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転職エージェントは何社使うべきか？元人事の答え
転職エージェントに登録しようと思ったとき、「1社だけで大丈夫だろうか」と不安になっていませんか。
実は、転職成功者の多くが複数のエージェントを併用しています。過去の大手人材会社の調査データでは、転職成功者は平均4.2社のエージェントを利用していたという記録もあります。 最近の傾向としても、選択肢を広げ、比較検討するために「最低でも3社」を併用することが、失敗を防ぐための定石となっています。
では、なぜ複数のエージェントを使う必要があるのでしょうか。そして、何社くらいが適切なのでしょうか。
私が調剤薬局チェーンで採用担当をしていた頃、エージェント経由で応募してくる薬剤師の中には「連絡が多すぎて管理できなくなった」という失敗例も見てきました。
一方で、戦略的に複数のエージェントを使い分けて、年収交渉を有利に進めたり、非公開求人の情報を効率的に集めたりして成功した薬剤師も数多く見てきました。
この記事では、元調剤薬局チェーン採用担当者として、複数エージェント併用の「メリット・デメリット」と、管理が破綻しない「上手な使い分け方」を実践的に解説します。
なぜ複数のエージェントを使うべきなのか？採用側が見た現実
まず、なぜ複数のエージェントを併用する必要があるのかを、採用側の視点から解説します。
エージェントごとに保有求人が違う
転職エージェントが扱う求人の約7〜8割は「非公開求人」です。これらは求人サイトや企業の公式サイトには掲載されていません。
さらに、特定のエージェントだけが取り扱う「独占求人」も存在します。つまり、1社のエージェントだけに登録していると、好条件の求人を見逃してしまう可能性があるのです。
私が採用担当だった頃、有期雇用契約社員という特別な高額求人を一部エージェントにのみ出していたことがありました。
これは、エージェントとの関係性や過去の実績によって、求める人物像を理解できているエージェントにのみ連絡していたためです。
エージェントによって得意分野が違う
日本には約29,000社以上の職業紹介事業者があります（厚生労働省「職業紹介事業報告書の集計結果 令和5年度」）。
その中で、薬剤師に特化したエージェント、病院薬剤師に強いエージェント、調剤薬局の求人が豊富なエージェント、ドラッグストアに強いエージェントなど、それぞれ得意分野が異なります。
1社だけに絞ると、その会社が苦手とする業態や地域の求人情報が手に入りにくくなります。
担当者との相性は運次第
エージェントのキャリアアドバイザーとの相性は、転職活動のモチベーションや成功率に大きく影響します。
私が人事として面談した薬剤師の中には、「担当者が病院求人メインで、調剤薬局の実態を理解してもらえなかった」「希望と違う求人ばかり紹介されて時間を無駄にした」という声もありました。
最初から複数のエージェントに登録しておけば、自分と相性の良い担当者を比較しながら選べます。
複数エージェント併用のメリット5つ
ここからは、複数のエージェントを併用する具体的なメリットを解説します。
メリット1：求人の選択肢が圧倒的に増える
複数のエージェントに登録すれば、それだけ多くの求人情報にアクセスできます。
たとえば、大手総合型エージェントの公開・非公開求人数を見てみると、1社で数万件以上の求人を保有しています。登録するエージェントを1つ増やすだけで、数万件単位で選択肢が広がるのです。
特に薬剤師の場合、地方の小規模薬局や在宅医療に力を入れている薬局など、特定のエージェントしか扱っていない求人も多く存在します。
メリット2：年収交渉を有利に進められる
複数のエージェントから同じような条件の求人を紹介されたとき、「他のエージェントではこの条件で提示されている」という情報を使って交渉材料にできます。
私が人事として年収交渉を受けた際、「他社からも内定をいただいており、年収○○万円の提示を受けています」と言われると、採用側も真剣に検討せざるを得ませんでした。
エージェント側も、他社と競合していることを知れば、より良い条件を引き出そうと尽力してくれます。
メリット3：様々な視点からアドバイスを受けられる
職務経歴書の書き方、面接対策、自己PRの作り方など、キャリアアドバイザーによってアドバイスの内容は異なります。
複数のエージェントから異なる視点のアドバイスを受けることで、自分では気づかなかった強みや改善点が見えてきます。
