薬局M&Aで待遇激変?|元人事部長が教える年収・働き方の変化と対処法

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2026年1月時点の情報です

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「うちの会社、売られるらしい」その噂を聞いたとき

「来月から親会社が変わるらしい」「M&Aで大手チェーンに吸収されるって本当?」

ある日突然、こんな噂が職場を駆け巡る。あなたは今、まさにその状況に置かれているのではないでしょうか。給料は下がるのか。シフトはどうなるのか。そもそも今の店舗で働き続けられるのか。不安ばかりが頭をよぎり、目の前の調剤業務に集中できない日々を送っているかもしれません。

私は元・調剤薬局チェーン人事部長として、採用6年、人事部長4年のキャリアを重ねてきました。その間、売却される側の立場で転職を考えている薬剤師の面接に採用担当官として携わってきました。不本意な異動や条件変更に苦しむ薬剤師も多く見てきました。

調剤薬局業界では、M&Aが年々活発化しています。全国の薬局数は約6万店舗を超え、コンビニエンスストアを上回る状況です。一方で、2年ごとの調剤報酬改定による収益圧迫、慢性的な薬剤師不足、そして経営者の高齢化と後継者不在問題が深刻化しています。

帝国データバンクの調査によれば、2024年の全国企業の後継者不在率は52.1%と過去最低を更新しましたが、依然として企業の約半数が後継者問題を抱えています。このような背景から、大手チェーンによる中小薬局の買収や、ドラッグストアによる調剤薬局事業の拡大が加速しています。

この記事では、M&Aで会社が変わったとき、薬剤師の待遇や働き方がどのように変化するのか、人事部長としての実務経験に基づいて詳しく解説します。


M&Aの種類と薬剤師への影響の違い

M&Aには複数の手法があり、どの方法で会社が変わるかによって、薬剤師への影響は大きく異なります。まず、この基本的な違いを理解しておきましょう。

M&Aの手法雇用契約の扱い給与・待遇の変化主なリスクと注意点
株式譲渡そのまま継続原則維持(後に統一)中長期的に親会社の就業規則へ統合される
事業譲渡個別の同意が必要再契約で変動あり転籍を拒否した場合、元の会社での立場が不安定化
合併存続会社に承継段階的に統一異なる社風・システムへの適応負荷が大きい

株式譲渡(最も一般的なケース)

調剤薬局のM&Aで最も多いのが株式譲渡です。この場合、会社の株主(オーナー)が変わるだけで、会社自体は存続します。法的には、あなたの雇用契約はそのまま継続されます。給与、勤務時間、勤務地などの労働条件も、原則として変更されません。

ただし「原則として」という点に注意が必要です。買収後、新しい親会社の方針により、就業規則の改定や人事制度の統一が行われることは珍しくありません。私が人事部長として経験したM&Aでも、株式譲渡後、約6ヶ月から1年かけて人事制度の統一が行われました。給与テーブルの統一、評価制度の変更、福利厚生の調整などが段階的に実施されていきます。

事業譲渡

事業譲渡の場合は、状況が複雑になります。労働契約承継法は会社分割に適用されますが、事業譲渡には適用されません。つまり、あなたの労働契約を新しい会社に移すためには、あなた自身の同意が必要になります。転籍を拒否した場合、元の会社に残ることができますが、その会社自体が事業を縮小していれば、別の問題が生じます。

合併

合併の場合、消滅会社の労働者は、労働条件を維持したまま存続会社に包括的に承継されます。法的には最も保護が厚い形態といえます。ただし、合併後に複数の人事制度が併存する状態は、企業経営上、長期間は続きません。一定の条件のもとで就業規則の変更による労働条件の調整が認められています。

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待遇面での変化|年収・手当・福利厚生はどうなる?

M&A後の待遇変化について、私が人事部長として実際に経験した事例をもとに解説します。

年収の変化パターン

M&A後の年収変化には、大きく分けて3つのパターンがあります。

「上がるパターン」は、元の会社が相場より著しく低い賃金設定だった場合や、残業代が適切に支払われていなかった場合に見られます。

大手チェーンは、地方の個人薬局が提示する高額年収に比べると、額面の基本給は見劣りすることがあります。しかし、1分単位の残業代支給、充実した住宅手当、確定拠出年金などの福利厚生を含めた総報酬額で見ると、実質的に待遇が改善するケースが多いのが特徴です。

特に、ブラックに近い環境で働いていた方にとっては、法令遵守(コンプライアンス)が徹底された大手傘下に入ることで、年収と生活の質の双方が向上する「勝ち確」の展開もあり得ます。

