60代薬剤師が転職で失敗する5つの落とし穴|成功するためのリアル対策

2025年10月時点の情報です

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60代での転職、本当に諦めていませんか?

「60代で転職なんて無理だろう」

そう思い込んで、理不尽な労働環境に我慢し続けている薬剤師の方を、私は人事部長時代に何人も見てきました。

しかし現実は違います。

高齢化社会が進む中、経験豊富な60代薬剤師の需要は確実に高まっています。在宅医療の拡大、かかりつけ薬剤師制度の浸透により、ベテランの知識と対応力が求められる場面は増える一方です。

それなのに、なぜ60代の転職で失敗する薬剤師が後を絶たないのか。

元・調剤薬局チェーン人事部長として、私は多くの採用面接に携わり、60代薬剤師の転職成功例も失敗例も数多く見てきました。その経験から断言できます。60代の転職失敗には、明確な共通パターンが存在するのです。

本記事では、実際の失敗ケースをもとに、60代薬剤師が転職で陥りがちな5つの落とし穴を徹底解説します。これから転職を考えているあなたが同じ轍を踏まないよう、人事の視点から本音でお伝えします。


失敗ケース1:「年齢だから仕方ない」と条件を妥協しすぎる

自己評価の低さが招く悲劇

60代薬剤師の転職で最も多い失敗が、これです。

「60代だから選べない」という思い込みから、不当に低い条件を受け入れてしまう。人事部長として面接していた頃、この思考に陥っている方を見るたび、心から「もったいない」と感じていました。

新人薬剤師では対応できない複雑な服薬指導、医師との円滑なコミュニケーション、後輩への的確な指導。これらは何年もの実務経験があって初めて身につくスキルです。

ところが、知人の60代の薬剤師Cさんは、時給1500円という条件を「年齢的に妥当」と考えて受け入れました。その方は大学病院15年と調剤薬局20年のキャリアがありました。

はっきり言って、安すぎます。

適正な市場価値を知っていれば、時給2000円以上は十分に交渉できる人材でした。

市場価値を正確に把握する方法

60代薬剤師の適正年収を知らずに転職活動を始めるのは、地図を持たずに知らない街を歩くようなものです。

まず押さえるべきは、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のデータです。60代薬剤師の平均年収は約550万円ですが、これはあくまで平均値。経験とスキル次第で、600万円から700万円も十分に射程圏内です。

特に以下のスキルを持つ60代薬剤師は、高い市場価値があります。

  • 在宅医療の実務経験
  • かかりつけ薬剤師としての指導実績
  • 後進育成の経験
  • 専門薬剤師などの認定資格

自分のキャリアを過小評価せず、これらの強みを明確に言語化することが重要です。

薬剤師職業紹介会社のキャリアアドバイザーに相談すれば、客観的な市場価値の査定を受けられます。下記3社は、60代薬剤師の紹介実績も多く、適正な年収レンジを提示してくれます。

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失敗ケース2:体力面の不安を隠して応募する

「大丈夫です」が生む悲劇的なミスマッチ

60代の転職で次に多い失敗が、体力面の現実を直視しないことです。

私はこんな話を聞きました。ある調剤薬局に転職した62歳の薬剤師Dさんが、一人薬剤師の店舗に配属されました。面接では「体力には自信があります」と答えていましたが、実際に働き始めると、立ち仕事の連続と処方箋枚数の多さについていけず、3ヶ月で退職されました。

本人にとっても、薬局にとっても、不幸な結果です。

問題は、Dさんが嘘をついたわけではないということ。ご本人は本当に「頑張れば大丈夫」と思っていたのです。しかし、想像と現実は違いました。

正直に伝えることが最善の戦略

体力面の不安を隠すことは、決してプラスになりません。むしろ自分の状況を正直に伝えた上で、適切な職場を選ぶ方が長期的なキャリア形成につながります。

例えば以下のような条件を明確にすることです。

  • 週3〜4日勤務を希望
  • 処方箋枚数が1日40枚以下の店舗を希望
  • 座って作業できる調剤業務中心の職場を希望
  • 複数薬剤師配置の店舗を希望

これらを面接時に伝えることで、人事担当者は適切な配属先を検討できます。

実際、私が人事部長だった頃、「週3日・午前中のみ勤務希望」と明確に伝えてきた64歳の薬剤師Eさんを採用したことがあります。その方は在宅医療に特化した店舗で、訪問業務をメインに担当してもらいました。

体力的な負担は少なく、経験を活かせる業務で、双方にとって理想的なマッチングになりました。


失敗ケース3:新しいシステムへの対応を軽視する

デジタル化の波を甘く見た代償

60代薬剤師の転職失敗で見落とされがちなのが、ITリテラシーの問題です。

調剤薬局の業務は、この10年で劇的にデジタル化しました。電子薬歴、オンライン服薬指導、自動錠剤分包機の操作など、新しいシステムへの対応が必須です。

ある63歳の薬剤師Fさんは、長年勤めた個人薬局から大手チェーン薬局に転職しました。しかし、電子薬歴システムの操作に苦戦し、入力ミスが頻発。周囲のサポートを受けながらも、「若い薬剤師の足を引っ張っている」と感じて自信を失い、半年で退職されたとのことでした。

これは非常にもったいない失敗例です。

Fさんには服薬指導の高いスキルがあったにもかかわらず、システム操作の不慣れだけで自己評価が下がってしまったのです。

事前準備が成功を左右する

新しいシステムへの対応は、事前準備でカバーできます。
まず、転職前にどんなシステムを使っているのか、必ず確認してください。

  • 電子薬歴のメーカー(例:Musubi、ネグジット、EMSYSTEMSなど)
  • レセコンの種類
  • オンライン服薬指導の有無
  • 調剤機器の自動化レベル

