薬剤師の転職戦略|初めてvsキャリアアップの違いを元人事部長が完全解説

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2025年11月時点の情報です

目次

あなたの転職、本当に正しい戦略で進めていますか?

「今の職場を辞めたい」

そう思ったとき、あなたはどんな行動を取りますか。求人サイトを開いて年収を比較し、条件が良さそうな薬局にとりあえず応募する。多くの薬剤師がこうした「なんとなく」の転職活動をしています。

しかし、初めての転職と2回目以降のキャリアアップ転職では、求められる準備も、採用側の評価ポイントも、そして失敗のリスクも大きく異なるのです。

私が調剤薬局チェーンで人事部長を務めていた頃、面接で何度も目にしたのは「転職の目的が不明確な応募者」でした。初めての転職なのに、ベテランのような年収交渉をして失敗する人。キャリアアップのはずが、前職と同じ環境に飛び込んで後悔する人。転職回数は違っても、戦略の立て方を間違えると、誰もが同じ失敗を繰り返すのです。

一見、売り手市場に見えます。しかし、実際には「ただ転職できる」のと「理想のキャリアを築く転職ができる」のでは、天と地ほどの差があります。

本記事では、採用現場の裏側を知り尽くした元人事部長の視点から、初めての転職とキャリアアップ転職それぞれに最適化された戦略を徹底解説します。机上の空論ではない「生きた戦略」をお持ち帰りください。あなたの転職が「なんとなく」から「戦略的」に変わる瞬間を、ぜひ体感してください。


【最重要】初めての転職とキャリアアップ転職の決定的な3つの違い

転職は回数を重ねるごとに、採用側の見方が変わります。人事部長として多くの面接を担当した経験から、断言できます。初めての転職者と転職経験者では、評価されるポイントがまったく異なるのです。

違い①:採用側が重視するポイントが正反対

初めて転職する薬剤師に対して、私たち人事が最も知りたいのは「なぜ辞めるのか」でした。新卒で入った会社を離れる理由には、その人の価値観やキャリアに対する考え方が如実に表れます。

人間関係のトラブルで辞めるのか。労働環境への不満か。それとも、明確なキャリアプランがあって辞めるのか。

面接では表面的な理由しか語られませんが、職務経歴書の書き方や質問への答え方から、本当の退職理由は透けて見えます。初めての転職者が「前職の悪口」を言った瞬間、私たちは採用を見送る判断をすることが多かったのです。

一方、2回目以降の転職者に対しては「何を積み上げてきたか」を重視します。転職回数が増えるごとに、採用側は「この人は何ができるのか」「うちで何を実現したいのか」という成果とビジョンを求めるようになります。

転職回数2回以上の応募者が「前職で在宅医療の立ち上げを担当しました」と具体的な実績を語れば、それだけで評価は一気に高まります。逆に、3回目の転職でも「スキルアップしたくて」という曖昧な理由しか語れない人は、高い評価を得ることはできませんでした。

違い②:年収交渉の難易度とタイミングが全く違う

初めての転職で「年収を100万円上げたい」と面接で切り出す人がいますが、戦略なしに行うのは非常にリスクが高い行為(悪手)と言わざるを得ません。

面接していた当時、初めての転職者が強気の年収交渉をすると、私はこう思いました。「この人は自分の市場価値を理解していない」と。

新卒で入社して3〜5年。確かに現場で頑張っているかもしれません。しかし、採用側から見れば、あなたはまだ「1つの職場しか知らない薬剤師」です。他社でも通用する汎用的なスキルを証明できていない段階で、年収交渉を前面に出すのはリスクが高すぎます。

