【元人事部長が伝授】飲み会の断り方で評価は下がらない|薬剤師のための人間関係術

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「また今度で」が言えないあなたへ

「今日、みんなで飲みに行くけど、来るよね?」

そう声をかけられた瞬間、胸の奥がざわつく。本当は帰って体を休めたい。でも断ったら空気が悪くなるかもしれない。そんな葛藤を抱えながら、結局「はい、行きます」と答えてしまう。

厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活に関することで強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者の割合は82.7%に達しています。そのストレス要因として「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」は約25〜30%を占め、常に上位にランクインしています。(※令和4年調査では29.6%で第3位)

私は元・調剤薬局チェーンの人事部長(採用責任者)です。20社以上の紹介会社と渡り合い、多くの薬剤師面談を行ってきた経験から断言します。無理なコミュニケーションをしても自分自身を取り繕うことになり、前向きな気持ちを持って仕事をしていくことはできません。

実際に、ある薬剤師から「職場の飲み会がつらい」「断りたいけど断れない」という相談を受けたこともありました。薬剤師という職種は少人数の閉鎖的な環境で働くことが多く、人間関係の悩みが仕事のパフォーマンスに直結しやすい傾向があります。

m3.comが実施した薬剤師向け意識調査では、約40%の薬剤師が職場の人間関係に「大いに不満/やや不満」と回答しています。また、同調査では約8割の薬剤師が何らかのストレスを感じており、その最大の要因が「職場の人間関係」(48%)という結果も出ています。

この記事では、飲み会や社内イベントを上手に断りながらも、職場での信頼関係を損なわないための具体的な方法をお伝えします。我慢し続けて心身を壊す前に、自分を守る術を身につけていただければと思います。


飲み会を断ることは「悪」ではない|時代の変化を理解する

「飲みニケーション不要派」が6割を超える現実

「飲み会に参加しないなんて、協調性がない」「付き合いが悪い」——そんな風に思われることを恐れて、無理に参加し続けている方も多いでしょう。しかし、時代は確実に変わっています。

2024年に株式会社ネクストレベルが実施した調査によると、「飲みニケーションはいらない」「どちらかというといらない」と回答した社会人は64.5%に上りました。つまり、3人に2人が職場の飲み会を不要と考えているのです。

興味深いのは、この傾向が若者だけのものではないという点です。同調査では、20代・30代・40代・50代以上のすべての年代で、「飲みニケーション不要派」が多数を占めていました。「若者は飲み会を嫌う」というイメージがありますが、実際には世代を問わず、多くの社会人が飲み会への参加に消極的なのです。

なぜ飲み会を敬遠するのか?その本音

同調査で「飲みニケーションが不要」と答えた人に理由を聞いたところ、以下のような回答が上位を占めました。

第1位:「気を遣うから」(6割以上)

若手は上司や先輩に気を遣い、上司は部下に気を遣う。立場を問わず、飲み会は「リラックスの場」ではなく「気遣いの場」になっているのです。

第2位:「業務時間外だから」

仕事とプライベートを明確に分けたいという価値観は、もはや当たり前になっています。

第3位:「お金がかかるから」(40.7%)

飲み会に参加すれば1回4,000〜5,000円程度の出費は避けられません。特に若手薬剤師にとって、頻繁な飲み会は家計への負担となります。

日本トレンドリサーチとダイヤモンド・オンラインの共同調査でも、7割以上が「行きたくない飲み会には、上司から誘われても断る」と回答しています。飲み会を断ることは、もはや非常識でも協調性の欠如でもありません。自分の時間と健康を大切にする、ごく自然な選択なのです。


上手な断り方の基本原則|角を立てずに自分を守る

飲み会を断る際に重要なのは、「断ること」と「関係を悪化させること」は別問題だということです。断り方さえ間違えなければ、職場での信頼関係を維持しながら、自分の時間を確保することができます。

原則1:感謝と謝意を必ず伝える

断る際の第一声は、必ず感謝の言葉から始めてください。

「お誘いいただいてありがとうございます。ただ、今日は難しくて。」

この一言があるだけで、相手の印象は大きく変わります。誘ってくれたこと自体への感謝を示すことで、「あなたと親しくなりたくない」というメッセージではなく、「今回はたまたま都合が悪い」というメッセージとして伝わります。

