まだ「対物業務」で消耗していますか?地域医療構想が突きつける薬剤師の「新しい生存戦略」と3つの必須スキル

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2025年12月時点の情報です


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「このまま調剤だけでいいのか」と感じているあなたへ

「来る日も来る日も、ピッキングと監査の繰り返し。私の薬剤師人生、このままでいいのだろうか?」

毎日、終わりの見えない「対物業務」に消耗していませんか? もしそう感じているなら、その直感は正しいです。

今、厚生労働省が進める「地域医療構想」によって、調剤薬局業界はかつてない変革期を迎えています。この波は、これまでの「調剤マシーン」としての働き方を否定し、新しいスキルを持つ薬剤師だけを選別しようとしています。

元人事部長として断言します。この変化に気づかないふりをすることは、あなたの将来の「年収」と「雇用の安定」を捨てることと同義です。

本記事では、地域医療構想の正体と、そこで生き残るための「新しい生存戦略」について、人事の裏側を知る視点から徹底解説します。


地域医療構想とは何か|薬剤師が知っておくべき基本知識

2025年から2040年へ|構想の射程が拡大した理由

地域医療構想は、2014年の医療介護総合確保推進法により制度化されました。当初は団塊の世代が75歳以上になる2025年に向け、病床機能の分化・連携を進めることが主な目的でした。

しかし現在、厚生労働省は「新たな地域医療構想」として、2040年頃を見据えた議論を進めています。その背景には、85歳以上人口の急増という現実があります。2040年に向けて、医療と介護の複合ニーズを持つ高齢者が大幅に増加することが予測されているのです。

特に注目すべきは、85歳以上の救急搬送が2020年比で75%増加、在宅医療需要が62%増加すると見込まれている点です。これは病院だけの問題ではありません。地域で患者を支える薬局の役割が、従来以上に重要になることを意味しています。

比較項目従来の地域医療構想 (~2025年)新たな地域医療構想 (~2040年)
ターゲット団塊の世代が75歳以上団塊ジュニア世代が65歳以上
(85歳以上人口の急増)
主な課題病床機能の分化・連携
(病院の中の話)
医療・介護の複合ニーズ
(地域全体の話)
救急・在宅増加傾向への対応救急搬送 75%増 / 在宅需要 62%増
(爆発的な増加)
薬局の役割かかりつけ機能の推進他職種連携・医療提供体制のインフラ化

病床機能から医療提供体制全体へ|構想の範囲拡大

従来の地域医療構想は、高度急性期、急性期、回復期、慢性期という4つの病床機能に着目した「入院医療の改革」が中心でした。

しかし新たな地域医療構想では、その対象範囲が大きく拡大しています。かかりつけ医機能、在宅医療、医療・介護連携、人材確保など、地域の医療提供体制全体が議論の対象となっているのです。

この変化は薬局にとって大きな意味を持ちます。「処方箋を受け取って調剤する」という従来の役割だけでなく、地域包括ケアシステムの一員として、多職種と連携しながら患者を支えることが求められるようになったからです。


地域医療構想における薬局の役割|3つの柱

入退院時の医療機関連携

地域医療構想において、薬局に期待される第一の役割は、入退院時における医療機関との連携です。

患者が入院する際には、外来で服用していた薬剤の情報を病院薬剤部に正確に伝えることが重要です。逆に退院時には、入院中の処方変更や副作用の発現状況を把握し、地域での継続的な薬物療法に活かすことが求められます。

この連携を制度面から支えるのが、退院時共同指導料や退院時薬剤情報連携加算です。2022年度の診療報酬改定では、退院時共同指導に参加できる職種が拡大され、薬局薬剤師の参画がより促進されました。

私が経験したケースでは、退院時カンファレンスに積極的に参加する薬剤師が、医師や看護師から高い信頼を得て、その結果、在宅患者の紹介が増えるという好循環が生まれていました。「病院との連携は面倒」と敬遠する薬剤師もいましたが、結局のところ、この姿勢の差がキャリアの差となって表れたのです。

在宅医療への対応

第二の柱は、在宅医療への対応です。

厚生労働省は、在宅医療の重要性を繰り返し強調しています。地域支援体制加算の実績要件にも、在宅患者訪問薬剤管理指導の実績が組み込まれており、2022年度改定ではその必要実績数も引き上げられました。

在宅医療において薬剤師が担う役割は多岐にわたります。残薬の管理、服薬状況の確認、副作用モニタリング、医師への処方提案、さらには患者の生活環境に合わせた剤形選択の提案など、対物業務から対人業務へのシフトが具体的な形で求められるのです。