初めての転職では、まず「環境を変えて成長する」ことを優先すべきです。年収は結果としてついてくるものであり、交渉の武器にはなりません。

一方、キャリアアップ転職では話が変わります。複数の職場を経験し、明確な実績を持つ薬剤師は、年収交渉の主導権を握れます。

「前職では在宅医療の処方箋応需枚数を月500枚から1200枚に増やしました。御社でも同様の貢献ができます」

こう言える人には、企業側も相応の待遇を用意します。実績がある人の年収交渉は「妥当な要求」として受け入れられるのです。

違い③:失敗時のダメージの大きさが桁違い

初めての転職で失敗しても、まだ取り返しがつきます。「若気の至りで選択を誤った」という言い訳が、ある程度は通用するからです。

しかし、2回目以降の転職で失敗すると、その影響は致命的です。

面接した薬剤師の中に、30代前半で転職歴が4回という方がいました。職務経歴書を見ると、いずれも1年半から2年で退職しています。

面接で理由を聞くと、「人間関係が合わなくて」「思っていた仕事内容と違って」という曖昧な答えしか返ってきません。正直、この時点で不採用は確定していました。

転職回数が増えるごとに、採用側は「この人はまた辞めるのではないか」という疑念を強めます。特に3回目以降の転職では、明確な理由と実績がなければ、書類選考すら通過できなくなるのです。

キャリアアップ転職で失敗すると、次の転職はさらに難しくなります。年齢も上がり、市場価値も下がり、選択肢が狭まる。この負のスパイラルに陥ると、抜け出すのは容易ではありません。

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【初めての転職】失敗しないための5つの鉄則

初めての転職は、あなたのキャリアの分岐点です。ここで間違えると、その後のキャリア全体に影響します。「成功する初転職者」には、明確な共通点がありました。

鉄則①:「逃げの転職」を徹底的に排除する

初めての転職で最も多い失敗パターンが「逃げの転職」です。

人間関係がつらい。残業が多い。休みが取れない。こうした不満を抱えて転職活動を始める気持ちは、私も人事として理解しています。

しかし、不満だけを理由に転職すると、次の職場でも同じ問題に直面します。なぜなら、問題の本質を理解しないまま環境だけを変えても、根本的な解決にはならないからです。

20代後半の薬剤師Aさんは、こう語りました。

「今の薬局は一人薬剤師で、休憩も取れず、有給も使えません。もっとホワイトな環境で働きたいんです」

確かに労働環境は重要です。しかし、Aさんの話をよく聞くと、職場の問題を上司に相談したことも、改善を提案したこともないと分かりました。

つまり、彼女は「問題と向き合わずに逃げている」だけだったのです。

こうした応募者を採用しても、次の職場でまた不満を抱えて辞めるリスクが高い。だから、私たちは採用を見送りました。

初めての転職では、まず「なぜ辞めたいのか」を深く掘り下げてください。不満の原因は本当に職場にあるのか。それとも、自分の働き方やコミュニケーションに改善の余地があるのか。

この自己分析ができていない転職は、確実に失敗します。

鉄則②:「3年ルール」の本当の意味を理解する

「新卒で入った会社は3年は続けるべき」

こう言われることがあります。しかし、この3年ルールには誤解があります。

3年という期間そのものに意味があるのではありません。重要なのは「3年間で何を学び、何を身につけたか」です。

5年勤めても「ただ調剤をしていた」だけの薬剤師は、市場価値が低いと判断されます。

初めての転職では、勤続年数ではなく「何を成し遂げたか」が問われます。3年未満でも、明確な実績があれば転職は成功します。逆に、5年以上勤めても成長していなければ、転職は失敗します。

鉄則③:「年収」ではなく「学べる環境」を最優先にする

初めての転職で年収を最優先にする人がいますが、これは大きな間違いです。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和4年分)によると、薬剤師の平均年収は約580万円前後(きまって支給する現金給与額×12+賞与等)で推移しています。20代後半であれば、平均して450万円から500万円程度が相場でしょう。