原則2:理由は簡潔に、詳細は語りすぎない

断る理由を詳しく説明しすぎると、かえって不自然に聞こえたり、嘘っぽく感じられたりします。

良い例: 「今日は先約があって」 「体調を整えたくて」 「家族との予定が入っていて」

避けるべき例: 「実は祖母が風邪を引いていて、その看病を頼まれていて、しかも薬を届けなければならなくて」

嘘をつく必要はありませんが、詳細を語りすぎる必要もありません。シンプルな説明で十分です。

原則3:次の機会への前向きな姿勢を示す

断りっぱなしではなく、「また機会があれば」という姿勢を見せることが大切です。

「今回は難しいのですが、また声をかけていただけると嬉しいです」 「次の機会にはぜひ参加させてください」

この一言を添えることで、「飲み会自体を拒否しているわけではない」というメッセージが伝わり、関係性を良好に保つことができます。

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状況別・断り方の実践テクニック

ケース1:当日急に誘われた場合

当日の誘いは、実は断りやすいタイミングです。誘う側も「急な話だから断られても仕方ない」という心理があります。

使える理由

  • 「今日は朝から少し体調が優れなくて、早めに休みたいんです」
  • 「今日に限って、どうしても外せない用事があって」
  • 「家に届く荷物の受け取りがあって」

体調を理由にする場合、「頭痛がする」「お腹の調子が悪い」など、具体的な症状を軽く添えると自然です。ただし、翌日に元気すぎる姿を見せると信憑性が下がるため、注意が必要です。

ケース2:事前に日程を指定されて誘われた場合

「来週の金曜日、歓迎会やるから空けておいて」と言われた場合は、当日誘いより断りにくくなります。

効果的な断り方

  • 「申し訳ありません、その日は以前から習い事の予定が入っていて」
  • 「その日は家族と約束をしているんです」
  • 「実は資格の勉強をしていて、その日は講座があるんです」

習い事や資格勉強は、時間をずらせない予定として説得力があります。また、「自己研鑽に励んでいる」という好印象にもつながります。

私が人事部長時代に見てきた薬剤師の中にも、「認定薬剤師の座学研修がある」「eラーニングの期限が迫っている」という理由で断っている方がいました。薬剤師は生涯学習が求められる職種ですから、この理由は非常に自然で、かつ好印象を与えます。

ケース3:断りにくい相手(直属の上司や経営者)からの誘い

薬局長や経営者からの誘いは、特に断りにくいものです。

重要なポイント: 直属の上司や経営者からの誘いを断る場合は、より丁寧な言い回しと、代替案の提示が効果的です。

「お誘いいただきありがとうございます。大変申し訳ないのですが、今回は家庭の事情で難しい状況です。もしよろしければ、来月の月末あたりであれば調整できそうなのですが、いかがでしょうか」

代替日程を提示することで、「飲み会を避けているわけではない」という誠意を示すことができます。

ケース4:歓送迎会・忘年会など「公式行事」の場合

歓迎会、送別会、忘年会、新年会といった季節行事は、「参加が当然」という空気が強い傾向があります。

現実的な対処法

1. 完全に断るのではなく、途中参加・途中退席を提案する
「最初の1時間だけでも顔を出させてください。その後、どうしても外せない予定があるので」

2. 重要度で優先順位をつける
すべての飲み会を断るのではなく、年に数回の重要な行事(特に新入社員の歓迎会や退職者の送別会)には参加し、それ以外は断るという戦略も有効です。

私の経験上、歓迎会や送別会に参加しないことは、当事者(新入社員や退職者)の印象を損なう可能性があります。一方、忘年会や新年会は、参加しなくても大きな問題にはなりにくい傾向があります。


断り続けても評価を下げない|日常のコミュニケーション術

飲み会を断ることで評価が下がるのでは?という不安を持つ方は多いでしょう。しかし、本質的な評価は日々の仕事ぶりで決まります。飲み会を断っても、日常のコミュニケーションでカバーすることは十分可能です。

日常でできる関係構築の方法

1. 朝の挨拶を丁寧にする
「おはようございます」の一言に、少しだけ会話を添える習慣をつけてください。「今日は天気がいいですね」「昨日はお疲れ様でした」など、短い言葉で構いません。

2. 業務中の「ありがとう」を増やす
処方箋を回してもらった時、調剤を手伝ってもらった時、小さなことでも「ありがとうございます」と伝える。これだけで印象は大きく変わります。

3. ランチタイムを活用する
飲み会は断っても、ランチに誘われたら参加する。お酒の席より気軽で、時間も限られているため負担が少なくなります。Job総研の調査でも、飲み会以外の交流機会(ランチミーティングなど)を重視する企業が増えていることが報告されています。

4. 業務上の相談を積極的に行う
「この処方についてご意見いただけますか」「患者対応でアドバイスをいただきたいのですが」といった業務上の相談は、自然なコミュニケーションの機会になります。

私が人事部長だった頃、飲み会にほとんど参加しないのに、職場での評価が非常に高い薬剤師がいました。その方の特徴は、業務中のコミュニケーションが丁寧で、困っている同僚がいれば自然に声をかける姿勢でした。飲み会での付き合いがなくても、日々の行動で信頼を積み重ねていたのです。


それでも断れない、、そんな職場は「危険信号」かもしれない

ここまでお伝えした方法を試しても、「断ると露骨に嫌な顔をされる」「参加しないと業務上の不利益を受ける」という状況があるなら、それは職場環境そのものに問題がある可能性があります。

