冬のボーナスをもらって即退職は非常識?人事評価の裏側と、円満退職の切り出し方

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2025年11月時点の情報です


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「もらい逃げ」と思われるのが怖い、あなたへ

12月のボーナス支給日が近づくと、ある相談が急増します。

「ボーナスをもらってから退職を伝えたいけれど、非常識だと思われないでしょうか」

調剤薬局チェーンの人事部長として10年以上、数百名の薬剤師の採用と退職に関わった経験から断言します。ボーナスをもらってから退職すること自体に、何の問題もありません。

しかし、タイミングや伝え方を誤ると、本来満額もらえるはずのボーナスが減額される可能性があります。人事の立場から見た「減額のトリガー」を知らないまま動くことは、数十万円単位の損失につながりかねません。

本記事では、人事評価の仕組みとボーナス査定の裏側を解説し、あなたが損をせず、かつ円満に退職するための具体的な方法をお伝えします。


ボーナスをもらってから辞めることは、法的に何の問題もない

ボーナスは「過去の労働」への対価である

多くの薬剤師が誤解していますが、ボーナスは「会社からの恩恵」ではありません。過去半年間の労働に対する正当な対価です。

厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、直近の2023年冬のボーナスは平均41万3,277円でした。薬剤師に限定すると、会社により様々ですが概ね基本給の1〜2ヶ月に相当する金額が支給されるケースが多いのではないでしょうか。

この金額は、あなたが4月から9月まで働いた結果として支払われるものです。12月に退職するからといって、その権利が失われる理由はどこにもありません。

「支給日在籍条項」さえ満たせば受け取れる

ほとんどの企業の就業規則には「支給日在籍条項」が定められています。これは「ボーナス支給日に会社に在籍していること」が支給条件となる規定です。

つまり、12月10日がボーナス支給日なら、その日に在籍していれば受け取る権利があります。退職日を12月11日以降に設定すれば、法的には何の問題もありません。

私が人事部長時代に見てきた中で、この原則を知らずに損をした薬剤師は数え切れません。12月5日に退職してしまい、数十万円を受け取り損ねたケースもありました。


人事が語る「ボーナス減額」の本当の理由

ボーナスの3つの構成要素を理解する

人事部門では、ボーナスを3つの要素で算定するのが一般的です。

1. 過去の業績評価
査定期間中の実績や貢献度が評価されます。処方箋枚数、在宅訪問件数、後輩指導の実績などが該当します。

2. 会社の業績連動分
企業全体の収益状況により、支給額が増減します。調剤報酬改定の影響や患者数の増減が反映されます。

3. 将来への期待値
「この社員は今後も活躍してくれる」という期待を込めた部分です。

退職予定者に対して減額が起こるのは、この3つ目の「将来への期待値」部分です。1996年のベネッセコーポレーション事件の判例では、この期待値部分を理由とした減額は合理的な範囲内であれば有効と認められています。

減額されるケースの現実

就業規則に「退職予定者は○割減額」と明記されている企業もあります。しかし、裁判例では減額の割合を一律に定めていませんが、実務や判例解説では「将来の期待部分」として全体の20%程度を上限の目安とすることが妥当とされています。

つまり、ボーナス40万円なら最大8万円程度の減額は適法とされる可能性があります。ただし、これは「退職を事前に伝えた場合」の話です。

私が人事部長だった頃、ボーナス支給後2週間以内に退職を申し出た薬剤師に対しては、減額措置を取ったことはありませんでした。すでに支給してしまった後では、法的にも返還を求めることは労働基準法第16条「賠償予定の禁止」に抵触する可能性が高いからです。


「非常識」と思われずに満額受け取る5つのステップ

ステップ1:就業規則を徹底的に確認する

まず自社の就業規則を確認してください。チェックすべきポイントは以下の通りです。

  • ボーナス支給日はいつか
  • 支給日在籍条項があるか
  • 退職予定者への減額規定はあるか
  • 査定期間はいつからいつまでか

多くの薬局では、冬のボーナスの査定期間は4月から9月です。支給日は12月5日から15日の間が一般的です。

就業規則は総務や人事部門に申し出れば閲覧できます。「将来のキャリアプランの参考にしたい」と伝えれば、不自然ではありません。

ステップ2:ボーナス支給後、2〜3週間空けて退職を切り出す

ボーナス支給日の翌日に退職を伝えるのは、印象が悪すぎます。「ボーナス目当てで時期を調整した」と思われても仕方ありません。

支給後2〜3週間空けることで、「ボーナスとは関係なく、熟考の末に決断した」という印象を与えられます。

私が人事として見てきた中で、円満退職できた薬剤師の多くは、12月20日前後に退職の意思を伝えていました。年末年始の休暇を挟むため、職場側も冷静に受け止めやすいタイミングです。