この段階で年収100万円アップを狙って転職すると、選択肢が極端に狭まります。そして、高年収を提示する職場には、必ず理由があります。

人手不足で激務。離職率が高い。スキルアップの機会がない。

初めての転職では、年収よりも「成長できる環境」を優先してください。

在宅医療に力を入れている薬局。多職種連携が活発な職場。教育制度が整っている企業。

こうした環境で3〜5年スキルを磨けば、次の転職で年収は自然と上がります。目先の年収に飛びつくと、長期的なキャリア形成を犠牲にすることになります。

鉄則④:転職理由を「ポジティブ変換」する技術を身につける

初めての転職で最も難しいのが、退職理由の伝え方です。

「なぜ今の職場を辞めようと思ったのですか?」

この質問に対して、多くの応募者がネガティブな理由を語り始めます。

「上司と合わなくて」「給料が安くて」「休みが取れなくて」

正直、これでは採用できません。

なぜなら、採用側は「この人はうちでも同じ不満を抱くのではないか」と不安になるからです。

初めての転職で重要なのは、退職理由を「ポジティブ変換」する技術です。

例えば、「人間関係がつらい」という理由であれば、こう言い換えます。

「現職では少人数の職場で、多様な価値観に触れる機会が限られていました。御社のようにチーム医療を重視する環境で、より幅広い視点を学びたいと考えました」

同じ内容でも、伝え方を変えるだけで印象は180度変わります。

ポジティブ変換のコツは、「現職への不満」ではなく「次の職場で実現したいこと」を語ることです。これができる応募者は、初めての転職でも高く評価されます。

https://pharma-hr.blog/job-hunting-tips/winning-pharmacist-interviews/↗

鉄則⑤:エージェントを「情報収集ツール」として最大活用する

初めての転職では、情報の非対称性が最大の敵です。

求人票には「アットホームな職場」「残業少なめ」と書いてあっても、実態は全く違うことがあります。私が人事部長時代、自社の求人票にも「働きやすい環境」と記載していましたが、現場では月30時間以上の残業が常態化していました。

求人票の情報だけで転職先を決めるのは、地図なしで航海するようなものです。

初めての転職では、薬剤師専門の転職エージェントを必ず活用してください。エージェントは、求人票には載らない職場のリアルな情報を持っています。

離職率、実際の残業時間、職場の人間関係、社長の人柄。こうした情報は、エージェントでなければ入手できません。

私が人事部長時代、実際に『交渉力が高く、信頼できる』と感じたエージェントについては、以下の記事で実名を挙げて解説しています。失敗したくない方は、必ずチェックしてください。

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【キャリアアップ転職】市場価値を最大化する5つの戦略

2回目以降の転職は、初めての転職とは全く異なる戦略が必要です。キャリアアップ転職では「何ができるか」「何を成し遂げたか」が全てです。キャリアアップ転職で成功する人には、明確な共通点がありました。

戦略①:「実績の言語化」で市場価値を10倍に高める

キャリアアップ転職で最も重要なのは、あなたの実績を具体的な数字で語ることです。

私はこんな応募者に出会いました。

「調剤業務を5年経験しました。在宅医療にも携わりました」

これでは何も伝わりません。5年間で何をしたのか。在宅医療で何を成し遂げたのか。具体性がないため、評価のしようがないのです。

一方、別の応募者はこう語りました。

「前職では在宅医療の立ち上げを担当しました。初年度は月10件だった訪問件数を、2年目には月80件まで拡大。医師や訪問看護師との連携体制を構築し、地域包括ケアの中核を担いました」

この違いが分かりますか?

後者は「何を」「どうやって」「どれくらい」成し遂げたかが明確です。採用側は、この実績を見て「この人はうちでも成果を出せる」と判断します。

キャリアアップ転職では、実績を数字で語ることが絶対条件です。処方箋応需枚数、患者数、在宅訪問件数、後輩育成の人数。あらゆる実績を定量化してください。

曖昧な表現は、あなたの市場価値を下げるだけです。

戦略②:転職理由を「キャリアビジョン」で語る

キャリアアップ転職では、転職理由の伝え方が初めての転職とは全く異なります。

初めての転職では「なぜ辞めるのか」が問われますが、キャリアアップ転職では「なぜ次のステップに進むのか」が問われます。

30代の薬剤師Cさんは、こう語りました。

「前職では調剤薬局で管理薬剤師を3年務めました。しかし、在宅医療の経験を積む機会がなく、地域包括ケアの最前線で働きたいと考え、転職を決意しました。御社は在宅医療に力を入れており、多職種連携の実績も豊富です。ここで経験を積み、将来的には地域医療のリーダーとして貢献したいと考えています」

