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面接で年収を聞かれた瞬間、あなたは何と答えますか?
「希望年収はいくらですか?」 面接でこの質問をされた瞬間、一瞬答えに詰まってしまいませんか?
安く言えば損をする。高く言えば不採用になるかもしれない。この回答一つで、あなたの向こう数年間の生活水準が決まってしまいます。
私は調剤薬局チェーンの人事部長として、数多くの薬剤師採用の最終決裁を行ってきました。 その経験から断言します。年収交渉で失敗する薬剤師の9割は、この質問への「準備不足」が原因です。
逆に、正しい回答テンプレートと交渉術を知っている薬剤師は、希望年収をしっかり勝ち取っています。
本記事では、面接のフェーズ別に使える回答テンプレートと、元人事部長だからこそ知る年収交渉の裏側をすべて公開します。
採用の裏側:「希望年収」を聞く企業側の本当の狙い
まず理解すべきは、企業がなぜこの質問をするのかという点です。
人事担当者は、あなたの希望年収を聞くことで三つの情報を得ようとしています。一つ目は予算内で採用可能かどうかの判断です。二つ目はあなたの市場価値の認識レベル。三つ目は交渉力やコミュニケーション能力の測定です。
私が人事部長だった頃、「御社の規定に従います」と答える候補者は、正直なところ評価が難しかったのです。従順さは伝わりますが、自分の価値を理解しているのか、キャリアプランを持っているのかが見えません。
逆に「現在の年収は480万円ですが、貴社では550万円を希望します。理由は在宅医療の経験を活かし、かかりつけ薬剤師として貢献できるためです」と具体的に答える候補者には、説得力がありました。
企業は必ずしも最低額で採用したいわけではありません。適正な理由があれば、予算の範囲内で希望に応えようとするのが人事の本音なのです。
【最重要】年収交渉で絶対に守るべき3つの原則
年収交渉には、必ず守るべき原則があります。これを知らずに交渉すると、印象を悪くしたり、最悪の場合は内定を失うリスクもあります。
原則1:具体的な根拠を持って希望額を提示する
「なんとなく600万円欲しい」では通用しません。「現職の年収が520万円で、貴社では管理薬剤師としての責任も担うため、600万円を希望します」のように、必ず理由を添えてください。
私が採用面接で評価していたのは、自分の市場価値を客観的に把握できているかという点でした。薬剤師の平均年収は約580万円(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)です。この数字を基準に、自分のスキルや経験を加味した希望額を提示すると説得力が増します。
原則2:交渉は内定後に本格化させる
一次面接で年収の話ばかりする候補者は、確実にマイナス評価でした。「この人は仕事内容より給料しか見ていないのか」と思われるからです。
希望年収は聞かれれば答えますが、詳細な条件交渉は内定後に行うのが鉄則です。内定が出た後なら、企業側も「採用したい人材」として真剣に条件調整を検討してくれます。
原則3:転職エージェントを「防波堤」にする
これが最も重要です。直接応募で自分から年収交渉をすると、どうしても遠慮が出ます。「この金額を言ったら嫌われるかも」という心理が働くからです。
転職エージェントを使えば、プロのコンサルタントがあなたの代わりに交渉してくれます。転職エージェント経由であれば、「本人は御社を第一志望としているが、他社条件との兼ね合いで、あと30万円なんとかなりませんか?」という、本人からは決して言えない交渉を代行してもらえます。
実際、私が人事部長時代、採用決定後に年収が上乗せされたケースの99%はエージェント経由でした。企業側も「エージェントが適正と判断した金額」として受け止めやすいのです。
私が人事部長時代、実際に「この担当者は手強い(=候補者のために本気で交渉してくる)」と感じ、信頼関係を築いたエージェントについては、以下の記事で実名を挙げて解説しています。

フェーズ別・希望年収の回答テンプレート完全版
ここからは、面接の各フェーズで使える具体的な回答例を紹介します。そのまま使えるテンプレートとして活用してください。
【初回面接編】期待値を示しつつ、交渉の余地を残す回答
初回面接では、希望年収について詳細に語る必要はありません。しかし、あまりにも曖昧な回答は避けるべきです。
回答テンプレート1:標準型
「現在の年収は○○万円です。貴社では△△の業務に携われることを期待しており、年収としては□□万円程度を希望しております。ただし、詳細は業務内容や責任範囲を理解した上で、改めてご相談させていただければと思います」
この回答のポイントは、具体的な数字を示しながらも、交渉の余地を残している点です。「程度」という言葉で幅を持たせ、「改めて相談」で決定を先送りにしています。
回答テンプレート2:市場価値基準型
「薬剤師の平均年収や、私と同程度の経験を持つ方の相場を考慮すると、□□万円前後が妥当かと考えております。もちろん、貴社の評価制度や給与体系を踏まえて、柔軟に対応させていただきます」
この回答は、自分なりに市場調査をしていることをアピールできます。「柔軟に対応」という言葉で、協調性も示せるのです。