ステップ3:退職理由は「前向きなキャリアアップ」に統一する

「給料が安い」「人間関係が嫌」といった不満を理由にすると、引き留めの材料にされます。

推奨する退職理由のテンプレートは以下です。

「在宅医療の専門性を深めたく、症例数の多い環境への転職を決意しました」
「認定薬剤師の資格取得を目指し、研修制度が充実した企業への転職を決めました」

ポイントは「この会社では実現できないが、次の環境なら叶えられる目標」を示すことです。これなら会社側も引き留める理由がありません。

ステップ4:引き継ぎスケジュールを自分から提案する

退職を伝える際、必ず引き継ぎ計画も同時に提示してください。

「2月末での退職を希望しますが、1月中に後任者への引き継ぎ資料を作成し、2月は実地指導に充てます」

このように具体的な期間と内容を示すと、「最後まで責任を持つ姿勢」が伝わります。人事の立場から見ると、こういう薬剤師には好印象を持ちます。

関連記事:後任者に感謝される引継ぎ書テンプレート|円満退職を叶える5つのポイント

ステップ5:感謝の言葉を忘れない

退職の意思を伝える際、必ず感謝の言葉を添えてください。

「○年間、薬剤師として成長する機会をいただき、心から感謝しております」

この一言があるかないかで、その後の対応は大きく変わります。多くの退職面談をした経験から、感謝を伝えてくれる薬剤師に対しては、その後の手続きや対応が円滑に進むことがほとんどでした。

関連記事:退職前チェックリスト|最終出勤日までに必ずやるべき引継ぎ・挨拶・手続きまとめ


ボーナス前に退職を伝えてしまった場合の対処法

減額の可能性を冷静に見極める

すでにボーナス前に退職を伝えてしまった場合、減額される可能性はあります。しかし、全額カットされることは稀です。

就業規則に明確な減額規定がなければ、「将来の期待部分」として最大20%程度の減額にとどまる可能性が高いです。

仮に40万円のボーナスなら、8万円の減額で32万円は受け取れる計算です。ゼロになるわけではありません。

減額に納得できない場合は証拠を残す

もし就業規則に減額規定がないにもかかわらず、大幅に減額された場合は、労働基準監督署への相談も検討してください。

その際、以下の証拠を用意しておくと有利です。

  • 過去のボーナス明細
  • 就業規則のコピー
  • 退職を伝えた日時と相手の記録
  • 減額を告げられた際のやり取りの記録

会社側が適切に説明できない減額は違法性が高いと考えてください。


転職先の内定時期とボーナスを両立させる戦略

転職活動開始は「3ヶ月前」がベストタイミング

冬のボーナスをもらって2月末に退職したい場合、逆算すると11月中には転職活動を開始すべきです。

薬剤師の転職活動は、以下のスケジュールが標準的です。

  • エージェント登録・面談:1週間
  • 求人紹介・応募:2週間
  • 面接:2〜3週間
  • 内定・条件交渉:1週間
  • 入社日調整:1〜2週間

合計で約2ヶ月から2ヶ月半かかります。余裕を持って3ヶ月前から動き始めると、ボーナス支給後に退職を伝えるタイミングとちょうど合致します。

内定承諾時に入社日を調整する技術

内定が出た際、「ボーナスをもらってから退職したい」とは言わないでください。転職先の印象が悪くなります。

推奨する伝え方は以下です。

「現職の引き継ぎに最低2ヶ月は必要です。患者様への責任もありますので、2月末退職、3月1日入社でお願いできますでしょうか」

「引き継ぎ」「患者への責任」という言葉を使えば、転職先も納得しやすくなります。実際、薬剤師は患者の薬歴を引き継ぐ責任があるため、2ヶ月の引き継ぎ期間は妥当と判断されます。

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人事が見ている「退職者の印象」の真実

「もらい逃げ」と思われる人の特徴

人事の立場から見て、「もらい逃げ」と感じる退職者には明確な特徴があります。

  • ボーナス支給日の翌日に退職届を提出
  • 引き継ぎ期間が極端に短い
  • 退職理由が曖昧で説得力がない
  • 感謝の言葉が一切ない

こうした行動を取ると、たとえ法的には問題なくても、人事や上司の記憶に悪い形で残ります。薬剤師業界は意外と狭く、将来どこかで同じ人と関わる可能性もゼロではありません。

「筋を通した退職」として記憶される人の特徴

逆に、人事として好印象を持つ退職者の特徴は以下です。

  • ボーナス支給から数週間後に退職を切り出す
  • 引き継ぎスケジュールを自分から提示する
  • 後任者へのマニュアルを丁寧に作成する
  • 最終出勤日まで手を抜かない