この回答には、3つの要素が含まれています。

  1. 前職での実績(管理薬剤師を3年)
  2. 転職の理由(在宅医療の経験を積みたい)
  3. 将来のビジョン(地域医療のリーダーになる)

キャリアアップ転職では、この3つの要素を明確に語れることが成功の鍵です。採用側は「この人は明確なビジョンを持っている」と評価し、採用を決めます。

逆に、「スキルアップしたい」「年収を上げたい」という曖昧な理由しか語れない人は、キャリアアップ転職で失敗します。

戦略③:年収交渉は「実績ベース」で臆せず行う

キャリアアップ転職では、年収交渉は必須です。

全体の印象として、年収交渉をしてくる応募者は全体の2-3割程度でした。しかし、その2-3割の中には、年収を50万円以上アップさせた人もいます。

年収交渉で重要なのは「根拠」です。

「前職では年収500万円でした。御社では600万円を希望します」

これでは通りません。なぜ100万円アップが妥当なのか、根拠がないからです。

一方、こう言える人は違います。

「前職では在宅医療の処方箋応需枚数を年間1200枚まで拡大しました。この実績は、御社の事業計画にも貢献できると考えています。市場相場と実績を踏まえ、年収600万円を希望します」

実績を根拠にした年収交渉は、採用側も受け入れやすいのです。

ただし、年収交渉は自分で行うのではなく、転職エージェントを介すことを強く推奨します。求職者が直接面接時などに年収交渉をすると「権利主張が強い人」「お金に細かい人」というレッテルを貼られかねません。

エージェントに任せれば、あなたは「エージェントが勝手に交渉してくれた」というスタンスを取れます。企業側も「エージェントの要求だから仕方ない」と受け止めやすいのです。際に私が人事の裏側を見て「ここは信頼できる」と判断したエージェントだけを厳選しました。

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戦略④:「ポータブルスキル」を前面に出す

キャリアアップ転職で評価されるのは、どの職場でも通用する「ポータブルスキル」です。

調剤業務は、どの薬剤師もできます。だから、調剤経験だけをアピールしても、差別化にはなりません。

私が評価したのは、こんなスキルでした。

  • 多職種連携の経験(医師、看護師、ケアマネジャーとの調整)
  • 後輩育成の実績(新人教育、OJTの経験)
  • 業務改善の提案(処方箋応需枚数の増加、業務効率化)
  • プロジェクトマネジメント(在宅医療の立ち上げ、新店舗の開設)

こうしたスキルは、業態や職場が変わっても活かせます。だから、採用側は高く評価するのです。

キャリアアップ転職では、あなたのポータブルスキルを棚卸ししてください。どの職場でも通用するスキルを明確にし、それを前面に出すことで、市場価値は飛躍的に高まります。

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戦略⑤:「転職回数」をリスクではなく強みに変える

キャリアアップ転職では、転職回数が多いことがリスクになる場合があります。

キャリアアップ転職では、転職回数の多さを「多様な経験」としてアピールしてください。ただし、それには一貫したキャリアストーリーが必要です。


【目的別】転職戦略の具体的ロードマップ

ここまで、初めての転職とキャリアアップ転職の違いを解説してきました。しかし、転職の目的は人それぞれです。年収アップを目指す人もいれば、ワークライフバランスを重視する人もいます。

ここでは、目的別に最適化された転職戦略を具体的に提示します。

パターン①:年収アップを最優先する場合

年収アップを目指す転職では、交渉力が全てです。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、薬剤師の平均年収は577.9万円ですが、地域や業態によって大きな差があります。

年収を上げるための最も確実な方法は、以下の3つです。

1. 地方の薬局に転職する

都市部よりも地方の方が、薬剤師の年収は高い傾向にあります。人手不足のエリアでは、年収600万円以上の求人も珍しくありません。

2. ドラッグストアの管理薬剤師を目指す

ドラッグストアは、調剤薬局や病院よりも年収が高い傾向にあります。管理薬剤師になれば、年収700万円以上も十分に狙えます。

3. 転職エージェントを使った年収交渉を徹底する

自分で年収交渉をすると、企業側に「お金にしか興味がない人」と思われるリスクがあります。エージェントを介することで、直接交渉による「お金に細かい」というネガティブな印象リスクを最小限に抑えながら、年収アップの可能性を現実的に高めることができます。