「維持されるパターン」は、買収側が「人材確保」を重視している場合です。調剤薬局業界では薬剤師不足が深刻であり、厚生労働省のアンケート調査によると、薬剤師が不足していると認識している薬局の割合は41.2%に上ります。このため、買収後すぐに待遇を下げることは、人材流出につながるリスクがあります。

「下がるパターン」は、買収側の給与テーブルが元の会社より低い場合や、経営再建を目的としたM&Aの場合に見られます。ただし、労働契約法により、使用者が一方的に労働条件を不利益変更することは原則として認められていません。

変化パターン起こりやすいケース年収以外の変化(福利厚生等)評価:薬剤師にとっての損得
上がる中小からコンプラ重視の大手へ残業代の1分単位支給、住宅手当の充実【勝ち確】 労働環境と収入が共に改善
維持人材流出を恐れる買収側当面は現状維持だが、評価制度が変わる【現状維持】 静観しつつ市場価値を確認すべき
下がる地方高給から大手基準へ手当の廃止、退職金制度の変更など【警戒】 転職エージェントへの相談推奨ライン

実際にあった事例:給与体系統一の現場

私が見聞きした事例を一つ紹介します。ある中堅チェーンが大手に買収されたとき、給与テーブルの統一が課題となりました。中堅チェーンでは「管理薬剤師手当」が月額5万円でしたが、大手では月額3万円でした。一方、大手には「在宅医療手当」「かかりつけ薬剤師手当」など、中堅チェーンにはない手当が複数ありました。最終的には、移行期間として2年間の調整給を設け、急激な収入減を防ぐ措置が取られました。

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働き方の変化|勤務地・シフト・業務内容

待遇面以上に、日々の働き方への影響を心配される方は多いでしょう。

勤務地の変更リスク

M&A後、最も起こりやすい変化の一つが勤務地の変更です。買収側が複数店舗を運営している場合、人員配置の最適化が行われます。薬剤師不足の店舗への異動、重複店舗の統廃合、新規出店への配置などが検討されます。

ただし、雇用契約で勤務地が限定されている場合は、本人の同意なく異動させることはできません。「転勤なし」の条件で入社した方は、この点を確認してください。一方、「転勤あり」の条件で入社している場合でも、業務上の必要性がない場合や、不当な動機・目的がある場合は、配転命令権の濫用として無効となる可能性があります。

シフト・業務内容の変化

大手チェーンに買収された場合、シフト管理が厳格化されることがあります。中小薬局では、スタッフ間の話し合いで柔軟にシフトを調整していたものが、システム管理に移行することで融通が利きにくくなるケースがあります。一方で、大手チェーンでは人員配置に余裕があり、急な休みにも対応しやすくなるメリットもあります。

業務内容については、「かかりつけ薬剤師」の推進、「在宅医療」への参入、「健康サポート薬局」の認定取得など、新たな業務が求められることがあります。これらは薬剤師としてのスキルアップにつながる面もありますが、慣れない業務への不安を感じる方もいるでしょう。

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M&A発表後にあなたがやるべき5つのこと

M&Aが発表されたとき、不安に駆られて何も行動できなくなる方がいます。しかし、この時期の行動が、あなたの今後を大きく左右します。

【1】労働条件通知書・雇用契約書を確認する

まず、現在の労働条件を正確に把握してください。給与、勤務時間、勤務地、休日、福利厚生など、すべての条件を確認します。M&A後に新しい労働条件を提示されたとき、比較の基準となるのがこの書類です。「以前はこうだった」という記憶だけでは、交渉の材料になりません。

【2】説明会には必ず出席し、質問する

会社がM&Aに関する説明会を開催する場合、必ず出席してください。そして、雇用継続の有無、労働条件の変更、勤務地の変更、給与体系の変更、退職金・有給休暇の扱い、いつから新体制に移行するのかなど、疑問点は必ず質問しましょう。

【3】新しい労働条件を書面で確認する

M&A後、新しい労働条件が提示されたら、必ず書面での確認を求めてください。口頭での説明だけでは、後々トラブルになることがあります。特に、移行期間中の条件(調整給の期間、段階的な変更の内容など)は詳細に確認しておく必要があります。

【4】転職エージェントに相談する

M&Aが発表されたら、転職エージェントに相談することをお勧めします。これは「すぐに転職する」という意味ではありません。自分の市場価値を把握し、他社の条件を知っておくことで、新しい会社から提示される条件が妥当かどうか判断できるようになります。また、万が一の場合の選択肢を確保しておくことで、精神的な余裕も生まれます。