「うちは一人薬剤師だから在宅は無理」という声もよく聞きました。しかし、在宅基幹薬局と在宅協力薬局という連携の仕組みを活用すれば、規模の小さい薬局でも在宅医療に参画することは可能です。重要なのは「やらない理由」を探すことではなく、どうすれば実現できるかを考える姿勢です。

地域の薬剤安定供給拠点としての機能

第三の柱は、地域における医薬品の安定供給拠点としての機能です。

地域連携薬局の認定制度は、2021年8月から開始されました。この制度は、入退院時や在宅医療への対応時に他医療提供施設と連携して対応できる薬局を認定するものです。認定要件には、医療機関への情報提供実績として月平均30回以上という基準が設けられており、連携の「量」が可視化される仕組みになっています。

また、地域連携薬局には、他の薬局への医薬品供給や情報提供といった役割も期待されています。つまり、個々の患者対応だけでなく、地域全体の医療を支える基盤としての機能が求められているのです。

役割の柱従来の「調剤のみ」薬剤師 これから生き残る薬剤師
① 医療機関連携お薬手帳シールを貼るだけ
退院時は患者が来てから対応
トレーシングレポートで医師へ報告
退院時カンファレンスへの参加
② 在宅医療「うちは人がいないから無理」
外来患者だけを待つ受身の姿勢
「まず1件」から実績を作る
ケアマネジャーと連携し案件を獲得
③ 地域拠点機能備蓄医薬品は自店舗のためだけ
他店との連携は特に行わない
地域連携薬局の認定を取得
麻薬や無菌調剤で他店をバックアップ

他職種連携の実務|現場で求められる5つのスキル

情報提供書(トレーシングレポート)の活用

他職種連携の第一歩は、服薬情報提供書、いわゆるトレーシングレポートの活用です。

疑義照会とは異なり、トレーシングレポートは「緊急性は低いが医師に伝えるべき情報」を文書化するものです。患者の服薬状況、副作用の兆候、アドヒアランスの問題、さらには生活環境の変化など、薬剤師だからこそ気づく情報を医師に共有することで、チーム医療の質が向上します。

私が見ている限り、トレーシングレポートを積極的に活用している店舗は、医師からの信頼度が明らかに高かったです。「あの薬局は情報をくれるから」という評判が、処方箋の流れを変えることもありました。

重要なのは、医師が知りたい情報を的確に伝えることです。長々とした文章ではなく、要点を絞り、客観的なデータに基づいた報告が求められます。

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地域ケア会議への参画

地域包括ケアシステムの構築において、地域ケア会議は重要な役割を果たしています。

地域ケア会議とは、高齢者への適切な支援と、支援体制に関する検討を行う場です。医師、看護師、ケアマネジャー、理学療法士、管理栄養士など、多職種が参加し、個別ケースの課題解決から地域全体の課題発見まで、幅広い議論が行われます。

薬剤師が地域ケア会議に参画することで、服薬に関する専門的な助言を提供できます。ポリファーマシーの問題、薬剤による副作用の可能性、剤形の変更提案など、薬剤師ならではの視点が、ケアの質向上に貢献するのです。

ある自治体の調査では、地域ケア会議に薬剤師が参画した結果、「薬に関する問題を解決している」と回答した関係者が約9割に上ったというデータもあります。薬剤師の専門性は、地域の現場で確実に求められているのです。

退院時カンファレンスへの参加

入院患者が在宅に移行する際の退院時カンファレンスは、切れ目のない薬物療法を実現するための重要な機会です。

カンファレンスには、病院側の医師、看護師、薬剤師、MSW(医療ソーシャルワーカー)に加え、在宅サービス側のかかりつけ医、訪問看護師、ケアマネジャー、そして薬局薬剤師が参加します。

薬局薬剤師としては、入院中の処方変更の理由、副作用の発現状況、退院後に注意すべき点などを直接確認することで、より質の高い服薬支援が可能になります。特に、在宅での服薬管理においては、患者の生活環境や介護力を把握した上での提案が重要になるため、カンファレンスでの情報収集は欠かせません。

2022年度改定以降、オンラインでのカンファレンス参加も算定可能になりました。物理的な距離が参加の障壁にならなくなったことで、薬局薬剤師の参画機会は広がっています。