私が面接官だった頃、この種の回答をする候補者には好印象を持ちました。自分の価値を理解しつつ、企業側の事情も考慮できる姿勢が見えるからです。
【最終面接編】より具体的に、しかし柔軟性も示す回答
最終面接では、採用側も本気で条件を詰めてきます。ここでは、より踏み込んだ回答が求められます。
回答テンプレート3:責任範囲明確型
「現在の年収は○○万円ですが、貴社では管理薬剤師として、スタッフ育成や在庫管理の責任も担うと理解しております。そのため、年収□□万円を希望いたします。ただし、賞与の配分など、詳細は貴社の制度に準じる形で構いません」
管理薬剤師や在宅医療の担当など、責任が増える場合は、その分を年収に反映してもらうのは当然の権利です。遠慮する必要はありません。
回答テンプレート4:段階的上昇型
「当面は□□万円でスタートし、試用期間後の評価を踏まえて△△万円への昇給をご検討いただければと思います。私としては、まず実績でお応えし、その後に適正な評価をいただきたいと考えております」
この回答は、謙虚さと野心のバランスが取れています。企業側も「まず実績を見せてから」という姿勢を評価するでしょう。
ただし注意点があります。「試用期間後に必ず昇給する」という約束を口頭だけで済ませてはいけません。必ず労働条件通知書に明記してもらってください。
【内定後編】最終交渉で使える決定打のフレーズ
内定が出たら、いよいよ本格的な年収交渉の段階です。ここでは、遠慮は不要です。
回答テンプレート5:他社比較型
「実は他社からも内定をいただいており、そちらでは年収□□万円の提示を受けております。貴社を第一希望としておりますので、できれば同程度の条件でご検討いただけないでしょうか」
これは交渉術として非常に有効です。企業側も、優秀な人材を逃したくないという心理が働きます。ただし、嘘をついてはいけません。実際に他社の内定があることが前提です。
回答テンプレート6:生活設計型
「家族の事情もあり、年収□□万円は最低限必要な水準です。この条件であれば、長期的に貴社で働き続ける覚悟があります。ご検討いただけますでしょうか」
生活設計を理由にすることで、単なる欲ではなく、必要性を訴えることができます。特に地方から都市部への転職など、生活コストが変わる場合には説得力があります。
私が人事部長時代、この種の交渉には誠実に対応していました。生活のために働くのは当然であり、それを踏まえた年収設定は企業の責任だと考えていたからです。
【危険】安易に使うと危険なNGワード5選
年収交渉には、口にした瞬間に印象が悪くなる禁句があります。
NGワード1:「いくらでもいいです」
最悪です。「自分の価値を理解していない」と判断されます。
→正解:「御社の規定に従いますが、これまでの経験を考慮いただけますと幸いです」
NGワード2:「前職より高ければ」
前職の年収が低かった場合、この発言は自分で自分の価値を下げることになります。前職の評価ではなく、市場価値で判断すべきです。
NGワード3:「他の人と同じくらいで」
給与は個々のスキルや経験で決まるものです。「他の人」を基準にすること自体が、主体性のなさを示してしまいます。
NGワード4:「最低○○万円は欲しい」
「最低」という言葉は、交渉の幅を狭めます。「希望」や「妥当な水準として」といった表現を使うべきです。
NGワード5:「ボーナスは何ヶ月分ですか」(唐突に聞く)
エージェント経由で確認すべきですが、もし直セル聞くのであれば、逆質問の時間に以下のように聞いてください。
→正解:「貴社で長く貢献したいと考えております。生活設計のために差し支えなければ給与体系と賞与の実績について教えていただけますか」
私が面接官だった頃、これらのNGワードを口にした候補者の多くは、最終的に不採用になることも多かったように思います。能力は十分でも、コミュニケーション能力や交渉センスに疑問符がついたからです。
年収交渉を成功させる「情報武装」の具体的方法
年収交渉で勝つには、情報が武器になります。
武器1:自分の市場価値を正確に把握する
転職エージェントに登録すると、コンサルタントがあなたの市場価値を客観的に教えてくれます。「あなたのスキルなら、このエリアで年収○○万円が相場です」という情報は、交渉の大きな武器になります。
私が人事部長時代、エージェント経由の候補者は年収相場をよく理解していました。そのため、こちらも適正な金額を提示せざるを得なかったのです。
武器2:同業他社の給与水準をリサーチする
求人情報を見れば、同じような業務内容で他社がどれくらいの年収を提示しているかが分かります。ただし、求人票に書かれた「想定年収」には注意が必要です。実際の支給額とは異なるケースがあるからです。
転職エージェントなら、求人票に載らない実年収や退職率など、リアルな情報を教えてくれます。これらの情報は、あなた自身が直接企業に聞くことは難しいでしょう。
武器3:自分の強みを数値化する
「在宅医療の経験があります」ではなく、「在宅医療で月間○○件の訪問実績があります」と具体的に伝えましょう。「かかりつけ薬剤師の届出をしています」ではなく、「かかりつけ薬剤師として○○名の患者を担当し、服薬指導の評価をいただいています」と数字で示すのです。
数値化された実績は、企業側も評価しやすくなります。私が採用面接で最も重視していたのも、この具体性でした。
