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なぜ、あの人が採用されたのか
「経験年数も資格も同じなのに、なぜあの人が採用されて、私は不採用だったのか」
面接後、こんな疑問を抱いたことはありませんか?
求人票には「アットホームな職場」「やる気重視」と書かれていても、実際の採用基準は全く別のところにあります。私が調剤薬局チェーンの人事部長として多くの薬剤師を採用してきた経験から断言できます。採用の合否を分けるのは、スキルや経験年数だけではありません。
むしろ、面接官が本当に見ているのは「求人票に書かれていない評価基準」です。
職務経歴書の書き方一つ、面接での何気ない一言、さらには質問への答え方のテンポまで。採用担当者は、あなたが意識していない部分を冷静に評価しています。そして、その評価基準を知っているかどうかで、転職の成否が大きく変わるのです。
この記事では、元・調剤薬局チェーン人事部長の立場から、薬剤師採用の評価基準を完全公開します。面接官が本当に見ているポイント、職務経歴書で落とされる致命的なミス、年収交渉の成否を分ける一言まで、採用の裏側を全て解説します。
読み終える頃には、なぜあの人が採用されたのか、そしてあなたが次の面接で何をすべきかが明確になるはずです。
【評価基準の真実】人事が本当に見ている3つの採用ポイント
ポイント1:「即戦力」の定義は薬局ごとに全く違う
「即戦力を求めています」
この言葉を求人票で見たとき、あなたは何を想像しますか?
多くの薬剤師は「調剤経験があれば即戦力だろう」と考えます。しかし、これは大きな誤解です。採用側が求める即戦力の定義は、薬局の経営状況や欠員状況によって180度変わります。
私が人事部長だった頃、こんなケースがありました。
門前の内科クリニックが閉院し、在宅医療にシフトする必要に迫られた薬局での採用面接でのことです。応募者Aさんは調剤経験15年のベテランでしたが、在宅医療の経験はゼロ。一方、応募者Bさんは経験5年ながら、前職で訪問薬剤指導の実績が豊富でした。
結果、採用されたのはBさんです。
Aさんは「なぜ経験年数の浅い人が採用されたのか」と不満を漏らしましたが、薬局側からすれば答えは明白でした。今すぐ在宅医療を軌道に乗せる必要があり、そのスキルを持つBさんこそが「即戦力」だったのです。
即戦力とは「あなたの経験年数」ではなく「その薬局が今、最も必要としているスキル」を指します。
面接前に確認すべきは以下の3点です。
- その薬局が今、どんな課題を抱えているか(門前処方の減少、在宅強化、かかりつけ薬剤師の育成など)
- 欠員が出た理由(退職、新規出店、事業拡大など)
- 前任者がどんな業務を担当していたか
これらの情報を事前に把握し、自分の経験がその課題解決にどう貢献できるかを明確に伝えられる人が、採用されます。
ファルマスタッフやレバウェル薬剤師といった薬剤師職業紹介会社を活用すれば、こうした「求人票に載らない情報」を事前に入手できます。担当コンサルタントに「この薬局が今、最も困っていることは何ですか」と直接聞いてください。
私が人事部長時代、実際に『交渉力が高く、信頼できる』と感じた理由について、以下の記事で生々しく解説しています。失敗したくない方は、必ずチェックしてください。

ポイント2:職務経歴書で印象が決まる「書類選考の罠」
面接で挽回できると思っていませんか?
書類選考は、採用担当者が「この人に会う価値があるか」を決める最初の、そして最大の関門です。人事担当者は、職務経歴書を30秒で判断します。その30秒で「会いたい」と思わせられなければ、面接のチャンスすら得られません。
私が人事部長として書類選考をしていた際、最も多かった不採用理由は「職務経歴書に具体性がない」ことでした。
例えば、こんな職務経歴書です。
【NG例】
職務内容:調剤業務全般、服薬指導、在庫管理
実績:患者様に寄り添った服薬指導を心がけてまいりました
これでは何も伝わりません。
採用担当者が知りたいのは「作業リスト」ではなく、「あなたを採用した後の未来(再現性)」です。
では、どう書けば良いのか。以下が改善例です。
【OK例】
職務内容
- 処方箋応需枚数:月間約800枚(内科・整形外科門前)
- 在宅患者対応:月15件(訪問薬剤指導、居宅療養管理指導)
- かかりつけ薬剤師算定:25名(店舗目標20名を達成)
実績
- 服薬指導時の聞き取りを工程化し、重複投薬の疑義照会を前年比30%増加
- 新人薬剤師2名の教育を担当。3ヶ月で独り立ちを実現
- 在宅患者の残薬調整により、医療費削減に貢献(年間推定150万円)
この書き方の違いが分かりますか?