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ケアマネジャーとの連携構築

在宅医療において、ケアマネジャー(介護支援専門員)との連携は極めて重要です。

ケアマネジャーは、患者の生活全体をコーディネートする立場にあります。服薬に問題がある場合、最初に気づくのはケアマネジャーであることも少なくありません。逆に言えば、薬剤師がケアマネジャーと良好な関係を築いていれば、訪問薬剤管理指導の依頼が自然と増えていくのです。

私が見てきた成功事例では、薬局から積極的にケアマネジャーへ連絡を取り、服薬状況の報告や薬剤師訪問サービスの説明を行っていました。「薬のことなら○○薬局」という認知を地域で獲得することが、安定した在宅患者の確保につながっていたのです。

連携において重要なのは、専門用語を避け、わかりやすい言葉で情報を伝えることです。「副作用の発現が懸念される」ではなく、「この薬を飲むと眠くなることがあるので、転倒に注意してください」というように、具体的な行動につながる表現を心がけましょう。

ICTを活用した情報共有

近年、多職種連携においてICTの活用が進んでいます。

メディカルケアステーション(MCS)などの情報共有ツールを使えば、医師、看護師、ケアマネジャー、薬剤師など、患者に関わる全ての職種がリアルタイムで情報を共有できます。薬剤師が訪問時に気づいた変化を即座に共有することで、迅速な対応が可能になるのです。

ICTツールの活用は、薬局の在宅対応力を大きく向上させます。特に残薬管理においては、他職種との情報共有が服薬アドヒアランスの向上に直結します。ヘルパーが気づいた飲み忘れ、訪問看護師が確認した副作用の兆候、こうした情報がリアルタイムで共有されることで、薬剤師は適切な介入タイミングを逃さずに済むのです。


他職種連携を阻む壁と、その乗り越え方

「時間がない」という壁

多くの薬局薬剤師が他職種連携に踏み出せない理由として、「時間がない」を挙げます。確かに、日々の調剤業務に追われる中で、外部との連携に時間を割くことは容易ではありません。

しかし、この「時間がない」は本当に事実でしょうか。

私が人事部長として多くの薬局を見てきた経験から言えば、忙しい薬局ほど効率化の余地があることが多いです。在庫管理の無駄、調剤フローの非効率、分業の不徹底など、改善すべき点は必ず存在します。

他職種連携に時間を使えないのは、連携の優先順位が低いからです。まずは「なぜ連携が必要なのか」を理解し、業務の中に連携を組み込む意識改革が必要です。

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「何を伝えればいいかわからない」という壁

他職種連携を躊躇する理由として、「何を伝えればいいかわからない」という声も聞きます。

結論から言えば、薬剤師だからこそ気づくことを伝えればいいのです。服薬状況、残薬の有無、副作用の兆候、患者の理解度、薬の保管状況。これらは医師や看護師が直接確認することが難しい情報であり、薬剤師が発信する価値があります。

情報提供に完璧を求める必要はありません。「気になる点があったのでご報告します」という姿勢で十分です。重要なのは、情報を発信する習慣をつけることです。回数を重ねるうちに、どのような情報が相手にとって価値があるのかがわかってきます。

「人間関係が難しい」という壁

「医師に意見を言うのは気が引ける」「看護師さんとの距離感がわからない」という声も少なくありません。

しかし、他職種連携は「意見を戦わせる場」ではありません。患者のために、それぞれの専門性を持ち寄る場です。薬剤師には薬剤師にしかできない役割があり、それを果たすことが連携の本質です。

連携を円滑に進めるコツは、まず「顔の見える関係」を築くことです。地域の多職種研修会や薬薬連携の勉強会に参加し、日常的なコミュニケーションを重ねることで、いざという時の連携がスムーズになります。


地域医療構想時代に評価される薬剤師の条件

転職市場で評価されるポイント

地域医療構想への対応力は、転職市場においても重要な評価ポイントになっています。

私が採用活動を行っていた際、最も重視したのは「処方箋を待つだけの薬剤師か、自ら動いて地域から信頼を獲得できる薬剤師か」という点でした。

実際の採用現場での「生々しい評価基準(具体例)」をお伝えしましょう。

評価項目調剤経験のみ (40代)在宅・連携経験あり (30代)
提示年収500万円スタート 600万円~(応相談)
人事の評価「機械的業務はパートで代替可能」コストと見なされる「利益を生み出す人材」
地域加算・処方元開拓の即戦力
主な業務ピッキング・監査・投薬のループ多職種連携・往診同行・加算算定
転職難易度年齢とともに厳しくなる複数社からオファーが殺到する