こんな状況は要注意

  • 飲み会を断ると、翌日から明らかに態度が冷たくなる
  • 「飲み会に来ない人は評価しない」と言われる
  • 飲み会での発言がシフト編成や業務分担に影響する
  • 断った翌日から業務上の情報共有がされなくなる

これらは、いわゆる「アルコールハラスメント」や「パワーハラスメント」に該当する可能性があります。

厚生労働省の調査では、メンタルヘルス不調による休業者がいた事業所は10.4%に上ります。無理な付き合いを続けた結果、心身の不調を来す前に、環境を変えることも選択肢の一つです。

転職という選択肢を恐れない

薬キャリエージェントの調査によると、転職を検討する薬剤師の66%が「職場の雰囲気、人間関係」を不安要素として挙げています。逆に言えば、人間関係の良い職場を選べば、キャリアも心身の健康も守ることができるのです。

私がコンサルタントとして採用面接を支援していた際、「前職は飲み会があまりにも多くて体調を崩した」という理由で転職を希望する薬剤師もいらっしゃいました。そうした方々は、適切な職場環境に移ることで、本来の実力を発揮できるようになっていきます。

もし今の職場で「断る自由」すら許されないと感じているなら、それはあなたの問題ではなく、職場の問題です。

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転職を検討する際、「次の職場も飲み会文化が強かったらどうしよう」という不安は当然です。しかし、面接の場で「御社は飲み会は多いですか?」「参加は強制ですか?」と直接質問するのは、角が立ちます。

ここで活用すべきなのが「エージェントによる代理調査」です。

単に求人を紹介してもらうのではなく、エージェントを「あなたの忠実なスパイ」として使い倒してください。
(※彼らはそれが仕事なので、遠慮は無用です)

具体的に確認すべきポイントは以下の通りです。

  • 忘年会・新年会などの季節行事の頻度
  • 参加率と、不参加者への対応
  • 業務後の付き合いの雰囲気
  • 残業や休日出勤の実態(飲み会よりもこちらが重要な場合も)

私が人事部長時代、実際に『交渉力が高く、信頼できる』と感じたエージェントについては、以下の記事で実名を挙げて解説しています。失敗したくない方は、必ずチェックしてください。

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自分を守ることは、仕事のパフォーマンスを守ること

飲み会を断ることに罪悪感を感じる必要はありません。

あなたの心と体を守ることは、長期的に見れば、患者さんへのより良い服薬指導にもつながります。疲弊した状態で調剤室に立つことのリスクを考えれば、適切な休息を取ることは「責任感の表れ」とさえ言えるのです。

厚生労働省の調査では、ストレスについて相談できる人がいる労働者は94.9%に上りますが、実際に相談した経験がある人は73.0%にとどまります。一人で抱え込まず、信頼できる人に相談することも大切です。

あなたの市場価値は、飲み会への参加回数で決まるものではありません。専門知識、患者対応力、チームへの貢献度——薬剤師としての本質的な価値で評価されるべきです。

もし今の職場で、そうした本質的な価値を認めてもらえないと感じるなら、環境を変えることも立派な選択です。我慢を続けて心身を壊す前に、自分を守る行動を起こしてください。

⚠️ 12月は「好条件求人」の争奪戦です

正直にお伝えします。12月10日のボーナス支給後は、一年で最も転職希望者が増える人材争奪戦のピークです。 完全週休二日制かつ年収650万以上の求人、本当に残業のない求人は、すぐに埋まってしまう恐れがあります。残り物で妥協しないよう、年内に「求人の枠(席)」だけは確保してください。

ただし、焦って変なエージェントを選ばないでください。

私は人事責任者として、大手を中心に20社以上の紹介会社と渡り合ってきました。その中で、「この担当者は信用できる」「求職者の利益を第一に考えている」と私が裏側から認定できたのは、わずか数社しかありません。

彼らは、私が求人者として「担当者の固定化」などの厳しい要望を出しても誠実に対応し、何より薬局側にとって都合の悪い情報(実際の残業時間や離職率の高さ)まで、求職者に包み隠さず伝えていました。

あなたの市場価値を正当に評価してくれる職場を見抜くために、私が人事の裏側から見て「本物だ」と確信したエージェントとその理由を記事にしました。転職に失敗したくない方はぜひご覧ください。

あなたの薬剤師としてのキャリアが、より良い方向に進むことを心から願っています。

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この記事を書いた人

調剤薬局チェーン元人事部長・薬剤師・中小企業診断士。
約4年間、人事責任者として薬剤師の採用・評価制度設計に従事。大手を中心に20社以上の紹介会社と折衝し、採用の舞台裏から「紹介会社の実力差」を熟知する。現在は経営コンサルタントとして、調剤薬局の採用戦略や人事考課制度の設計支援を行う一方、薬剤師個人のキャリア支援も行っている。採用側と求職側、双方の視点を持つ「情報の非対称性を解消する」解説に定評がある。

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