知人の薬剤師の中には、「A社のアドバイザーは調剤経験を強調するようアドバイスされ、B社では在宅医療の経験を前面に出すよう言われた」というケースがありました。両方の視点を取り入れた結果、面接での受け答えに深みが出て、入社につながったという例もあります。
メリット4：業界の裏情報を多角的に集められる
エージェントによって、持っている情報の質や量が違います。
ある薬局チェーンについて、A社は「業績好調で拡大中」という情報を持っていても、B社は「離職率が高く人手不足」という裏情報を持っているかもしれません。
複数のエージェントから情報を集めることで、企業の実態をより正確に把握できます。
私が採用担当だった頃、エージェントによって伝えている情報が微妙に違うこともありました。情報収集に熱心な薬剤師は、面接で的確な質問をしてくることが多く、「この人はしっかり調べているな」と好印象を持ちました。
メリット5：スケジュール調整がスムーズになる
複数のエージェントを使っていることを伝えれば、面接日程や内定返答期限の調整がしやすくなります。
採用側としても、「他社の選考が進んでいるなら早めに結論を出さないと」という心理が働きます。実際、私が人事として対応した際も、複数社で選考中の候補者には優先的にスケジュールを調整したり、内定承諾期限を延長したりしていました。
複数エージェント併用のデメリット4つ
一方で、複数のエージェントを使うことには注意すべき点もあります。
デメリット1：連絡が多すぎて管理が大変
登録するエージェントが増えれば、その分連絡も増えます。
電話、メール、LINEなど、複数のチャネルから連絡が来るため、「誰がどの求人を紹介してくれたのか」「どのエージェントとどんな話をしたのか」が分からなくなることがあります。
デメリット2：同じ求人を紹介されることがある
大手の薬局チェーンや病院の求人は、複数のエージェントが扱っていることが多いです。
同じ求人を何度も紹介されると、「この求人、もう聞きました」と断るやり取りが増え、時間の無駄になります。
デメリット3：情報が多すぎて判断に迷う
選択肢が増えることは良いことですが、逆に「どの求人が自分に合っているのか分からない」という状態に陥ることもあります。
複数のエージェントから異なるアドバイスを受けると、「A社は調剤薬局を勧めるけど、B社は病院を勧める。どっちが正しいの?」と混乱してしまいます。
最終的に自分で判断する軸を持っていないと、情報に振り回されて転職活動が長引く原因になります。
デメリット4：各エージェントとの関係が薄くなる
複数のエージェントに登録すると、1社あたりとのコミュニケーション頻度が減ります。
エージェントのキャリアアドバイザーも人間です。頻繁に連絡を取り、真剣に転職活動をしている人には、優先的に良い求人を紹介したくなります。
逆に、登録だけして放置している人には、良い求人が回ってこないこともあります。
【実践編】複数エージェントの上手な使い分け方
ここからは、複数のエージェントを効率的に使い分ける具体的な方法を解説します。
基本戦略：「大手特化型2社+こだわり特化型1社」の3社体制
転職成功者は平均して複数のエージェントを利用していますが、実際に並行して管理できるのは2〜3社が現実的です。 薬剤師の転職においておすすめの組み合わせは、「大手特化型2社+こだわり特化型1社」の3社体制です。
薬剤師業界では、全職種を扱う総合エージェントよりも、薬剤師に特化した「大手特化型（例：ファルマスタッフ、レバウェル薬剤師など）」の方が、圧倒的に求人数と交渉力を持っています。まずはここを2社押さえるのが鉄則です。 その上で、特定の地域に強い会社や、派遣・パートに強い会社（ファル・メイトなど）など、自分の目的に合った「こだわり特化型」を1社選びます。
役割分担を明確にする
複数のエージェントを使う際は、それぞれに役割を持たせると管理しやすくなります。
たとえば、以下のような役割分担です。
A社(大手特化型)：メインエージェント 求人数が最も多く、レスポンスが早いエージェントをメインに据えます。ここを基準に市場価値を確認し、面接対策などのサポートを使い倒します。
B社(大手特化型)：比較・検証用（セカンドオピニオン） メインとは別の視点を持つ大手を利用します。「A社ではこう言われたが、B社ではどうか？」と確認することで、情報の偏りを防ぎ、より好条件の求人がないか常にチェックします。
C社(特化型)：専門分野の深堀り用
自分の希望する業態や働き方に特化したエージェントで、ニッチな求人や業界の裏情報を集めます。
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管理表を作って情報を整理する