数字で成果を示し、その成果が「再現可能」であることを証明しています。採用担当者は、この職務経歴書を見た瞬間に「この人は自社でも成果を出せる」と判断します。
もう一つ、致命的なミスがあります。
それは「転職理由を曖昧に書くこと」です。「キャリアアップのため」「新しい環境で挑戦したい」といった抽象的な理由では、採用担当者は「前職で何か問題があったのでは?」と疑います。
職務経歴書には、転職理由を具体的に、かつ前向きに記載してください。
例:「門前クリニックの閉院により処方箋応需枚数が減少。在宅医療の需要が高まる中、訪問薬剤指導のスキルを活かせる環境で専門性を高めたい」
このように書けば、転職理由に納得感が生まれ、採用担当者の不安は解消されます。
ポイント3:面接で見ているのは「スキル」ではなく「退職リスク」
面接官が最も恐れていること。それは「採用後、すぐに辞められること(早期離職)」です。
薬剤師一人を採用するコストは、求人広告費、面接対応、教育時間を含めると最低でも50万円以上かかります。それが半年で退職されれば、完全に赤字です。だからこそ、面接官は「この人は長く働いてくれるか」を最優先で見ています。
私が面接で必ず聞いていた質問があります。
「前職を辞めた理由は何ですか?」
この質問の意図は、退職理由そのものではなく、「同じ理由で、うちの薬局も辞めないか」を確認することです。
例えば、こんな答え方をする応募者がいました。
【NG例】
「人間関係が合わなくて。お局薬剤師の方と上手くいかず、精神的に辛くなりました」
この答えを聞いた瞬間、私は不採用を決めました。なぜか。
どの職場にも人間関係の難しさはあります。
それを理由に退職するなら、自社でも同じことが起こるリスクが高いからです。
では、どう答えるべきか。
【OK例】
「前職では、一人薬剤師の体制で休憩時間も確保できず、患者様への服薬指導に十分な時間を割けませんでした。貴社は複数名体制で在宅医療にも力を入れていると伺い、より質の高い薬剤師業務に専念できる環境だと感じました」
この答え方なら、退職理由が「環境の問題」であり、自社ではその問題が解決できることが明確です。面接官は「この人なら長く働いてくれる」と判断します。
もう一つ、面接で見ているポイントがあります。
それは「質問の質」です。
面接の最後に「何か質問はありますか?」と聞かれたとき、あなたは何を聞きますか?
「休日は何日ですか?」「残業はありますか?」
こうした労働条件だけを聞く応募者は、面接官から「この人は仕事内容に興味がないのでは?」と思われます。
逆に、こんな質問をする応募者は高評価を得ます。
- 「貴社で活躍している薬剤師の方の共通点は何ですか?」
- 「入社後、最初の3ヶ月でどんな成果を期待されていますか?」
- 「貴社が今後、特に力を入れていきたい事業は何ですか?」
これらの質問は、「長く働く前提で、自分がどう貢献できるか」を考えていることを示します。面接官は「この人は本気だ」と判断し、採用の可能性が一気に高まります。
【年収交渉の裏側】採用担当者が明かす「給与テーブルの真実」
年収交渉は「いつ」「誰が」するかで結果が変わる
「希望年収は?」
面接でこう聞かれたとき、あなたは何と答えますか?