パターン②:ワークライフバランスを最優先する場合

ワークライフバランスを重視する転職では、年収よりも「働きやすさ」を最優先してください。

面接していた頃、こんな応募者がいました。

「年収は今より下がっても構いません。ただ、残業が少なく、有給が取りやすい職場で働きたいです」

この正直さに、私は好感を持ちました。年収を優先する人は多いですが、自分の価値観を明確に語れる人は意外と少ないのです。

ワークライフバランスを重視する転職では、以下のポイントを必ず確認してください。

1. 実際の残業時間

求人票に「残業少なめ」と書いてあっても、実態は違うことがあります。エージェントを通じて、実際の残業時間を確認してください。

2. 有給取得率

年間休日数だけでなく、有給休暇の取得率も重要です。有給が取りやすい職場かどうかは、面接で直接確認すべきです。

3. シフトの柔軟性

特に子育て中の薬剤師にとって、シフトの柔軟性は死活問題です。急な休みに対応できる体制があるかを確認してください。

ワークライフバランスを重視する転職では、面接で「働き方」について具体的に質問することが重要です。遠慮して聞かないと、入社後に後悔します。

パターン③:スキルアップを最優先する場合

スキルアップを目的とした転職では、年収や労働条件よりも「学べる環境」を最優先してください。

私が高く評価したのは、「スキルアップのために年収が下がっても構わない」と言い切る薬剤師でした。

こうした人は、明確な目的意識を持っています。だから、入社後も高いモチベーションで働き、成果を出します。

スキルアップを目的とした転職では、以下の環境を選んでください。

1. 在宅医療に力を入れている薬局

今後、在宅医療の需要は確実に増えます。在宅医療のスキルを身につければ、市場価値は大幅に上がります。

2. 多職種連携が活発な職場

医師、看護師、ケアマネジャーとの連携経験は、どの職場でも評価されます。

3. 教育制度が整っている企業

研修制度や資格取得支援がある企業は、スキルアップに最適です。

スキルアップを目的とした転職では、3〜5年のキャリアプランを明確にしてください。どんなスキルを身につけたいのか。そのスキルを活かして、将来どうなりたいのか。

この2つが明確なら、スキルアップ転職は成功します。

パターン④:地元へのUターン転職を目指す場合

Uターン転職は、初めての転職でもキャリアアップ転職でも、特有の難しさがあります。

1. 求人数が限られる

都市部と比べて、地方は求人数が少ないです。選択肢が限られるため、妥協が必要になる場合もあります。

2. 年収は地域によって大きく異なる

地方だから必ずしも年収が高いわけではありません。エリアによっては、都市部より低い場合もあります。

3. 情報収集が難しい

地方の薬局の情報は、ネット上に少ないです。エージェントを活用して、リアルな情報を集めることが重要です。

Uターン転職では、転職活動を始める前に、必ず現地の薬局を見学してください。実際に足を運ぶことで、求人票では分からない職場の雰囲気が分かります。


【人事部長が明かす】採用側が本当に見ているポイント

ここまで、転職者側の視点で戦略を解説してきました。しかし、転職を成功させるには、採用側の視点を理解することも重要です。

私が人事部長として面接をしていた際、応募者のどこを見ていたのか。その裏側を、ここで明かします。

ポイント①:職務経歴書の「空白期間」を必ずチェックする

職務経歴書を見るとき、私が最初にチェックするのは「空白期間」です。

転職から転職の間に、3ヶ月以上のブランクがある場合、必ず理由を聞きます。

「体調を崩していた」「家族の介護があった」という理由なら納得できます。しかし、明確な理由がない空白期間は、採用側にとって大きなマイナスです。

なぜなら、「この人は計画性がないのではないか」「転職活動が長引いているということは、何か問題があるのではないか」と疑われるからです。

転職活動は、在職中に始めることをお勧めします。空白期間を作らないことが、採用側の信頼を得る最善の方法です。

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ポイント②:「逆質問」で本気度を測る

面接の最後に、必ず「何か質問はありますか?」と聞きます。

この逆質問は、応募者の本気度を測る重要な場面です。

「特にありません」と答える人は、採用しません。なぜなら、本当にこの職場で働きたいなら、必ず聞きたいことがあるはずだからです。