転職エージェントを使った年収交渉が最強である理由
ここまで様々な回答テンプレートを紹介しましたが、正直に言います。最も確実に希望年収を実現する方法は、転職エージェントに交渉を任せることです。
理由は四つあります。
理由1:プロの交渉力
転職エージェントのコンサルタントは、年間何百件もの年収交渉を行っています。どのタイミングで、どのような言い回しで交渉すれば成功率が高いか、熟知しているのです。
あなたが直接「もう50万円上げてください」と言うのと、コンサルタントが「この方のスキルを考慮すると、もう50万円の上乗せが妥当です」と伝えるのでは、受け取られ方がまったく違います。
理由2:客観的な立場からの説得
私が人事部長として採用していた頃、エージェントからの交渉は真摯に受け止めていました。なぜなら、エージェントは候補者と企業、双方にとって適正な条件を提案する立場だからです。
候補者本人が言うと「高望み」に聞こえる要求も、エージェントが市場相場を根拠に説明すれば、企業側も納得せざるを得ません。
理由3:希望条件に合わない求人を避けることができる
大手チェーンのように厳格な給与体系が敷かれている企業では、個人の能力や実績を問わず経験年数のみを基準に年収が規定されているケースが往々にしてあります。
求人票における年収表記は一般的に「450万〜700万円」のように幅を持たせた記載をしています。
仮に、応募者が年収700万円を希望したとします。当該企業の内規で、その上限額を享受できるのは「調剤経験10年以上かつエリアマネージャー経験者に限る」と定められていた場合、いかに卓越した能力の持ち主であっても調剤経験5年の候補者がその条件を満たすことは到底不可能です。
つまり、求人票に明記されている上限額は「絵に描いた餅」に他なりません。このような内規は求人票には記載されません。
転職エージェントは、こうした企業の「モデル年収」を把握していることが多い印象です。それゆえ、エージェントを介することで、実態とそぐわない求人はあらかじめ排除でき、希望の年収を得る余地のある企業のみに的を絞った転職活動が可能となるのです。
理由4:あなた自身が嫌な役を演じなくて済む
年収交渉で最も難しいのは、入社後の関係性への影響です。あまりに強気な交渉をすると、「あの人はお金にうるさい」という印象を持たれかねません。
エージェントに任せれば、あなたは「エージェントが勝手に交渉してくれた」というスタンスを取れます。企業側も「エージェントの要求だから仕方ない」と受け止めやすいのです。
下記記事では私が人事部長時代、実際に『信頼できる』と感じた理由について、以下の記事で生々しく解説しています。失敗したくない方は、必ずチェックしてください。

年収だけじゃない!労働条件で確認すべき重要ポイント
年収交渉と同時に、必ず確認すべき条件があります。これを見落とすと、年収が高くても実質的な待遇は悪いというケースに陥ります。
ポイント1:実労働時間と残業の実態
「年収600万円」と聞いて喜んでも、月40時間の残業代込みだったら、実質的な時給は下がります。残業の有無、残業代の支給方法(固定残業制か実績払いか)を必ず確認してください。
ポイント2:昇給・賞与の実績
「昇給あり」と書いてあっても、実際には年5000円しか上がらない薬局もあります。過去3年間の昇給実績、賞与の支給月数を具体的に聞きましょう。
転職エージェントを使えば、こうした情報も事前に教えてもらえます。ファル・メイトは特に、実労働時間や実年収のリアルな情報収集に強みがあります。
ポイント3:退職金制度と福利厚生
年収が少し低くても、退職金制度が充実していれば、長期的には得になるケースもあります。住宅手当、家族手当、資格手当など、基本給以外の待遇も総合的に判断してください。
私が人事部長時代、退職金制度について質問してくる候補者は極めて少数でした。しかし、長く働くつもりなら、これは極めて重要な要素です。
あなたの未来は、この一言で変わる
ここまで、希望年収の答え方と交渉術を解説してきました。
あなたが今、年収に不満を抱えているなら。毎日の業務量に見合わない給与で働いているなら。「このままでいいのか」という不安を抱えているなら。
その状況を変えられるのは、あなた自身です。
私は人事部長として、多くの薬剤師のキャリアを見てきました。年収交渉に成功した人と失敗した人の違いは、能力の差ではありません。準備と情報、そして適切な交渉の仕方を知っていたかどうかの差です。
「希望年収は?」と聞かれた瞬間、あなたは何と答えますか。
この記事で紹介したテンプレートを使えば、もう迷う必要はありません。自分の市場価値を理解し、根拠を持って希望額を提示する。それが、あなたの未来を変える第一歩になります。
そして、もし一人で交渉するのが不安なら、プロの力を借りてください。彼らはあなたの市場価値を正確に評価し、企業と対等に交渉してくれる、いわば「キャリアの専属トレーナー」です。一人で悩むより、プロと一緒に戦う方が、はるかに勝率は高くなります。
あなたのキャリアは、あなたのものです。適正な評価を受け、納得のいく年収を得る権利があります。
この記事が、あなたの転職を成功に導く一助となれば幸いです。理想の年収を実現し、充実した薬剤師人生を歩んでください。