多くの薬剤師は「前職と同じくらいで」と曖昧に答えます。しかし、これは年収を上げる最大のチャンスを逃しています。
年収交渉の成否は、タイミングと交渉者で決まります。
私が人事部長として給与を決定していた際、こんなルールがありました。
- 内定前の希望年収:給与テーブルの範囲内で最大限考慮する
- 内定後の希望年収:原則として変更不可
- 応募者本人からの交渉:慎重に判断(「この人、入社後も給与のことばかり言うのでは?」と警戒される)
- 転職エージェント経由の交渉:客観的データとして受け入れやすい
つまり、年収交渉は「内定前」に「転職エージェント」を通じて行うのが最も効果的です。
実際にあったケースを紹介します。
応募者Cさんは、面接で「希望年収は550万円です」と伝えていました。しかし、転職エージェント経由で「Cさんの在宅医療の実績(月20件訪問等)は、御社の在宅強化方針において即戦力です」という根拠ある交渉が入りました。
私はこの交渉を受け入れ、Cさんの年収を600万円で決定しました。
なぜか。
転職エージェントは「市場データ」を根拠に交渉してきます。これは感情ではなく、客観的な事実です。採用担当者としては、データに基づく交渉は受け入れやすいのです。
一方、応募者本人が「600万円欲しいです」と言った場合、根拠が曖昧なため、受け入れにくくなります。
年収交渉に自信がない場合や、市場価値に基づいた交渉をしたい場合は、転職エージェントに任せるのが賢明です。ファルマスタッフやレバウェル薬剤師、ファル・メイトといった薬剤師職業紹介会社なら、市場データを基にした交渉が可能です。

「頑張ったら年収800万円」の罠
求人票でよく見る文言があります。
「頑張り次第で年収800万円も可能!」
この言葉を信じて入社し、後悔した薬剤師を何人も見てきました。
「頑張る」の定義が明確でない求人は、入社後のミスマッチや長時間労働につながるリスクが高いため注意が必要です。
私が人事部長だった頃、ある薬局長がこう言っていました。
「年収800万円?そりゃあ、店長になって、在宅も月30件こなして、新人教育もして、本部のプロジェクトにも参加してもらえば可能だよ」
この条件、現実的だと思いますか?
店長業務だけでも激務なのに、在宅30件、新人教育、プロジェクト参加まで求められる。しかも、それが「頑張る」の定義だと入社後に知らされるのです。
面接では、必ずこう質問してください。
「年収800万円を達成した方は、具体的にどんな業務を担当されていますか?実在する方の実績を教えていただけますか?」
この質問に対して、具体的な回答ができない薬局は要注意です。
逆に「在宅医療を月20件担当し、かかりつけ薬剤師を30名担当しているAさんが、昨年年収780万円でした」と即答できる薬局は信頼できます。
【ホワイト薬局の見抜き方】求人票と面接で分かる「危険なサイン」
求人票の「要注意ワード」3選
求人票を見ただけで、その薬局がホワイトかブラックか、ある程度判断できます。
私が人事部長として求人票を作成していた経験から、絶対に避けるべき「要注意ワード」を3つ紹介します。
1. 「アットホームな職場です」
この言葉が求人票に書かれている場合、私は警戒します。
なぜなら、本当にアットホームな職場は、わざわざそれをアピールする必要がないからです。
「アットホームな職場」と書かれている薬局の実態は、こうです。
- 給与や福利厚生に魅力がなく、雰囲気でごまかそうとしている
- 人間関係が密すぎて、プライベートにまで踏み込まれる
- 「仲間なんだから」という理由で、サービス残業が常態化している
実際、私がいた薬局チェーンでも「アットホームを売りにしよう」と提案された店舗は、離職率が高い店舗ばかりでした。
2. 「やる気のある方を歓迎」
これも危険なワードです。
「やる気」の定義が曖昧なため、入社後に「こんなはずじゃなかった」となるケースが多発します。採用側が求める「やる気」とは、長時間労働や休日出勤に応じる姿勢を指していることが少なくありません。
3. 「幅広い業務を経験できます」
一見、魅力的に聞こえますが、実態は「人手不足で何でもやらされる」という意味です。調剤、在宅、OTC販売、レジ打ち、品出し、掃除まで。本来、薬剤師がやるべきでない業務まで押し付けられる可能性が高いです。
求人票でこれらのワードを見つけたら、面接で必ず確認してください。
「アットホームとは、具体的にどんな雰囲気ですか?」
「やる気のある方とは、どんな姿勢を期待されていますか?」
「幅広い業務の中で、薬剤師業務以外の作業はどれくらいの割合ですか?」
この質問に対して、曖昧な回答しかできない薬局は避けるべきです。
面接で見抜く「ブラック薬局のサイン」
面接の場で、薬局の本質を見抜く方法があります。
それは「面接官の態度」と「質問内容」です。
他の調剤薬局の話ですが、こんな薬局長がいました。
面接中、ずっとスマホをいじり、応募者の話を聞いていない。
質問も「うちの薬局、どう思う?」「いつから働ける?」といった雑なもの。
この薬局長の店舗は、案の定、離職率が最も高い店舗だったとのことでした。
面接官が応募者を尊重しない薬局は、入社後も薬剤師を尊重しません。
逆に、ホワイトな薬局の面接官は、こんな質問をします。
- 「あなたのキャリアプランを教えてください。それを実現するために、当社でどんなサポートが必要ですか?」
- 「前職で最もやりがいを感じた業務は何ですか?当社でもそれを活かせる環境を用意できるか考えたいので、詳しく教えてください」
この質問の違いが分かりますか?