逆質問は、面接で最もアピールできる場面です。事前に5つ以上の質問を準備し、面接官の心を掴んでください。

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ポイント③:「入社時期」で柔軟性を見る

面接では、必ず入社時期を確認します。

「いつから働けますか?」

この質問に対して、「すぐにでも」と答える人と、「前職の引継ぎがあるので、3ヶ月後になります」と答える人がいます。

採用側が評価するのは、後者です。

なぜなら、前職への誠実さは、次の職場への誠実さにもつながるからです。「すぐに辞めて、すぐに入社する」という人は、「うちもすぐに辞めるのではないか」と疑われます。

入社時期は、前職の引継ぎ期間を考慮した現実的な日程を伝えてください。これが、採用側の信頼を得るポイントです。

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【失敗事例から学ぶ】こんな転職は絶対にするな

よく見る転職の失敗パターンを紹介します。これを読めば、あなたは同じ失敗を繰り返さずに済みます。

失敗パターン①「とりあえず辞めてから考える」

最も多い失敗が、退職してから転職活動を始めるパターンです。

退職後の転職活動には、3つのリスクがあります。

  1. 収入がなくなり、焦って判断を誤る
  2. 空白期間が長くなり、採用側に不信感を持たれる
  3. 面接で「なぜ辞めてから転職活動をしたのか」と追及される

転職活動は、必ず在職中に始めてください。時間的な余裕があれば、冷静に判断できます。

失敗パターン②「年収だけで選ぶ」

年収だけを基準に転職先を選ぶと、必ず後悔します。

高年収の裏には、必ず理由があります。人手不足、激務、離職率の高さ。年収だけで選ぶと、こうした実態を見落とします。

転職先を選ぶときは、年収、労働環境、キャリアパス、人間関係など、総合的に判断してください。

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失敗パターン③「情報収集を怠る」

転職先の情報を十分に集めずに転職すると、ミスマッチが起こります。

求人票の情報だけで判断するのは危険です。

転職前には、必ず以下の情報を集めてください。

  • 実際の労働時間
  • 離職率
  • 職場の雰囲気
  • 上司や同僚の人柄
  • 会社の経営状態

こうした情報は、エージェントを通じて入手できます。その中でも特に「現場のリアルな情報」を持っているエージェントを選んでください。人事として数多くの担当者と対峙してきた私が、「この会社なら求職者のために嘘をつかない」と確信しているのが以下の3社です。実労働時間、昇給実績、退職率など、表に出ない情報こそが職場選びの鍵なのです。

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あなたのキャリアは、今日の決断で変わる

ここまで読んでくださったあなたは、もう「なんとなく」の転職はしないはずです。

初めての転職とキャリアアップ転職では、戦略が全く異なります。自分がどちらのフェーズにいるのかを理解し、最適な戦略を取ることで、転職の成功率は劇的に高まります。

成功する薬剤師には、共通点がありました。

それは、「自分のキャリアを戦略的に考えている」ということです。

目先の年収や労働条件に飛びつくのではなく、3年後、5年後、10年後の自分を見据えて、今の選択をしている。だから、彼らは転職を繰り返すたびに市場価値を高め、理想のキャリアを築いているのです。

あなたも、今日からキャリアを戦略的に考えてください。

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この記事を書いた人

調剤薬局チェーン元人事部長・薬剤師・中小企業診断士。
約4年間、人事責任者として薬剤師の採用・評価制度設計に従事。大手を中心に20社以上の紹介会社と折衝し、採用の舞台裏から「紹介会社の実力差」を熟知する。現在は経営コンサルタントとして、調剤薬局の採用戦略や人事考課制度の設計支援を行う一方、薬剤師個人のキャリア支援も行っている。採用側と求職側、双方の視点を持つ「情報の非対称性を解消する」解説に定評がある。

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