これらの情報を面接時に質問し、可能であれば見学時に実際に触らせてもらうことです。

また、内定後から入社までの期間に、基本的な操作を学ぶ時間を設けてもらえるか交渉するのも有効です。私が人事部長だった頃は、必ず研修期間を設け、システム操作をマンツーマンで教える体制を作っていました。これは60代の中途採用者に限った話ではありませんが、今振り返ると特に60代の方には有効だったのではないかと思います。

こうした配慮をしてくれる職場かどうかを見極めることが、転職成功の鍵です。薬剤師職業紹介会社のアドバイザーに相談すれば、研修体制が整った職場を紹介してもらえます。


失敗ケース4:「即戦力」というプレッシャーに潰される

過度な期待が生む悲劇

60代薬剤師の転職で見落とされがちな落とし穴が、これです。

「ベテランだから即戦力」という期待が、本人にも職場にも重くのしかかるのです。

人事部長時代、61歳の薬剤師Gさんを採用した際、店舗の薬局長から「ベテランが来るなら、すぐに一人薬剤師を任せられますね」と言われました。しかし実際には、その店舗独自のルールや地域の医療機関との関係性を把握するには時間が必要でした。

Gさんは「即戦力として期待されているのに、こんなことも分からないのか」というプレッシャーに苦しみ、精神的に追い込まれていきました。

経験があるからこそ、「できて当然」と思われる苦しさがあるのです。

適応期間の確保を交渉する

転職後の適応期間は、年齢に関係なく必要です。

むしろ60代の転職では、新しい環境に慣れるための時間を最初から確保することが重要です。

面接時に以下の点を確認してください。

  • 入社後の研修期間はどれくらいか
  • OJT担当者は誰で、どのようなサポート体制か
  • 一人薬剤師を任されるまでのスケジュールはどうなっているか
  • 分からないことを質問しやすい職場環境か

これらを事前に明確にしておけば、「できて当然」というプレッシャーから解放されます。

実際、私が人事として関わった65歳の薬剤師Hさんは、面接で「新しい環境に慣れるまで3ヶ月は指導をお願いしたい」と明確に伝えました。その結果、店舗側も受け入れ体制を整え、スムーズな職場適応ができました。

正直に自分の状況を伝えることが、結果的に長く働ける環境を作るのです。

アドバイザーは、こうした細かい条件交渉も代行してくれます。「ベテランだから即戦力で当然」という一方的な期待を排除し、双方が納得できる条件を整えることが可能です。

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失敗ケース5:退職理由を曖昧にしたまま転職する

根本原因を解決しない転職は繰り返す

60代薬剤師の転職で最も見過ごされている失敗が、これです。

「なぜ今の職場を辞めたいのか」を明確にしないまま転職すると、同じ問題に再び直面します。

人事部長時代、62歳の薬剤師Iさんの面接をしました。退職理由を尋ねると「人間関係がちょっと…」と曖昧な答え。詳しく聞くと、薬局長とのコミュニケーション不足が原因でした。

しかし、その根本原因を掘り下げないまま転職した結果、新しい職場でも似たような問題が発生しました。コミュニケーションスタイルの違いを認識せず、再び人間関係で悩むことになったのです。

退職理由の本質を見極める

転職を成功させるには、退職理由の本質を見極めることが不可欠です。

「人間関係が悪い」と感じる場合、その裏には何があるのか。

  • 報告・連絡・相談のルールが不明確だったのか
  • 薬局長のマネジメントスタイルが合わなかったのか
  • 自分のコミュニケーション方法に改善点があったのか

これらを冷静に分析することで、次の職場選びの基準が見えてきます。

例えば「薬局長のワンマン経営についていけなかった」のであれば、次は複数薬剤師が在籍し、民主的な運営をしている職場を選ぶべきです。「報告ルールが曖昧で不安だった」のであれば、業務マニュアルが整備されたチェーン薬局が向いているかもしれません。

転職エージェントに退職理由を正直に伝えることで、同じ失敗を繰り返さない職場選びができます。アドバイザーは、表面的な条件だけでなく、職場の人間関係や経営方針まで踏み込んだ情報提供をしてくれます。


60代の転職は「終わり」ではなく「新たな始まり」

ここまで、60代薬剤師の転職でよくある失敗ケース5つを見てきました。

年齢を理由に条件を妥協しすぎること。体力面の不安を隠すこと。新しいシステムへの対応を軽視すること。即戦力というプレッシャーに潰されること。退職理由を曖昧にしたまま転職すること。

これらの失敗には、すべて共通点があります。

それは「自分の価値を正しく認識できていない」ことです。

あなたが積み重ねてきた数十年の経験は、決して色褪せるものではありません。むしろ、高齢化社会が進む今、その経験こそが最も求められているスキルなのです。

60代での転職は、キャリアの終わりではありません。

これまでの知識と経験を活かしながら、自分らしい働き方を実現する新たな始まりです。

私が人事部長として見てきた成功例には、共通する要素がありました。それは「自分の市場価値を正しく理解し、希望する働き方を明確に伝え、適切なサポートを受けた」ということです。

一人で転職活動を進めることに不安を感じるなら、薬剤師職業紹介会社の力を借りてください。あなたのこれまでのキャリアを正当に評価し、理想の働き方を実現できる職場を一緒に探してくれます。

60代だからこそできる働き方があります。年齢を理由に諦めることなく、あなたらしいキャリアの次の一歩を踏み出してください。

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この記事を書いた人

元・調剤薬局チェーンの人事部長(薬剤師)|激務で倒れたら猫に|人事部長としての経験から「転職エージェント(紹介会社)が、採用側(私たち)にどう向き合い、転職者(あなた)をどう扱っているか」など有益情報を発信|理想の職場探しはプロに相談するニャ👇

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