ホワイトな薬局は「この人が長く働ける環境を作ろう」と考えています。
だからこそ、応募者の希望やキャリアプランを丁寧に聞き取ります。
面接は、薬局があなたを評価する場であると同時に、あなたが薬局を評価する場でもあります。面接官の態度や質問内容から、その薬局の本質を見抜いてください。
【転職エージェント活用術】採用担当者が明かす「エージェント経由が有利な理由」
なぜ、転職エージェント経由の応募者は採用されやすいのか
人事部長として正直に言います。
エージェント経由は「紹介手数料」がかかるため、本来であれば採用ハードルは上がります。しかし、それでも採用されやすいケースが多いのです。なぜか?
それは、採用担当者が「ミスマッチのリスク」をお金で解決したいと考えているからです。
転職エージェントは、応募者の情報を事前に整理し、薬局側のニーズに合う人材だけを紹介します。つまり、採用担当者は「ある程度、質が保証された応募者」として受け取ります。
さらに、転職エージェントは応募者の強みを客観的に伝えてくれます。
例えば、直接応募の場合、応募者が「在宅医療の経験があります」と言っても、それが本当にどれほどのレベルなのか分かりません。
しかし、転職エージェント経由なら「この方は前職で月20件の訪問薬剤指導を担当し、かかりつけ薬剤師として25名の患者様を担当していました」と具体的に伝えてくれます。
採用担当者としては、この情報があるだけで判断がしやすくなります。
もう一つ、重要な理由があります。
転職エージェントは、応募者が辞退しないようフォローしてくれるからです。
採用活動で最も困るのは、内定後に辞退されることです。時間とコストをかけて採用活動を進めたのに、辞退されれば全てが無駄になります。
転職エージェントは、内定後も応募者と薬局の間に入り、条件交渉や入社日の調整をスムーズに進めてくれます。採用担当者としては、この安心感が大きいのです。
私がお勧めするのはこの3社です。実務経験から得た体験談として推奨理由を語っています。

転職エージェントに任せるべき「3つの交渉」
転職活動で、自分では言いにくいことがあります。
それを代わりに伝えてくれるのが転職エージェントです。
特に、以下の3つの交渉は必ず転職エージェントに任せてください。
1. 年収交渉
先述の通り、年収交渉は転職エージェント経由が最も効果的です。
「市場価値として〇〇万円が妥当です」というデータに基づく交渉は、採用担当者も受け入れやすいです。
2. 入社日の調整
前職の退職日と新しい薬局の入社日の調整は、意外と難しいです。
前職で引き継ぎが長引いたり、有給消化の日程が確定しなかったり。
転職エージェントは、両者の間に入って柔軟に調整してくれます。
3. 労働条件の細かい確認
「着替えの時間は勤務時間に含まれますか?」
「シフトはいつ決まりますか?」
「未消化の有給はどうなりますか?」
こうした細かい質問は、面接で直接聞きにくいものです。
しかし、入社後にトラブルになりやすい重要なポイントです。
転職エージェントなら、こうした質問を代わりに確認してくれます。
あなたの市場価値は、あなたが思っているよりずっと高い
ここまで読んで、こう思った方もいるかもしれません。
「採用基準がこんなに厳しいなら、自分は転職できないのでは?」
違います。
採用基準を知ることは、あなたが不利になることではありません。むしろ、有利になるのです。
多くの薬剤師は、採用基準を知らないまま転職活動を進めます。だからこそ、職務経歴書で落とされ、面接で不採用になり、「自分には価値がないのでは?」と自信を失います。
しかし、それは単に「評価される方法を知らなかっただけ」なのです。
あなたが調剤業務をこなし、患者様に寄り添い、後輩を指導してきた経験。それらは全て、市場価値のある「資産」です。ただ、それを正しく伝える方法を知らなかっただけです。
今の環境で悩み続けたあなたを、誰も責めることはできません。
むしろ、ここまで頑張ってきたあなたは、十分に評価されるべきです。
採用基準を知り、職務経歴書を正しく書き、面接で自分の価値を伝える。それだけで、あなたの転職は成功に大きく近づきます。
行動を起こすのは、今です。
まずは、自分の「適正年収」と「市場価値」を知ることから始めましょう。
ファルマスタッフやレバウェル薬剤師などのエージェントで、コンサルタントに「私の経歴なら、どんな薬局がいくらでオファーを出しますか?」と聞いてみてください。
転職するかどうかは、その答えを聞いてから決めても遅くありません。