⚠️ 【1月限定】ライバルが増える前に|好条件の求人を「先行予約」する逆算思考

人事の現場から率直にお伝えします。もしあなたが「理想の環境」での4月入職を目指すなら、1月に動き出すことには大きな戦略的メリットがあります。

2月・3月は転職市場が最大級に盛り上がり、求人数もピークを迎えますが、同時に「ライバルの数」も爆発的に増える時期です。人事責任者として多くの採用を見てきた経験から言えば、「高年収で、かつ残業が極めて少ない」といった希少な優良枠ほど、比較検討の時間が取れるこの1月のうちに、賢明な薬剤師の方々によって内定が埋まり始めるのが実情です。

混戦となる2月以降にスピード勝負を挑むのも一つの手ですが、今のうちなら、より多くの選択肢の中からじっくりと「自分に合う職場」を見極めることができます。

ただし、焦って「広告費の規模」だけでエージェントを選ばないでください。 私は人事の立場から20社以上の紹介会社と向き合ってきましたが、中には自社の利益を優先し、現場のネガティブな情報を伏せる担当者も少なくありませんでした。

その中で、「現場の離職率や人間関係まで正直に明かし、求職者のキャリアに誠実に向き合ってくれる」と確信できたエージェントは、本当にごく一部です。

納得のいく環境で最高のスタートを4月に迎えるために。私が人事の裏側から見て「ここなら信頼できる」と認定したエージェントと、その賢い活用術をまとめました。一歩先んじて準備を整えたい方は、ぜひ参考にしてください。

あなたの薬剤師としてのキャリアが、より良い方向に進むことを心から願っています。

【5】冷静に状況を見極める

M&Aは、あなたが「今の職場の本当の価値」と「自分の市場価値」を照らし合わせる、人生最大のチャンスでもあります。大手チェーンの傘下に入ることで、キャリアアップの機会が増える、教育研修制度が充実する、福利厚生が向上するなど、プラスの面もあります。慌てて退職を決断するのではなく、一定期間は新体制の下で働いてみて、自分に合うかどうかを見極めることも重要です。

アクションチェックすべき重要項目目的とメリット
現契約の確認勤務地限定、退職金の規定、残存有給数変更提示があった際の「交渉材料」にする
説明会での質問労働条件の維持期間、新しい評価制度経営陣の本気度と透明性を測る
書面化の要求「調整給」の期間、激変緩和措置の内容「言った言わない」のトラブルを未然に防ぐ
市場価値の把握同条件での他社求人、エージェントの評価今の会社に固執せず、精神的優位に立つ
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退職を検討すべきケース|ここが限界ラインの判断基準

M&A後、すべての変化を受け入れる必要はありません。以下のようなケースでは、転職を真剣に検討すべきです。

著しい労働条件の不利益変更

年収が大幅に下がる、勤務地が大きく変わる(通勤時間が極端に延びる)、業務内容が本来の希望と大きく異なるなど、著しい不利益変更がある場合は、転職を検討する十分な理由になります。労働契約法では、使用者が一方的に労働条件を不利益変更することは原則として禁止されています。しかし、会社との交渉が難航する場合や、就業規則の変更が「合理的」と判断される場合は、不本意な条件を受け入れざるを得ないこともあります。

経営方針・企業文化の不一致

数字だけでは測れない変化もあります。「患者さんとの会話を大切にする」文化が、「処方箋枚数を増やす」方針に変わった。「スタッフの成長を見守る」マネジメントが、「結果で評価する」成果主義に変わった。このような価値観の不一致は、日々の仕事のやりがいに直結します。私が見てきた中で、M&A後に退職を選んだ薬剤師の多くは、給与面ではなく「企業文化の変化」を理由に挙げていました。

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あなたの市場価値は、あなたが思っているよりずっと高い

M&Aによって会社が変わることは、確かに不安を伴う出来事です。しかし、薬剤師という資格を持つあなたには、選択肢があります。薬剤師の有効求人倍率は全職種平均を大きく上回っています。特に地方では薬剤師不足が深刻であり、経験豊富な薬剤師は引く手あまたの状況です。

今の環境で悩み続けたあなたを、誰も責めることはできません。M&Aという外的な要因によって、キャリアを見つめ直す機会を得たと捉えることもできます。大切なのは、受け身で変化を待つのではなく、主体的に情報を集め、自分にとって最善の選択をすることです。新しい環境で成長する道を選ぶのか、転職によって新天地を目指すのか。どちらの選択も、あなたの薬剤師としてのキャリアを豊かにする可能性を持っています。

なぜ私が人事部長時代、この3社の電話は優先的に取っていたのか?採用裏話を含む、本当に信頼できるエージェントの選び方についてはこちらの記事をご覧ください。

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