つまり、「地域医療構想への対応力」は、単なる勉強の話ではなく、あなたの「市場価値(プライスタグ)」に直結するのです。

特に管理薬剤師のポジションでは、「地域の医療機関とどのような関係を構築できるか」が重要な評価軸となります。単に調剤をこなすだけでなく、地域における薬局の存在価値を高められる人材が求められているのです。

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今からできる実践的なステップ

地域医療構想への対応力を高めるために、今からできることがあります。

まず第一歩として、自分の薬局が地域支援体制加算を算定しているか、地域連携薬局の認定を受けているかを確認してください。これらは、薬局が地域医療にどの程度貢献しているかの指標となります。

次に、在宅患者訪問薬剤管理指導の実績を確認しましょう。実績がない場合は、まず一人の患者から始めてみることをお勧めします。在宅医療の現場を体験することで、教科書では学べない多くの気づきが得られます。

そして、地域の多職種連携研修に参加することです。薬剤師会が主催する研修会、自治体の地域包括ケア推進事業、医療・介護連携の勉強会など、参加できる機会は必ずあります。

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「今の職場では実践できない」と感じたあなたへ

ここまで、地域医療構想に対応するためのスキルやマインドセットをお伝えしてきました。
しかし、これを読みながら、心のどこかでこう感じた方もいるのではないでしょうか。

「言ってることはわかるけど、うちの薬局は枚数をこなすだけで精一杯だ」
「社長や管理薬剤師が新しい取り組みに消極的で、提案できる雰囲気じゃない」

元人事部長として、正直にお伝えします。もし今の環境がそうであるなら、そこに居続けることは「リスク」でしかありません。

地域医療構想は、国が主導する「止まらない流れ」です。
それにもかかわらず、変化を拒み、従来の「調剤のみ」のスタイルに固執している薬局は、残念ながら今後、経営が厳しくなるか、薬剤師の給与を下げざるを得なくなります。

あなたは「これからの時代に求められる薬剤師」になりたいという意欲を持っています。
その貴重な意欲を、「変化しない組織」のためにすり減らす必要はありません。

世の中には、地域連携や在宅医療に本気で取り組み、そこで活躍する薬剤師を「高い年収と待遇」で評価する薬局がたくさんあります。まずは、「自分の市場価値を正しく評価してくれる環境」がどこにあるのか、それを知ることから始めてみてください。

環境を変えることは、「逃げ」ではありません。
あなたの薬剤師としてのキャリアを守り、地域医療に貢献するための、「賢い戦略的撤退」なのです。

⚠️ 12月は「好条件求人」の争奪戦です

正直にお伝えします。12月10日のボーナス支給後は、一年で最も転職希望者が増える人材争奪戦のピークです。 完全週休二日制かつ年収650万以上の求人、本当に残業のない求人は、すぐに埋まってしまう恐れがあります。残り物で妥協しないよう、年内に「求人の枠(席)」だけは確保してください。

ただし、焦って変なエージェントを選ばないでください。

私は人事責任者として、大手を中心に20社以上の紹介会社と渡り合ってきました。その中で、「この担当者は信用できる」「求職者の利益を第一に考えている」と私が裏側から認定できたのは、わずか数社しかありません。

彼らは、私が求人者として「担当者の固定化」などの厳しい要望を出しても誠実に対応し、何より薬局側にとって都合の悪い情報(実際の残業時間や離職率の高さ)まで、求職者に包み隠さず伝えていました。

あなたの市場価値を正当に評価してくれる職場を見抜くために、私が人事の裏側から見て「本物だ」と確信したエージェントとその理由を記事にしました。転職に失敗したくない方はぜひご覧ください。

あなたの薬剤師としてのキャリアが、より良い方向に進むことを心から願っています。

あなたの薬剤師としての専門性は、地域医療を支える力になります。その力を存分に発揮できる場所で働くことが、あなた自身のキャリアにとっても、地域の患者さんにとっても、最善の選択となるはずです。

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この記事を書いた人

調剤薬局チェーン元人事部長・薬剤師・中小企業診断士。
約4年間、人事責任者として薬剤師の採用・評価制度設計に従事。大手を中心に20社以上の紹介会社と折衝し、採用の舞台裏から「紹介会社の実力差」を熟知する。現在は経営コンサルタントとして、調剤薬局の採用戦略や人事考課制度の設計支援を行う一方、薬剤師個人のキャリア支援も行っている。採用側と求職側、双方の視点を持つ「情報の非対称性を解消する」解説に定評がある。

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