複数のエージェントを使う際は、必ず管理表を作りましょう。
エクセルやスプレッドシートで、以下の項目を管理します。
- エージェント名
- 担当者名・連絡先
- 紹介された求人名・企業名
- 応募日・選考状況
- 面接日程
- メモ(気になった点など)
この表を見れば、「どのエージェントが、どの求人を、いつ紹介してくれたのか」が一目で分かります。
同じ求人に複数のエージェント経由で応募してしまう失敗も防げます。
定期的に利用状況を見直す
最初は3〜4社に登録しても、転職活動を進める中で「このエージェントは自分に合わない」「この担当者とは相性が悪い」と感じることがあります。
1〜2週間に一度、利用状況を見直し、活用するエージェントを2社程度に絞り込んでいきましょう。
最終的に、最も信頼できる1〜2社に集中して転職活動を進めるのが効率的です。
各エージェントに「他社も利用している」と伝える
複数のエージェントを利用していることは、必ず各担当者に伝えましょう。
これは隠す必要がないどころか、むしろ伝えた方がメリットがあります。
エージェントの担当者も、他社と競合していることを知れば、より良い条件を引き出そうと努力してくれます。また、選考日程や内定返答期限の調整もしやすくなります。
「現在、複数のエージェントを利用しており、他社でも選考が進んでいます」と正直に伝えることで、担当者との信頼関係も築けます。
【注意】やってはいけない複数エージェント利用の失敗例
複数のエージェントを使う際、絶対に避けるべき失敗例を紹介します。
失敗例1：同じ求人に複数のエージェントから応募する
これは最も避けるべき失敗です。
採用側から見ると、「この人は管理ができていない」「本当にうちに入りたいのか疑問」という印象を与えます。
私が採用窓口を担当していた頃は、問い合わせの時点で重複の連絡をエージェントへ行っていたため、上記のような問題は生じませんでしたが、エージェントが適切な問い合わせを行なっていなかった場合、このようなことが生じる可能性があります。
管理表を作り、どのエージェントから、どの求人に応募したのかを必ず自分自身で記録しましょう。
失敗例2：エージェント同士を競わせすぎる
「A社では年収600万円と言われましたが、もっと上げられませんか？」と、エージェント同士を過度に競わせるのは逆効果です。
エージェントの担当者も、「この人は条件面しか見ていない」と判断し、サポートの質が下がる可能性があります。
年収交渉は大切ですが、あくまで「自分の市場価値を正しく評価してもらう」というスタンスで臨みましょう。
失敗例3：登録だけして放置する
複数のエージェントに登録したものの、連絡を返さない、面談に行かないというのは最悪です。
エージェントの担当者も、転職意欲が低い人には良い求人を紹介しません。
登録したエージェントとは、最低でも週に1回は連絡を取り、転職活動の進捗を共有しましょう。
失敗例4：情報を鵜呑みにする
エージェントから聞いた情報をすべて鵜呑みにするのも危険です。
エージェントも営利企業です。自社の利益になる求人を優先的に紹介することもあります。
複数のエージェントから情報を集め、自分でも企業のホームページや口コミサイトを確認し、総合的に判断しましょう。
元人事が推奨する「信頼できる」薬剤師転職エージェント3社
複数のエージェントを使い分ける際、どのエージェントを選ぶかが重要です。
私が採用担当として実際に取引し、「交渉力が高く、信頼できる」と感じたエージェントを3社紹介します。私が採用担当時代、実際に『交渉力が高く、信頼できる』と感じた理由について、以下の記事で生々しく解説しています。失敗したくない方は、必ずチェックしてください。
転職活動はあなたの未来を変える第一歩
複数のエージェントを使い分けることは、転職活動を効率的に進めるための強力な武器です。
しかし、エージェントはあくまでサポート役。最終的に判断するのはあなた自身です。
私が採用担当として見てきた中で、転職に成功した薬剤師に共通していたのは、「自分のキャリアの軸を持っていた」ということです。
年収、働き方、やりがい、キャリアアップ。何を最優先するのか、自分の中で明確にしておきましょう。
そして、複数のエージェントから得た情報を整理し、冷静に判断してください。
あなたの市場価値は、あなたが思っているよりずっと高いはずです。今の環境で悩み続けたあなたを、誰も責めることはできません。
でも、行動しなければ何も変わりません。
まずは、信頼できるエージェント2〜3社に登録し、自分の可能性を広げてみてください。
あなたの転職活動が成功することを、心から応援しています。
