社の立ち位置を理解できます。

ただし、職場で露骨に転職活動をしていることを悟られないよう注意が必要です。経営が危機的状況にある会社ほど、「裏切り者」を探し出そうとする傾向があります。

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転職エージェントに相談する

危険信号を感じたら、転職エージェントへの相談を検討してください。重要なのは「今すぐ転職する」ことではなく「選択肢を持っておく」ことです。

転職エージェントを通じて、あなたの市場価値を客観的に把握することができます。また、業界の最新動向や、あなたのスキルセットがどの程度評価されるかを知ることで、今後の判断材料を得ることができます。

しかし、ここで一つだけ注意していただきたいことがあります。
「どこの転職サイトでも良い」というわけではない、ということです。

世の中には、紹介料欲しさに、経営状態が危うい薬局であっても「好条件の求人」として強引に紹介してくる悪質なエージェントも存在します。
倒産リスクを回避するために転職するのに、転職先がまた経営難では意味がありません。

重要なのは、求人票には載っていない「企業の財務体質」や「経営者の評判」といった裏情報を握っているエージェントを選ぶことです。
私が採用責任者として多くの紹介会社と付き合う中で、「ここの情報は信用できる」「ここは経営の内情まで把握している」と確信できたエージェントだけを厳選しました。

「失敗しないエージェント選び」の結論は、以下の記事にまとめています。これから動き出す方は、必ず目を通しておいてください。

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退職のタイミングを見極める

会社が倒産する前に退職するのと、倒産後に転職活動を始めるのでは、あなたの立場は大きく異なります。

倒産前であれば、次の就職先を確保してから退職届を出すことができます。退職金も(支払いが行われていれば)受け取れる可能性があります。有給休暇の消化も計画的に行えます。

一方、倒産後は突然職を失うことになり、転職活動の準備期間がありません。未払い賃金が発生するリスクもあります。失業保険の手続きや、次の職場への説明など、精神的にも負担が大きくなります。

「会社が危ないかもしれない」と感じたら、その直感を信じてください。私の経験では、現場の薬剤師の「なんとなくおかしい」という感覚は、かなりの確率で当たっていました。

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撤退・閉店の判断指標を知る

経営者の視点から、薬局の撤退・閉店を判断する指標を知っておくことは、従業員であるあなたにとっても有益です。これらの指標が満たされつつある場合、会社は閉店を検討している可能性があります。

売上高が継続的に減少している場合、特に前年比で10%以上の減少が続いている場合は危険です。利益率が大幅に低下し、営業利益がマイナスに転じている場合も同様です。

運転資金が枯渇しつつあり、キャッシュフローが慢性的にマイナスである状況、流動比率が100%を下回っている(短期的な支払い能力に問題がある)状況は、経営の継続が困難になりつつあることを示しています。

後継者が不在で、経営者が高齢である場合、事業継続の意欲自体が失われている可能性があります。M&Aや事業譲渡の話が出ている場合は、会社の方針が大きく変わる可能性があります。

これらの指標は、日常の業務の中で断片的に見えてくることがあります。経営陣の会話の端々、書類の一部、取引先との関係など、小さな情報を総合的に判断することが重要です。

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あなたの市場価値を把握しておく

どのような状況であれ、自分の市場価値を把握しておくことは、キャリアを守るための基本です。

薬剤師免許を持っているあなたには、一般のサラリーマンにはない強みがあります。資格があれば、新しい職場で薬剤師として活躍することができます。ただし、その強みを最大限に活かすためには、日頃からスキルアップを怠らないことが重要です。

かかりつけ薬剤師の実績、在宅医療の経験、認定薬剤師の資格などは、転職市場であなたの価値を高める要素となります。特に在宅医療の経験は、今後の薬局経営において重要性を増しており、市場価値の高いスキルとなっています。

決断できるのは、今だけかもしれない

薬局業界は大きな転換期を迎えています。大手の再編、異業種の参入、DX化の波、そして調剤報酬の引き下げ。これらの変化に対応できない薬局は、淘汰されていく運命にあります。

帝国データバンクの調査では、調剤薬局経営者の60歳以上が全体の62.2%を占めているというデータがあります。後継者不在、経営者の高齢化という構造的な問題が、今後さらに倒産や廃業を加速させる可能性は高いといえます。

あなたが今勤めている薬局が10年後も存在している保証はどこにもありません。だからこそ、今のうちから準備を始めることが大切なのです。

「まだ大丈夫」「きっとなんとかなる」という楽観は、時に取り返しのつかない結果をもたらします。私は人事部長として、その楽観によってキャリアを傷つけてしまった薬剤師を何人も見てきました。

あなたのスキルと経験は、もっと評価される場所があるかもしれません。危険信号を感じたなら、今こそ行動を起こすタイミングです。


⚠️ 12月は「好条件求人」の争奪戦です

正直にお伝えします。12月10日のボーナス支給後は、一年で最も転職希望者が増える人材争奪戦のピークです。 完全週休二日制かつ年収650万以上の求人、本当に残業のない求人は、すぐに埋まってしまう恐れがあります。残り物で妥協しないよう、年内に「求人の枠(席)」だけは確保してください。

ただし、焦って変なエージェントを選ばないでください。

私は人事責任者として、大手を中心に20社以上の紹介会社と渡り合ってきました。その中で、「この担当者は信用できる」「求職者の利益を第一に考えている」と私が裏側から認定できたのは、わずか数社しかありません。

彼らは、私が求人者として「担当者の固定化」などの厳しい要望を出しても誠実に対応し、何より薬局側にとって都合の悪い情報(実際の残業時間や離職率の高さ)まで、求職者に包み隠さず伝えていました。

あなたの市場価値を正当に評価してくれる職場を見抜くために、私が人事の裏側から見て「本物だ」と確信したエージェントとその理由を記事にしました。転職に失敗したくない方はぜひご覧ください。

あなたの薬剤師としてのキャリアが、より良い方向に進むことを心から願っています。

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この記事を書いた人

調剤薬局チェーン元人事部長・薬剤師・中小企業診断士。
約4年間、人事責任者として薬剤師の採用・評価制度設計に従事。大手を中心に20社以上の紹介会社と折衝し、採用の舞台裏から「紹介会社の実力差」を熟知する。現在は経営コンサルタントとして、調剤薬局の採用戦略や人事考課制度の設計支援を行う一方、薬剤師個人のキャリア支援も行っている。採用側と求職側、双方の視点を持つ「情報の非対称性を解消する」解説に定評がある。

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