私が人事部長だった頃、こうした薬剤師に対しては、退職後も「復職したくなったらいつでも連絡してください」と伝えていました。実際に数年後、より良い条件で出戻りしてきた薬剤師もいます。

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転職エージェントを活用すれば、すべてが楽になる

年収交渉を「代理」でやってくれる強み

ボーナスをもらって退職する際、次の転職先での年収交渉も重要です。しかし、直接「年収○○万円希望です」と言うのは気が引けます。

転職エージェントを使えば、年収交渉を代行してくれます。私が人事部長時代、エージェント経由の候補者の方が、高い年収での採用が多かった理由は明確です。

「本人が言いにくい条件を、エージェントが代弁してくれる」からです。企業側も「エージェントの要求だから仕方ない」と受け止めやすいのです。

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退職交渉のアドバイスももらえる

優秀なエージェントは、退職交渉のタイミングやボーナスを満額もらうコツも熟知しています。

「現職でのボーナス支給日はいつですか?」
「それなら、この時期に退職を伝えて、この入社日で調整しましょう」

こうした具体的なスケジュール管理をサポートしてくれます。自分一人で悩むより、プロの知恵を借りる方が確実です。

実は、人事部長として多くの紹介会社と付き合う中で、「この会社の担当者からの電話なら、どんなに忙しくても取る」と決めていた会社が数社だけありました。なぜ彼らは特別だったのか?どうすれば、あなたの経験とスキルを、最大限評価してくれる職場を見つける「本物の担当者」に出会えるのか。 

ここで書くと長くなるため、採用担当しか知らない「エージェント活用の裏ノウハウ」として別の記事にまとめました。本気で転職を成功させたい方だけご覧ください。

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よくある質問:ボーナスと退職のタイミング

Q1:有給消化中にボーナス支給日が来る場合はどうなる?

有給消化中でも、会社に籍がある限りボーナスは支給されます。支給日在籍条項は「出勤していること」ではなく「在籍していること」が条件だからです。

ただし、退職日がボーナス支給日より前に設定されている場合は支給されません。必ず退職日を支給日より後に設定してください。

Q2:ボーナス後すぐに辞めると、返還を求められる?

労働基準法第16条「賠償予定の禁止」により、一度支給されたボーナスの返還を求めることは違法です。就業規則に「支給後○日以内の退職は返還」と書かれていても、その規定自体が無効になる可能性が高いです。

私が人事部長時代、返還を求めたことは一度もありません。法的リスクが高すぎるからです。

Q3:ボーナス減額を理由に、内定を辞退すべき?

減額されても、次の職場で年収が上がるなら問題ありません。目先の数万円より、長期的な年収アップを優先すべきです。

仮に8万円減額されたとしても、転職先で年収が50万円上がれば、1年で十分に取り戻せます。

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あなたの市場価値は、今のボーナス額だけでは測れない

ボーナスをもらってから退職することに、罪悪感を抱く必要はありません。それは、あなたが過去半年間働いた正当な対価です。

ただし、タイミングと伝え方を誤ると、減額リスクや人間関係の悪化を招きます。この記事で解説した5つのステップを実践すれば、満額受け取りながら円満退職できる確率は大幅に上がります。

多くの薬剤師を見送ってきた中で、強く感じることがあります。ボーナスの額に一喜一憂している時間があるなら、その時間を次のキャリアステップの準備に使うべきです。

あなたの市場価値は、今の職場のボーナス査定だけで決まるものではありません。在宅医療の経験、認定資格の取得、マネジメント能力の向上。こうしたスキルを積み上げることで、次の職場ではさらに高い評価を得られます。

今の環境で悩み続けたあなたを、誰も責めることはできません。しかし、その悩みを行動に変えた瞬間、あなたのキャリアは新しいステージに進みます。

ボーナスは受け取る。そして、次のステップへ進む。両方を手に入れることは、決して欲張りではありません。それが、プロフェッショナルとしての正しい選択です。


推奨する転職エージェント

エージェントに任せれば、あなたは「年収はエージェントが勝手に交渉してくれた」というスタンスを取れます。企業側も「エージェントの要求だから仕方ない」と受け止めやすいのです。実際に私が人事の裏側を見て「ここは信頼できる」と判断したエージェントだけを厳選しました。

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この記事を書いた人

調剤薬局チェーン元人事部長・薬剤師・中小企業診断士。
約4年間、人事責任者として薬剤師の採用・評価制度設計に従事。大手を中心に20社以上の紹介会社と折衝し、採用の舞台裏から「紹介会社の実力差」を熟知する。現在は経営コンサルタントとして、調剤薬局の採用戦略や人事考課制度の設計支援を行う一方、薬剤師個人のキャリア支援も行っている。採用側と求職側、双方の視点を持つ「情報の非対称性を解消する」解説に定評がある。

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